もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

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3話

「〜♪〜♫」

 

 

 私こと藤森結花(ゆか)は、藤森雄弥の姉で、学年は同じ高校2年生。学校は違って、私は花咲川女子高校に転校してきた。なんで違うかと言うと、"女子校に通いたかったから"!ほら、なんかお嬢様感あるじゃん?女子校ってだけで謎の特別感、みたいな。

 まぁ、別にお嬢様になりたいわけじゃないんだけどね。私はA組に入ったわけなんだけど、居心地がいいのなんの!だって窓際の席で一番後ろだよ!プリント回収は絶対にやらされるポジションだけど、おかげで同じ列の子の名前はすぐに覚えれたし仲良くなれてる。

 それに一番後ろってことは、後ろに誰もいないわけで、広々とできるじゃん?開放感があって気楽なんだよね〜。

 窓の外を眺めながら鼻歌を歌ってると、隣の席の子が登校してきたようで、声をかけてくれた。

 

 

 

「おはよう、今日もご機嫌だね」

 

「あ、花音!おはよ〜!今日もよろしくね!」

 

「あはは…いいけど、早く荷解き済ましたほうがいいよ?」

 

「積んでるダンボールの一番下のとこに教科書類があるみたいでさ〜。中々たどり着かないんだよね〜」

 

「弟君は1日で片付けたんじゃなかったっけ?」

 

「男子と女子じゃ荷物の量が違うじゃん?」

 

「そういうものなの?」

 

「そういうものなの!」

 

「そっか。それなら仕方ないね」

 

(純粋過ぎるよ!?言い訳に等しいこと言ってるのに受け止めちゃうの!?)

 

 

 この子大丈夫?悪い男に引っ掛けられたりしない?そんな心配になっちゃう、保護欲をそそられるような小動物系女子である松原花音ちゃん。雰囲気からして可愛さが出てて、どこか放っておけないような、そんな気にさせる女の子。

 もちろんそれは狙ってるわけでもなく、そういう性格というか人間性なんだよね。共学だったら男子が言い寄ってきそうな子。……あー、だから女子校にいるのか。

 

 

「?どうかしたの?」

 

「あ、ううん。…花音って共学だったらモテそうだなーって」

 

「ふぇぇ!?…そ、…そんなことないよ…わたし、こんなだし」

 

「いやいや、花音は十分可愛いよ。ね?千聖」

 

「そうね。花音、あなたはもっと自信を持っていいのよ」

 

「へっ?ち、千聖ちゃん!?いつ来たの!?」

 

「おはよう花音、結花。今来たところよ」

 

「おはよう千聖〜。私は向いてる方向がドアの方だから気づけたってわけだよ☆」

 

「そ、そうなんだ…。おはよう千聖ちゃん」

 

「それで、なんの話ししてたのかしら?」

 

「え?千聖ちゃんは聞いてたんじゃなかったの?」

 

「最後のとこだけよ。話を振られたから肯定したのだけど」

 

 

 千聖ってアドリブに強いよね〜。花音なら絶対に無理だよ。…そんなムッて顔されてもな〜、実際問題アドリブには弱いじゃん?というか心を読まないでほしい。

 

 

「なんとなく花音って共学ならモテそうだなって話をしてたんだよ。さっき思いついたことだけどね」

 

「そうなのね。…たしかに、花音なら男子に狙われてもおかしくないわね」

 

「そ、そんなことないってば!…わたし、こんなだし…その、男の人…苦手だし」

 

「「たしかに」」

 

「…うぅー」

 

「いやいや、花音が自分で言ったことじゃん」

 

「そうよ。それに、否定する材料が見つからないわ」

 

「…そうだね」

 

「んー?……くんくん」

 

「…結花ちゃん?何してるの?」

 

「花音の匂いを嗅いでる」

 

「だからなんで!?」

 

「またおかしなことを…」

 

 

 千聖は失礼なこと言うな〜。まぁたしかに、昔からの付き合いだし、お互いそれぐらいの軽口を言い合える仲なわけなんだけどさ。

 私は花音にハグして匂いを嗅いでる。あ、別にレズじゃないからね?男の人を好きになるからね。それにこんなのってスキンシップの内に入るじゃん?同性だったら。異性はだめ。私でも速攻で通報する。あ、雄弥ならいいよ?

