今日はとうとう体育祭当日。学園祭同様、招待券があれば他校の生徒も見に来ることができる。ちなみに、身内なら招待券はいらないのだそうだ。
「おはよう雄弥。いろいろと大変な1日になりそうだね」
「愁か。おはよう、主に男子たちの無駄なテンションの上がり方のせいなんだけどな」
「いいんじゃないかな?そのテンションを活かして準備も率先してやってくれたし、生徒会としては大助かりだよ」
「ふーん?ま、片付けの時はそれを使えないだろうがな」
「大丈夫。そこも策があるからね」
「そうかよ」
『ウォぉぉーーーー!!』
「……教室に入らなくていいか?」
「何言ってんの。入らないと駄目だよ。…僕も気が進まないけど」
そう言われてもな。こんな暑苦しいテンションの奴らと同じ空間にいないといけないんだろ?女子たちも冷めた様子で教室の外に出てるし。外にいる女子たちと「暑苦しいな」って話をしてたら、おそらく男子たちの異常なテンションの原因の一つになってるであろう人物が来た。
「おっはよ〜う☆ところで、なんで外に出てるの?」
「中から聞こえてくる声で察してくれ」
「?」
『諸君!英気は養ってきたであろうな!!』
『当然だ!』
『諸君!今日の宴を貰うのは誰だ!』
『俺達だぁー!!』
『よろしい!我々は必勝をここに誓う!』
『ウォぉぉーー!!』
「……なにこれ?」
「男子たちが異常なテンションで暑苦しいから、こうやって外にいるんだよ」
「なるほど〜」
「あのテンションの高さは今井さんにも原因があるんだろうけどな」
「へ?なんで?」
こいつ、まさか言う気なのか?リサも頑張って意識しないように忘れてきただろうに。それを言うのか?
「だって今井さん仮装競争出るじゃん」
(言いやがった!)
「……ぁ、…〜〜〜っ!!」
「リサ、大丈夫か?」
「むりぃ…」
「だよな。…愁」
「ご、ごめん。あの…雄弥…アイアンクローはちょっ…イタタタタ!!」
「瀬田。
「抜かりないさ」
「よかった。俺はリサを保健室に連れてくから、みんな荷物はよろしく」
「はーい!」
「リサのことよろしくー!」
「そろそろ手を離してほし…イタイイタイイタイ!」
愁に制裁を加えたら、リサの手を引いて保健室に移動する。朝1番で生徒が来ると思ってなかったんだろうな。先生が一瞬固まってた。保健室に来たものの、リサは体調が悪いわけでもどこかを怪我したわけでもない。ただ、落ち着かせるためにも保健室が都合いいというだけだ。教室にいない理由も、「保健室に行ってる」ということなら納得されるからな。
「そんなわけで少し休ませてもらいますね」
「どういうわけよ…。戻れそうになったら戻ってね。私もここの用具を救護テントに運びに行かないといけないから」
「そうですか。お構い無くお仕事してください」
「整理がすんだらそうさせてもらうわ」
「はい。リサ、ベッド使わせてもらおっか」
「…うん」
「………おいで」
頷くもその場から動かないリサを誘導し、ひとまずは保健室のベッドに腰掛けさせる。少し寝かせとこうかとも思ったけど、それはリサが断固として拒み、今度はリサに要求を出された。
「…今日…さ」
「うん」
「できるだけ……側にいて」
「ぇ」
今日の体育祭には、結花はもちろん紗夜や沙綾たちも来る…らしい。来客者と過ごすのは、昼休みの時なんだろうし問題ないんだろうけど、また変な噂とか流れそうな。……俺は気にしないけどさ、紗夜たちの耳にまで入ると面倒なことになりそうな…。
俺が返答に詰まっていると、リサが不安そうに目を揺らしつつ俺を見上げてきた。リサは強い女の子だが、耐性が無いものに対しては本当に無力だ。不安になるのは誰しも同じだろうが、リサはそれを感じやすい。友希那は別クラスで、瀬田はファンに囲まれるし、今の氷川には頼りにくいのだろう。そして他の男子たちは元凶だから論外。
