もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

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5話

 放課後、結花に頼まれて商店街へと買い物に来ているのだが、商店街というものはその姿があまり変化しないから懐かしさを覚えやすいな。帰ってきたという実感がよく湧く。

 買い食いでもしようかと思い、匂いにつられてパン屋へと入ったのだが、何やらパン屋の様子がおかしい。

 

 

「お父さん無茶だってば!」

 

「何言ってんだ沙綾。俺が働かなくてどうする。…男がやる力仕事だってあるんだ」

 

「腰痛めてちゃ無理だよ!店を閉めて病院に行こ!」

 

「あのー」

 

「む、お客さんか。すまないな。見苦しいところを見せてしまった」

 

「いえ。仕事なら俺が代わりにしましょうか?力に自信もありますし、特に予定があるわけでもないですし、なにより、今日無理して今後足腰が使い物にならなくなるより良いと思いますよ」

 

「…たしかに。だが仕事の内容は…」

 

「それは私が教えるから。お父さんはお母さんと一緒に病院に行って来て」

 

「むぅ、しかしだな。お客さんに店の中を把握されるのも気が引けるというか」

 

「あ、それなら雇ってもらっていいですか?ちょうど何かバイトないかと探してたので」

 

 

 一軒家でパン屋をしてるということは、このパン屋と一家が生活してる建物は同じなのだろう。わかりやすく繋がってるわけじゃないだろうが、他人に中を見られたくないのは分かる。しかし従業員なら関係ないだろう。家の中に入り込む気もないし…バイトを探してるのも事実だしな。

 

 

「フフッ、ハッハッハッハ!君面白いな!よし、採用!あとは沙綾と君に任せた!…ところで名前はなんだい?」

 

「お父さん順番がおかしいから…」

 

「藤森雄弥です。よろしくお願いします」

 

「雄弥くんか、よし覚えた!俺は山吹(たける)。分かってると思うが、ここにいる沙綾の父親で、この店の店主だ。これからよろしくな!」

 

「はい」

 

「うしっ!じゃあ病院に行ってくるから、あとは2人でよろしくな〜。……いてて

 

 

 腰に手を添えながら店主こと剛さんは奥に消えていった。奥さんと病院に行くのだろう。残された俺たちは互いに目を合わせて、苦笑した。俺が言うのもなんだが、流れが急だからな。

 

 

「えっと…一応自己紹介しますね。山吹沙綾です」

 

「さっきもしたが、藤森雄弥だ。高2で羽丘に通ってる」

 

「あ、やっぱり羽丘なんですね。私は高1で花女に通ってるんですよ」

 

「花女なのか。1つ上の学年に転校生来ただろ?」

 

「あ、はい。たしか来てましたね。お知り合いの方なんですか?」

 

「俺の姉だ」

 

「…え?」

 

「だから、姉だよ。姉」

 

「…なんで違う学校なんですか?」

 

「女子校に通いたかったらしい」

 

「なるほど?」

 

「ま、そうなるわな。…さてと、そろそろ仕事を教えてもらうか。店長が言ってた仕事ってどれのことだ?」

 

「そうですね。ついてきてください。教えますから」

 

 

 沙綾の案内に付いていき、仕事を教えてもらう。…なるほど、たしかにこれは力仕事だな。パン屋の仕事ってパンを作って販売する、ぐらいにしか思ってなかったが、それだけじゃないんだな。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 雄弥さんは、教えたことをすぐに覚えてテキパキ動いてくれた。やっぱ男の子は凄いなー。たまに羨ましいって思うことがあるよ。男に産まれたかったー、とまでは思ったことないけど。

 

 

「ふぅー、これで全部か?」

 

「はい!ありがとうございました!」

 

「いやいや、仕事だからな。教えてくれてありがとう」

 

「よかったら夜ご飯も食べていってください!もうこんな時間ですし」

 

「いや、さすがに夜ご飯までお世話になるわけには………ん?…夜ご飯?」

 

「?どうかしました?」

 

「…ちょっと電話させてもらうな」

 

「はい。…?」

 

 

 雄弥さんは焦るように携帯を操作して誰かに電話し始めた。親御さんかな?電話に出た人は、私にも聞こえてくるぐらいの声の大きさで電話に出た。

 

 

『もしもし!!雄弥なにしてんの!!?無事なの!?』

 

