前半からシリアスになりました。
今日は雄弥と一緒にRoseliaの練習を見に行く日。あの日からバンド活動は休止中だし、ゆりさんと出会うまではバンド関連とは一切合切距離を取ってたから、また雄弥と一緒にバンドに関われるのが嬉しい。また一緒にステージに立てるのが1番だけど、それはどうなるかわからない。とりあえず、今はこれだけでも嬉しいんだ☆
「おはよう、結花」
「あ、起きたんだね。おはよう雄弥♪」
「朝からご機嫌だな。そんなに楽しみなのか?」
「そりゃあそうだよ〜。音楽好きだし!」
「……そうだったな。…ごm「謝らないでってば」…ゆか」
「先週にも言ったでしょ?一人で抱え込もうとしないでって。雄弥は責任感が強すぎるよ。紗夜と日菜のことは、私から何か言うことはできないけど、少なくとも
「…なんで……そんな」
「雄弥のお姉ちゃんだからね♪それに…私雄弥のこと大好きだから。大好きな人が背負うものを一緒に背負ってあげたい。自然なことでしょ?」
「よくそんな恥ずかしい事言えるな」
「え〜。雄弥ほどじゃないと思うんだけどな〜」
「それはないだろ…。でも、ありがとう結花」
「どういたしまして♪さ、朝ごはんにしよ!」
雄弥は私から音楽活動を奪ったって思ってるんだろうけど…、それは
「いつもよりちょっと豪華だな」
「イヤだった?」
「まさか。何時から料理したんだ?」
「んー、6時かな〜」
「…今8時なんだが」
「おかげでちょっと眠たいかも」
「はぁ。自業自得だな」
呆れたように肩をすくめた雄弥だったけど、どうやらまた甘えさせてくれるみたい。お互いの顔が見えるようにって向かい合って座ってるんだけど、雄弥は椅子を移動させて私の横に座った。私の手からお箸を取って、おかずを口の前に持ってきた。
「ほら、口を開けろ」
「言い方が荒いよ?リサと食べさせ合いしたときってそんなんだったの?」
「いや別に食べさせ合いなんて………あれ?したっけ?」
「やれやれだよ」
「ま、そこは置いとくとして。はい、あーん」
「あ〜ん♪んん!美味しい!」
「結花が作ったんだけどな」
「雄弥が食べさせてくれるから美味しいんだよ?」
「なんだそりゃ」
「むー、なら雄弥にも食べさせてあげる。あーん」
「俺は別にいいんだが…」
「あーん」
「……あーん」
「はい♪どう?美味しいでしょ?」
「そうだな。結花がつく「はい口開けて〜」…おい」
私が作ったから美味しいって言ってもらえるのも嬉しいんだけどさ。でも今は私が食べさせてるから美味しいって言ってもらいたい。だから私は雄弥がそう言ってくれるまで、わんこそばの如くどんどん雄弥の口に食事を運んだ。雄弥も別に鈍感じゃないから、4回目には「結花が食べさせてくれるから美味しい」って言ってくれたんだけどね。
「食器は俺が洗うから、結花はソファでゆっくりしといてくれ」
「はーい」
テレビを点けたけど、興味を引くものがなかったから雄弥の背中を眺めることにした。平均身長より少し背が高くて、ガタイが良いわけじゃないのに大きく見える背中。……いったいどれだけのことを背負い込もうなんて思ってるんだろ。
「結花?どうした?もう少しで洗い終わるんだが」
「…ちょっとあの時のこと思い出しちゃったから」
「…そっか」
洗い物の邪魔になると分かっているけど、私は雄弥に後ろから抱きついた。腕を回して雄弥を離さないようにギュっと、強く…。雄弥は、手を拭いてから私の腕を解いた。力で勝てるわけ無いから、抵抗しても意味がない。やっぱり邪魔しちゃいけないよねって、そう思ってたら今度は私が雄弥に抱きしめられた。お互い向かい合うようにして。
「…ゆうや?」
「ソファに座ろっか」
「でも…あらいもの…」
「後でもできる」
有無を言わせないように私を抱っこした雄弥にソファに運ばれた。最初は横に並んで座ってたけど、すぐに雄弥の膝の上に乗って、もたれかかった。雄弥が後ろから優しく包んでくれて、ゆっくりと頭をを撫でてくれる。それが心地よくて、あの時のを思い出して沈んでた気持ちも楽になってきた。
「ねぇゆうや」
「うん?」
「あの事は、二人で背負おうね。絶対に自分のせいだって思い込まないでね」
「…わかった」
「私たち、ずっと一緒にいようね。…母さんだって…」
「そうだな。大丈夫。結花を置いてくことなんてしないから」
「うん」
「少し寝てていいぞ。時間がきたら起こすから」
「ごめんね」
「違うだろ?」
「そうだね。ありがとう。ちょっと休むね」
