もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

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過去編は一応これにて終了です。


24話

「私の話をするためにも、まず知っておいてもらわないといけないことがあるんだ」

 

「知っておかないといけないこと?」

 

「そう。…紗夜と日菜も知らないことなんだけどね」

 

「私たちも…」

 

「知らないこと…」

 

 

 カップに手を添え、反射されて写る自分の顔を見つめた。なんとも酷い顔だね。でも、思い出すだけでも辛い記憶だからね。少しでも気持ちが落ち着けばと思って一口飲んだけど、怖さは消えないね。

 

 

もうこの世にいないんだ(・・・・・・・・・・・)。私たちの親は」

 

「ちょ、ちょっと待ってください結花さん。だって雄弥さんは、『親はどっちも忙しく働いてて海外に行ってる』って以前言ってましたよ!」

 

「そうよ。私だってそう聞いたわ。どういうことなの?」

 

「沙綾と紗夜が聞いたのは、私と雄弥で決めといた嘘だよ。だって、高校生2人で生活してるのって普通に考えたら、世間から変な目で見られるからね。そして、細かい話をすると私と雄弥は血の繋がりがないんだ」

 

「……ぇ」

 

「あはは…、物心ついた時から一緒だったから、私たちも初めて知ったときは信じられなかったんだけどね」

 

『おねえちゃ……結花(・・)

『っ!!…やだよ

『え?』

『いやだよ!わたし、雄弥のおねえちゃんのままでいたいよ!お願い…だから!姉弟でいようよ!』

『…ぁ……うん。おねえちゃん。僕たち、絶対一緒にいようね』

『うん、うん!約束!』

『うん。指切りしよ!』

 

「私の両親は離婚して私は父親に引き取られた。雄弥の方は、お父さんが亡くなって、お母さんが育てることになった。元々付き合いがあったらしくて、私の父親と雄弥の母親で再婚したんだ。それが私たちが2歳の時だよ」

 

──今言ったことを頭に留めといてね

 

 

☆☆☆☆

☆☆☆

 

 

「この怪我はどう考えても警察沙汰なんだけど?」

 

「実際警察沙汰になるんじゃないですか?強姦未遂に殺傷事件ですから。誰も死んでませんけど」

 

「さっき整形外科に運ばれてた子かな?」

 

「特定はしないべきでしょ」

 

「そうだね。それで君の右手だけど、時間がかかるのは仕方ないけども治るよ。手術は必要だけどね」

 

「ま、そうですよね」

 

「それでね、親御さんに話を通さないといけないんだよね。ほら、君中学生だし」

 

「卒業してたら自己判断でいけたんですかね?」

 

「まぁ一応はね。正確には成人したら、なんだけど。高校生も一応は大人扱いされたりするし」

 

「なるほど〜」

 

 

 当然のことながら、手術はすぐにしたほうがいい。そんなわけで家に電話したのだが、誰も出なかった。親と連絡がつかないということを先生に言うと、「本当に申し訳ないけど、明日の朝一番に来てほしい。この紙に親御さんのサイン付きで」と言われた。

 救急車で運び込まれたら緊急ということで手術できたみたいなのだが、俺が平然と総合受付に行ってたから優先度が低いと判断されちゃったらしい。包帯も巻いてて怪我の具合を判断できなかったというのも、原因なんだろうな。

 ちなみに、紗夜は先に帰らせた。病院もついてくると言っていたのだが、憔悴しきってる紗夜を付き合わせるわけにはいかないからな。休んでくれと頼み込んで、紗夜に折れてもらった。

 

 

「とりあえず、治るとわかってよかった〜」

 

「ゆーうーやー!!」

 

「うおっ!…結花?どうした?」

 

「どうしたじゃないよ!!先生から話聞いたの!大丈夫なの!?」

 

「うん。診察も終わったし、手術してしっかり治せばまたベース弾けるってよ。まぁ手のリハビリの後に元のレベル戻るためのリハビリもあるから、大分先のことだろうけど」

 

「そんなのいいよ!…よかった…ほんとうに……よかったぁ」

 

「結花…。ごめん、心配かけて」

 

