もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

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過去編です。
長くなってしまいましたけど!


23話

 今日はパスパレの練習が無い日で、珍しくも全員の予定が空いてる日だった。だからなのか、昨日の練習の後にイヴちゃんがみんなでお出かけしたいと言ったんだ。彩ちゃんもそれにすぐに食いついたし、あたしもるんっ♪てきたからイヴちゃんに賛同した。マヤちゃんもOKを出したことで、千聖ちゃんもOKを出した。

 それで、どこに行くかって話になったんだけど、千聖ちゃんが行きたい喫茶店があるらしくて、そこに行くことになった。喫茶店巡りが好きらしいんだけど、千聖ちゃんはあたし達の中で一番忙しいから、なかなか喫茶店に行けてないみたい。

 そんな千聖ちゃんが行きたがってた喫茶店に着いたんだけど、ここいいね〜。雰囲気が他の店と違うというか、とにかくるんっ♪てするお店だよ!さっそく中に入ってみると、中もイイ感じだった。喫茶店なのになぜか個室もあるらしくて、店員さんにそこを案内された。なんでモヒカンなんだろう?他にもモヒカンの店員さんが何人もいるけど、店長の趣味?あ、でもモヒカンじゃない人もいるし、一部の男の子中で流行ってるとか?…ま、どうでもいっか!

 

 

(あーあ、せっかくイイ気分だったのになぁ〜。まさかこういうこと(・・・・・・)だったなんてね〜)

 

 

 どういうことかと言うと、案内された部屋には先客がいたってこと。しかも、その先客というのが、お姉ちゃんたちRoseliaのメンバーと結花ちゃんと沙綾ちゃん。もうこれだけでわかっちゃったよ。

 

 

「…まさか彩ちゃん達もグルだったなんてね〜。ショックだよー」

 

「ご、ごめんね日菜ちゃん!騙すようなマネしちゃって!」

 

「日菜…どうか丸山さんたちを責めないであげて、彼女たちには、私がお願いしたのだから」

 

「ふーん?……なるほどなるほど、ユウくん関連の話か〜。お姉ちゃん前々から『向き合え』って言ってたもんね。けど、あたしの中の答えは変わんないけどな〜。ちゃんと自分の中で考えたんだよ?考えた結果変わらない、それだけのことだよ」

 

「……そう。でもね日菜。だからこそあなたは知らないといけない(・・・・・・・・・)ことがあるわ」

 

「知らないといけないこと?…とりあえず席に着けばいいのかな?」

 

「そうね。話は長くなると思うから」

 

「わかった」

 

 

 この部屋に用意されたテーブルは長方形になってて、椅子が『コ』の字に用意されてた。横に5席ずつで、縦に2席。その2席にはお姉ちゃんと結花ちゃんが座ってるから、2人がこの話の進行役ってことかな。あたしは端っこに座って、左斜め前にお姉ちゃんと結花ちゃん、正面にはリサちーがいて、右隣が彩ちゃん。

 ちなみに、あたし→彩ちゃん→千聖ちゃん→イヴちゃん→マヤちゃんの順で。向かい側は、リサちー→沙綾ちゃん→友希那ちゃん→あこちゃん→燐子ちゃんの順だね。全員分の飲み物が運ばれてきたら、準備完了。お姉ちゃんに話してもらわないとね。

 

 

「それで?話って?」

 

「日菜…私はあなたに謝らないといけないことがあるわ」

 

「…ぇ?」

 

「……ずっとあなたに拒まれるのが怖くて、それでいてあなたに勝手にコンプレックスを抱いていたから、今まで話せなかったのだけど……、雄弥くんが日菜との約束を破った原因は───私よ」

 

「……っ!!?……な、…なに…言ってるの?……お姉ちゃんが?……そんなわけ…」

 

「あなたと雄弥くんとの間で、どんな約束があったのかは知らないけれど、…だけど、天体観測の約束を破らせたのは間違いなく私のせいなのよ」

 

「意味が……わからないよ…」

 

「あなたの言っていた"あの時"というのは、…天体観測の日なのよね?」

 

「う、うん。…でも!それはユウくんが勝手に…!…お姉ちゃんは関係ないはずじゃん!」

 

「あるのよ!」

 

「っ!!」

 

「…順を追って説明するから、最後まで聞いてちょうだい」

 

──それであなたに嫌われても仕方がないわ。それだけのことをしたのだから。

 

 

