もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

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20話

 アタシが最初に参加する競技が、一番イヤな"仮装競争"。衣装に着替える場所がちゃんと用意されてて、アタシは重い足取りでその中に入っていった。救い…って言えるかは分からないけど、入場行進の時は全員がフード付きのマントに身を包むこと。だから、レーンに立って紹介される時にやっとどんな衣装なのかが分かるってなってること。

 

 

「……雄弥が…なんとかしてくれるって言ってたけど。…でも、少しの間は我慢しないといけないんだよね」

 

 

 アタシが着ることになる衣装を手にとって、深呼吸してから着替えた。雄弥を信じて、アタシも覚悟を決めなきゃ。

 

 着替え終わって、マントで身体を隠しながら外に出ると、雄弥が待ってくれてた。アタシは雄弥のとこに駆けていったんだけど、慣れない靴のせいで躓いちゃって…。でも、アタシが地面にぶつかることは無かった。それは、雄弥がアタシを受け止めてくれたから。

 

 

(あぁ…、この温もりが、優しさが、……好き)

 

「大丈夫か?」

 

「うん。ありがとう」

 

「その靴は慣れない…というか、ヒールで走るのは無理があるだろ。足に悪いぞ」

 

「あ、あはは…」

 

「ま、そっちもなんとかするからいいんだけど」

 

「できるの?」

 

「ああ。それに、できるできないじゃない。やるんだよ」

 

「そっか…。お願いね♪」

 

「任せろ」

 

 

 競技の時の入場行進は、別に腕を振って足を上げて、とかは言われない。それにみんなマントで見を包んでるしね。アタシはマントで見えにくくなってるのをいいことに、そっと雄弥の手を掴んだ。チラっと顔を見たけど、なんの変化もなくて前を見てた。その事に寂しさを感じたけど、手を握り返されたことですぐに吹き飛んだ。

 

 

「俺たちは第一走者だな」

 

「うん。……あれ?同じクラスなのに一緒に走るの?」

 

「そこはコネだ」

 

「…なるほどね〜」

 

 

 先生に案内されたレーンに立つと、隣が雄弥で反対側が友希那だった。ここまで知り合いで固めれちゃうんだね。そのおかげなのか、あこ達にすぐに見つかって声援を送ってもらっちゃった。そうそう、中等部と高等部は体育祭の日にちがズレてるんだよね。だからあこは燐子や紗夜と一緒にいる。結花とか他にもバンドで知り合った子たちも固まってるね。結花の呼びかけかな。みんな一緒にいるの好きそうだし。

 

 

「友希那もこれに出るんだね」

 

「これはみんな手を抜くだろうという前提で選ばれたのよ。運動が苦手な人たちが固まるだろうからって。……そんなこともなかったようだけどね?」

 

「あ、あはは、アタシと雄弥は、まぁいろいろとね」

 

「そう」

 

 

 つぐみのアナウンスで、順番に1レーンの子から紹介されていく。ハロウィンっぽいっていう曖昧な基準だから、ただの仮装大会みたいなことになってるんだよね。だって海賊とかハロウィン関係ないじゃん。友希那は、猫をイメージにした衣装だった。なるほどね、友希那が釣られた理由って絶対これだよね。

 そうやって達観してたけど、アタシの順番がきた。つぐみもアナウンスで詰まっちゃってるんだけど、やっぱりこんなのアタシ以外いないんだね。それとつぐみ!そんな恥ずかしそうに紹介されたらアタシもキツイんだけど!