「とりあえず話すから落ち着いてくれ」

 

『警察に電話したほうがいいかな!?』

 

「無事だからな!?話聞けって!」

 

『私心配だよ…。お姉ちゃんにできることある!?』

 

「だ・か・ら!話聞けって言ってんだろ!」

 

 

 こういう一面もあるんだ…。ずっと落ちついた感じの人なのかと思ったけど、お姉さんが相手だからなのかな?忙しそうにツッコミしてるのが、ちょっとだけ有咲っぽい。

 お姉さんを落ち着けさせれた雄弥さんは、お姉さんに事情を説明してこれから帰ることを伝えてた。

 

 

(…お礼したかったんだけどなぁ。お姉さんが待ってるなら仕方ないかー)

 

「んじゃ、買い物して帰るから、ご飯も2人で作ればすぐにできるだろ」

 

『そうだね!それじゃあ待ってるから早く帰ってきてね〜』

 

「ああ。…悪いな沙綾、そういうことだから帰らせてもらう」

 

「あ、いえいえ。またの機会にでも」

 

「…食べさせたいのな」

 

「ふふっ、お礼したいですから♪」

 

「ま、その時がきたらな」

 

「はい!」

 

 

 今日はいつもより少し早くお店を閉めて、2人で作業を始める。雄弥さんは本当に要領が良くて、とても初日とは思えなかった。明日の朝も来てくれるみたいで、来てほしい時間を伝えておいた。お店を出て帰っていく雄弥さんを見送っていると、弟の純と妹の沙南が出てきた。

 

 

「ご飯にしよっか」

 

「うん」

 

「おねーちゃん。さっきのおにーさんは?」

 

「今日からお手伝いしてくれる人だよ。藤森雄弥さん。お姉ちゃんより1つ年上の人」

 

「あしたもくるの?」

 

「来てくれるって言ってたよ。その時に挨拶しようね」

 

「「うん!」」

 

 

 利口な2人の頭を撫でてあげてから家の中に入っていった。お母さんがご飯の準備してくれてたから、すぐに用意することができた。3人でご飯を食べて、今日は2人を先に寝かせることにした。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「さぁ雄弥。言い訳を聞いてあげましょう」

 

 

 雄弥が帰ってくるやいなや、私はリビングで雄弥を正座させた。本当は全然怒ってないんだけど、こういうことはなぁなぁにしちゃいけないと思う。社会に出た時に忘れちゃいけないことでよく言うじゃん?"ホウレンソウ"って。報告、連絡、相談。これは忘れちゃいけないよね。

 さてさて、雄弥はと言うと…反省はしてるようだけど、私の目を真っ直ぐに見ていた。

 

 

「言い訳をする気はない。連絡しなかった俺が悪いんだからな。でも、山吹さんのとこを手伝ったのは後悔してない」

 

「よろしい!」

 

「いいのかよ!」

 

「だって怒っても仕方ないじゃん?心配したのは本当だけど、雄弥なら大丈夫だろうなって思いもあったしね。それに、雄弥がやったことは褒められることだもん。…連絡がなかったところ以外は」

 

「本当にごめん」

 

「うん。それじゃあご飯作ろ?」

 

「そうだな」

 

 

 雄弥が買ってきてくれた食材を冷蔵庫に片付けつつ、これから使うものは残しておいた。雄弥と2人で料理をするとすぐにできちゃう。凝った料理は私しか作れないけど、簡単な料理だったら雄弥の方が手早くできちゃう。今日はちょっと遅くなっちゃったから簡単なもの。それを2人で食べて、食器を洗って順番にお風呂に入って、リビングでくつろぐ。

 

 

「ゆ〜うや♪」

 

「…なんか楽しいことがあったか?」

 

「まぁね〜。1つは、私もバイトしよっかなって。同じクラスの子に紹介してもらうんだ〜」

 

「へー。その人はどこで働いてんだ?」

 

「ハンバーガー屋さんだったかな」

 

「…つまみ食いするなよ」

 

「しないですー。するならアレンジしてからだよ」

 

「するなって…。で、他には?」

 

 

 もう一個は…私にとっては楽しいことなんだけど、雄弥にとってはどうなんだろうなー。…でも、言っといた方がいいよね。…たぶん。

 

 

