無事に転移が完了したのを確認すると、繋いだ手を離してアーシアに声をかける。
「よし…と、それじゃあ色々と話さなきゃいけない事があるけど、まずはシャワーでも浴びてきなよ。汚れちゃっただろ?」
「あ…でも、その……ふ、服の替えが無いですけど…」
「妹がいるから、妹のを借りればいいよ。ちょっとサイズが小さいかもしんないけど」
あいつはロリ体型だからなぁ、などと知られたら半殺しではすまないであろう事を考えていると、アーシアが興味を持ったらしい。
「妹さんがいるんですか?」
「ああ、義理の妹だけどね。年は一つ下で名前は『白音』って言うんだ。呼んでくるから、ちょっと待ってて。着替えとかの話は、男の俺とはあまりしたくないだろ?」
そう言うと、返事を待たずに義妹を呼びに二階へ上がる。
我が家は二階建ての一軒家で、そこに義妹と二人で暮らしている。
一階にはキッチン、風呂、リビング、二階には部屋が四つある。
部屋は俺と義妹が一つずつ使い、一つは物置状態でもう一つは空き部屋だ。
トイレは各階にある。
ちなみに転移してきたのはリビングのど真ん中だ。
今度から玄関とか家の前とか、土足でも問題ない場所に転移先を変えるか。
などと考えながら階段を上がると、義妹は既に部屋から出ていて、こちらに向かおうとしていた。
「あ、しr「女の人を連れ込むなんて不潔です兄様」ちっげぇよ! いや若干違くないけどそんなつもりはねぇから!」
「……わかってます。冗談ですよ」
いきなりとんでもない冗談を無表情でかましてくれたのが、義妹の白音だ。
背も胸も小さい、所謂ロリ体型という奴で、学校でも『二大ロリっ娘』の一人に数えられているが本人的には不服で、しかもそれを結構気にしてるらしい。
髪は俺と同じような白髪だ。
「そういう冗談はやめてくれ、まったく……彼女、アーシアっていうんだけど、アーシアに着替えを用意してやって欲しいんだ。ひとまずシャワーを浴びてもらって、細かい話はその後にする」
「……わかりました」
「サイズなんかは本人に聞いてくれ。流石に男の俺が聞く訳にはいかないからな。じゃ、部屋にいるから、終わったら呼んでくれ」
そう言って自分の部屋に向かうと、白音も下に降りて行ったようだ。
…………あっ!
「白音!アーシアには英語で話しかけてくれ!日本語はわからないんだと!」
面倒なので、階下に向けて声を張り上げて言った。
「さて……と、とりあえずかなり夜遅いし詳しい話は明日にして、今は簡単に済ませよう」
白音に呼ばれたのでリビングに行くと、アーシアは少し小さめのジャージを着てソファに座っていた。
幼い感じの見た目や雰囲気とは裏腹に、風呂上がりの上気した肌や小さめのジャージがかなり色っぽいが、今はなるべく意識しないようにして話を始める。
「簡単に、ですか?」
「そう。俺の目的について」
「……それは私も知りたいです兄様」
アーシアに向けて話していたら、白音が唐突に会話に入ってくる。
「あれ? 白音にも話して無かったっけか。俺の目的は、堕天使達の拘束とアーシアの保護だよ」
本当は拘束じゃなくて始末なんだけども、アーシアの前では言えなかった。
まぁ実際、拘束でも問題ないし。
「レイナーレ様達を拘束するんですか?」
「ああ。あいつらの行動は上からの命令を無視したものだからね。それに、一番の問題はこの土地で行動を起こした事だ」
「この土地で?」
「そう、この土地で。ここは堕天使の敵対勢力である悪魔の、それも魔王の妹なんていう超大物が管理してる土地だからね。ここじゃなけりゃ、もう少し大目に見ることもできたんだけど」
「そう……ですか」
アーシアが悲しそうな表情で俯いて返事をするが、ここはどうしようもない部分だ。
しかし、唐突にアーシアが顔を上げる。
「そういえば、シンさんは悪魔ではないんですよね?」
「あ、ああ、そうだよ。俺は人間だ。堕天使勢力に所属してて、その中でも幹部格に入るけど、間違いなく歴とした人間だ」
「え、ええ⁉︎ 幹部の方なんですか? それじゃここにいるのは…」
「確かに、ちょっとマズい。だから正体を隠してたんだけど、そうも言ってられなくなったからね。明日悪魔達と会う約束をしてるし、そこでうまいこと許可をもらうつもりさ」
アーシアはかなり驚いたようだが、すぐに俺の心配をする辺りが流石元聖女ってとこか。
「アーシア、君の事は聞いた。聖女として祭り上げられたり、堕ちた聖女とか言われて追放されたり、色々大変だったと思う。だけど、あの堕天使、レイナーレだっけ? に頼るのはやめろ。あいつはアーシアの神器しか見てないし、アーシアから神器を抜き取るつもりだぞ」
「…………え?」
突然過ぎる暴露に頭がついて行かないようだが、ここは敢えて一気に言わせてもらう。
「レイナーレの狙いはアーシアの神器だ。そして、神器を抜き取られた人間は死ぬ。つまりあいつは、アーシアを殺そうとしてるんだ。だから、今日アーシアを家に連れて来たんだよ。俺が、延いては俺の上司であるアザゼルが保護する事で、レイナーレが手出しをする事は出来なくなるし、あいつらの仲間として拘束する必要も無くなるからね」
「…………」
何も言えないのは、レイナーレの狙いについてのショックか、単に話について行けて無いだけか…
何にせよ一旦考える時間が必要だろう。
それに、ちょっと時間をかけ過ぎた。
俺や白音はともかく、アーシアはかなり眠そうだ。
「ふぅ……思ったより時間かかっちゃったし、今日はここまでにしとこうか。残りは明日に、ね」
そう言いながら席を立って、部屋に戻ろうとする。
…………っと、いけね。
「アーシア」
「はい?」
「一応、これを渡しておく」
そう言って御守りサイズの小さな巾着を渡すと、不思議そうに尋ねてくる。
「なんですか、これ?」
「御守りさ。本当に身の危険を感じたら、それに助けてと強く願うといい。そしたら、その御守りがアーシアの事を守ってくれるよ」
「これが……ですか」
不思議そうに巾着を眺める。
「まぁ万が一の時の為の保険で、それを使わなくても済むようにするつもりだけどね。それじゃ、アーシアは白音の部屋で寝かせてもらってくれ。布団は運んである。白音も、悪いけどそれで頼むよ」
白音は俺の言葉に頷くと、アーシアに声をかける。
「……わかりました。アーシアさん、行きましょう」
「はい」
白音とアーシアが立ち上がったのを見て、俺も部屋に戻ろうとする。
「……シンさん!」
「ん、なんだい?」
突然アーシアが呼んだので振り返る。
「おやすみなさい」
「……ああ、おやすみアーシア。白音もおやすみ」
「……おやすみなさい、兄様」
本文で説明が無かったので、ここで簡単ながら補足
リビングは扉から入って右手に食卓、その奥にキッチン、左手にソファとテレビがあります
玄関から左手にリビングがあり、正面には廊下と階段、廊下の突き当たりが風呂です
二階はイメージがイマイチ固まって無いのですが、とりあえず四部屋ある、とだけは決まっています
アーシアとの会話だけで終わってしまった…
今回で会談が終わって、次回は戦闘、その次くらいで一巻終了の予定だったのになぜこうなったし…
よって次回はグレモリー眷属との会談の予定
ひょっとしたらすっ飛ばして、いきなりレイナーレ達フルボッコかも