原作なぞるだけならなくていいよね?
結論から言おう、俺は失敗した。
不本意なストーキングを開始してから最初の休日、ちょっとした用事で義妹と共に少々遠出していた。
その隙に、行動を終えてしまっていたらしい。
懸念した様な事態にならなかったのは救いだが、未だに堕天使共がこの土地に留まっているのが気になる。
……何が目的なのか、がサッパリ分からんのだ。
つかいつの間にやら、奴らの拠点の堕天使も人間も増えてるし、マジで訳が分からん。
人間達は恐らく、堕天使共の加護を受けた『はぐれ
はぐれ
悪魔を殺したい堕天使とはぐれ達とで利害が一致したのだ。
こいつらの厄介なとこは、悪魔だけでなく悪魔を召喚した人間も手にかけるとこだろうな。
まぁ数が多いが、戦力的には問題ないだろう。
堕天使も、この間の奴が主犯格だとすれば全く問題にならない。
一応探りはいれるつもりだが、俺にとって問題になる程の奴がいるとは思えん。
そんな奴がこんな杜撰と言える行動をする筈がない。
「やはり問題は奴らの目的、か」
思わず声に出して呟く。
と、その時
「はわう!」
という声と、誰かが転んだ様な音がした…………俺の後ろで。
今は放課後で、煮詰まった頭を冷やす為に適当に遠回りしながら家に向かっていたのだが……今の呟きを聞いたから転けたんじゃないよな? 厨二病とか勘違いされたくはないぞ。
「大丈夫か?」
手を差し出しながら日本語で尋ねる。
…………内心、変な勘違いされたか、とかちょっとビクビクしてるのは顔には出さん。
「あうぅ、何で転んでしまうんでしょうか……
ああ、すみません。ありがとうございます」
そう言いつつ手を取ってくれたので、引いて立たせてあげる、と風が吹いてヴェールが飛んでいく。
シスター服を着た、金髪美少女だった。
とりあえず、近くに落ちたヴェールを拾いシスターに渡しながら今度は
「大きな荷物だが旅行か?」
「いえ、違うんです。実はこの町の教会に今日から赴任することになりまして……
あなたもこの町の方なのですね。よろしくお願いします」
とりあえず勘違いされていたわけでも、聞かれていたのでもないらしいな……てか、日本語分からないみたいだ。
…………あれちょっと待て、この町の教会?
「この町に来てから困っていたんです。その……私って、日本語うまく喋れないので……道に迷ってたんですけど、道行く皆さん言葉が通じなくて………」
俺がある単語に気を取られているうちに、事情を説明してくれた。
多分、言葉が通じる相手がいて嬉しいんだろうな。
「教会なら場所分かるけど、案内しようか?」
教会については、気にはなるが一旦頭の隅に追いやる。
「ほ、本当ですか!あ、ありがとうございます!これも主のお導きのおかげですね!」
本当に嬉しそうに言うな……しかし、何故こんな娘が?
どうしても気になるが、今考えても分かるはずない事を考えながら、自己紹介をする。
「俺の名前は憐城慎。シンでいいよ。君は?」
「あ、私はアーシア・アルジェントといいます。アーシアと呼んでください」
「わかった。それじゃあ行こうか、アーシア」
「はい、シンさん」
ホントいい娘なんだけど…………なんとなく堕天使共の狙いが分かった、分かってしまった。
想像通りだったら、この娘の命がヤバい。
最悪、アザゼルに打診するか……
そんな事を考えながら教会に向かって歩いて行くと
「うわぁぁぁん!」
という男の子の泣き声が聞こえてきた。
どうやら公園で遊んでいて、転んだらしい。
母親もいるし、問題ないかな。
なんてことを公園に顔を向けて考えていたら、アーシアが座り込んだ男の子の傍へ近寄っていく。
当然、俺もついていく。
するとアーシアは
「大丈夫?男の子ならこのくらいの怪我で泣いてはダメですよ」
なんていいながら、優しく男の子の頭を撫でる。
その後、おもむろに自身の手を怪我をしている膝へ翳す。
「なんと……」
思わず驚きを声に出してしまった。
アーシアの手から淡い緑色の光が発せられ、男の子の膝を照らすと、早送りでもするかの様に怪我が治っていくのだ。
知識としては知っていたが、所有者や使用しているのは初めて見る……これが回復系の神器か。
…………同時に確定、か…
「はい、傷はなくなりましたよ。もう大丈夫」
気がつくと治療は終わっており、アーシアは俺に顔を向けると
「すみません、つい」
と、舌を出して、小さく笑いながら言った。
キョトンとしていた母親は頭を下げると、同じくキョトンとしていた男の子を連れて、そそくさと去ろうとする。
「ありがとう! お姉ちゃん!」
男の子は手を振りながら、礼を言う。
「ありがとう、お姉ちゃん。だとさ」
俺が通訳すると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
どう考えても地雷だが、尋ねないのも変だよな。
「その力は?」
「はい。治癒の力です。神様から頂いた素敵なものなんですよ」
アーシアは微笑むが、その笑顔はどこか影があった。
だから
「そっか」
と短く返すだけにして、また歩きはじめる。
アーシアは特に何も言わずについてきてくれた。
「あ、ここです! 良かったぁ」
地図のメモと照らし合わせながら、アーシアが安堵の息を吐く。
「無事ついて何よりだよ。悪いけど、この後用事があるから今日はこれで」
「今日は本当にありがとうございました。今日のお礼もしたいので、暇な時にでも教会に来てくださいね」
アーシアは笑顔を浮かべているが、どこか寂しそうだ。
それを見てしまったら、こう言うしかない。
「ああ、機会があったら訪ねさせてもらうよ。それじゃアーシア、またね」
「………」
なぜかアーシアがキョトンとしている。
「どうかした?」
「い、いえ。またね、なんて友達みたいで、ちょっと嬉しくなっちゃって……」
なんていい娘で不憫な娘なんだ……
「みたい、なんて悲しいな。もう友達だろ?」
だから、こう返す。
「それとも、俺じゃイヤか?」
……意地の悪い質問だな。
「い、いえ! そんなことありません! ただ……」
「ん?」
「……シンさん。私、世間知らずです」
「大丈夫だよ。これから知っていけばいいんだし、俺も言うほど知ってる訳じゃないし」
「……日本語も喋れません。文化も分かりませんよ」
「その辺は俺が教えてあげるよ。幸い、教育熱心な親に育てられたから、言語に関してはかなりのものだと自負してる」
「………友達と何を喋っていいかも分かりません」
「そんなのは何でもいいよ。今日何があった、とか昨日見たテレビがどうだ、とかそんなのでいいのさ。無理に何かを喋らなきゃいけない訳でも無いしね」
「……私と友達になってくれるんですか?」
「ああ。むしろこっちからお願いしたいくらいだよ」
すると、アーシアは涙を浮かべながらも笑顔で言った。
「これからよろしくお願いします!シンさん!」
アザゼルは結構教育熱心。異論は認める
多くの二次創作がアーシアをオリ主のヒロインにしない? なら、自分で書けばいいじゃない!
というのがこの作品誕生のキッカケだったりする
ともあれ、ようやくヒロイン一人登場!
…………単語だけなら何度か出てきてる娘がいる? な、何のことかなぁ?