 お姉ちゃんは、目を伏せてそんな言葉を紡いだ。なんでそんなこと言うんだろ…。だって、あたしはお姉ちゃんのことが大好きで、嫌いになるわけないのに……。

 みんな、ビックリしてたり目を細めて言葉の真意を確かめようとしてたり、そうやって別れてた。だけど、共通してるのはお姉ちゃんに視線が集まってること。お姉ちゃんは、一度みんなの顔を見渡してから深呼吸して語り始めた。お姉ちゃんに責任がある、なんていう話を。どうやら、結花ちゃんの補足付きみたいだけど。結花ちゃんは、今この場にいないユウくんから話を全部聞いてるらしいからね。

 

 

☆☆☆☆

☆☆☆

 

 

「失礼しました。…日誌も出し終わったし、仕事はこれで終わりだったな」

(あ、教室にプリント忘れてんだったな。取りに行って帰るか)

 

「ユーウーくん!」

 

「うおっ!…日菜、飛びつくのやめてくれって言ってるだろ」

 

「えー。これがあたし達じゃん?」

 

「どういうことだ…」

 

「それよりさ!ユウくん今日の夜は予定空いてたよね!」

 

「夜?そりゃあ予定空いてるけど」

 

「やった!じゃあ決まりだね!」

 

「何がだ」

 

「何って、そりゃあ天体観測に決まってるじゃん!」

 

 

 なんで分からないの!と言いたそうな顔で頬を膨らませられてもな。そりゃあ候補として上げてはいたが、流星群の時期じゃないから違うだろうって思って除外したんだよ。なんてことを言っても仕方ないし、帰ったら荷物の準備でもするか。日菜のことだから、晩御飯食べてすぐに出発したいんだろうし。

 

 

「場所は?どうせご両親に言ってないんだろうし、車もないだろ」

 

「ふっふっふー、いいスポット見てけたんだ〜♪あたしもまだそこで見たことないけど、今日はそこでユウくんとお姉ちゃんと結花ちゃんの4人で星を見たいなって!」

 

「なるほどな。俺はこれからプリント取りに教室戻るし、紗夜も委員会があってまだ学校にいるはずだから、紗夜には俺が言っとくぞ」

 

「ありがとう!あたしはこれから結花ちゃんと帰るから、結花ちゃんにはあたしから言っとくね!」

 

「ああ。それじゃあまた後でな」

 

「うん!」

 

 

 日菜と放課後…というか夜の予定を決め、昇降口で別れた。紗夜は鞄を教室に置いてたはずだから、うまいこと会うことができるだろう。委員会が長引いてるなら、待っとけばいいだけの話だし。

 Augenblickで活動を始めてからというもの、天体観測はあまり行えていない。日菜や紗夜とは毎日のように会っているが、4人で遊びに行くのは何気に久しぶりだ。急遽決まったこの後の予定を楽しみにしていたのだが、教室に戻ったらその気持ちが追いやられてしまった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 委員会の用事が終わって、私は教室に戻った。委員会に行く時はいつも鞄ごと持っていくのだけど、今日は雄弥くんが日直だったから荷物を見といてもらえるから置いていった。日誌を出すときだけ雄弥くんの目も離れてしまうのだけど、それは少ない時間だし問題ないと思ったの。

 教室に戻ったら雄弥くんの姿はなかった。今は日誌を出しに行ってるのかしらね。私は自分の鞄に荷物を片付け、チラッと雄弥くんの机を見た。と言っても隣が雄弥くんなのだけど、雄弥くんはどうやらプリントを忘れてしまってるようね。これ明日提出しないといけないし、後で渡してあげなきゃ。そう思ってプリントをファイルに閉まっていると、不意に声をかけられた。

 

 

「やぁ紗夜さん、ちょっといいか?」

 

「…神木くん?なにかしら?」

 

 

 神木仁くん。同じクラスの男の子なのだけど、学年…いや学校で最も素行が悪い人。雄弥くんが言うには、神木くんは自分の中の基準に従って行動してるだけとのこと。どこまでの真っ直ぐに自分の考えた道を歩む人なのだそうだ。それが浮いてるように見える原因となってしまって、出る杭が打たれるように批判を浴びてしまい、その結果先生の言うことも聞かなくなった、らしい。

 雄弥くんは相手のことをしっかりと理解できる人だ。ここまでのことを分かっていて、それでなお「仲良くはなれない(・・・・・・・・)」と言った。つまり、距離を縮めてはいけない部類の人…。

