「さて・・・」
嫌気がさすほどに空は青くはれている。廷内を見渡すために適当に上った建物の屋根の上には穏やかな風が吹き薫の頬を優しく撫で上げる。
(幸いここは四番隊、旅禍とやり合ったやつらはみんなここへ運ばれてくる。おかげで奴らの情報が集まるのはいいんだが、当然戦った場所からは移動してるだろうから肝心の位置がわからねぇ)
フーッと息を吐き顎に手を当てさらに思考の世界に没入する。
(だめだ、やはり奴らの目的なりなんなり情報が集まらないとほかの闇雲に探してる奴らと変わらない、か。仕方ない、ここは一旦隊舎に戻って大けが負って運ばれてきたっていうチンピラ隊の三席に話を聞いてみるか・・・?ダメもとだが)
軽く顎に手を当てたまま後ろを振り返ろうとすると前方、少し遠くの路地から怒号と砂煙、そして感じた事の無い強い霊圧を感じた。どうやら誰かが争っているようだ。
ふむ、と喉の奥でうなった薫は
(日頃の行い、か・・・)
などと彼の部下たちが聞いたらそれこそ総突っ込みを食らわせそうなふてぶてしいセリフをこころの中で吐くとその怒号の発生源に向かって走って行った。
「さて、これはどうしたものかな」
もはやわざとらしいと言えるくらいに冷静さを装おうとしてそれができずに変にゆがんだ声が絞り出される。状況は非常に混沌としたものになっていた。
今、薫の目の前では例の旅禍と思われる二人組が自分の班の副班長を人質にとって逃げようとしている所だった。
それだけならまだいい。いや、本当はよくないのだがまだそれならいい。問題なのはそいつらを囲んでいる例のチンピラ隊の連中が花太郎に人質としての価値を認めず
殺せば一石二鳥等とのたまっている事だ。薫のこめかみに青筋が浮く。
(あんのド三下チンピラもどきが!!隊員全員クソみてぇな変な髪形してるくせに!クソッ旅禍に見つからず観察できるなんていう絶好の状況じゃなけりゃ
今すぐ飛び出して行ってド突きまわしてやるところだ)
そうしているうちに事態は急変していた。花太郎と彼を人質にとっている二人の旅禍ばかりに注目していた薫は近くに接近する強い霊圧に気が付くことができなかった。
ゴバァッッ
ぎゃあぁぁぁ~~~!!
轟音と共に近くの塀が吹き飛び大量のがれきが雪崩を打って飛び出してきた。しかもその瓦礫が吹き飛んできたところは件の二人の旅禍を挟み撃ちにしていた
チンピラがいたのだ。おかげで更木隊の連中は半数が気絶するは旅禍達は混乱に乗じて逃げ出すわで大混乱であった。
「あ~あ、カワイソ(ざまあみろ)」
形ばかりの同情をした後薫は逃げた二人の旅禍を追い始めた。塀を吹き飛ばした存在の方も気にはなったが、感じる霊圧から鑑みるに逃げた方が脅威度が高そう
だったし何よりなぜかもう必要ないはずの花太郎まで連れてかれてしまっているのだ。さすがに追わないわけにはいかない。チンピラ共のうめき声が聞こえた気
がしたが気のせいということにして薫は逃げた二人組を追った。
・・・・ッドッゴォ
・・・・・・ぎゃあ~~~~!!
遥か後ろの方から悲鳴が聞こえてきた気がしたが気にしない。気にしないったら気にしない。薫は、花太郎のことをこころの底から心配していたので涙をのみつつ、後ろを振り返らず旅禍の追跡を続けたのであった。