 

 

「うぅー」

 

「……リサ」

 

「ゆきなぁ、これはねぇ」

 

「クラスの男子たちが原因といったところかしら。…リサにこんなことさせるなんていい度胸してるわね」

 

 

 薫たち女子陣の抗議のおかげでマシになったとはいえ、露出が多い。肩どころか背中も露出してるし、胸元も見えるようになってる。足の方だって付け根あたりまで見られちゃうし…。マシになったのがどこかっていうと、おへそのとこを隠せたことらしい。あとは、ストッキングを長いやつにできて、手袋も肘まで隠せるオペラ・グローブになったんだとか…。

 

 

(ほんと…やだぁ……。視線が……)

 

 

 アタシが羞恥に耐えてる間に、すぐに雄弥の紹介があった。アタシはそれを聞いてる余裕はなかったけど、いつの間にかアタシの前に雄弥が立ってた。大きな帽子を被ってて、どこか道化師っぽいような。

 

 

「リサ、3歩前に出てくれ」

 

「え、う、うん」

 

「よし、疾斗!マイク!」

 

「よくわかんねぇけど面白そうだ!おらよ!」

 

「サンキュ!…皆様少々お時間を頂きます。今からお見せするのは、(わたくし)藤森雄弥が行うマジックでございます」

 

「ゆ、ゆうや?」

 

「では早速参りましょう!リサ、信じてくれ

 

「!…うん!」

 

 

 雄弥は、コートの内ポケットに手を入れて、そこから大きな青い布を取り出した。アタシぐらいの人だったらすっぽり覆い隠されるような、そんな大きさの布。どうやって収納してたのかも疑問だね。それだけでもみんなの視線が雄弥に集まる。感じてた視線が減ったのが実感できた。

 けど、雄弥はそれだけで終わるわけじゃない。アタシにその布を被せてきた。アタシは何も聞かされてないからビックリしたけど、布越しに雄弥に「ジッとしててくれ」って言われたから言うとおりにした。

 

 

「それでは参りましょう。校舎に取り付けてある時計にご注目ください。…おやおや?針が速いペースで動いてますねぇ。しかも逆回りです」

 

 

 アタシは時計がどうなってるのかが見えない。どこかのタイミングで、チャイムがなったことだけはわかった。雄弥はいったい何がしたいんだろ。

 

 

「ではお時間です。彼女、今井リサさんに改めてご登場いただきましょう」

 

 

 雄弥に布を勢い良く取り払われた。アタシは何が起きてるのかわかってないから、目を強く瞑ってた。だけど、よく耳をすませたら拍手喝采が巻き起こってた。アタシはゆっくり目を見開いて、雄弥の顔を見つめる。雄弥は「成功だな」って微笑み返してくれた。なんのことか分からなかったけど、肌で感じてた風をあまり感じなくなったのに気づいた。視線を自分の体に下げると…、

 

 

「……へ?」

 

「リサ…可愛いドレス(・・・・・・)ね」

 

「う、…うん。え?え?どうやって?アタシ何もしてないよ!?」

 

「それを言ったらネタバラシになるだろ。…彼女には、サキュバスから不思議の国のアリスへと衣装変更していただきました〜。皆様、お時間をいただき、誠にありがとうございました。それと残念がってる男子諸君、イカレ帽子屋(マッドハッター)が君たちの望み通りにするわけがないだろう」

 

 

 青いワンピースで、可愛らしい白色のフリルもついてる。本当に絵本に出てくるアリスの衣装とそっくりだ。アタシは助けてくれたことと、こんなに可愛らしい衣装を着させてくれたことが嬉しくって雄弥に抱きつきながら何回も何回もお礼を言った。

 

 

「言ったろ。なんとかしてやるって」

 

「うん。うん!」

 

「…あなた達、競技前よ」

 

「あっ、ご、ごめん!」

 

「さてと、切り替えて競技を始めるとするか」

 

『リサってばだいたーん★』

『彼女は何を考えているのかしらね?』

『わわっ!結花さん紗夜さん落ち着いてください!りんりん助けてー!』

『お二人とも…お昼休みが……ありますから』

『リサさん凄いねー!ね、沙綾!』

『そうだね香澄。…ほんとに、いろいろとね〜』

 

(…何も聞こえてない。うん、何も聞こえてないよ〜)

 

 

