若宮と一緒にスパイクを買ってから2週間程が経った。チームはあれから3回戦を突破。そのまま準決勝でも勝利した。俺は準決勝からチームと合流。大事を取って後半からの出場だったが、前半にリードを取ってくれていたお陰で、危なげなく勝つことが出来た。
「では、決勝進出を祝って~乾杯!!」
『かんぱ~い!!』
その次の日、姉ちゃんとその他数名のCIRLCE常連客が俺の部屋に集まって祝勝会を行っていた。メンバーとしては美竹、若宮、今井、奥沢、山吹だ。部屋も狭いため、各バンドグループから1名ずつだが。
「まだ決勝残ってるんだけどな」
「まあそうだけど、優勝したらもっと人数呼ぶからね!それこそCIRCLEを使ってる人全員!」
「流石に多すぎだろ。ま、いいけどさ」
紙コップに注がれた麦茶を一気飲みして空をテーブルへ置くと、すかさず若宮が同じものをついできた。さらに自分の分のパンを食べ終えると、山吹が無尽蔵にパンを追加していく。美竹は相変わらずぶっきらぼうだが、時折俺と目が合うと、「何・・・おめでとうならさっき言ったけど」と言ってすぐに目を反らしてしまう。奥沢はそんな光景を見ながら「やれやれ」と苦笑いし、今井は先程からパシャパシャと俺の写真を撮っている。
「おい今井、勝ってに写真撮ってんじゃねぇよ」
「えー、いいじゃん減るもんじゃないんだしさ~。それに、両手に花な海人を収められるしね~」
「そうそう。お姉ちゃんはCIRCLEに飾る写真が増えて嬉しいよ~」
「えぇい!撮るな飾るなぁ!」
そんな感じで騒ぎつつ、決勝進出の祝勝会は幕を閉じたのだった。
その後決勝に向けて練習しているうちに、あっという間に当日となった。観客の熱気あふれるスタジアムの裏側では、控室で各選手が試合の準備を行っている。
「月島、お前は今日も後半からだ。しっかり準備しておけよ」
「はい」
怪我が治ったばかりの俺は、この試合もフル出場の許可が下りなかった。だがそれで皆の士気が下がることは無い。むしろ俺はチームの中心人物。ニュースでも取り上げられるのは大体が俺の事だ。そのせいか、このチームの総合的な評価はそれ程高くない。なので、皆は俺が居なくても勝てるということを世間に知らしめたいのだ。
「おい狩谷。お前、確かあそこと戦うのは初めてだよな」
「は、はい!」
「なら、深く考えすぎるなよ。ビデオでも見た通り、あいつらは俺たちと似たようなチームだ。いつもの紅白戦を思い出せ。何のためにお前をわざわざ二軍に入れて、俺らと練習試合をしたと思ってる」
俺の言葉に深く頷く狩谷。こいつは俺が怪我をしてからずっと、俺の代わりにボランチとして試合に出ている。今大会の初戦は心配させられたが、それからというもの安定感が出てきた。こいつなら俺の代わりとしても十分だ。チームメイトや監督もそう感じている。
「よし、そろそろ時間だな。準備が出来たやつから外へ並べ」
『はい!』
その頃、CIRCLEでは・・・
「まりなさーん。私たち、先行きますねー」
「うん!ごめんね皆、すぐ終わらせて向かうから!」
AftergrowのメンバーがCIRCLE内で待機しており、外にはスタジアムへ向かうための車が一台止まっていた。ぎりぎりまでまりなの仕事が終わるのを待っていたのである。だが、こんな日に限ってまりなの仕事は多く、彼女を待っていては試合に間に合わない。なので彼女たちは一足先に向かうことにしたのだ。
「じゃあ真琴、よろしく」
「うん。でも初めて行くところだからなぁ、出来ればまりなさんに先導してもらいたかったけどしょうがないね。菜々花はあこ達乗せて先に行っちゃったし」
「試合に間に合わなかったら許さないから」
「が、頑張るよ・・・」
Aftergrowを乗せた車はスタジアムへと向かっていった。残されたまりなは急ピッチで作業を進め、チームの勝利を願った。
前日のスポーツ番組にて・・・
『ついに明日、花丘学園対桜高校の決勝戦が行われるということで、非常に楽しみですね八部さん』
『そうですね~。両校ともにかなりハイレベルですからね。しかも去年と同じカード。これは本当に面白い対決ですよ』
『怪我から復帰した花丘学園の月島君にも注目が集まりますが、去年のインターハイで桜高校をベスト4まで上り詰めたその立役者、2年生の望月君にもかなりの期待が寄せられています』
『丸山君は2年生ながらチームのキーマンですからね』
『八部さんはこの試合、どちらが勝つと思いますか?』
『難しいですねぇ・・・ただ望月君は後半からの出場でしょうから、その間に点を取れるかが勝敗を分けると思いますよ』
だがこの時、まさかあんな試合展開になるとは誰も予想していなかった。
~人物紹介~
'狩谷 京介'
学年:高校二年
ポジション:ミッドフィルダー(MF)
憧れの人:月島 海人
苦手な人:月島 海人
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