もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

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体育祭が終わります。


21話

「殲滅だー!」

「捻り潰してやれー!」

「情けなぞ無用ぞ!!」

「返り討ちにしてやれー!!」

 

「……ヒートアップしてやがんな〜」

 

「雄弥も大暴れしてくれないと作戦に支障が出るんだけどね?」

 

「わーってるよ。適当にあしらってくる」

 

「頼むよ〜」

 

 

 今やってる競技が何かと言うと、騎馬戦だ。体育祭の顔とも言える種目の一つだな。で、この騎馬戦のルールも少し変わってて、全クラスが一斉に競うようになってる。1回戦は最後の一騎まで戦う殲滅戦。8クラスあるから地獄絵図だよな。だって心境からすれば1:7なわけだしな。で、愁が言ってる作戦ってのは、2回戦に向けての布石なんだよな。

 

 

(そろそろうちのクラスの奴らも減ってきたな。…というか、だいぶ強いよな。全滅してるクラスもいるのに、まだうちのクラスは二騎しか落ちてないし)

 

「くたばれ藤森ー!」

 

「気合入ってんな〜。よっと」

 

「おのれぇー!次は負けんぞー!」

 

「…あのテンションって感染でもするのか?」

 

「うるさいぞ藤森!カッコつく前にさっさと負けやがれ!」

「だがすぐには負けるなよ!うちのクラスの得点に関わる!」

「最低でも三騎は倒せ!そしてその後すぐに負けろ!」

 

「あのな…」

 

「こいつ!バケモノか!」

「誰かコイツを止めろー!」

 

「ん?」

 

「あれは…」

「生徒会長か」

「さすがのハイスペックぶり…」

 

(うちのクラスの騎馬は疾斗に落とされていってんなぁ。まぁ疾斗のクラスもアイツ一人みたいだし、窮鼠猫を噛むってやつか)

 

 

 残りの騎馬は十騎ほどか。俺と愁と疾斗と残り。俺と疾斗はフィールドの対極同士にいるが、お互い考えることは同じらしい。乱戦となってるとこに突っ込んでいき、他の騎馬を落としていく、俺と疾斗が三騎ずつ落とし、愁が一騎落とした。だが、俺と疾斗が接触する前に、疾斗は先に愁を落としに行った。

 

 

「お前は先に落とさないと厄介だからなぁ!どうせ闇討ちとか考えてただろうし!」

 

「僕を下衆な人間だと思ってないかい!?……このっ!」

 

「俺に勝てると思うなよな!」

 

「あー負けた。…でも、時間稼ぎは十分だね」

 

「…はぁ、雄弥なら一騎打ちまで待つと思ったんだがな」

 

「潰せるときに潰す。当然だろ?」

 

「ま、2回戦に繋げれるだけの点は取ったし、よしとしますか〜」

 

 

 この騎馬戦は、どれだけ敵を倒したかによって得点が変動するようになっている。それは1回戦も2回戦も同じなのだが、2回戦はそこにボーナスポイントがつく。2回戦は大将戦なのだ。大将を討たれたら他の騎馬が残っていても負けで、大将は、他の騎馬より得点が高くなっている。ちなみに、どの生徒が大将なのかは、そのクラスの人間と審判を務める教師陣しかわからない。そして2回戦も8クラス同時という混沌っぷり。

 

 

「場所は抽選で決められてるわけだが、角がよかったよな」

 

「あはは、そこは委員長のくじ運の悪さだよ。ま、作戦は考えてあるわけだし、任せてよ。みんなの実力もわかったことだしね」

 

「頼むぞ、腹黒」

 

「ここで悪口言う!?というか腹黒じゃないし!」

 

 

 抗議してくる愁を無視し、どのクラスがどの場所に配置されたのかを確認する。…疾斗のとこは角か。くじ運の良さが尋常じゃないんだよなぁ。この騎馬戦のフィールドは、長方形の形となっているから、角を取れなかったクラスは自然と潰されやすい位置取りとなる。俺たちもそうなってしまったわけだが、唯一の救いは疾斗のクラスが遠いことか。

 

 

「みんな、作戦はわかってるよね?」

 

「まずは左のクラスを潰して角を奪う、だろ?」

「任せろ!速攻で片付けてやるよ!」

 

「うん。フラグを立てないでほしいな」

 

「始まるぞ」

 