「いいの。雄弥が無事なら。ほら、荷物は私が持つから!」

 

「これぐらい「だめ!怪我人でしょ!」…わかった。よろしく」

 

「うん!」

 

 

 結花に鞄を持ってもらって、肩を並べて家までの道を歩き始めた。家に帰ったら手術のことを話しないといけないな。そういや、仁のやつはどうなるんだろ。少年院にでも送られるのか?…ま、学校の判断しだいな気もするが、さすがに今回のは警察が入ってくるだろうな。

 

 

「…父さんに言わないとだね」

 

「そうだな。……家にいるはずなんだが、さっき連絡つかなかったんだよなぁ」

 

「じゃあ、また(・・)だね」

 

「そうだな。タイミングが悪いったらありゃしない」

 

「…うん」

 

「けど、あと半年だ。卒業したらって考えたら半年もないけど」

 

「そうだね…。ゼファーが用意してくれてるもんね」

 

「ああ」

 

 

 結花に学校であったことを話していると、いつの間にか家に着いた。気がすすまないが、家へと入るとしよう。近所の人は誰も知らない最悪の(・・・)我が家へと。氷川家でさえ、この家の実情は知らない。あれだけ家族での交流があったのに、だ。本性を隠すのが上手いんだろうな。

 

 

「…ふん、帰ったか」

 

「……父さんまた昼間から呑んで」

 

「オレの自由だろ?」

 

「そうだな」

 

「ふんっ。……あん?なんだその右手の包帯は」

 

「ちょっとトラブってな。明日手術しないといけなくなった」

 

「手術だと!?バンド活動はどうする気だ!!」

 

「手術しないと治らねぇんだよ。ちゃんと治してリハビリすればまたベースは弾ける。それまでは、少なくとも俺は活動を休むしかないな」

 

「このグズが!なぜそんな怪我をしてくる!」

 

 

 やっぱり酒が入ってるとヒートアップするのが早いな。この男は別に俺のことを案じて言ってるんじゃない。収入源(・・・)が無くなることを怒ってるんだ。

 俺たちがバンド活動を始めて、ブレイクし始めたると同時にこの男は仕事を捨てた。俺と結花の稼ぎを自分の私腹にできるからだ。元から巨万の富を得ていたくせに、節約家の一面もあったから莫大の貯金がある。しかしそれは自分の趣味に費やすためのもの。決して家族のためじゃない。……いや、そもそもコイツにとって俺たちが家族というカテゴリーに入ってるのも疑わしい。

 それで、莫大な貯金があるのに、なぜ俺たちの収入を頼るのかと言うと、ありふれた話だ。酒とギャンブルに溺れて大損したからだ。知識もなく株に手を出したのも追い打ちをかけていたか。

 

 

「お前たちに生活の場を与えてやる!その見返りにお前たちはオレに金を貢ぐ!それぐらいのことも守れんのか!」

 

「治ればまた稼げる。俺たちには多額の稼ぎがあったはずだ。それで食いつなげるだろ」

 

「そんなもの既に消えておるわ!!」

 

(馬鹿か!なんであれだけの金がすぐに無くなる!なんで学ばないんだこの男は!!)

 

「大丈夫だよ父さん。雄弥が休んでる間、私が今以上に頑張ればいいんだからさ」

 

「お前一人の稼ぎで……いや、待てよ………あぁ、そうだな」

 

 

 嫌な予感がした。怒髪天とばかりに怒っていた男が急に考え込んだと思ったら、今度は下卑た笑みを浮かべるんだからな。

 

 

「そうだよなぁ。弟の失態を取り返すのが姉だよなぁ」

 

「まぁね〜」

 

「そうだな。体を使って(・・・・・)今以上に稼いでもらうとするかぁ!」

 

「うん…うん??」

 

「まさか…」

 

「結花ならよく稼げるだろうさ!中学生ながらにその体なんだからなぁ!!」

 

「ちょっ、え?父さん…冗談…だよね?」

 

「冗談?そんなわけないだろ。さっそく明日から稼いでもらうとするか!はっはっはっはっは!!」

 

