fateはアニメUBWから入って、FGOを1年ほどやっています。
しばらく小説から離れていましたがリハビリがてら書き始めました。
どうか楽しんでいただけたらと思います。
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聖杯戦争。
それはあらゆる願いを叶えるといわれる聖杯をめぐって、7騎の英霊を呼び出しサーヴァントとし、最後の一人になるまで殺し合う儀式である。
冬木の地で行われた聖杯戦争は、その有用性に目を付けた人たちによって冬木の地だけでなく世界中の各地で行われるようになった。
そう、この話もその各地で行われた数多くの亜種聖杯戦争の一つである。
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「さて」
薄暗い倉庫の中で、部屋の中でもなぜか燕尾服を着込んでいる男が呟いた。
男は床にチョークで円やら文字やらを書き込み、満足のものが書けたらしい。書き終えたチョークを机の上に置き、今度は机の上に置いていた1枚のカードを手に取る。
「吉と出るか凶と出るか、それはまさに神のみぞ知るだな」
男はそのカードを床に描かれた円の中央に置く。そこで一息つくと、厳かに言葉を紡ぎ始める。
その言葉は倉庫の中を淡々としたテンポで刻み、陰気な雰囲気をより一層深めていく。
「聖杯の寄る辺に従い この意この理に従うのならば応えよ」
呪文ともいえる言霊が続くにつれ床に描かれた円は光を帯びる。
「――汝、三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」
そして、光は頂点に達する。
光が収まると、そこに一人の少女が佇んでいた。
ちょうど10歳ぐらいだろうか、それでいて露出した褐色の肌が艶めかしい。
赤い外套を羽織り、短い黒いインナーを中に着ているが、露出が激しく視線のやり場に困る服装をしている。
「あなたがマスターかしら」
少女は歌うように言う。
「あぁ、そうだ。そういう君は……アーチャーか」
そう、少女はその姿ながら聖杯戦争におけるサーヴァントである。マスターはサーヴァントの情報をある程度読み取ることができる透視能力が与えられ、それにより目の前の少女がアーチャーのクラスを冠していることがわかった。ただ、肝心の真名まではわからなかったが、男はそれについては何も言わなかった。
「えぇ、そうよ」
少女はくるりとその場で一回転し、こてんと首を傾げて見せる。
「ひとつ、聞いてもいい?」
「一つだろうが二つだろうが、何でも」
「そう、それなら何でも聞いちゃうね。まずあなたのことはなんて呼べばいいかしら。マスター? それともご主様とか? もしかして、お兄ちゃんなんて呼ばれたいとか?」
その言葉に、男の表情が険しいものに変わる。しかしすぐに表情を元に戻した。
「……いや、マスターと呼んでくれればいい」
「あら、そう。それならこれからマスターと呼ぶわ。
ねぇ、マスター。そもそも私をどうやって召喚したの?」
その言葉に男は先ほどのカードをひらひらと仰ぐ。カードはトランプに使われるものと似ているが、肝心の絵柄は何も描かれていない。白紙のカードだった。
「何も書いていないじゃない」
「あぁ、そうだ。これは何も書いていないブランクカードだ。本来召喚に使う触媒は、英霊に因んだ謂れの品を使うんだろが、俺はこのカードに懸けた。今の俺は魔術師というより奇術師の方が近いし、こういうものに懸けるんのもアリだろう?」
男はそう宣う。この聖杯戦争という殺し合いにおいて男は勝敗の鍵となるサーヴァントを召喚できるかできないか全く分からない、むしろ召喚ができるほうが奇跡ともいうべき実質的に触媒なしの召喚に挑戦したということになる。しかし、男にはある種の確信があった。あえて白紙のカードを用いることにより召喚が可能であるということに。
「わかったわ、そのせいで私自身真名がわからないのね。うーん、なんでこんなに自信満々なのかわからないけど分かったということにしておくわ」
「そういうことにしておいてくれ。それで、他には何かあるか?」
男はアーチャーが不思議そうに首を傾げるのをどこか眩しそうに見つめる。
「それじゃあ、聞かせてほしいの。この聖杯戦争においてマスターが聖杯に願うものを」
その言葉に男はしばらくの沈黙の後、こう続けた。
「……一族の繁栄のため、としておこうか」
「嘘でしょ?」
間髪を入れずアーチャーから否定された。
「言わなきゃダメか?」
「もちろん。あ、私のが願うのは自分が何者かってことかしらね。今のところそもそもが聖杯に懸ける願いなんてそのぐらいだしね」
アーチャーはどこか期待するかのように男に詰め寄る。アーチャーには何か確信があるのかもしれない、そう思わせる何かがあった。
「俺の願いは……」
男は、アーチャーの期待の視線に勝てず願いを口にした。
「妹の、妹を取り戻すためだ」