「ふ……ふざけんなァァァァァ~~~~~~~~~ッ!!」
「…………んぁ……?……何だ……?」
すさまじい龍の波動と叫び声で目が覚めた。実際叫び声はそこまで気になってないけど。
「あ、シンさん。目が覚めたんですね」
目覚めた俺に最初に気付いたのはアーシアだ。ずっと膝枕をしててくれてたみたいで、後頭部に柔らかい感触があるし目を開くとアーシアの胸と顔が見える。
「……おぉ、ずっと膝枕しててくれたのか、ありがとな。んで、何事だ?」
「……イッセー先輩がキレたみたいです」
今度は白音。他は全員どこかへ出払っているようで、姿が見えない。
ギャスパーの神器の効果は消えているようだし、校庭にいるのかな。ミッテとイリナはどうしたんだ?
「ほう? そりゃまたなぜ? つか、状況は?」
アーシアのヒザの感触が名残惜しいが、起き上がって二人に尋ねる。
「え、えと、見てなかったので分かりません」
「……すみません、私もです」
二人共申し訳なさそうな顔をして言う。
「いいって。俺がここで寝てたからだし。ヒザ、大丈夫か?」
「ちょっと痺れちゃいました」
アーシアは苦笑しながら答える。
「少し休んでるといいよ。俺は状況を確認してくるから」
そのまま立ち上がって、旧校舎の方が見える窓の方へ行く。すると、イッセーがヴァーリをタックルで吹き飛ばしているのが目に飛び込んできた。吹っ飛ばされた勢いのまま地面に叩きつけられるヴァーリ。吐血もしている。おいおい、結構やられてんじゃねぇか、あいつ。
だが憤怒しているイッセーと違い、ヴァーリは吹っ飛ばされたにもかかわらず嬉々とした笑みを浮かべている。
さっすが戦闘狂……っておい、『
危険を感じたんだろう、イッセーがヴァーリにトドメをさそうとした時…………夜空に浮かぶ月をバックに人影が一つ、イッセー達の下へ舞い降りた。三国志の武将が着ているような鎧を身にまとった男だ。
……ふむ、面白くなりそうだな。
「ちょっと行ってくるわ~」
そう言って窓から飛び出す。
「……え? あ、ちょっと、シンさん!?」
アーシアが何か言っているが無視してしまった……後でフォローしておかないとな。
「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ」
「『美猴』か。何をしに来た」
気軽に話しかけた男に、ヴァーリは口元の血を拭いながら立ち上がって言う。
「それは酷いんだぜぃ? 相方がピンチだっつーから遠路はるばるこの島国まで来たってのによぅ? 他のやつらが本部で騒いでるぜぃ? 北の
「チッ! 外したか!」
「シン!?」
男がヴァーリと話している間にこっそり近付いてぶん殴ろうとしたが、寸前でそれに気付いて避けられてしまった。
「な、何すんでぃ!」
「いや何、ある方から『お前を見つけたら一発ぶん殴っておけ』って言われてるんでね。言われた通り、一発ぶん殴ろうとしただけだ」
男は俺を指差して文句を言ってきたが、俺の言葉を聞いた途端顔を青ざめてしまった。
「ま、まさか……」
「お前の思っている通りの方だよ、闘戦勝仏の末裔さん?」
「何だ、お前は?」
蚊帳の外だったイッセーが男を指差して聞く。
「あ~~……イッセーでもソッコーで把握出来る名前で言ってやるよ。やつは『孫悟空』。西遊記で有名な猿さ」
「そ、そ、孫、悟空ぅぅぅぅぅぅっ!?」
この事実はかなりの驚きだったようで、さっきまでの怒りもぶっ飛んだっぽいな。荒々しい龍の波動が収まった。
「正確に言うなら、孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だがね。つーか、お前が『禍の団』入りか。初代は仏になったってのによ。いや、『
俺の言葉にケタケタと笑う男。びみょ~に顔が青いままなのがあれだが。
「俺っちは初代とはちがうんだぜぃ。自由気ままに生きるのさ。俺っちは『美猴』。よろしくな、赤龍帝」
そう言った美猴は棍を手元に出現させると、クルクルと器用に回し地面に突き立てた。次の瞬間、地面に黒い闇が広がる。それはヴァーリと美猴を捉えると、ズブズブと沈み込ませていく。
「待て、逃すか!」
逃げようとしているのを理解したのか、イッセーが慌てて捕まえようとする……が、そのタイミングで鎧が解除されてしまった。
「ふむ、これ以上はムリだな。お前の体力も限界だ。追いかけるのはあきらめろ、イッセー」
「で、でも!」
言い返そうとして、イッセーの力が抜ける。コブシも握れないほどの疲労のようだ。
「あれだけの力を一瞬とはいえ爆発的に発散すれば体力やらも空っぽになる。今のお前じゃ、貯蔵出来るものが限られていて長時間の戦闘はムリだ」
アザゼルの言葉にイッセーは悔しそうな顔をする。ヴァーリとの決定的な差を感じたんだろう。あいつはずっと鎧を着たままだからな。
「旧魔王の血筋である俺は忙しいんだ。敵は天使、堕天使、悪魔だけじゃない。いずれ、再び戦うことになるだろうけど、その時はさらに激しくやろう。お互いにもっと強く……」
そこまで言いかけたところで、二人共闇の中に消えた。
俺達が校庭に足を踏み入れた時、三大勢力の軍勢が入ってきていて、戦闘後の処理を行っていた。
倒した魔術師の死体を運んでいたり、捕らえた魔術師をどこかに転送していたりと、戦闘の後始末をしている様子だ。
ミッテとイリナもそれに加わっていたみたいで、作業している姿が確認出来た。少し離れたところにいるので、まだ俺らには気付いていない。
……本当なら俺も、この作業に加わってなきゃいけなかったんだろうな。特に堕天使側はアザゼルがあっちに行ってたんだから。他陣営のトップは校庭の中央で部下達に指示を出しているし。
サーゼクス、ミカエルの二人が俺らを確認して手をあげる。
「無事だったか。良かった。……シン君。改めてお礼を言わせてもらいたい。ありがとう。君のおかげでカテレアを捕らえることが出来た。後、謝罪も。彼女の件は悪魔側に問題があった。すまなかった」
サーゼクスが俺に言う。
「いや、こっちもヴァーリが迷惑かけた。特に俺は裏切りの可能性も考慮していたのに、自分の願望から見ないようにしてたんだ。すまなかった」
「シンが気に病むことじゃねぇよ。どちらかと言うと、俺のミスだ。未然に防げなかったのは、完全に俺の過失だからな」
そう言うアザゼルの瞳はどこか寂しげだ。多分俺も似たような瞳をしているんだろうな。
「……アザゼル、俺は先に帰るぞ。傷は一応回復したがダメージは抜けてないし、出来れば早いとこゆっくり休みたい」
「あぁ、そうしろ。本当なら俺も帰りたいところだが、戦ったのはシンだしその後始末くらいはキチンとしないとな」
「サンキュ〜」
アザゼルの言葉に手を振りながら言って、その場を去る。
そのまま仲間達と合流して家に帰ると、すぐに眠ってしまった。
西暦20XX年 七月
天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織『
以降、三大勢力の争いは禁止事項とされ、協調体制へと移行した。
なお、この和平協定は舞台になった学園の名から採って「駒王協定」と称されることになった。
思ったより話が進んだかな。次回で四巻終わりそうですね。