有名蹴球児のバイト生活 in CIRCLE   作:かるな

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ついに決勝戦!

PS:最初書き忘れてましたが、僕が前書いていた宇田川兄の小説、「過保護な兄」に出てくるキャラも出てきます!


六試合目

「はぁっ、はぁっ」

 

 

スタジアムの駐車場へ車を停めた私は、学生時代以来の全力ダッシュでメインスタンドへと続く階段を駆け上がっている。先程から建物全体に響いている歓声が、私の気持ちを焦らせる。だが、心配などしていなかった。弟の仲間は皆良い子たちで、頼りになる。口の悪いあのバカなんかよりもよっぽどだ。

 

 

「つ、着いた!」

 

 

やっとの思いでへと辿り着いた。登り切った時に勢いあまって転びそうになったが、けんけんの要領で何とかフェンスにしがみついた。私はフェンスにもたれかかり、肩で息をする。下げていた頭を上げ、試合がどうなってるかを確認しようとしたその時だった。

 

 

 

『ワアアァァァ!!!』

 

 

 

一際大きい歓声がサイドスタンドから聞こえてきた。立ち上がる応援団。ベンチ入りしていない選手であろう学生たち。だが、彼らは全員、桜高校の子たちであった。何があったのかと思ったけど、フィールドの様子を見て察してしまった。

 

嫌な予感がした私は、すぐさまスコアを確認する。

 

 

「そんな・・・」

 

 

0-2!?信じられない・・・だって、あの子たちだよ?今までの練習試合だってほとんど負け無しだったんだよ?今やってるところとだって、勝率は高いは・・・ず・・・え?ちょっと待って!

 

何で・・・一人、少ないの?

 

 

「まりなさん、こっちです!」

 

「真琴君?」

 

 

声のした方を向くと、そこには巴ちゃんのお兄さんである真琴君がいた。彼の周りにはAftergrowとRoselia、そして彼の幼馴染である菜々花ちゃんが座っていた。

 

私も傍に行って座ると、息を落ち着けてから何が起こったのかを聞いた。

 

 

 

 

 

~数十分前~

 

桜高校のキックオフで始まった県大会決勝戦。両者ともに素早いパス回しを得意としたチーム同士の対決は、花丘学園が最初のチャンスを作った。

 

素早いプレスから中盤でボールを奪った狩谷は、ボールをキープせずにすぐさま前線へと送る。パスを受け取ったフォワードの'金井'は、大きな体と強い体幹を生かしてボールをキープした。

 

すると花丘学園の両サイドにいた二人の選手がラインぎりぎりを駆け上がり、桜高校のディフェンスはそれにつられて横に開いてしまう。

 

中央には金井と桜高校のディフェンス二人だけとなった。金井は二人を背に、右足の裏でボールを取られないように相手のプレスを捌く。

 

 

「金井!」

 

 

右サイドから上がっていた'奈雲'が金井を呼んだ。ディフェンスを一人引きつれたままだが、若干相手より前に出ている。

 

奈雲の方を確認すると、パスを出すために体を右へむけた。だがそうはさせまいと一人が移動し、パスコースを潰してくる。このまま出しては取られてしまうが、コースを潰すために動いたためディフェンス二人の間には、隙間が出来ていた。

 

針の穴を通すような狭さだが、それでも構わずに金井は右足を振り上げた。

 

 

「させねぇ!」

 

 

すると、もう一人がその間を埋めようと足を延ばしてくる。これで完全にコースは潰れてしまった。

 

 

「金井さん!」

 

 

だがそれと同時に、左から狩谷が走りこんでいた。それに気づいていた金井は、パスを出そうとした右足をボールに触れる直前に軌道を変え、軸足である左足の裏を通すように切り返す。そして前に走りぬけて言った狩谷へ鋭いパスを出した。

 

 

「ちょっ、強す・・・ぎっ!」

 

 

全力疾走していた狩谷の足元に、ドンピシャで強烈なパスが収まった。若干ボールが浮いてしまったが問題は無い。素早くボールとの距離を調整し、そのまま右足でを振りぬいた。強烈なシュートが桜高校ゴールを襲う。だが・・・・・・

 

 

「あ、やっべ!」

 

 

放たれたシュートは枠から外れ、ゴールの上を通過した。

 

 

「か・り・や~!何やってんだドアホ!少しでも行けると思った俺の気持ちを返せ!!そもそもボール持ち変える余裕あっただぐえっ・・・」

 

 

ベンチから月島が怒号を発した。そのまま説教をしようとした彼だが、同級生のマネージャーが彼の首根っこを掴んで強制的にベンチへと座らせた。

 

 

「ナイッシュー狩谷。もう一本行こうぜ」

 

「金井さんもサイスパスでしたよ」

 

「嘘つけ、さっきの聞こえてたぞ」

 

「・・・さぁ!どんどん行きましょう!」

 

 

初っ端からチャンスを作った花丘学園は、そのまま流れをも持っていこうとした。だが、ここから予想だにしない悪夢が待っていた。

 

前半残り20分となった。試合はまだ大きく動いておらず、一進一退の攻防が続いた。

 

 

「そろそろ点が欲しいですね」

 

「あぁ。だが攻め急ぐなよ?」

 

「分かってますって」

 

 

攻めの起点である狩谷と金井が、試合が止まっている間にお互いに方針を確認する。桜高校のコーナーキックで試合は再開された。

 

相手の選手がコーナーからボールを蹴り上げ、混雑しているゴール前へと放り込んだ。

 

 

「狩谷、ボールが来たらカウンターを・・・・・・な、なんだ?!」

 

 

ゴール前でボールを競り合っていたはずの選手たちが倒れていた。その数は2人。ユニフォームを見る限り、花丘学園のゴールキーパーと、桜高校のフォワードの選手だ。すぐさま主審が笛を吹いて試合を中断する。

 

 

「おい、大丈夫か!」

 

 

お互いの選手たちが、それぞれ倒れている選手の元へと駆け寄った。倒れていた桜高校の選手はゆっくりと立ち上がった。だが、花丘学園のキーパーは立ち上がることが出来ずにいた。恐らく空中で激しくぶつかり合ったのだろう。

 

 

ピーー!!

 

 

担架が用意され、キーパーが運ばれている最中に主審が笛を吹いた。何事かと思い見てみると、なんと花丘学園のディフェンダーにレッドカードが出されていた。何と、ファウルをしたのは花丘学園の選手だった。どうやら3人が衝突したらしい。

 

 

「ま、待ってください!いくら何でも!!」

 

 

花丘学園のキャプテンである'黒田'が主審に問い詰めるも、判定は覆らなかった。ディフェンダーは一人退場し、キーパーも負傷退場してしまった。さらにはペナルティエリア内でのファウルのため、桜高校にはPKが与えられる。

 

スタメン選手を二人も失ってしまった花丘学園は、すぐに控えのキーパーを出場させるもPKを決められ先制点を奪われてしまう。その後も一人少ないという現状を打開することは出来なかった。

 

その結果、試合終了間際、追加点を取られるわけにはいかない花丘学園だったが、一人少ないせいで激しいプレスが行えず、中央からのミドルシュートは無情にもゴールへと突き刺さってしまった。

 




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