 

 開始と同時に、俺たちのクラスは左のクラスを潰しにかかった。誰が大将なのかわからないように、全員が攻めに回るという諸刃の剣の作戦で、だ。真っ当な考え方をするやつであれば、大将を守るように陣形を組む。左のクラスもそれだったらしい。だからこの作戦が綺麗にハマることとなった。

 無駄にスペックが高い奴らが揃ってるからな。守りに入った騎馬たちを巧みに動かさせ、大将までの道を開かせる。そこに残りの騎馬がなだれ込むという戦法だ。ちなみに俺は殿担当。だから──

 

 

「藤森を狩るチャンスじゃオラー!!」

「何がなんでもここで藤森を落とせー!!」

「無様に散れ!藤森ぃー!!」

 

「カモがやってきたな」

 

「藤森ってわりと好戦的な正確だよな」

「騎馬戦は隠れた面を見せるものだったか」

「俺たちこんな奴を追いかけ回してたんだな。命知らずって俺たちのことだったのか」

 

 

 俺以外の全騎馬が左行ったということは、右からの攻撃を俺一人で捌くということになる。右隣のクラスはそれを好機と思うわけだが、これも愁の作戦の内だ。右隣のクラスの意識も左に向く。そうなれば右端のクラスが背中を突ける形となるのだ。だから、俺が突っ込んできてる騎馬を数騎倒してると、勝敗が決する。

 

 

『3年A組!大将騎が討たれました!』

 

「なっ!」

「しまった!C組のやつらにヤラれたか!」

 

「毛利のやつも恐ろしいやつだったのかー」

「これが作戦なんだもんなぁ」

「くわばらくわばら」

 

「愁の作戦はもうちょい広い範囲で効果出してるぞ」

 

「は?」

「まだ広いのか?」

 

「少し待ってろ。すぐに実況者が状況を言ってくれる」

 

『1年B組!大将騎を討たれました!続いて3年C組、1年A組も敗北です!』

 

「体育祭でテンション上がってる奴らの心情まで利用する。それが愁の作戦だ。これで残りは半分だな」

 

 

 俺たちのクラスが左を潰して、右隣にいた3年A組をそのさらに右にいる3年C組に討たせる。俺達のクラスが左角を取る時に、角同士で向かい合うことになる1年A組は、ドサクサで俺達のクラスを討とうとした。しかし、それも愁の読み通りで返り討ち。俺達の作戦同様に大将を隠そうとしたらしいが、急造の作戦じゃ粗がでる。それを愁が見逃すはずもなく、大将騎を見抜いて討ち取ったってことだろうな。3年C組を討ったのが、疾斗がいる3年B組。うまいこと利用してくることも読んでいたが、被害を出さなかったのはこっちの予想を超えてるな。というより、疾斗が単騎で突っ込んだのが予想外すぎるんだよな…。

 

 

「さてと、残りも倒しに行こうか!ここからは好きに暴れていいよ!」

 

「うっしゃキター!」

「俺達の見せ場ー!」

 

 

 結果から言おう。作戦勝ちだった。2年B組を倒し、1年C組も疾斗たちに討たれた。結局1回戦の最後と同じようになったわけだ。違いは残ってる騎馬がお互いに1回戦より多いことだ。それで、向こうは短期決戦で挑んできた。俺か愁が大将だと考え、お互いの能力差を踏まえてのことだったようだ。

 しかし、群がってくるなら俺も倒し放題となった。俺一人でも倒していくなか、クラスの奴らも迎撃に回ったからだ。そうして結局疾斗一人となった。その時には俺が負けてた。愁が疾斗に必死の抵抗を見せ、激戦の末負ける。それで大将が討たれたと誰もが思った。しかし、大将は別のやつだった。疾斗が愁を倒した直後にすきをついて倒したのだ。

 

 

「愁ってやっぱ性格悪いよな」

 

「なんで!?」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 毛利くんが作戦を考えた勝負はどれもダントツで勝ってるんだよね〜。今の騎馬戦もそうだけど、棒引きの結果を反映させて行った棒倒し『奪ってなんぼ』も勝ってたわけだし。これはうちのクラスが優勝するのもありえそうだよねぇ。

 

 

(なんて考えても、気分転換できてないや。……お姉ちゃんが言ってたこと、わけわかんないもん)

 

『──日菜、あなたは本心と向き合ってるの?』

 

(……っ!…向き合ってるよ。どれだけ考えてもあたしの中の答えは変わらない。そう言ってるのに、なんでお姉ちゃんはあんなこと言うの…!)