「そん…な……。やだよ…そんなのやだよ!!」

 

「口答えするな!!」

 

「きゃあ!」

 

「結花!」

 

 

 クソ親父が結花の顔を殴った。まさか結花を殴ると思ってなかった俺はそれを防ぐことができず、俺が駆け寄るも先にクソ親父が結花に馬乗りになった。

 

 

「弟の代わりに稼ぐ。そう言ったのは結花だろぉ?」

 

「それは、バンド活動でって意味で!」

 

「ベースがいないバンドでどうやったら今以上に稼げるっていうんだ?そんなのより身を売ったほうが手っ取り早く稼げるだろうが!」

 

「なんで……私…父さんの娘だよ?」

 

「そうだな。だから父さんのために稼げ」

 

「いや……いやぁ…」

 

「ハッ!お前達が大好きな母さん(・・・)と同じ道だぞ?喜んだらどうなんだ?」

 

「……ぇ」

 

「は?」

 

 

 コイツは何を言っているんだ?身を売ることが、母さんと同じ道になる?母さんは今も海外ブランドで働いてるんじゃないのか?だって、母さんはたしかにそう言って家を出て……。

 

 

「あの女とオレの間になぜ子どもがいないか分かるか?あの女、菜々が拒み続けたからだ。前の旦那を忘れられないとホザいてな!名字からしてそうだ!『藤森』もあの男、雄二の名字だ!そもそもあの二人を!雄二と菜々の仲立ちをしたのもオレだ!雄二よりもオレと菜々の方が付き合いが長かった!菜々も雄二もお互いに意識しあってるのは、オレが一番嫌というほど分かっていた!どうあっても菜々は振り向かない!だから相談しに来た雄二と手を結ぶことにしたんだ!菜々とくっつけさせる礼に一度菜々を抱くと!だがあの男は約束を破った!だから事故に見せかけて殺してやったんだ!」

 

「お前……が……父さんを?」

 

「ああそうだ!殺してやったさ!そのショックに打ちひしがれる菜々に接近するためにな!その狙いは達成できたが、本来の目的は達成できなかった。寝室を別にされ、部屋の鍵も外からは開けれないようにされた。そうやって雄二のことを忘れないようにしてたんだ!その鍵を突破したのが去年だ。突破して犯してやったが、そうしたら離婚すると言い始めた。だから知り合いに連絡して売り払ったんだ。あの女のその稼ぎもオレの財産とする契約でな!つまりあの女はひたすら身を犠牲にするようにさせたんだよ!!ま、1週間経たずに自分で命を絶ったらしいがな」

 

「そん……な。かあ…さん」

 

「雄弥…」

 

 

 ショックのあまり、無意識のうちに膝をついていた。しかし、そんなことに気を回してるほどの余裕なんてなかった。あれほど優しくて、人を笑顔にさせる母さんが自殺に追い込まれたんだから。

 

 

『雄弥おいで』

『うん!』

『女の子を守れる子になってね。騙しちゃだめよ』

『そんなことしないよ!』

『ふふっ、いい子ね。あら?結花もそんなとこいないでこっちにおいで。一緒に本を読みましょ』

『…!…うん!』

 

(あの母さんを……!こいつが!!しかも父さんまで!!)

 

 

 今すぐ殴り飛ばしてやりたい。けど、まだ中学生なんだ。ゼファーが手を回してるし、事務所が面倒を見てくれるかもしれないが、俺がここでやらかしたら結花を1人にさせてしまう…!

 

 

「あの反省を活かして、結花には自殺できないようにさせておかないとなぁ」

 

「ひっ…!やめてよ!そんなのやだよ!」

 

「まずは耐性をつけさせないとなぁ。安心しろ。今からたっぷり調教してやるから」

 

「やめて!やめてってば!いや!いやぁぁ!」

 

「やはり中学生ながら発育がいいな。胸もある、僅かながらクビレもある。これならよく売れるなぁ。よかったなぁ結花。たくさん愛されるぞ?」

 

「そんなの…!」

 

「ああ安心しろ。後から氷川家の姉妹も送り込んでやるから」

 

──ブチッ

 

