もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

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投稿できましたー。明日から1泊のゼミ合宿行ってきまーす。……行きたくねぇ。


8話

 放課後となり、最近はすぐに荷物を纏めて"やまぶきベーカリー"へと足を運ぶのだが、今日は違う。最初はそのつもりだったのだが、愁に呼ばれてどこかへと連れて行かれるらしい。場所は着いてからのお楽しみだそうだ。

 今朝も"やまぶきベーカリー"で働いていて、その時にバイトの掛け持ちのことを相談してみた。「いいぞ!」とあっさり了承してくれたし、理由も「元からバイトを雇っていなかったから」らしい。剛さんはやりたいようにやれと言ってくれたが、沙綾はどこか機嫌が悪くなってしまった。

 

 

「ゆーうーやくん♪今から帰るの?」

 

「リサか。いや、今日は愁にどこぞへと連れてかれる」

 

「場所知らないんだ…」

 

「まぁな。リサは?」

 

「あたしはこれからバンドの練習だよ!」

 

「なるほどな。それでその指なわけか。…ベースを指弾きしてるのか?」

 

「そ、そこまでわかるの?」

 

「…まぁ、一応経験者だからな」

 

「それでもそこまでは分からないような。…それはともかく、それも詳しくは教えてくれないの?」

 

「いや、今度教えるよ。軽くだけならな」

 

「やった♪」

 

 

 リサは両手を握って喜びを表していた。狙ってやってるわけでもなく自然とそういう仕草になるから、他の男子たちからの人気が高いんだろうな。なんてことを考えていたら愁が正門までやってきた。

 

 

「お待たせ。先生に頼み事されちゃってね」

 

「気にしてない。それでどこ行くんだ?」

 

「んー、懐かしい所、かな」

 

「…そうか」

 

「今井さんはこれからバンドの練習?」

 

「そうだよ〜」

 

「途中までなら道が同じだから一緒に行く?」

 

「お邪魔してもいいのかなー…、なんて」

 

「別にいいだろ。それじゃあ愁案内してくれ」

 

「おっけー。けどもう1人呼んでるからちょっと待っててね」

 

「もう1人?」

 

 

 俺とリサが首を傾げていると、猛スピードで走ってくる人影が見えてきた。それで誰が来るのか悟った俺は、真っ直ぐに突っ込んでくるその人物を躱した。

 

 

「危なっ!?…もうー、ちゃんと受け止めてよ雄弥」

 

「あぁやって突っ込んでくる奴を受け止めたくねぇよ」

 

「じゃあ次はスピード落とすね☆」

 

「…そういうことじゃないんだよ」

 

「えっと〜、雄弥くん。この人は?」

 

「あ、そっか。まだ会ったこと無かったな。こいつが「雄弥の姉です!」…そういうわけだ」

 

「藤森結花って言うんだ〜。あなたは雄弥の彼女?」

 

「ふぇ!?や、あの…あらひは…しょの…」

 

「あ、結花。今井さんは純粋な乙女だからね」

 

「…みたいだね。ここまで顔を真っ赤にしてたらわかるよ」

 

 

 これが茹でダコ状態とでも言うのだろうか。顔を真っ赤にして目を泳がせているリサを落ち着かせようと頭を撫でたらリサはさらに悪化してしまった。げせぬ。

 

 

「雄弥どいて」

 

「そうは言うがな…」

 

「私がこうしちゃったから私が落ち着かせる。それに雄弥じゃ逆効果だから」

 

「…わかった」

 

「見た目はギャルっぽいのに乙女なんだね〜。…えい」

 

「ひゃっ!?…え?なになに?」

 

「おかえり〜。改めて自己紹介お願い♪」

 

 

 何が起きたのかさっぱり分かっていないようで、リサは困惑した様子で俺の方を見てきた。…え、今の言わないといけないの?あんま言いたくないんだけど。

 

 

「真っ赤になって何やらトリップしてたあなたを戻すために、私がほっぺをペロリンと舐めさせて貰いました☆」

 

((言うのか/んだ!?))

