我による我のための我の聖杯戦争   作:橋里うら

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この凛ちゃん、精神年齢たっけぇな


目論見 キャスターの場合

「ねえ、金ピカ。何してるのよ」

 

「邪魔をするでない、凛。今は作業中なのだから大人しくしていろ。駄女神の様に邪魔をするのなら時臣に母親の元へ送り返させる」

 

「だから駄女神って何よ。私言われなくても邪魔になる事してないじゃない。それが何か聞いてるだけで」

 

 

凛は気後れなどせず、ギルガメッシュに言い放つ。

それでも答えない彼に諦めを見せて、仕方がないので、その姿をじっと見てるだけで暫くは我慢することにした。

その目には宙に流れては消えゆく魔術の光が映っていて、彼女が興味を惹かれるのには十分だった。「優雅たれ」と言う父が目を離している事を良いことに、ギルガメッシュの座る一人掛けの椅子の肘掛によじ登り、覗き込むくらいには。

 

普段は家訓を守っている彼女も、好奇心の前には形無しだった。

相も変わらず、凛の目に映るギルガメッシュの姿はまだ幼い彼女には綺麗だとか美しいとしか言い表せなくて、彼が召喚されてからとは言うもの、父に諌められない限り横に張り付いていた。いや、諌められても暫し経てば直ぐに元の位置に戻ってしまう。

それほどにこの人はすぐに凛のお気に入りになった。ーーこの感性はやっぱりあの女神と似ていたのかも知れない。

 

 

彼の行使する魔術がどんなものなのか。

この光の文字は何を指しているのか。

それがわからなくても溢れる神秘だけは理解出来て、我儘を言ってでも父に着いて家に残ったことが間違いではなかったと彼女は確信している。

どうせ彼は子供には甘いのだから、少しくらい彼の魔術を教えてくれるかもしれない。

父があれだけ危惧していたのが信じられないほど、彼は良い人に見えた。

 

少しばかり文句があるとするならばーー事ある毎にくだらないと一蹴されて、どうすれば良いかわからず途方に暮れている父の事だろうか。

毎回出直せと、部屋の外から仕切り直しをさせるし、内容によっては考え直してこいだ。

お陰で彼女は父に彼の魔術を見る事を止められていないわけであるので、正直言ってマスターでない凛の方がギルガメッシュといる時間が多いということになってしまっている。

でも少しくらいは凛から見ても父も不甲斐ないのではと思う所があるので、自分がマスターになった方が早いのではと思い始めるほどであった。

 

だってそれほどにこのサーヴァントは強いようだから。

彼女は彼が並の英雄とは比較にもならないほどの規格外であることがわかっていた。でなければ彼女の父は凛を此処には置いて居なかっただろうから。

でもそうであれば、別にマスターが彼女の父である必要はないのだ。ギルガメッシュが単独行動のできるアーチャーのクラスでなくとも、マスターを守りつつ闘うスペックがあるのだから。逆にギルガメッシュがキャスターのクラスであることを考慮すれば、魔力量に優れた凛の方が適任と言えるかもしれない。

 

 

「ねえ、金ピカ。私がもっと大きかったら、お父様ではなくて、私をマスターにしてた?」

 

 

「凛、だから我は作業の途中だと言ったのだが。まあよい。

答えは否だ。

確かに貴様はその父よりも見所がある。

だが、元より聖杯を望んでいるのは貴様の父だ。

貴様はマスターなんぞ得にもならんことをするより、そのまま我についていた方が愉快だろう」

 

 

ギルガメッシュは珍しく手を止めて凛の問いに答えてくれた。普段なら何時も何処か忙しく仕込みやら宝物庫の整理やらと手を止めていることが珍しいのに。

彼にとって先の問いよりは答える価値があったのかもしれない。

 

 

「知っているか、凛。

聖杯戦争におけるマスターというのは、基本的にやるだけ損だ。聖杯さえ手に入らなければな。

気の合う英霊なんぞ滅多に居らぬ、その英霊を従わせる令呪は三画のみ、それも相手によっては効果もあるかどうか。挙句には現界しているだけで魔力を搾り取られる。

 

さて、損得の感情の得意だろうお前に問おうか。

これ程までの危険性を孕みながら手に入るかもわからぬ聖杯。

手に入れようとする価値はあるか?」

 

「正直ないと思うわ。だって、金ピカみたいに敵わない相手が居たら難しいし、私は聖杯に願うよりも自分で叶えたいもの」

 

彼女は間髪入れずに答えを出した。それは彼女の父の行いを否定するものだったけれども、彼を満足させるに足り得たらしい。

 

「うむ、それでこそあの駄女神をある程度まともにした憑代だけの事はある。

他力本願な時臣もこれほどの事を言えれば、我ももう少しくらいは真面目にやっただろうに。若い我は知らんが。

 

まあ、兎も角だ。この聖杯戦争に価値はない。何故ならーー」

 

 

波打つ波紋から金が覗く。それを引き抜くとーー、

 

「ウルクの大杯、聖杯の原典とも言える。聖杯を持っているのなら、聖杯を必要とする必要はないからな。ましてや汚れている型落ち品なんぞな。

 

さて、我の目論見通りにこの戦争が終わった暁には、凛、これに一つ願わせてやろう。

 

時臣めには黙っておけよ?彼奴には勿体ない」

 

 

彼女はやっぱり目をぱちくりさせて。

眼に映る金の輝きも見る。彼の宝物庫に入っているということはこれは間違いなく本物の聖杯なのだとわかる。

でも、自分で叶えられると宣ったその直後で何かを願うのは彼女の性には合わない。

けれどーー、

 

 

「願いは自分で叶えるって言ったのに。

でも、本当に、私にはできないこと、あったら頼んでもいい?聖杯には叶えられるかわからないけど。全部終わったらお願いしてもいいの?」

 

「よい、許す。聖杯に叶えられないのなら我が聞こう。何しろ、今の我はご機嫌王だからな」

 

高笑いを披露する彼は嘘なんかとは無縁の人だから、彼女は安心した。

凛の願いはもう決まっている。

だから、ギルガメッシュの言う目論見さえ叶ってしまえばいいのだ。彼は彼女に何かさせるつもりなどないのだから、本当に彼の行動を観戦しているだけになるかもしれなくても。

 

「じゃあ、その目論見って何よ。

流石に世界征服とか言い出したらお父様にも言って止めるわよ」

 

「そんなつまらんものではない。大体既に世界は我が庭だからな。

 

目論見というのはだなあ、我のための聖杯戦争にするのだ。出演者はこちらで選んでな。

そのための仕込みは上々。聖杯の失陥も解決した。

 

セイバーから始まり、バーサーカーまで。その全てのサーヴァントにーー

 

 

 

ーー騎士王を呼ぶ」

 

 

 




ウルクでイシュタルをある程度まともにしてくれた凛ちゃんには恩があるとして、態度柔らかめな賢王で書いてます

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