「アザゼル。先ほどの話の続きだ」
サーゼクスがアザゼルに話しかける。
「あー、何だ?」
「神器を集めて、何をしようとした? 『神滅具』の所有者も何名か集めたそうだな? 神もいないのに神殺しでもするつもりだったのかな?」
アザゼルはその問いに首を横に振る。
「備えていたのさ」
「備えていた? 戦争を否定したばかりで不安を煽る物言いです。それに会談では一度も触れませんでしたが、そこの彼を幹部に登用したのも結構な不安要素でしたよ?」
ミカエルが呆れたように言う。
おぉ、よかった。って言い方は変だけど、一度も触れられてないから逆に不安だったんだよな。
「言ったろ? お前らに戦争はしない。こちらからも戦争をしかけない。ただ、自衛の手段は必要だ。って、お前らの攻撃に備えている訳じゃねぇぞ?」
「では?」
「……『
「カオス、ブリゲード……?」
サーゼクスは知らないようで、眉根を寄せている。
「いや、あんたら現魔王が知らねぇのかよ」
「シン、余計な口を挟むな」
思わず口を出すと、アザゼルがそれを咎める。
「そうは言ってもよ、現魔王が知らないのは問題だぜ?」
「それはどういう意味だい?」
俺の言い方が気になったのか、俺に聞いてくるサーゼクス。アザゼルは諦めた様子でため息をついている。
「『禍の団』ってのは簡単に言えばただのテロリストだ。ただ、その構成員が問題なんだよ。三大勢力の危険分子が集まってる。とは言っても、中には禁手に至った神器持ちの人間なんかも含まれているし、『神滅具』持ちも数人確認しているよ。その中で俺が問題視しているのは、現時点での最大派閥だ」
「最大派閥?」
「そう。やつらも一枚岩ではなくて、いくつかの派閥に分かれている。それぞれに名があったりするが、最大派閥の名を聞けば嫌でも俺の言ってる意味が分かるよ」
「その名は?」
サーゼクスはかなり気になっているようで、真剣な表情で問いかけてくる。
「……『旧魔王派』だ」
「ッ!! 何だって!?」
かなり驚いた様子のサーゼクス。話を聞いていたミカエルやグレイフィアも絶句している。
「新旧魔王サイドの確執が本格的になったってことらしい。情報通りなら、今回のこの攻撃も旧魔王派が受け持っているハズだし、いずれここにレヴィアタン本人が現れるハズだ。…………ま、それ以外に組織の頭も結構問題だったりするけどな。『
サラッと二つも大事なことを暴露すると、
「「「ッ!!」」」
再び絶句してしまう一同。
と、ここで突然会議室に女性の声が響いた。
『そう、オーフィスが「禍の団」のトップです』
声と同時に床に魔方陣が浮かび上がる。そこから現れたのは、胸元が大きく開いていて深いスリットの入ったドレスに身を包んだ女性が一人。『カテレア・レヴィアタン』だろう。
そしてカテレアが現れたのとほぼ同時に、俺の後ろにも魔方陣が浮かび上がり二人の人影が現れる。
「ん? おぉ、白音……と、アーシア!? 動けたのか?」
「……いえ、私は最初から動けましたが、アーシアさんはムリでした。なので動けるようにしていたら、ここまでかかってしまいました」
器用だな、おい。俺、文珠無しじゃそんな芸当出来る自信ねぇぞ?
などと考えながらカテレアと魔王の話を聞いていたが……正直吹き出しそうだ。アホらしいにもほどがある。
「プッ……。ククククッ」
「クッ……。クックックックッ」
…………訂正。アザゼルと二人で、抑えきれてなかった笑いが漏れてた。
「アザゼル、何がおかしいのです?」
俺は無視かよ。人間だからってナメてるな?