 

「うぇ!?」

 

「あ、やっぱりやだよね。ごめんね?お詫びに同じ場所に雄弥にキスさせるから」

 

「なんでだよ!?」

 

「きしゅ!?」

 

「…結花、話が進まないから」

 

「ごめんごめん。楽しみすぎちゃった♪ほら、雄弥早くキスして。話が進まないから」

 

「だから何でだよ!?リサの意思は無視か!?」

 

「雄弥のキスほしい?ほしくない?」

 

「え、えと……。……」

 

 

 リサはさっきよりかはマシだが、また顔を赤くしていて、そのまま瞳を閉じた。…え、まじでキスしないといけないの?結花に目線を送ると早くやれと急かしてくるし、愁に助けを求めても諦めろと首を横に振られるだけだった。

 

 

(こいつら…憶えてろよ!)

 

 

 なにか仕返しをしようと決意し、じっと止まってるリサに向き合う。不安になっているのか、閉じられている瞼が震えている。俺は腹をくくって、リサの頬にキスをした。

 

 

「…これでいいだろ?」

 

「お姉ちゃんは大満足です…。ぐふっ」

 

「はいティッシュ。…まったく、やらせといて鼻血出すって何なのホント」

 

「愁。止めなかったお前も同罪だからな」

 

「…え?」

 

「それで、リサだっけ?」

 

「……」

 

「おいリサ」

 

「…はっ!…なに?」

 

「自己紹介」

 

「あ、そうだった。雄弥くんと同じクラスの今井リサって言います。Roseliaっていうバンドに入っててベース担当です」

 

「同い年だから敬語じゃなくていいよ〜。それにしてもRoseliaか〜。紗夜と一緒なんだね」

 

「同い年なんだ…。それに紗夜のこと知ってるの?」

 

「同じ学校だし、幼馴染だからね!」

 

 

 …紗夜とリサは同じバンドなのか。そう思いながら2人を眺めていたら、リサがこっちに視線を送ってきた。俺も紗夜と幼馴染なのかを知りたいのだろうか。なにを思っていたのかよく分からなかったが、なぜか俺は視線を逸らしてしまった。

 

 

「…そろそろ行こうか」

 

「…そうだな」

 

(雄弥くん…?)

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 結花がリサになにか言ったのか、それともリサが察したのかはわからないが、あの後リサからあの反応に対して聞かれることはなかった。さも気にしてないように振る舞ってくれた。リサと途中で別れて、愁に連れて来られた場所は…。

 

 

「……たしかに懐かしいな」

 

「でしょ?」

 

「けど私たち入っていいの?愁は大丈夫だろうけどさ」

 

「大丈夫大丈夫。2人とも辞めたってわけじゃないし、僕の方から事前に言ってあるしね」

 

「なるほど〜」

 

 

 愁に連れて来られた場所は、前にバンド活動していた時に所属していた事務所だった。バンドは活動休止ということにしてあるし、たしかに事務所に退職願を出していなければ、首を切られたわけでもない。

 愁の後ろを付いていくように事務所の中を進みながら中を見渡す。さすがに大して変わっていないようで、記憶に残っている通りだ。違いがあるとすれば従業員だったり、所属している人物とかだな。

 

 

「それで?なんでここに連れてきてんだよ」

 

「それはね…ってあれ?丸山さん」

 

「あ、毛利くん。今日は休みじゃなかったっけ?…ってあれ、後ろの2人は…」

 

「うん。仕事じゃないよ。それでこの2人は「いや、いい」…雄弥?」

 

久しぶりだな(・・・・・・)彩」

 

「え、…覚えて…くれて…」

 

「私も覚えてるよ☆目標のアイドルになれたんだってね?パスパレのボーカルやってるんでしょ?おめでとう、彩」

 