 そんな彼だけど、私は人が変われると信じているから、行動に注意することをやめなかった。ただし、距離は絶対に縮めない。それだけはいけないと私も感じ取っているからだ。なによりも、彼は日菜を狙ってる(・・・・・・・)。日菜は未知に興味を示すから、神木くんもその対象になる。恐れを知らないあの子を私たちが止めてるのだけど、グイグイ行く日菜にあろうことか神木くんまで興味を示してしまった。

 

 

「紗夜さんも日菜さんも雄弥と仲いいよなぁ?」

 

「そうね。小学校に入る前からの付き合いだもの」

 

「で、2人とも雄弥に惹かれてるわけだ」

 

「なっ……!!そ、そんなことないわよ!」

 

「いやいやそんな顔を真っ赤にして否定されてもな。誰でも分かることだからな。同学年の奴らみんな分かってるぜ?」

 

「うそ……」

 

「むしろなんで隠せてると思ってんだか……。ま、いいや。それでさぁ?雄弥の奴も2人のことが好きなわけじゃん?」

 

「そ、そうかしら」

 

「…めっちゃ顔ニヤけてる」

 

「に、ニヤけてないわよ!」

 

「緩みっぱなしだぞー」

 

 

 そ、そんなこと言われても仕方ないじゃない。私たち姉妹はたしかに雄弥くんのことが好きなわけで、考えが読めない雄弥くんも私たちのことを好きでいてくれているかもって分かったんだから。

 

 

「そこでさぁ。ふと思ったんだけどな?雄弥はよ、本当に紗夜さんが好きなのか(・・・・・・・・・・・・・)わかんねぇよな」

 

「……………ぇ……なにを……いって

 

「思い返してみたら心当たりあるんじゃねぇか?日菜さんに向けてる笑顔と紗夜さんに向けてる笑顔、あれは同じじゃないだろ(別の笑顔だろ)

 

「!!?」

 

(う…そよ……。そんな……こと……)

 

 

 私が混乱しているうちに神木くんが私の目の前まで迫ってきていて、そっと耳打ちをされた。

 

──かわいそうな子だな

 

 

 それが私の心に嫌というほど突き刺さった。思い当たる節がないわけじゃないからだ。たしかに雄弥くんは、私に向ける笑顔は温かいもので、日菜といる時は弾けるような笑顔をしていたから。それは日菜の笑顔につられてのものだと思っていた。日菜の笑顔はそれだけ無邪気なものだから。でも、もし本当に神木くんの言うとおりだったら……。

 

 

「なぁ紗夜(・・)、俺のモノになれよ」

 

「……え…」

 

 

 私はこの時になってやっと理解した。全てを悟ることができた。神木くんは日菜を狙ってたんじゃない。初めから狙いは日菜じゃなくて()だったんだ。私だと悟っていたらこうやって話すことも無かったから、だから別だと思わされてたんだ。日菜を守るために私が壁となるのだから、自ずと会話することになるし、この状況(・・・・)を作り出せるから。

 混乱した頭ではろくなことも考えられない。だけど、危機感は死んでいない。私は本能に従って逃げようと思った。だけど、目の前に神木くんがいるのでは逃げられない。すぐに腕を掴まれてしまい、ドラマでよく犯人が人質を取ったときのように拘束された。私は後ろにいる神木くんを睨みつけたけど、本人は楽しそうに口角を釣り上げていた。

 

 

「いやぁ、役者が揃う前にこの状況にできてよかったぜ」

 

「役者…?」

 

「なぁ雄弥?」

 

「え…雄弥…くん?」

 

「何をしている仁。おふざけってわけでもなさそうだな?どっちにしても許す気もないが」

 

「簡単な話だよ雄弥。俺がテメェの紗夜を奪う。そんだけのことだ」

 

「誰があなたなんかに!」

 

「黙ってろ」

 

「っ!!」

 

「ナイフ持ち込んでんのかよ…」

 

 

 いったいどこに隠し持っていたのか、それは分からないけど、神木くんはナイフを私の喉元にナイフを突き立てられて脅迫される。私はその恐怖で何もできなくなってしまった。

 

 

「それにしても薄情だよな」

 

「何がだ」

 

「女を危険に晒されておいて冷静なんだからよぉ。要はその程度の関係だったってことだろ?」

 