「…ダメ……だよね…。……ごめんね」
「いや、いいよ」
「え?」
「今日は一緒にいよう」
「…でも…」
「今のは驚いてただけだから。気にしなくていい」
「ほんと?」
「ああ」
リサの隣に腰掛け、体を引き寄せてリサの頭を撫でつつ俺の心音を聞かせる。結花にやってもらったらすごく落ち着いたし、結花もこうしてもらったら落ち着けるって言ってた。リサは最初、体を震わせて離れようとしたが、すぐに押しのけるのをやめて逆に腕を俺の背中に回してきた。
「結花とたまにやることなんだが…、落ち着けたか?」
「…うん。おかげさまで。…でも、お願い…もう少しこうさせて」
「ああ。リサが満足するまでこのままでいるよ」
「……あなた達、せめてカーテン閉めてくれないかしら?」
「ありがとう雄弥」
「気にするな。俺は俺のやりたいようにしてるだけだ」
「そっか。えへへ」
「聞こえてないのね……。はぁ〜、若いっていいわぁ…」
〜〜〜〜〜
結局俺とリサがクラスと合流したのは、グラウンドへの移動が始まった時だった。瀬田と愁が俺とリサの荷物まで運んでくれたのは、感謝しかない。開会式が始まる前の入場行進では、男子たちを前に固めることにした。男子の数が奇数だから俺が男子たちの中で一番後ろに行き、俺の隣にはリサがいるように女子たちに取り計らってもらった。…妙にツヤツヤした表情で、ニヤけていたのが引っかかったがな。ちなみに、リサの前には愁がいる。
「そういや選手宣誓って生徒会長がやるんだったな。今日初めて見るわ」
「あれ?転入してきた時に会わなかったの?」
「まぁな。別に生徒会に顔を出しに行く必要なかったし」
「へ〜、そういうもんなんだね」
「生徒会もルーズだからね。でも、生徒会長は雄弥も知ってる人だよ」
「…は?」
愁とリサとの会話を一旦中断し、前方に目を向ける。男子たちのおかげでその姿は見えにくいが、生徒会長が朝礼台に上がっていき、校長の前に立ったおかげでその後ろ姿を見ることができた。……あの姿は、
『──宣誓!我々生徒一同は─────、生徒代表、秋宮疾斗!』
「お前かよ!」
「ね?雄弥の知り合いでしょ」
「そうだが…、いや待てまて!あいつ3年だろ!?なんで生徒会長やってんだよ!普通3年は部活も生徒会も引退だろが!」
「疾斗の進路が確定してるのと、人気が高いからかな。ノリで立候補したら当選しちゃったんだよ」
「この学校まともなはずだろ……」
「自分のクラスを思い出しなよ」
「……なるほどな」
「あ、あはは…、女子としては一緒にしてほしくないかな〜」
「大丈夫。そこは分けて考えてるから」
「そっか。よかった」
開会式が終わり、ラジオ体操も終わったら早速競技が始まる。最初の競技は、100mリレー。定番のものだが、盛り上がることは間違いない。これを最初に持ってくる学校は、なかなか無い気もするがな。しかも10人でのリレーで男女混合だ。
本気で優勝を狙ってるうちのクラスからは、当然足が速いメンバーが選出される。俺は他の奴らがやりたがらない競技に出て、そこで確実に点を取るという役割になっているから、これには出ない。女子からは、大本命といえる氷川も出る。これで負けたら優勝はないだろうな。
「1位取れるかな〜」
「取ってくれないとな。勢いがつかなくなるし、このメンバーで負けたら他のも勝てない」
「じゃあしっかり応援してあげないとね!」
「え?しなくていいんじゃね?」
「えぇ…」
「今でも十分あいつらのモチベーションは高いからな」
『風になる!』
『そう!千の風に!』
『あはは!それ死んじゃってるじゃん!』
「ほらな」
「ほんとだ…。ヒナも楽しそうにしてるし、これなら大丈夫かな」