「ハハハ。お前……いや、お前ら、こぞって世界の変革かよ」
「そうです。それが一番正しいのですよ、アザゼル。この世界は……」
「腐敗している? 人間が愚か? 地球が滅ぶ? おいおいおい、今時流行らないぜ?」
腹を抱えて笑うアザゼル。俺は我慢しているってのに、このオッサンは……。
「アザゼル、あなたもあなたなのですよ。それだけの力を有していながら、今の世界に満足などと……」
「言ってろ。お前らの目的はあまりに陳腐で酷すぎる。なのにそういうやつらに限ってやたらと強いんだよな。まったく、傍迷惑だ。レヴィアタンの末裔、お前のセリフ、一番最初に死ぬ適役のそれだぜ?」
「アザゼル! あなたはどこまで私達を愚弄する!」
……やっぱ我慢出来ねぇわ。
「クックックックッ、アッハッハッハッ! あ~~、笑える。マジで三流のやられ役かよ。まさかここでやられて、『四大魔王の中で最弱』とか『旧魔王派の面汚しよ』とか言われんのか?」
「貴様ッ! 人間の分際でッ!!」
アザゼルにバカにされた時よりさらに激怒した表情で、全身から魔力のオーラを迸らせる。
「あれぇ? 怒っちゃうの? 人間ごときの戯言でマジになっちゃうの? 旧魔王の血族の誇りとかないの?」
「いい加減にしろっ!!」
こいつ煽り耐性低いなぁ。もう二、三個くらいは言ってやろうと思ってたのに、その前に魔力弾ぶっ放してきやがった。
とか考えながら、魔方陣を展開して受け止めた後魔力弾を壊す。大きさの割りには威力が高いので、はじくとよそがヤバいからな。避けると今度は白音とアーシアに当たっちゃうし。
「クッ! 人間のくせに生意気なっ!」
「いや、さっきから人間だからって俺のことバカにしすぎじゃね? これでも一応堕天使幹部の一人なんだ。ここまでナメられると、流石にカチンとくる」
つか多分、俺はここにいるやつらの中で最強だよ?
「つ~ことでだ、こいつは俺がもらうぞ?」
「…………カテレア、降るつもりはないのだな?」
サーゼクスからの最後通告ってところか。が、カテレアは首を横に振る。
「ええ、サーゼクス。あなたはいい魔王でした。けれど、最高の魔王ではない。だから私達は新しい魔王を目指します」
「そうか。残念だ」
「んじゃ~……行こうか」
そう言って瞬時に身体強化をすると、カテレアの横に高速で移動して殴り飛ばす。寸前で気付いて防御したが、関係ないな。
「っらあ!」
「ぐっ!」
声とともに力ずくで吹っ飛ばす。吹っ飛んだのは窓の方だ。追撃してもう一発殴る。
「ご開通ってね!」
その一撃でカテレアがさらに吹っ飛び、会議室の窓をぶち抜いた。
俺も窓から飛び出すと、空中にボックスを作り出してそれに立つ。
「やってくれましたね!」
空中で体勢を立て直したカテレアがこちらに向かって叫ぶ。
「一応、自己紹介しておこうか。俺は堕天使幹部の『異能者』だ。ま、人間風情じゃ物足りないかもしれないが、俺といっちょハルマゲドンでもシャレこもうか?」
「望むところだ! 今すぐ殺してやる!」
丁寧語が崩れてますよ~。なんてのん気なことを考えていたら、先ほどとは比べ物にならない大質量の魔力弾を放ってきた。
「おわっ! あぶねっ!」
考え事をしていて回避が遅れた。すれすれで魔力弾を避けると、避けた先に同質量の魔力弾が複数迫る。
「ちょっ! 人間っ! だってっ! ナメてたっ! くせにっ! 容赦ねぇ、なっと!」
続けざまに迫る魔力弾を避けると、言葉の終わりとともに右手を横に振るって複数の魔力弾を放つ。威力はカテレアのものと同等かちょい上くらいだな。
「甘いっ!」
しかしそれは、カテレアが何重もの防御方陣を張って難なく防いだ。
その後も同じような展開がしばらく続いた。カテレアが魔力弾を放っては俺がそれを防ぎ、俺が放ってはカテレアが防ぐ。
「……飽きてきたなぁ」
「何ですって?」
思わず口にすると、カテレアが眉を顰める。
「いやぁ、たまにはこんな戦い方もいいかなぁ、なんて考えて付き合ってみたんだが……思ったよりつまんねぇんだわ。だからさぁ……」
そう言うと、身体強化の度合いを変える。そして今出せる最速で近付くと、
「……やっぱぶん殴ることにするわ」
宣言通りぶん殴った。今度は反応し切れなかったようで、直撃して思いっきり吹っ飛んでいく。
「えいっ!」
ついでに魔力弾を複数放っておく。吹っ飛んで体勢が整っていなかったので、当然全て直撃した。
「んじゃあ、こっからは蹂躙と行こうか!」
「ナメるなっ!」
思ったより早く体勢をたて直して、こっちに叫ぶ。そして懐から小瓶を取り出すと、中に入っていた小さな黒い蛇らしきものを呑み込んだ。
刹那……。ドンッ! と空間が激しく振動し、カテレアの全身から放つ魔力が膨れ上がる。
……チッ! 一気に魔王クラスにレベルアップか!
先ほどのように高速で近付いて殴ろうとするが、難なく反応して魔力弾を放つ。
「チイッ!」
とっさに下がって避ける、が……
「おいおいまたかよ!」
またも避けた先に複数の魔力弾が迫ってくる。
とその時、横合いから完全に予想外の一撃が俺を襲った。
ヤバイ。戦闘って難しい……。こんなんで大丈夫ですかね?