「ははっ。煽っても意味ねぇぞ。怒り狂う俺を見たかったんだろうが、お前の期待に応える気はない。…返してもらうぞ」

 

「お見通しかぁ。でも、これでも(・・・・)冷静でいられるのかよ!」

 

──ビリ…

 

 その音がいったいなんの音なのか分からなかった。だけど、急に肌が(・・)外気に晒されたのを感じてわかった。視線を下げると、私の制服が切られてて…。

 

 

…いやぁぁぁぁ!!」

 

「仁!!」

 

「ハハハ!やっとキレたか!にしても、綺麗な形してんなぁ。おら、愛しの雄弥くんにも見てもらえよ!」

 

「や…やだぁ…雄弥くん……見ないで…」

 

「イイねぇ!そういうの!」

 

「…この…ゲスが!」

 

「おっと動くなよ雄弥。お前の大切な紗夜ちゃんが傷つくぜ?」

 

「テメェ…」

 

 

 このままじゃ……雄弥くんの前でもっと恥ずかし目られる…。そんなのは嫌だと思った私は、恐怖心も羞恥心も堪えて神木くんのスネを強く蹴った。それで隙を作って逃げようと思ったから。けど、神木くんはその痛みに耐えて私を床に叩き付けた。私は床に叩きつけられた痛みに怯んで、少し遅れて目を開いた。私は仰向けになってるようで、神木くんのナイフが振り下ろされようとしていた。

 

 

「オイタをする子には、ちょーっとお仕置きが必要だよなぁ!」

 

「ひっ…!」

 

 

 私は目を強く瞑って顔をそらした。そうしたところで何が変わるわけでもない。逃げてるわけじゃないし、防ごうとしてるわけでもないのだから、結末は変わらない。

 そうだというのに、私にはなんの痛みも与えられなかった。その代わりに、私の顔には何かが(・・・)飛び散った。液体の何かが。

 

 

(いったい…なにが……。これ…赤い(・・)。……赤?……これって…血!?)

 

 

 視線を上げると、私と神木くんのナイフの間に誰かの右手があった。いや、誰かなんて分かってる。この場にいる人間なのだから、その手は雄弥くんの手だ。その手をナイフが貫いていて、その手から出た血が私の顔にかかっているのだ。

 

 

「ゆ…雄弥くん!」

 

「クククッ、やっぱそう動くよなぁ?えぇ?雄弥よぉ」

 

「……つっ…。仁…お前にしちゃ無茶苦茶だな。一貫性がないぞ」

 

「うるせぇ…よ!」

 

「がっ…ぁぁっ!」

 

「や、やめっ…!」

 

 

 刺さっているナイフを動かすことで、雄弥くんの右手が抉られる。ベースを奏でるための大切な右手が!雄弥くんは痛みに耐えているけど、手からの出血が酷い。それに、あんなことされたらベースが!

 

 

「雄弥よ、紗夜をくれたらそれでいいんだぜ?」

 

「ふざけたことを……ぬかすな!!」

 

「がふっ…なん…がっ!」

 

「はぁはぁ…お前が抉り続けるからだ。おかげで痛覚が麻痺してきた」

 

「コイツ!」

 

「何本ナイフ持ってんだよ…」

 

 

 雄弥くんの膝蹴りが神木くんの溝うちに命中して、蹲ったところを蹴り飛ばしていた。神木くんが立ち上がる間に手に刺さったナイフを引き抜いていたのだけど…、見てるこっちの方が辛いわ。ナイフが一応栓の代わりになってたみたいで、さっきよりも血が流れてるし…。立ち上がった神木くんは、またナイフを取り出して雄弥くんに突き刺そうとした。

 

 

「直線的すぎ」

 

「なっ!…あがっ……あああぁぁぁ!!腕が!腕がぁ!」

 

「騒ぐな。綺麗に折ってやったから病院でちゃんと治療してもらえば元に戻る」

 

「なんの騒ぎだ!……神木?藤森?…それにひか…なんてかっこしてるんだ!」

 

「あ…これは!」

 

「先生へんたーい」

 

「不可抗力だろ!?」

 

「紗夜、これでも着てろ」

 

「…ありがとう」

 

 

 雄弥くんの体操服のジャージを渡されて、私はそれに袖を通した。まだ冬服の時期じゃないし、そもそも夏服の時期なのだけど、雄弥くんはいつも体調が悪い人のためにジャージを持ってきている。

 

 

「も、もう先生は振り返って大丈夫か?」

 