「隣のクラスに紗夜がいたことかな」

 

「……同じ学校なんだな」

 

「うん。雄弥も日菜と同じ学校なんだってね?紗夜から日菜が通ってるのは羽丘だって聞いたけど」

 

「まぁな。俺の方は同じクラスだ。そうそう、愁とも同じクラスだったぞ」

 

「あ、愁も羽丘なんだね!…懐かしいなぁ」

 

「たしかにな。…ごめんな、結花」

 

「…それはもういいんだってば、馬鹿。…あ、そうだ!」

 

「ん?」

 

「紗夜がRoseliaっていうバンドに入ってるんだってさ!それで今度のライブ見に行くんだけど…雄弥はどうする?」

 

「……考えとく」

 

「うん☆今日は一緒に寝ようね」

 

(ま、しばらくはライブ来ないだろうね)

 

「断る」

 

 

 雄弥の部屋に入ろうとしたら追い出されて、私は渋々自分の部屋で寝ることにした。

 

 …と、思わせといて、夜中のうちに雄弥の布団に潜り込んどいたけどね!

 

 朝起きたら雄弥が家のどこにもいなくて、さすがに泣いた。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 あたしはちゃんとノックをして、返事をもらってから部屋の中に入った。お姉ちゃんは机に向かっていて、勉強してたみたい。

 

 

「…お姉ちゃん」

 

「日菜?どうしたの?」

 

「知ってると思うけど、ユウくんが帰ってきたよ」

 

「…ええ。知ってるわ。結花が隣のクラスに転校してきたもの」

 

「っ!?…あー、そっか。結花ちゃんそっちの高校に行ったんだね」

 

「ええ。今日知って、結花と話したのだけれどね」

 

 

 そうだった、そうだった。あのユウくん大好き結花ちゃんが一緒に帰ってこないわけないもんね。前とは違う家に住んでるみたいだし、街中でバッタリ会うことも少ないと思うけど、学校が近いからそこは分かんないなー。

 

 

「お姉ちゃん。ユウくんと会わないようにしてね」

 

「!?…どうしてあなたにそんなこと言われないといけないのよ」

 

「お姉ちゃんが心配だから。お姉ちゃんが好きだからだよ?」

 

「…心配って、別に会うぐらい…」

 

「嘘だね」

 

「…なんですって?」

 

「だってお姉ちゃん。ユウくんに会うの怖がってるじゃん」

 

「そんなこと、ないわよ」

 

「体が震えてるのわかってる?」

 

「!?…な、なんで…わたしは…彼に…会うぐらい…」

 

 

 あたしはお姉ちゃんを抱きしめた。怯えてるお姉ちゃんを安心させるために。お姉ちゃんから恐怖心をなくすために。

 

 

「おねーちゃん。大丈夫だよ」

 

「ひな…」

 

「怯えなくていいよ。…今日はもう寝よ?」

 

「…そう、するわ。…でも日菜…私は彼と会わないといけないのよ。…じゃないと、前に進めないから」

 

「…っ…ならせめて会うのはもっと後にしようよ。今のお姉ちゃんが会ったって意味ないよ」

 

「それも…そうね。おやすみなさい、日菜」

 

「うん。おやすみ、おねーちゃん」

 

(…なんでそこまでして会おうとするの?意味がわからないよ。…でも、大丈夫。大丈夫なんだよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんのことは、絶対にあたしが守るからね♪)

 

 

 あたしは部屋を出る前にお姉ちゃんを見て、改めてそう決心した。大切なお姉ちゃんなんだもの。

 

 

(それにしても結花ちゃんのことが頭から抜けてたや。…厄介だなー。リサちーとは別の意味で厄介だよ。結花ちゃんのことは嫌いになれないし、お姉ちゃんと仲良くするだろうしなー。そこは嬉しいけど。…結花ちゃん相手に先回りするのって本当にしんどいんだよね〜。…とりあえず警戒するのは、リサちー、結花ちゃん、ユウくんの順番かな)




それなりに周囲の人物は出ましたかね。
タグにあるようにRoseliaとパスパレとも絡みますが、そこまで絡むわけでもないですね。主要人物は出揃ったと言っていいかも。

評価していただけたり、お気に入り件数が増えたり、感想をいただけたり、どれも嬉しい限りでございます!
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