「ハハハ!仲良く3人で楽しむといい!」

 

「いやぁぁ!助けて!助けてよ雄弥ぁぁ!!」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 気がついた時には全てが終わっていた。

 

 荒れまくった部屋。どういうことか、なぜか床に転がってるゴルフのアイアン。目から血を流して横たわってるクソ親父。

 

 涙を流してひたすら謝り続けてる結花。

 

 そして、頭から血を流してる俺。包帯が巻かれていた右手の感覚が失われていて、真っ白な包帯も赤黒く染まっていた。

 

 

(あぁそうか。俺は殺人を犯したのか)

 

「ハハッ…ハハハ!」

 

「ゆう…や?」

 

「ハハハハハハハ!あっははははハハハハハ!!」

 

 

 親殺しだ。殺人を犯したんだ!

 あのままでも結花とは離れ離れになった。1人にさせてしまうことになった。だが!親を殺したならどのみち結花と一緒にいることはできない!結局1人にさせることになるんだ!

 

 

──もう結花と2人で家を出て、また紗夜と日菜と4人で……そんな願いも叶えられない!

 

──俺は…約束を守れない

 

 

☆☆☆

 

 

「…この後なんとか雄弥を落ち着かせて、ゼファー…えっと私達のマネージャーを頼ったんだ。雄弥の治療もあるし、近所トラブルとかを避けるためにその日のうちに街を出ることになった。雄弥の手術が終わったら、ゼファーの知人を頼って関西に。……そっちでゆりさんとりみちゃんに会ったんだ。心がグチャグチャになった雄弥を支えないといけなかったんだけど、私も限界だった。その時に2人にすごい助けてもらったよ。私がまた歌を歌いたいって思ったのも雄弥が前を向けるようになったのも2人のおかげだしね。引っ越しもあるのに、ゆりさんなんて1人だけしばらく関西に残ってくれたりしたし」

 

「そんな…ことが…。ごめんなさい、私のせいで…」

 

「紗夜は悪くないってば〜。雄弥も気にしてないし。…あの日で私達がいなくなったから、紗夜は自分を責めちゃったんだよね。…ごめんね」

 

「そんな…こと。…それこそあなたが謝ることじゃないわよ」

 

「あの…雄弥さんは今どこに?」

 

「…お墓参りだよ。今日の日付が、初めて母さんのお墓参りした日だからね」

 

「そんな時に……ごめんなさい。知らなかったこととはいえ」

 

「ううん。むしろこの日に話せたのもよかった気がする」

 

 

 あの時…そんなことがあったんだ…。あたし…あたし何も知らなかったのに……勝手に嫌いになって、勝手に距離をおいて……。

 

 

「……日菜もさ、雄弥と…自分の気持ちと向き合ってみてほしいんだ」

 

「…あたし……は……だって……ユウくんを嫌いって…気持ちは…」

 

「ヒナ、いい加減にしなよ」

 

「リサ?」

 

「自分の気持ちから目をそらすのはもうやめなよ!雄弥のこと嫌いになんてなってないでしょ!今も好きなんでしょ!」

 

「違う!そんなこと「違わないよ!」っ!」

 

「だったら…本当に嫌いなんだったら、なんで今もユウくん(・・・・)って呼ぶの!」

 

「それ…は……クセだよ」

 

「考えてみたらヒナの行動はおかしいんだよ。嫌いならなんで雄弥の行動をほとんど把握してるの?嫌いなら視界に入らないように、情報が入らないようにするでしょ?」

 

「き、嫌い、だから…だから余計に…!」

 

 

 やめて!やめてよ!あたしの心をグチャグチャにしないでよ!!

 

 

「ヒナが嫌いなのは雄弥じゃない!ヒナが嫌いなのは雄弥を許せないヒナ自身(・・・・)でしょ!」

 

「……〜〜〜っ!!」

 

「あ、日菜ちゃん!」

 

「待ってください!ヒナさん!」

 

「彩ちゃんも!追いかけるわよ!」

 

「し、失礼します!お代はここに置いてますのでー!」

 

 

──違う違う違う違う違う違う!あたしは……あたしは…!

 

 

 




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