「あ、はい」

 

「ふぅ…。それでなにがあっ…その手はどうした!?」

 

「リアクションがいいですねぇ」

 

「学生の時はよくお笑いを担当…じゃなくてだな!」

 

「仁が紗夜を襲おうとした。止めに入ったらこうなった。詳細は後日ということで、仁を病院に連れて行ってあげてください。俺は保健室行ってきますんで」

 

「藤森もすぐに病院へ連れて行くべきだろ!」

 

「応急処置が必要でしょ。それに、骨はできるだけ早く治した方がいいですから」

 

「だが!「お願いします」……わかった。絶対にすぐに病院へ行けよ!」

 

「分かってますよ」

 

 

 先生は神木くんを抱えて大慌てで走り去って行った。教室に残ったのは私と雄弥くんだけ。でもすぐに手当しないといけないから、私が2人分の荷物を持って急いで保健室にいった。

 

 

「手当なら自分でできるから」

 

「駄目よ。私がするわ。消毒するから耐えてね」

 

「大丈夫。感覚麻痺してっから。…あ、でも変な感じするなぁ」

 

「何をのんきに……。ほら包帯巻くわよ」

 

「ありがと、紗夜。……紗夜?」

 

 

 包帯を巻き終わったところでお礼を言われたのだけど、なんで私がお礼言われるのよ。…だって、私のせいで雄弥くんがこんな大怪我を!

 私は自分を責めた。責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めた。もう雄弥くんの側にいる資格なんてない。この怪我じゃベースを弾くことは…、私のせいで、私が奪ったんだ。雄弥くんの努力も才能も今の居場所も何もかも──私が!

 溢れでる涙が止まることはない。雄弥くんの顔を見ることなんてできない。名前を呼ばれても俯いたまま首を振った。

 

 

「もう、私なんて雄弥くんの隣にいちゃ──」

(あ……)

 

 

 私の言葉を遮るように顎を上げられて、言葉を紡いでいた口は雄弥くんの口で塞がれた。理解ができなかった。なんで私なんかに。どれだけそうしていたのか分からない。時間を忘れてそうしていると、雄弥くんの方から離れた。

 

 

「紗夜。俺は紗夜のことが好きだ。愛してる。だからそんなこと言わないでくれ」

 

「…なんで……だって私は雄弥くんを!…私のせいで右手が!」

 

「右手は…まぁ大丈夫だろ。あいつどこで覚えたのか知らないが、わりとキレイに刺してたからな。ちゃんと治療してリハビリすればまたベース弾ける気がする」

 

「そんな…こと…」

 

「ま、医者に聞かねぇとわからんわな。それはこの後ということで、…紗夜に怪我がなくてよかった。あ、そうだ。日菜が今日天体観測しよってさ」

 

「っ!…あなたは……」

 

「むぐっ」

 

 

 彼の底の無しの優しさが辛かった。罰が欲しかった。だけど、それと同時にその優しさに癒やされた。心を救われた。だから、今度は私から雄弥くんと口を重ねに行った。

 

 

☆☆☆

 

 

「……分かったかしら。私のせいで雄弥くんは右手が使えなくなって、その後に病院に行ったの。だから、天体観測の約束を守れなかったのよ。…恨むなら………私を恨みなさい」

 

「おねえ…ちゃん」

 

「そんなことがあったんだ…」

 

「で、でもそれって紗夜さんのせいじゃなくて、神木さんって人のせいじゃないですか!」

 

「あこちゃん…。そう…だね。……私も…そう思います」

 

「私が彼をもっと警戒しておけばよかったのです。だから私のせいなんです」

 

「紗夜。疑問に思ったのだけど、雄弥が天体観測に行けなくなったのなら、それを日菜に連絡すればよかっただけのことじゃないの?なぜ雄弥は日菜に連絡しなかったの?…紗夜は精神的にそれができなかったのでしょうけど」

 

「それは……」

 

「そのことは私が話すね」

 

「結花ちゃんが?」

 

「彩ちゃん。結花は雄弥くんから全て聞いているのよ」

 

「あ、そっか」

 

「…うん。それもあるけどね。その後のことは、私も関わってるから(・・・・・・・・・)。むしろ、こっちの話の方が天体観測の件に直結してるしね」

 

 

 

 




あはは〜、これだけ書いといて続きがあるんですよ〜。長いったらありゃしない。まぁこの続きのほうが短くなるはずですけどね!
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