体の力を完全に抜いて、瞳を閉じる。雄弥が私の体を支えてくれて、側に置いてある毛布をかけてくれた。毛布の暖かさと雄弥の温かさに包まれて、すぐに眠りにつくことができた。
〜〜〜〜〜
「ん〜〜!あー、よく寝た!今何時ー?」
「12時前」
「嘘!?私そんな寝てたの!?」
「心地よさそうにぐっすりな」
「うん、寝心地よかったけど…ってそうじゃなくて!雄弥4時間近くもずっとこのままだったってことでしょ!?」
「そうだな。別に気にしてないぞ。結花が安眠できたならそれが一番だ」
「うぅー、お姉ちゃんとしての威厳が…」
「何言ってんだか。それよりお昼は今から作っても仕方ないし、スタジオ行く途中でどっか寄るぞ」
「あー、まぁそうするしかないか〜」
準備は昨日のうちからやっておいたから、髪を整えたら鞄を持ってすぐに家を出ることができた。雄弥の隣に並んでしばらく歩いて、バイト先であるハンバーガー屋さんに行くことにした。通り道だしね。
「いらっしゃいませ〜。って、あれ?結花ちゃん?…と、その人は…」
「初めまして、弟の藤森雄弥です」
「あ〜、あなたがそうなんですね!私は結花ちゃんのクラスメイトの松原花音って言います。よろしくね♪」
「同い年だし、2人とももっと砕けた感じで話なよ〜」
「えと……いいのかな?」
「いいぞ。俺もそうさせてもらうから」
「うん!それでご注文はどうしますか?」
「えっとねー」
食べたいものを注文して、それが出てくるのを待つ。そこそこ忙しそうだけど、なんとかなってるみたいだね。注文したものもそんなに待つことなく出てきて、雄弥と一緒に席に座る。
「バイト先に友達がいると気楽に働けるな」
「そうなんだよね〜。それが狙いで紹介してもらったわけだし」
「さすが、抜かりないな」
「時間は少し余裕あるよね?」
「ああ。だからゆっくり食べても大丈夫だぞ」
「うん。それもあるけど、せっかくだしバイトで仲良くなった子とかの話したいなーって」
「なるほどな」
バーガーを食べて、ポテトをゆっくり摘みながら雄弥にいっぱい話を聞いてもらった。学校のことを家でいっぱい話すから、こうやってバイト先のことを話すのは、けっこう少ないんだよね。だから新鮮で、雄弥が楽しそうに聞いてくれるから、私も楽しくなっちゃった。時間ギリギリになったのは、仕方ないよね。
〜〜〜〜〜
今日は雄弥くんと結花が練習に顔を出しに来てくれる日。だからといって特別何かをするわけでもない。私はいつもと同じように早めに来て部屋の鍵を受け取り、先に準備を始める。準備が終わったら自主練習を始める。しばらくしたら湊さんが来て、彼女も同じように準備をして練習を始めた。……今日は今井さんが一緒じゃないのね。
「友希那さん、紗夜さん、こんにちは!」
「…今日も…早いですね」
「あれ?リサ姉はまだなんですか?」
「湊さん」
「私も細かいことは知らないわ。先に行っててと言われただけだもの」
「今井さん……間に合うと…いいんですけど」
さすがにそれは大丈夫なんじゃないかしら。今井さんはあれでも遅刻することがありませんから。白金さんと宇田川さんは、今井さんのことを気にかけつつも準備を始めた。でも、いつもより少しペースが遅いわね。…仕方ないわね。
「少し外に出てきますね。今井さんが来ているか確認もしますので」
「わかったわ。でも、時間までには戻ってきてちょうだい」
「わかりました」
受付の方まで行くと、今井さんの姿が見えた。ちゃんと間に合っているようだけど、誰かと話してるのかしら。今井さんに声をかけようと近づいていくと、誰と話しているのかがわかった。私たちの待ち人である雄弥くんと結花だわ。
「3人とも、着いてたのなら部屋に来てほしいのだけど」
「あ、紗夜。ごめんごめん。話し始めたら止まらなくってさ。行こ、結花、雄弥」
「あら?今井さん、雄弥くんの呼び方変えたのね」
「う、うん。ダメだった?」
「なんで私の許可が必要なんですか…。気にすることでもありませんので」
何故か安堵する今井さんに首を傾げたけど、私までここでゆっくりするわけにもいかないわ。部屋へと引き返して行くと、今井さん達も後ろをついてきてくれた。4人で部屋に戻ると、みんなは雄弥くんと結花も一緒であることに驚いていた。時間通りに来るとは私も思っていたけど、こうやって固まってくるとは思わないものね。
「リサの準備が終わったら練習を始めましょ。雄弥と結花にはあとで指摘してほしいのだけど、いいかしら?」
「わかった。やりやすいようにやってくれたらいい」
「ちゃーんと練習を見ておくから、良いのを期待してるよ〜」