 

「雄弥カッコよかったよ〜。バババっ!て次々倒すんだもん!」

 

「ありがと。…ま、疾斗ほどじゃないんだけどな。アイツ動きが速すぎるんだよ」

 

「あはは!たしかに生徒会長は別格だったよね〜。でもでも!その会長にアタシら勝ったわけじゃん?」

 

「全部愁の読み通りだけどな。途中から好き勝手に動いたのも実際には愁の作戦のうちなわけだし」

 

「うわ……、毛利くんって…何者?」

 

「ただの腹黒」

 

「ありもしないことを言いふらさないでくれないかな!?」

 

 

 リサちーがユウくんに肩を寄せながらさっきの騎馬戦のことを話してる。あの2人、知らないうちにどんどん距離を詰めてるよね。あーやってユウくんの隣にいたのは……って、そんなのはどうでもいいや。

 今は1年生のダンスだけど、この後って借り物競争と障害物競争を合体させたやつだっけ。これも変な名前になってた気がする。

 

 

「んじゃ、そろそろ行ってくる」

 

「生徒会の人間としては、招集がかかったらすぐに行ってほしいんだけどね」

 

「いいだろ別に。事前にルール説明もされてるわけだし、早く行っても仕方ない」

 

「確認とかあるんだけどね…」

 

「雄弥頑張ってね!」

 

「ま、程々にやるさ。…なにしてんのリサ」

 

「雄弥にパワー送ってるの!あと怪我しないようにお祈りも!」

 

「いや、だから招集かかってるんだから早く行ってよ」

 

(ユウくんの性格からしてああ(・・)だからいいとして、リサちーも大胆だよね。クラスのテントで抱きついてるって。見せつけてるのかな?)

 

 前半の障害物競争したら、中間地点にお題箱がある。そこに書かれてるものを見つけて借りる。そしたらまた後半も障害物競争になって、ゴール前に今度はクイズが書かれた紙が用意されてる。そこに答えを記入して、正解だったらゴールできる。そんなルールになってたんだっけな。出ようかなって思ったけど、ユウくんが出るからやめた。一緒のには出たくないし。(全員参加のは仕方ないけど)

 

 

「ヒ〜ナ!楽しんでる?」

 

「それなりにね〜。所構わずイチャつくリサちーほどじゃないけど」

 

「い、イチャついてないから!」

 

「え〜?顔赤くしてるってことは、心当たりあるんじゃないの?」

 

「うぐっ、べ、別に…そんなこと」

 

「仮装競争でも藤森くんに抱きついて、お昼ご飯の時もイチャイチャしてたみたいだし、さっきも抱きついてたじゃん」

 

「あ、あれは……その…」

 

「ま、好きにしたらいいと思うけどね〜。あ、リサちーが好きな人の番だよ」

 

「なぁっ!?ひ、ひなー!」

 

 

 いやいや、もうみんな分かってることなわけだし、今さら否定するなんて無理だよ。時すでに遅しってやつだね。それにしても、ユウくんは障害物のことをどう捉えてるんだろ。ルールを守ってるのに、障害物が障害物の役割果たしてないよ。全然スピード落ちてないよ。

 借り物のお題を引いたユウくんは、紙を開いて固まっちゃった。お題が難しいなんてことはないはず。だって当日にあるかないか分からないようなものを借り物として設定するわけ無いから。

 

 

「雄弥どうしちゃったんだろ」

 

「う〜ん…、どこに行ったらすぐに見つけれるか考えてる、とか?」

 

「え、なにそれ?」

 

「だってあんまり大声出したりする性格じゃないじゃん」

 

「あ、そっか」

 

 

 自分で言っておきながら、これは違うって思った。他の走者たちとの差が大きいなら、手当り次第に探してもいいはず。ユウくんの足の速さならそれでも十分おつりがくる可能性の方が高い。それが分からないはずない。そう考えてたら、ユウくんがこっちに来た。あたしたちのクラスの人が持ってるものなのかな。

 

 

「氷川」

 

「……なに」

 

来てくれ(・・・・)

 

「……………え?」

 

「ちょっ、まって、え?雄弥なんで日菜なの?」

 

