前回のトドメの技で、天からお塩や真っ黒などと迷ったのは内緒。デッドリーも捨てがたかった…
家に転移で帰ってきた俺達は、細かいことは置いてひとまず休むことにした。
今日一日の間に結構いろいろあったし、アーシアなんかは重症患者を二人も治療して疲れているだろうからこれは仕方ない。
イリナが放心状態なので少し心配だが、とりあえず明日まで様子を見てみることに。このまま一人で立ち直れなかったら手を貸そう。
それより今はミッテルトだ。
何を悩んでいるのかはなんとなく分かるが、ずっと今のままでいられると困る。
と言うことで、ちょっと話を聞きにいこうか。
コンコンコン
「ミッテルト、今ちょっといいか?」
「……何? どうしたの?」
ノックをして扉越しに話しかけると、少し遅れてミッテルトが顔を見せた。やっぱり様子が変なままだな。むしろ少しずつ酷くなってるか?
ちなみにアーシアはイリナの介抱のために白音達の部屋にいる。空いてる部屋がないので、今はいない白音と燐の部屋に一時的に運んだのだ。
多分白音あたりに俺の部屋で寝てもらって、俺はリビングのソファで寝ることになるだろうな。
あんな状態のイリナを一人にしておくのはかなり不安だし、女の子をソファで寝かせるとか俺にはできないから。俺はよほど変な状態でもない限りどこでも眠れるしな。
俺の部屋で寝るのが白音だと思ったのは、単に俺との付き合いが一番長いからだ。
閑話休題
「少し話がある。リビングでいいかな。お前少し前から様子が変だぞ?」
「……分かった」
部屋を出てリビングに行くとソファに座る。が、ミッテルトはなぜか立ったままだ。
「どうした? そんなとこで立ってないで座れよ」
「……話って…?」
なるべく顔に出さないようにしているつもりみたいだが、見てすぐに分かるほど泣き出しそうな表情をしている。声も抑えてはいるが震え気味だ。
「何……別にお前はいらないから出てけとか言う訳じゃないから、そんな泣きそうな顔をするな、よっ!」
「……あっ!」
とっさに手をとって引き寄せると、そのまま膝の上に横向きに座らせる。
「最初に言ったろ? 俺がお前を気に入ったから仲間に誘ったんだ。役に立つとか立たないとかはどうでもいいんだよ」
そのままの姿勢で言うと、かなり驚いたようで目を丸くしている。
「……知ってたの? ウチがそれで悩んでるの」
「知ってたと言うか、様子を見て分かっただけだ。お前分かりやす過ぎ」
「ウソっ!?」
……お前あれで気づかれないと思ってたのか? 気づかない方が逆に難しいくらい分っかりやすかったぞ。
「アーシアは神器が破格でたまたま即戦力になってるだけで、白音はそもそも修行を始めた時期が違いすぎるから役に立つのは当たり前。だからお前が悪い訳じゃないし、比較するだけムダだよ」
「で、でも…」
えぇい! まだ言うか、こいつ!
「そもそも俺は、仲間に高い戦闘力を求めちゃいない。まぁ流石に自衛力くらいはあってほしいけどな」
「……そうなの?」
「ああ。今日見て分かっただろうけど俺は戦闘狂だ。だから基本戦うのは俺で、仲間には主に俺のサポートをしてもらいたいんだよ。俺は一度戦い始めると、他に気を配ることが極端に少なくなるからな。……実はそれで一度痛い目を見てるし」
うん。あの時は精神的にもそうだが、物理的にかなり痛い目を見たな。
「……実はここだけの話、ミッテルトには頼みたい役目があるんだよ」
「頼みたい役目…?」
おぉ、表情に明るさが大分戻って来たな。同時にだんだん顔が赤くなってきてるけど。
……実は俺もちょっと恥ずかしい。なぜこんな体勢にしたし、俺。
「アーシアには言って無いんだけど、アーシアが魔女に堕とされたのは意図的なものだった可能性がある。聖女と呼ばれる少女が、ある日突然魔女に堕とされるって話がここ数年の間に結構あるんだよ。誰かが意図的にやってる可能性はかなり高いと思う。んで、そういう娘の大半がその後の行方が分からなくなってるんだ」
「だからアーシアも?」
「ああ、その一人だろうと予想してる。アーシアはなぜか行方知れずになって無かったけど、まだ誰かが狙ってる可能性は十分にある。行方不明ってことは悪魔に転生したのかもしれないし、そうでなくともアーシアの神器は悪魔としては喉から手が出るほど欲しいものだろう? 悪魔に狙われる理由は十二分にあるのに、アーシアには護る力はあっても戦う力が無い。だから、ミッテルトにはアーシアを護ってほしいんだ」
