召喚部分のみ
我による我のための我の聖杯戦争
発光する魔法陣。
吹き荒れるエーテル。
その中心には意中の英霊を呼び寄せるための縁が結ばれたものを。
詠唱こそ聖杯戦争での英霊召喚のためのもので、呼応して聖杯の授けた令呪が熱く魔力の昂りを示す。
縁を結びし聖遺物こそは脱皮した蛇の化石。
呼び出されしは原初の英霊、黄金の王。
第4次聖杯戦争。その始まり。
1人目の英霊がまさに呼び出される瞬間。
父の後ろで目を凝らしてーー神秘に満ち溢れる魔法のような光景を彼女は見ていた。
彼女の存在と召喚される英霊の順番。
たったそれだけの違いがもしかしたらあり得たかも知れなかっただけの事象を呼び寄せた。
触媒は"最初に脱皮した蛇の化石"と、"とある事象にのみ存在する女神の憑代の彼女"。
前者だけならば英雄として全盛期である英雄王が呼び出されただろう。
だが、彼女が女神の憑代となるのは人理焼却の起こった世界線のこと。当然縁があるのは英雄王ではなく。
ーー第七特異点にのみ発生する、賢王たる彼が相応しい。
だが、本来なら英雄王と賢王のどちらも召喚される可能性があるのだ。
なぜなら様々な世界線で彼女は英雄王と少なからず縁を結んでいる。
けれど、第五次聖杯戦争で敵対するよりも。月の裏で共闘するよりも。
そんなのーー彼の朋友を殺した女神との縁の方が濃いに決まっている。
ーーかくして、召喚は成された。
金糸の髪に神が美を追求した造形。
手には石本と斧を持ち、黄金の手甲が嵌められている。
瞼がもったいぶってゆっくりと持ち上げられ、神性を示す紅が覗いて、そしてーー
「キャスター、ギルガメッシュ。ウルクの危機に応じ、この姿で現界した。貴様の召喚に応じたのではない。思い上がるなよ、雑種ーー、
ではないではないか!!小間使いは何処だ、そもそもカルデアは、此処は何処だ!!」
先までの神秘に溢れた光景は何処へやら。
彼女は慌てふためく美しい人を見、ぱちくりと目を瞬かせた。
それは彼女の父親も同じで。
「あの、王よ。どうなされたのですか」
恐る恐る声をかける。何しろ相手は叙事詩の通りならとんでもない暴君だ。気に入らないからと殺されることもあり得なくない。否、それどころか、そちらの方の可能性の方が高いような相手だ。
だから臣下の礼をとっている。
典型的な魔術師ならば使い魔風情がと侮り、殺されていただろうから。
それでも、この状況では相手がそんな事に気が回っていないというのも一目瞭然。
名乗らぬままにこうして尋ねることは不敬当たるのかも知れなかったが、これでは存在を認知されているかも怪しい。
それでもこちらを向いて出てくるのはこんな言葉で。
「優雅たれではないか!!そも我が召喚されるのはカルデアだけのはずが、世界線が違うとは…
うむ、仕切り直しだ!!
キャスター、ギルガメッシュ。
貴様が我が栄華に縋らんとする魔術師か?」
彼女はこのテイク2といい、口上を改めた王様を前に、この金ピカで大丈夫なのかと父のサーヴァントを不安に思った。