 

 

「あ、あの結花ちゃん。みんなの視線が恥ずかしいからそろそろ離れてほしいんだけど…」

 

「……」

 

「結花ちゃん?」

 

「…すやすや」

 

「寝ちゃったの!?」

 

「落ち着きなさい花音。寝言でも『すやすや』なんて言う人いないわよ」

 

「そ、そうだよね。…結花ちゃん!」

 

「あはは、ごめんごめん!花音の反応がいいからつい」

 

「ついって…」

 

「よっと……。花音さ」

 

「うん?」

 

「男いるでしょ」

 

「は?」

 

「ふぇぇ!!?」

 

「えええーー!!!」

「松原さんに!?」

「彼氏がいたの!?」

「どんな人!?」

「紹介して!」

「結婚して!」

「合コンに呼んで!」

 

 

 あちゃー、まさかクラスの人達みんなが聞き耳立ててるとは思ってなかったよ。というか、食いつきがすごいね。その中でも一番食いついたのが親友である千聖なわけなんだけど…。それと、なんか途中からおかしな発言飛んでなかった?

 

 

「いや…あの…彼氏じゃなくて……ふぇぇぇ…うっ」

 

「花音!?しっかりしなさい!」

 

「あ、花音のキャパ超えた」

 

「元はと言えば結花の発言のせいでしょ!」

 

「あはは!ここまでになるとはね〜。花音は私が保健室に運ぶから、千聖は先生に言っといて」

 

「花音なら私が…」

 

「芸能界入ってるから学校への出席自体限られてるでしょ?来てる時ぐらい最初からいないと。別に千聖が問題児扱いされてるとは思わないし、成績が悪いとも思ってないけどさ」

 

「…印象づくりのためにいろってことね」

 

「ぶっちゃけたらそうだね〜。現実主義の千聖なら、そうする(・・・・)よね?」

 

「……わかったわ」

 

「よろしくね〜」

 

 

 私は花音を背負って教室を出ていった。保健室の場所はちゃんと把握してあるから、迷うことなく足は真っ直ぐにそこに向かう。階段を降りようとしたら反対に登ってくる生徒がいた。…いや、まぁそりゃあ学校だから生徒が多いんだけど。その子は知り合いだった。

 

 

「紗夜じゃん久しぶり〜」

 

「結花?…やはり隣のクラスの転校生はあなただったのね」

 

「名前からして私だけでしょ〜」

 

「名字しか聞いてなかったから、もしかしたら別人かもって思ってたのよ」

 

「紗夜らしいね。それで、真面目な紗夜は何してるの?もうすぐHRが始まるはずだけど」

 

「私は生徒会に入っていて風紀委員をしているの。その見回りが終わったところよ」

 

「なるほどね〜。堅物風紀委員ちゃんだね☆」

 

「…そうね。みんなにそう思われてるわね」

 

「そんな紗夜が遅刻したら示しつかないね」

 

「あなたは何してるのかしら?」

 

「友達が気絶しちゃってさ〜。保健室に連れてくとこ」

 

「…本当に何したのよ」

 

「あっはっはー!」

 

 

 私は止めていた足を動かして階段をおりていく。紗夜も階段を登ることを再開して、すれ違いざまに昼休みに会おうと誘っておいた。私はあのこと(・・・・)を特に気にしてるわけでもないんだけど、紗夜は気にしてるみたいだからね。落ち着いて話をした方がよさそうだ。

 

 

「それじゃあまたね〜」

 

「…ええ。またあとで」

 

 