 この競技でも、アタシたちのクラスがトップを取った。もちろん雄弥とアタシがワンツーフィニッシュってことだよ。…まさかこの衣装でも恥ずかしい目に合うとは思わなかったけど。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 私はお昼休みに雄弥と一緒にお弁当を食べるって約束してる。Roseliaのメンバーとポピパのメンバーと花音も一緒という大所帯。まぁでも、紗夜は日菜と食べるらしいから、用事がすんだらそっちに行くらしい。

 

 

(それはともかくとして)

 

「雄弥くん、午前中のアレ(・・)はどういうことかしら?」

 

「さ、紗夜?雄弥はアタシのために「今井さんも今井さんです!」はい!」

 

 

 紗夜が仁王立ちして、雄弥とリサが正座させられてる。あ、ちゃんとシートの上だからね。地べたに直接なんてこと紗夜はさせないから。

 私はそれを遠巻きに見ながらお弁当を広げて、話が終わったらすぐに食べれるようにしてる。重箱を使うときが来るとはね〜。ま、沙綾と一緒に作れたし、千紘さんに教わることができたから、全然オッケーなんだけどね。

 

 

「なんですかアレは。大衆の前で!」

 

「紗夜あの衣装はリサの意思じゃないわ」

 

「湊さん。私だってそれはわかっています。私が言いたいのは、雄弥くんに抱きついたことです「私も抱きつきたいって?」まったくそのとお…違うわよ!結花邪魔しないで!」

 

「だってお弁当広げ終わったんだもん。それに日菜を待たせていいの?」

 

「くっ……わかったわよ。とにかく今井さん!ああいうことはしないように!」

 

「…はい」

 

「雄弥くんも!」

 

「わかった」

 

絶対雄弥わかってないよ

 

奇遇ね。私もそう思ったわ

 

友希那とは良い友達になれそうだよ〜

 

 

 友希那と握手を交わしてる間に紗夜が日菜のところに行ったことで、雄弥とリサは解放された。紗夜は自覚してるんだろうけど、人前じゃそれを認めないからね〜。

 

 

(…焦り、もあるんだろうね。紗夜が距離を取ってる間に、リサが尋常じゃないペースで雄弥と距離を詰めたから。知らない人からしたらカップルに見えるもん)

 

「結花も沙綾も、弁当作ってくれてありがとな」

 

「いえいえ!結花さんとお弁当作れて楽しかったですし、こういう豪華なお弁当の作り方も教われましたから」

 

「そうそう。それに雄弥にお弁当作るなんて当たり前じゃん?次は雄弥が作ってきてほしいな〜」

 

「そりゃもちろん作るぞ」

 

「紗夜と燐子と花音と千聖と彩とポピパちゃんの分よろしくね!」

 

「多くね!?」

 

「こんな感じに重箱とかで作ればいけるよ!」

 

「いや俺こういうの経験ないし…」

 

 

 雄弥に大量に弁当を作らせようとノリで話してたら、私の行動は親友の敵に塩を送ることになってしまった。うっかりしてたよ、そうだよね。リサは見た目がギャルっぽいだけであって家庭的な女の子なんだったね。

 

 

「あ、あのー、雄弥?」

 

「ん?どうした?」

 

「よかったら、だけどさ……その…アタシとお弁当…作らない?」

 

結花さん!

 

やらかしちゃったね〜

 

 

 まぁでもなるようになるでしょ。元の鞘に納まる、的な。だって、ああやって紗夜に説教されるのって、昔よく見た光景(・・・・・・・)だったから。変わったのは、雄弥の隣が日菜じゃなくてリサってことだけどね。ともかく、久々に見た光景だけど、紗夜も雄弥もその懐かしさもあって、真剣なんだけどどこか楽しそうだった。

 

 

(紗夜が距離を戻せるまでに、リサが距離を縮めきれちゃうのか…、そこが別れ目かな)




やっぱり体育祭は今回では終わりませんでした!!
え、リサのコスプレの描写がすぐに終わった?あははー、長々とリサにそんなことやらせるわけないじゃないですか〜。
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