『あ!おねーちゃん!!見ててねー!絶対勝つからー!』
『ちょっ、日菜!そんな大声で言わないで!』
『なんと!あの麗しき女性が!氷川様のお姉様!?』
『者共!半端な姿は見せれぬぞ!』
『承知!!』
「…勝ったな」
「そうだね〜」
うちの学校は、全体で8クラス。俺たち2年だけ2クラスで、3年と1年は3クラスだ。少ない方な気もするが、その分こういう行事では盛り上がりやすい。勝負の形式も学年関係なく全てのクラスが敵だ。1位から8位まではっきり表れる。
グラウンドが大きめなおかげで、8クラス同時に走ることができる。これも見所の一つとなるか。勝負は圧倒的だった。異常なテンションで走る男子たち全員が、この体育祭で自己ベストタイムを叩き出したからだ。しかも元から学年でも10位以内に入る連中が、だ。見る見るうちに差が広がったし、アンカーの氷川も容赦なかった。紗夜に良いとこを見せたいという思いが強かったんだろうな。最下位のアンカーがバトンを受け取ってすぐにゴールしてた。
「次の競技なんだっけ?」
「ちょっと待ってね、プログラム見るから。えっと〜『やれるものならやってみろ。決して玉は入れさせない』……なにこれ?」
「玉入れか」
「わかるんだ…」
「疾斗が名前つけてんだろ。あいつの感性とネーミングセンスを知ってたらわかる。さっきのも『留まることを知らない者たち』って名前だったし」
「プログラムが意味ないじゃん」
「それはそれでいいんじゃないか?来客者も次はなんだろうなっていう期待が持てるわけだし」
「それも狙ってるのかな?」
「ありえそうなのが疾斗なんだよな〜」
玉入れもただ投げればいいわけじゃない。通常の玉入れなら、かごに入れた数が多い組の勝ちだ。しかし、この競技の玉入れは、
ちなみに、うちのクラスはさっきのリレーでぶっちぎりの1位を取った。その後にこれをするとなると、当然狙われるのだが。
『何だこいつら!バケモノか!』
『全然玉が入らないぞ!』
『チーターや!チーターやで!』
『薫様がいるのに玉なんて投げれないわ!』
と、まぁこんな調子でものの見事に防ぎまくってるのだ。いや、まぁ女子連中は瀬田が防ぎ役にいるから投げれてないんだけどな。というか瀬田の応援が始まったし。
それで、こっちのクラスの連中は他のクラスに分散していて、男子たちは高弾道で玉を投げて籠に入れるという芸当をやってのけてる。女子はさすがに数人しかできてないが、…できてるのもおかしいか。まぁでも、野球部、アメフト部、ソフト部とかをかき集めたメンバーだしな。女子サッカー部の子なんて投げるのを諦めて、蹴り始めたし…、そのほうが入ってるんだけどな。
「うちのクラスってすごいんだね!」
「そうだな。前半で燃え尽きなかったらいいけど」
「ペース配分ぐらい考えてるよ。…きっと」
「そこは僕がきっちり管理してるから安心してよ」
「出た。策士め」
「え?毛利くんって策士なの?」
「作戦立案、戦術、戦略、現場での対応力。そういうのがずば抜けてんだよ。本人はモヤシ野郎だけど」
「酷いな!人並みの運動はできるよ!」
「あはは、とりあえず毛利くんに任せとけばいいってことだよね!」
「ま、そうだな。んじゃ、俺たちはそろそろ集合場所に行くか。さっきから招集がかかってるし」
「……うん」
なんの招集かと言うと、リサが本気で嫌に思っている"仮装競争"だ。玉入れが始まった時から招集はかかってたんだけどな。できるだけリサに時間をあげたかったから玉入れを観戦してたというわけだ。乗り気になれてないリサの手を引きながら集合場所へと向かう。
(さてと、今日で
わりと楽しく書かせてもらいました!
前後編になるのか、体育祭で3話やるのかわかりませんが、とりあえず次回も体育祭です!