「当然よ。全てをぶつけるわ」
今練習中の曲を演奏して、私達だけで1回振り返ってまた演奏。それから雄弥くんと結花に意見を聞くことになった。
「あこ、ここのとこなんだが…」
「燐子、こっちのパートはね〜」
「紗夜、この小節はだな…」
「友希那サビのとこなんだけどね」
正直、2人の実力を侮っていたわ。私たちより上とは思っていたのだけど、想像以上だった。小さなミスを指摘するだけじゃない。今できていることをさらに良くするためにはどうしたらいいか、そんなことまで意見を出してくれる。そのまま鵜呑みにすることを、2人から禁止されているけど、それは「そうしたらこの曲はRoseliaの曲じゃなくなる」という理由からだ。
「んで、リサはだな」
「お、お手柔らかにー、なんて…」
「上手くなりたくないならそれでもいいが?」
「うぐっ、…上手くなりたいよ」
「なら遠慮なく」
一番雄弥くんが指導に力を入れたのが今井さんだった。彼女はたしかにブランクがあるけど、実力は申し分ないはず。彼女の性格上、気にかけてることも多くて、多忙なはずなのに練習量は決して少なくない。それでも一番雄弥くんから指摘を受けるのは、彼もベースを弾いていたからということね。ギターの私も容赦なく指摘されたけど……。並べてみると今井さん>私>宇田川さん、かしら。雄弥くんはドラムの経験はないから、知識とバンドを組んでた頃の経験で言ってたのね。
「雄弥ってすごいね。ベース以外にも教えれるなんて」
「そうか?Augenblickは練習の気分転換で他の楽器を弾く、なんてことをしてたから、むしろ教えれない方がおかしいってなるんだよ」
「ほぇ〜」
「てか話をそらそうとするな」
「えへへ、一応頭では理解できてるんだけどさ…、難しいんだよね〜」
「……リサ、とりあえず最初のキー押さえてみろ」
「??こう?」
「ああ。今から
「え、えぇ!?ちょ、ちょちょちょ!まって!」
「待たない。時間の無駄だ」
「うぅ〜、ドキドキするよぉ」
……彼はいったい何をしているのかしら?今井さんの後ろに回って、左手も右手も重ねてるけれど、あんなの抱きついてるようにしか見えないわ。雄弥くんの手の動きを今井さんも手を重ねられてることで体感できる、とかそんなやり方なのでしょうね。やりにくいからかゆっくり弾いてるけど、今井さんがなかなか出来ていなかったところをしっかり弾いてみせてる。
「っとまぁこんなとこなんだが、わかったか?……リサ?」
「ふにゃぁ〜、ゆうやが…あぅ」
「まったく。雄弥くん、何してるのよ」
「紗夜…。いやこれはだな…」
「わかってはいるつもりよ。でも、どうしてかしらね?ムシャクシャしちゃうのよ」
「そう言われてもな……」
「はれ?………あ、紗夜。どうしたの?」
「…今井さんが戻ってきたようなので、ここまでにしておきましょうか」
「え?え?」
なんのことか分からないと言わんばかりに混乱してる今井さんを置いといて、私は自分のスペースに戻ろうした。…でも、今井さんと雄弥くんの会話でその足を止めることになった。
「あ、そうだ。
「っ!」
「悪いなリサ。俺には無理だ」
「え?なんで?……あ、そっか。
「…そういうことだ」
「……っ!」
(?氷川…さん?)
練習が終わり、雄弥くんと今井さんはアルバイトへと向かっていき、結花はスーパーへと買い物に行った。湊さんは結花と意見交換したことを忘れないようにと、個人練習をするために残るらしい。……私もそうしたかったのだけど、今日はそんな気分じゃなかった。自然と私と白金さん宇田川さんの3人になったのだけど、これと言って話せていなかった。でも、今はそれがありがたかった。それがしばらく続いたのだけど、その沈黙を破ったのは白金さんだった。
「あの…氷川さん……、どうかされましたか?」
「りんりん?」
「…どういうことですか?」
「どこか…引っかかっている……いえ、思い詰めてる…ように見えたので」
「え!?あこ全然わかんなかったよ!そうなんですか?紗夜さん」
「……それは……」
「雄弥さんのこと…ですよね」
「!?」
「紗夜さん!話してください!あこ、何ができるか分からないですけど、紗夜さんの力になりたいです!Roseliaなんですから!」
「っ……、…少しだけ、お時間をもらってもいいですか?」
「はい」
「もっちろんです!」
「実は…雄弥くんはーー、」
私は2人に少しだけ話した。詳細とかを話せるわけでもないから、本当に触りの部分だけを。私たちの間で何があったのかの、ほんの一部を…。
次回、体育祭ですよ。