 花音を保健室に連れて行って、ベッドに寝かせてから先生に事の経緯を話した。先生はすっごい呆れてたけど、人それぞれ限界は違うからねー。まぁ先生も花音に呆れてたんじゃなくて、私に呆れてたんだろうけどさ。このまま付き添いって言って保健室に滞在するのも面白そうだけど、千聖が怒るだろうし、戻ろっかな。

 

 

(教室に入る時になんかしよっかな?……あー、今大した小道具もないし普通に戻ろ。うん、普通が素敵っていうもんね)

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 昨日からそんな予感はしていた。隣のクラスに来た転校生の名前が"藤森"だったから、もしかしたら彼女なんじゃないかと。そして、彼女が帰ってきたということは、彼も…雄弥くんも帰ってきたということなんじゃないかと。

 結花の行動力の高さから、一人暮らしの可能性もあったのだけど、雄弥くんのことを何よりも大切にしている彼女ならそれはありえない。それに…、昨日、日菜の様子がおかしかったから。どこか警戒してるような、帰ってきた時だけだったけど、そんな雰囲気があった。

 だから、結花と雄弥くんの2人が戻ってきたんじゃないかと思ったし、違ってほしいとも思った。

 

 

(雄弥くんとはもう一度会いたい。会ってちゃんと話をしたい。だけど……それが怖い。会いたくないという思いも同じぐらい強い。…私は、今になっても弱いままなんだわ)

 

 

 だけど、今日結花に会った。会ってしまった(・・・・・・・)。ただ再会しただけなのに、現実から目を背けようとした私を、現実に向き合わせるには十分な出来事だ。

 彼女は昔と同じ明るい笑顔を向けてくれて、何も変わらずに接してくれた。だから平常心を保つことができたけど、私の心は穏やかじゃなかった。

 

 

(本当は私のことが許せない(憎い)んじゃないか?)

 

 

 そんな思いが心の中で渦巻いていたから。そんなことまで見透かされたのか、すれ違いざまに昼休みに会う約束を取り付けられた。いや、こんな言い方をするべきじゃないわね。取り付けてもらえたと言うべきだわ。だって、結花は向き合っている、前を見て歩めているのに、私は停滞しているのだから。そんな私に手を差し伸べてくれたのだから。

 

 

「お邪魔しまーす!」

 

「ひゃっ!?…あの…えと、…どうか…されました?」

 

「あ、ごめんごめん!驚かせちゃったね☆私は隣のクラスに転校してきた藤森結花っていうの。あなたは?」

 

「あ……あなたが。…わたしは…白金燐子…です。よろしく…お願いします…」

 

「燐子ね。私のことは結花でいいよ」

 

「え…でも…」

 

「結花でいいよ」

 

「あの…」

 

「結花でいいよ」

 

「結花…さん」

 

「うん!」

 

 

 …何をしているのかしら。いえ、知らないふりをするわけにもいかないわね。結花は私と話をするためにこちらの教室に来たのだから。

 私はお弁当を持って白金さんと話している(に絡んでいる)結花の下へと向かった。

 

 

「来るのが早いわね。てっきりお弁当をいただいてからだと思ったわ」

 

「せっかくの再会なんだから一緒に食べようよ!屋上で」

 

「構わないわよ。…白金さん。結花が失礼しました」

 

「い、いえいえ…話せて…楽しかった…です。…氷川さん、お知り合い…なんですか?」

 

「ええ。…昔から」

 

「所謂幼馴染なんだ〜♪前にちょっと引っ越しちゃったけど、また戻ってこれてね。そしたらまさか同じ学校とはね〜」

 

「そうなん…ですね。…再会…できて、良かった…ですね」

 

「うん!!」

 

「…行きましょうか」

 

「はーい。てあれ?紗夜ってば照れてる?」

 

「照れてません」

 

「あはは!照れてんじゃん!私に敬語になってるし」

 

「〜〜〜っ!知りません!」

 

「あ、待ってよー!それじゃあ燐子またねー!」

 

「は、はい」

 

(氷川さん…なんだかんだで…嬉しそう…だったな)

 

 

 




結花はブラコンですよ。
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