 

 ユウくんの声が聞こえた人全員が思ったであろうことをリサちーが言ってくれた。人を連れて行くので鉄板なネタなら『好きな人』が鉄板だ。それならリサちーを連れて行けばいい。少なくともユウくんも意識してるはずだから。そしてそれならみんなも納得して、盛り上がって、冷やかしの言葉を言ったりできた。でも、ユウくんはあたしを指名した。ユウくんを嫌ってるあたしを。

 

 

「お題が"幼馴染"だから」

 

「…ぁ……なるほど〜」

 

「……だったら!お姉ちゃんを連れてけばいいじゃん!」

 

「氷川の方が近かった。これじゃ不満か?」

 

「このっ…!」

 

「俺の考えを理解できないわけじゃないだろ?」

 

「………貸し一つだよ」

 

「ああ」

 

 

 あたしとの約束を破ったユウくんに、貸しだのなんだのを言っても意味ない気がする。でも、ユウくんは意見を曲げないだろうから、ずっと押し問答するよりかは、さっさと協力した方がいい。だからあたしはユウくんの手を取って一緒に走ることにした。本当は手を繋ぐのも嫌だけど。借り物には触れておかないといけない、なんてルールがあるらしいから。

 

 

「…平均台か。横向きで渡る?」

 

「…いや、それよりもこうした方が(抱えた方が)早い」

 

「は?ちょっ、え!下ろしてよ!」

 

「渡りきったら下ろすからそれまで待ってくれ。渡ってる途中で落ちたらやり直しだし」

 

「…あーもう!これも貸しだからね!あたしの体に触ってるわけだし!」

 

「わかった。それとそんなこと大声で言わないでくれるか」

 

「ふんだ!みんなに白い目で見られたらいいんだよーだ」

 

「容赦ないな…」

 

(だってお姫様抱っこされてるんだもん!)

 

 

 平均台を渡るときに妨害役に柔らかいボールを投げてくる人たちがいるんだけど、ボールを投げようとする男子に妨害役の女子がボールをぶつけてた。よくわかんないけど、とりあえず助かったからいいや!ちなみに、ユウくん以外の男の子が渡るときは本気でボールをぶつけてた。特に2年B組には。

 ユウくんと無事にクイズに正解して、堂々の1位を取ることができた。なんか当然の結果過ぎたし、呆気なかったなぁ。クイズも簡単だったし。あーでも、彩ちゃんなら必死に考えてたんだろうなぁ。今みたいにペアでやってたら、『たすけてぇー』って、言ってたかも。

 

 

(それにしても……、ああーもうモヤモヤする!優勝は確実だから、ビュッフェの時にユウくんと答え合わせしよっと!)

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 アタシたちのクラスは無事に優勝することができた。プログラムの後半から生徒会長のクラスが怒涛の勢いで勝ちまくったけど、なんとか点差を覆されることはなかった。それで、クラスのみんなでビュッフェに来て、思い思いに食べ物を取ってご飯を満喫してた。

 

──でも、楽しいまんまでは終われなかった。

 

 珍しく、ヒナの方から雄弥に声をかけて、二人で店の外に出ちゃった。気になってこっそりあとをつけたんだけど、こんなことしなければよかったんだろうね。だって──、

 

 

「ねぇ藤森くん。借り物であたしがついて行って、クイズに答えたでしょ?なんで左手で解答したの(なんで右手を使わなかったの)?」

 

「…どういうことだ」

 

「とぼけないでよ。てっきり両利きになるための練習かと思ったけど、そうじゃないよね」

──右手が使えないんだよね(・・・・・・・・・・・)

 

(……え、……ヒナは…今……なんて。…おかしなことじゃないはず。だって雄弥くんは左利きなんだから!)

 

右利き(・・・)だったのにさ。あれだけキラキラしてたのに、勿体ないね」

 

(なにを……話して……)

 

『雄弥も弾いてみてよ』

 

『悪いなリサ。俺には無理だ』

 

『あ、そっか。左利きだったもんね!』

 

『…そういうことだ』

 

(あの時の間って……そういう…ことだったんだ。…あたしは……)

 

 

 




体育祭の終わらせ方が、強引なやり方になってしまいましたかね。まぁ思いの外騎馬戦を熱血的に書いてしまったせいですけど。……前半なくてもよかったかな。
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