「でもアーシアはアザゼル様の名前で護られてるじゃん? わざわざそんな娘に悪魔が手を出すかなぁ?」
ミッテルトは不思議そうな顔をしている。そこにはもう暗さは無かった。
「先に転生させて家の眷属だと言い張れば、転生悪魔である事実から向こうに盗られると思う。それに、三勢力以外のところから狙われてる可能性もあるんだぜ? どちらにしろ、護る奴が必要だよ」
「あ、そっか」
「だからそれを、ミッテルトに頼みたい。アーシアと同じ名字を名乗ってて同じ性別だから、常に共に行動するならミッテルトがベストなんだよ。白音は俺の側近みたいなもんだから、あんまり別行動ばっかりされちゃうと俺が困っちゃうし」
もう一人の部下――この際だから言っちゃうと、白音の姉で黒歌と言う――は単独任務で今ここにいないし、そもそも隠密・諜報などを単独行動前提で修行させたから、護衛にまわすのはもったいない。
「でもウチじゃ…」
まぁた表情が暗くなった。仕方ないからトンデモ事実を教えてやるか。
「はっきり言うぞ? 今のミッテルトなら、仮に部長が相手でもいいとこまで行けるハズだ。下手すりゃ勝てる。そのくらいの実力は修行でついてる。……と言うか、俺としては嬉しい誤算だったんだよ。思った以上の才能が埋れてた。お前このまま修行を積めば、下手な中級堕天使より強くなれるぜ?」
普通の堕天使達は修行とかしないけど、修行を積めばランクが上がる奴は結構いると思う。
天使も堕天使も、生まれたその時から能力全開って訳じゃないから、修行である程度までは能力も成長するんだ。
……ミッテルトの埋れてた才能は、はっきり言って驚くほどのものだったけど。
なんだよ、上級に片足突っ込んでるレベルって。才能に対して初期値が低すぎだろ。
「……う、ウチがそんなに…?」
目を丸くして驚いている。
まぁ当然だろうな。今の今まで下級だと思ってた実力が、実は上級悪魔に対抗出来るほどだと言われれば、誰だってそうなる。
「ウソじゃないさ。俺が信じられないか?」
俺がそう聞くと、首を大きく横に振って否定する。
「そ、そんなことない!」
「なら、今は俺を信じろ。仮に今は自分が信じられなくてもいずれ実力が分かる機会が来るだろうし、その時には自分が信じられるようになるさ」
ミッテルトを見つめて、頬に手を当てて言い聞かせるように言う。
「あぅ……わ、分かった…」
ミッテルトは顔を真っ赤にして、うつむきながらも返事をする。
…………何この可愛い生き物。もっとイジメたくなるんだけど。
「つかそもそも、お前の悩みは検討外れなんだよ。俺はお前らを手放す気なんて更々無いぞ。白音もアーシアも、もちろんミッテルトも。三人共俺の女だ」
本当は黒歌も入れて四人だけどね。いや、誰かが嫌がったら減るかもな。ムリ強いする気は無い。
ミッテルトは俺の言葉を聞いた途端、ボンッという音が聞こえた気がするほど一気に顔が真っ赤になった。
「え!? あ、あの……その……あぅぅ…」
言葉になってないぞ〜。
「……嫌か?」
すると、さっきよりもさらに大きく首を横に振った。
「そ、そんなことない! そんなことないけど……」
「けど、何?」
あえて顔を見つめて優しく聞き返す。
「ホントにウチは……し、シンの女で、いいの…?」
俺の服をギュッと握って、顔を真っ赤にして若干涙目な上目遣いで聞いてくる。
いやだから何この可愛い生き物。これでノーとか絶対に言えないだろ。
……いや、一度ノーと言ってからそれを否定した方がもっと可愛い顔を見せてくれるかも…
今は流石にやらないけどね。
「ああ。ミッテルトが嫌じゃなければ、ね」
「嫌な訳ない!」
「なら、ミッテは俺の女だ。絶対に誰にも渡さねぇよ」
俺は言葉と共に、ミッテを抱きしめる。
「う、うん」
ミッテもすぐに抱きしめ返してくれた。それどころか、猫のように体を擦り付けてきた。
……それは白音や黒歌のやることじゃないか? まぁ俺は嬉しいから否定しないけど。
仕草が猫っぽかったので、なんとなく頭を撫でてあげる。
「!……エヘヘ…」
顔を赤くしながら、すごく嬉しそうに笑った。
その後俺達は、そのまましばらくその体勢でイチャイチャしていた。
「…………あ、俺の女はこの先もっと増えるかも」
書いててグヌヌ…となった。羨ましいぞ、シン!
シンの俺の女宣言に黒歌が入って無いのは、単にミッテ達に名前や性別を教えてないからです。
まさかミッテだけで一話使うとは……サラッと流すつもりだったのに。
次回こそはイリナ救済かな?