「美味い! 日本の食事は美味いぞ!」
「うんうん! これよ! これが故郷の味なのよ!」
そんな風に言いながら、凄い勢いで食べる二人……昨日部室で会ったゼノヴィアとイリナだ。
部室での交渉から一日経った。
俺は今、二人と一緒にファミレスに来ている…………俺の奢りで。
放課後、ちょっと頼みたいことがあったので二人を探していると、何故か物乞いのようなことをしている二人を見つけたのだ。
話を聞くと、イリナがヘンテコな絵をアホみたいな額を払って買ったらしい……それに路銀の全てを使ったとか。
……あれ、イリナって実は残念な娘?
「ふぅ〜、落ち着いた。堕天使幹部の君に救われるなんて、世も末だな」
と食べ終わって一息ついたゼノヴィアが言った。
……奢ってもらう立場だってのに、随分な言い方だな。
顔が引きつっているかもしれないが、なんとか口に出すのは我慢した。
「はふぅ〜、ご馳走様でした。ああ、主よ。心やさしき人間にご慈悲を」
イリナが言葉と共に胸の前で十字を切る。
「俺だからいいが、悪魔達の前ではやるなよ? ダメージ受けちまう」
思わず苦笑しながら注意してしまった。
「で、私達に接触した理由は?」
水を飲んで、息をついたゼノヴィアが改めて聞く。
「まず最初に確認したいんだが、お前らの任務はエクスカリバーの奪還だよな?」
「ええ、そうよ」
「それって最悪エクスカリバーを破壊しても、その核である『かけら』を回収出来ればそれでいいのか?」
「ああ。教会は堕天使に利用されるくらいなら、エクスカリバーがすべて消滅しても構わないと決定した。私達の役目は、最低でもエクスカリバーを堕天使の手から無くすことだ」
二人共敵意や隔意などを見せず、案外あっさり答えてくれる。
食事の力は偉大……ってことか?
「なら、頼みたいことがある」
「頼みたいこと…?」
ゼノヴィアもイリナも不思議そうな顔をしている。
「エクスカリバーの破壊に協力したい」
「……何?」
ゼノヴィアが訝しげに聞いてくる。
確かに、普通あり得ない提案だしな。
「ただ、俺は堕天使の幹部だ。堂々とお前らに協力する訳にはいかない。それに、本当に破壊したいのは俺じゃない。ある奴に破壊させたいんだよ」
「……誰だ?」
「昨日部室にいたグレモリー眷属の一人だ」
俺がそう言うと、二人共途端に嫌そうな顔をする。
「こちらは、悪魔達と関わりを持っているように上にも敵にも思われたくないのだが」
「そんなのは分かってるよ。屁理屈だけど、そっちはドラゴンの力を借りたことにすればいい。もちろん、そいつには正体がバレないようにしてもらうし、お前らとは別行動をとってもらう。あとは、そいつが眷属の仲間に協力してもらったとすれば、むこうが複数で動いたとしても一応角は立たないだろ?」
万が一の時、神器を明かすことや”赤龍帝”の名前を使うことについては、一応昨日の内にイッセーから了承を得ている。
……こういう風に使うことは言ってないから、結構危ない橋なのは間違いないが。
「……確かに、な。だがドラゴンの力というのは? そのような者はいなかったと思うが」
まぁドラゴンそのものじゃなくて神器だし、二人の実力じゃそう簡単には気づかないよな。
もっと上の連中なら気づける奴も多いんだけどね。
「『兵藤一誠』だよ。あいつは『
「「ッ!?」」
お〜お〜、二人共ビックリしてるな。
「『赤龍帝の籠手』……
「こんな極東の地に”赤龍帝”がいるなんて…」
ま、そういうのに場所はそこまで関係ないと思うんだがね。
それに、この地はこの先かなり重要な場所になる気がするし。
「それでどうだ? 受けてくれるか?」
「……まぁ破壊出来るのであれば、一本くらい任せてもいいだろう」
「ちょっと、ゼノヴィア。いいの? 相手はイッセー君とはいえ、悪魔なのよ?」
……どっちかって言うと、イリナの反応の方が普通だよな。
二人で言い合いを始めたので、口を挟まず内心でツッコミを入れながら話を再開するタイミングを待つことにする。