「結花ちゃん…も。……あり、がとう…うぅぅ」

 

「よしよし、すぐ泣くのは変わってないんだね〜」

 

「…知り合いだったんだ?」

 

「まぁな。時期的には入れ違いみたいなもんだったが」

 

 

 結花に慰められてる彩に目を向ける。出会ったのは2年ほど前だったか、あの件が起きる少し前に偶々知り合ったのだ。たしか、必死に自主練習をしていた彩に結花が声をかけに行き、俺がそれに付き添っていたんだったな。

 

 

「それにしても、そんなんでMCとか大丈夫なのか?」

 

「うぐっ…それは…今後の課題ということで」

 

「雄弥知らないのー?彩がトチるのって人気なんだよ?」

 

「そんな人気ほしくないよー!」

 

「贅沢言わないの!受け入れられてるだけいい方だよ?バッシングされるより断然いいよ?」

 

「そ、そうだけど…」

 

「まぁ、彩の場合何度失敗しても諦めないからな。みんなもそれが分かってるから応援してくれてるんだろ」

 

「そ、そうかな?…そうだったらいいな」

 

「はぁー。雄弥はすぐそうやって彩を甘やかすんだから」

 

 

 別に甘やかしてるわけじゃない気がするんだが、そこらへんの結花の感性をツッコんでも仕方ない。流しとくとしよう。

 

 

「それより彩はどうしてここにいるんだ?打ち合わせか?」

 

「あ!レッスンがあるんだった!ごめんね、もう行くね!」

 

「行ってらっしゃ〜い。こけちゃ駄目だよ〜」

 

「こけないよ!!」

 

「…慌ただしいな」

 

「あはは、丸山さんらしいとも言えるけどね」

 

 

 彩も不本意な評価を付けられてるな。仕方ないっちゃ仕方ないんだが。止めていた足を動かして目的の部屋へと向かう。愁がドアを開けて俺たちを中へと招く。俺と結花はそれに従って中に入ると、懐かしい顔があった。

 

 

「久しぶりだなー!2人とm「「うるさい」」ガハッ…」

 

「あー、これ見るのも久しぶりだね〜」

 

「再会して…最初に……なにすんだ…よ」

 

「いや、ノリで」

 

「そうそう。大輝相手にはこんなもんでしょ?」

 

「2人同時に蹴るとか……白か

 

「は?」

 

「〜〜〜っ!!?この、変態!!」

 

 

 結花が顔を真っ赤にして制服のスカートを抑える。結花は相手にならノリノリで仕掛けるが、こんな感じで自分に被害が来ると瞬間で乙女になるんだったな。涙目で俺の方を見てくる結花に頷き返して、ずっと静観していた俺達のリーダーである疾斗にアイコンタクトを送るとゴーサインが出た。よし、やる(殺る)とするか。

 

 

「えっと…雄弥さん?」

 

「どうしたクズ」

 

「クズ!?」

 

「喋っていいとは言ってないだろ」

 

「そこまで扱い酷いんすか!?ちょっ、待って待って!!謝るから…イタタタ!!腕はそっちに曲がらな…!」

 

「雄弥、さすがに折るなよ」

 

「なら落とすとするか」

 

「う、腕がイカれるかと…あのー、雄弥さん?」

 

「止めるとは言ってないだろ?」

 

「首はどうかと……ぐっ…」

 

「ふぅー。いっちょあがりっと」

 

「大輝をすぐに落とせるのって雄弥ぐらいだよな」

 

「疾斗でも無理だもんね」

 

「あいつの馬鹿力は俺じゃ抑えれないからな」

 

 

 なにをとぼけたことを言ってるんだか…。疾斗が本気を出せば大輝を気絶させれるだろ。しかも俺がこうやってすぐに落としてるのも、ある種のネタとしての流れだからな。大輝もそれが分かっててあまり抵抗しないし、すぐに目を覚ます。