「イリナ。正直私達だけでは、三本回収とコカビエルとの戦闘は辛い。奥の手を使ったとしても、任務を終えて無事帰れる確率は三割だ」
俺はそんなにないと思うがね。
「それでも高い確率だと、覚悟を決めてこの国に来たはずよ」
「そうだな。上にも任務遂行してこいと送り出された。自己犠牲に等しい」
「それこそ、私達信徒の本懐じゃないの」
それだけは、一生理解出来ない気がするよ。
「気が変わったのさ。私の信仰は柔軟でね。いつでもベストなカタチで動き出す」
「あなたね! 前から思っていたけど、信仰心が微妙におかしいわ!」
やっぱりそう思うよな。俺が知ってる限り、信徒って堅物ばっかりだし。
「否定はしないよ。だが、任務を遂行して無事帰ることこそが本当の信仰だと信じる。生きて、これからも主の為に戦う。……違うか?」
「……違わないわ。でもやっぱり、あなたの信仰心は変だわ!」
「変で結構。しかし、イリナ。彼は君の古い馴染みだろう? 信じてみようじゃないか。ドラゴンの力を」
「…………」
「あ〜〜、そろそろいいか?」
イリナが黙ったところで、いい加減我慢が出来ず口を挟んだ。
「あぁ、すまなかった。ところで少し気になったんだが、この話を受けたとして君のメリットはなんだ? 特に見当たらないのだが」
ゼノヴィアが聞いてきた。
「まず前提条件として、俺達はこの町に住んでいる。つまり、グレモリー達とは局地的な不戦協定が結ばれていて、一時的に共存しているんだ。だから、グレモリーに恩を売れるってだけでこっちにはメリットになるのさ」
「なるほど」
ゼノヴィアもイリナも頷いていた。
「んじゃ、商談成立ってことでいいな?」
そしてゼノヴィアは普通に、イリナは不承不承といった感じで同意した。
「んじゃ、イッセーに連絡とるわ」
「……ああ、もう一ついいかな?」
携帯を取り出したところでゼノヴィアが再び言う。
「なんだ?」
一度携帯をしまって、話を聞く姿勢に戻る。
「やはり納得出来ない。先ほど言ったこともウソではないのだろうが、理由としては弱いし本音ではないだろう? 君の本当の目的はなんだ?」
……なかなか鋭いな。
「……あ〜〜、ごちゃごちゃ考えるのもめんどくさくなってきたな。OK、分かった。正直に言うと、お前らと悪魔達には聖剣に専念してほしいんだ」
「……どういう意味よ?」
「コカビエルには手を出すなってことだよ。あいつは俺の獲物だ。誰にも譲る気はねぇし、余計な茶々を入れられたくもない」
「正気か? コカビエルがどれほどの相手か君なら……いや、むしろ君の方がよく知っているハズだろう?」
「だからだよ。お前らじゃあいつには束になっても歯が立たない。俺は一対一なら勝てるが、足手まといがいたらそれも厳しくなる」
俺の見下してるともとれる言葉に、ゼノヴィアがこちらを睨みつける。
イリナも面白くなさそうな顔をしている。
「そう怒った顔をするな。せっかくの美少女が台無しだ。コカビエルの相手をしなくていいならお前らの生存率は跳ね上がるし、俺も他を気にしなくていいから勝てる。ついでに、もしエクスカリバーをコカビエルが持っていたらそれも奪い返してやるよ。……どうだ? 悪い話じゃないだろ?」
俺の軽口にも二人の表情は変わらない。
褒めたんだし、少しは反応して欲しかったな。
「……確かに悪い話ではない。むしろこちらにとっては良すぎる話だ。だがそれだけに信用できない。何が狙いだ?」
相変わらず睨みつけながらこちらに尋ねるゼノヴィア。
「おいおい、さっき言ったろ? 誰にも譲る気はないって。俺はせっかくの大物と戦える機会を、誰にも取られたくないだけだよ」
俺はそう言うと再び携帯を取り出して、今度は二人が何か言う前にイッセーに連絡した。
また話がほとんど進まなかったでござる
本当なら今回は、エクスカリバー破壊団結成までの予定でした
前回の後書きにもそう書きましたしね
……実際は教会側の二人との会話だけで終わってしまいましたが
という訳で、次回こそエクスカリバー破壊団結成します
……それだけで終わらないといいなぁ〜
この調子だと、コカビエルと戦うのはいつになることやら