 

 

「結花、これでいいだろ」

 

「…雄弥…ん」

 

「…なにを期待してる」

 

「ん!」

 

「……はぁ。ホント、姉なのか疑うんだが」

 

「そう言いながら雄弥って結花の要望聞くよね」

 

「愁。雄弥もシスコンだからに決まっ、だはっ!」 

 

「…消しゴムってこんなに威力出せるんだね」

 

 

 なにやらおかしな事を言ってた疾斗をとりあえず黙らすことに成功した。結花の様子は……もう少しかかるか。今何してるかと言うと、ただ単にハグしてるだけだ。嫌なことがあったり、機嫌を悪くしたりしたら必ず結花はこれを要求してくる。こうやって体を触れ合わせると安心するんだとか。ちなみに、結花は"充電"って言ってる。

 

 

「あぁー、久しぶりに落とされたぁ」

 

「相変わらず軽い反応だね」

 

「まぁな。雄弥もうまい感じで落とすからよ」

 

「…君たちホントは馬鹿でしょ」

 

「勉強できるバカってやつだな!」

 

「雄弥と大輝を一緒にしないでよ」

 

「お、結花も復活か」

 

「そういう疾斗もな。んで?なんで集まってんだ?」

 

「お前らが帰ってきたっていうのを聞いたからな。それが1つで、もう1つは、まぁちょっとな(・・・・・)

 

 

 また疾斗が何やら考えていたらしい。大方の予想はつくし、それは結花も同じなようだ。…やれやれ、頑張らないといけないな。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「今日の練習はここまでよ。みんな家に帰っても少しは復習するように。…ライブも近づいてるのだから」

 

「分かってますよー!今度のライブはお姉ちゃん達も出るから、あこ気合十分です!」

 

「頑張ろうね…あこちゃん」

 

「うん!」

 

「あたし次の予約してくるから、片付け始めといてね。…散らかしちゃだめだよ?」

 

「わかってるわよ。そんな醜態1回だけで十分だわ」

 

 

 みんながそれぞれ道具を片付けていく時に、あたしは次の予約を取りに行く。これはいつもあたしがやってること。だから今日も1人で受付まで来たんだけど。

 

 

「今井さん。この後少し時間をもらってもいいかしら?」

 

「紗夜?別にいいけど珍しいね?」

 

「あなたに…いえ、あなただけにしか話せないから」

 

「あたしにしか?」

 

「ええ。日菜と同じクラスということは、彼のことは知ってるのよね?藤森雄弥くんのことを」

 

「っ!!…うん、知ってるよ。…そっか。Roseliaならあたしと紗夜しか知らないもんね。友希那は話しかけに行くタイプでもないし」

 

「そういうことよ。…少し気持ちの整理がしたいの。それに付き合ってくれないかしら?」

 

「もちろんいいよ!友希那にはあたしから言っとくね☆」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして♪」

 

 

 紗夜からこんなお願いされるなんてね☆あたしは気持ちが浮かれるのを自覚して、紗夜と話をするまでにはなんとか落ち着かせれた。

 

 友希那には少し待ってもらうことにして(夜暗いし)、あたしは紗夜の話を真剣に聞いた。力になってあげたいって思ったから。

 

 その思いは達成できたと思う。だって紗夜が柔らく微笑めてたから。

 

 本当によかった。

 

 …なのに。

 

 

「リサ…私には2人が話してたことを想像することもできないわ。でも、話せないことだとしても頼ってほしい」

 

「ゆきな…」

 

「…今は胸を貸してあげることしかできないけど」

 

「ありがと…うぅ…」

 

 

 なのに

 

 

 

 なんで、あたしの心は

 

 

 

 

 こんなに締め付けられるように悲しんでるんだろ…

 

 

 




バンドの活動休止のことは話さない。でもバンドの事自体なら話す。そんな線引きなのです。
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