鬼と骨がいく!   作:IMOTO

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気付いたら評価付いていてビックリΣ( ̄。 ̄ノ)ノ
おかげでモチベーション爆上がりですわ。


鬼と骨、ガゼフと出会う

「酒呑童子さん! ご無事でした──ヒッ!」

 

 村に武装した集団が近づいている。その情報を聞いて家に避難していたが、酒呑童子の姿を確認して飛び出した村長は軽い悲鳴をあげた。

 酒呑童子の後ろには、ピシッとした執事服を着た老齢の執事。一目で高貴な方に仕える人物だと分かるが、問題はその執事が付き従う存在。

 豪奢なローブに身を包んでいるが、首の上から、そして裾から覗かせているのは白骨化した手と頭。生者を憎む存在と伝えられているアンデッドである。

 その恐ろしい容貌に村長は悲鳴をあげた。

 

「あ、ごめんモモンガくん、少なくともこの地域って人間種以外は恐ろしい存在なんだって。その怖い骨しまって」

「しまえる物じゃありませんよ! というかそいう事は早く言ってください!?」

 

 失敬失敬、と頬を掻きながら愉快に笑う酒呑童子。酒呑童子としても己の姿が受け入れられて事からすっかり失念していたのだ。

 

「驚かせて済まないね村長。こっちはモモンガくんといって、私の大事な相棒、そして隣にいるのはモモンガくんの従者であるセバス・チャン。森で逸れてしまったけど、戦闘を聞きつけた再会できたんだ。アンデッドだけど悪い骨じゃないよ」

「初めまして、カルネ村の村長殿。先ほど紹介されましたが、私はモモンガ。大事な仲間である酒呑童子さんを助けてもらい、私からも感謝します」

「あ、いえ、こちらも酒呑童子さんには助けてもらったので……」

 

 礼儀正しく頭を下げる白骨死体に、村長は、周りで見ていた村人たちも驚く。

 伝え聞く話では、アンデッドは知恵と呼べるものは持ち合わせておらず、ただ生きている者を襲う。思考能力を持つ上位のアンデッドもいるが、少なくとも礼節を持つような存在ではない。

 酒呑童子という例外も重なり、村の人たちにある異形種の考えが傾きつつあった。

 

「鬼さん! 大丈夫だったの!?」

 

 するとそこに、ネムが駆け寄って酒呑童子の足元に抱きついた。

 一人で戦いに出た酒呑童子を心配していたのか、涙を堪えながら酒呑童子の足にしがみついた。

 

「ごめんねネム、心配をかけちゃったみたいで。でも大丈夫だよ、怪我もしてないしね」

 

 安心させるようにネムの頭を撫でたあと、優しく抱き上げて次は背中を優しく叩く。

 酒呑童子の無事を確認したのか、ネムは堪えた涙を流しながら笑みを浮かべて。

 

「うわー、俺がいない所でもう攻略しちゃってるとかー、しかも幼女とかー、酒呑童子さんはどこのエロゲ主人公ですか?」

「僻むな僻むな白骨。骨の顔面じゃイケメンも何もないからな。これがキャラクリでイケメンに設定した奴との差だ。どやぁ」

「うぜー、マジうぜー、〈内部爆散〉(インプロージョン)すんぞ飲んだくれ」

 

 モモンガは虚空から泣いているのか怒っているのかわからない奇妙な仮面を被る。

 その仮面の名は、通称嫉妬マスク。持たざる者が持つ者を怨む怨恨の念を具現化したアイテム。特に効果はないが、これを付けた者は男女仲睦まじい光景を見ると襲わずにはいられない衝動に支配される呪われしアイテム。

 モモンガはよくこれを付けてイチャイチャしてる連中に〈内部爆散〉(インプロージョン)をブチかまし、酒呑童子は「ハッピー死ね!」と言いながら男性キャラを殴り殺していた。

 持たざる者と持つ者として決別したモモンガは嫉妬マスクをつけながら中腰になってサササッと酒呑童子の周りをクルクルと動く。

 この動きはアインズ・ウール・ゴウン伝統の踊りであり、リア充のメンバーを他のメンバーが取り囲むものである。

 今まではたっち・みーぐらいしか標的にいなかったのだが、晴れて酒呑童子も対象に加わったようだ。

 しかし、何も知らぬ者が見たら変な仮面をつけたアンデッドが中腰になってクルクル回る行動はただの奇行でしかない。しかも無駄に高いステータスで異様に機敏な動きであった。

 

「あ、あの、これはいったい……」

「気にしないでください村長どの。これは喜びを表す際に踊る私たちの地方独自の風習なのです。それと酒呑童子さんと少し話がしたいので、どこか落ち着いて話せる場所はないでしょうか?」

 

 困惑している様子の村人たちは無視して、一通り悪ふざけをしたモモンガと酒呑童子はそれぞれの情報を共有する事にした。

 村長は話し合いの場として自らの家を提供してくれた。

 

「さて、それじゃまず状況を整理していきましょうか。ここはユグドラシルの世界ではない、転移した原因も不明。ここまでは互いに知っている情報という事でいいですね?」

「そうだね。加えて、ユグドラシルでは見慣れていた異形種はここでは忌避される存在、場合によっては有無言わさず討伐されるものである。これは交渉に於いて大きなデメリットになる可能性が高い」

「ナザリックでは異形種が殆どですからね。見た目が人間種にそっくりであればなんとかできますが……」

「少数だからね、表立って活動するのは難しいだろうね。ところでナザリックはどこのあるんだい?」

「この村から10kmほど離れたところです。森を抜けて、平野の中にポツンと建ってますよ。幸いな事に人間といった存在は近くになく、一番近くてこのカルネ村でしょうね。今は隠蔽工作を進めているところです」

「そうか。なれならナザリックが人目に触れる事はなさそうだね。流石ギルマス、この世界に来て2日しか経ってないのに手際が良いね」

「え、二日? ナザリックが転移して四日は経っていますよ」

「んん?」

 

 ここに来て、両者に微妙な食い違いが発生した。

 酒呑童子がカルネ村に辿り着き、それから過ごしてきた日数は二日。これは間違いない。

 対してモモンガも、この世界に来て流れた四日という時間に間違いはない。

 互いの時間軸に大きなズレがある事を認識した二人だったが。

 

「酒呑童子さん! モモンガさん! 馬に乗った武装集団が再び村に近付いてきてるようです!」

 

 村長が慌てた様子で入ってきたので、ひとまず話し合いは保留する事にした。

 

「それじゃあ村の人たちは念のために再び避難の準備を。俺とモモンガくんとセバス、それと村長でその集団を応対するとしよう。セバス、万が一戦闘に発展したら村長を守って退避を」

「はっ、かしこまりました」

「……酒呑童子さん、さっきの奴等の本隊が来たという事ですかね?」

「いや、それにしては行動が早すぎる。魔法による伝達も考えらえるけど、可能性としては微妙かな。既に他の村が襲われている事から、王国側の治安組織が追ってきたと考えるのが自然かな」

「やっぱりそうですよね。となると俺たちの種族は隠しておいた方がいいですね」

「だね。モモンガくんはその嫉妬マスクで誤魔化せるけど、同じ仮面を付けていくのは流石に怪しすぎるか。んー、なんか良いのあったかな?」

 

 虚空に手を突っ込み、無限の背負い袋の中をゴチャゴチャとかき混ぜる。

 本来はショートカットを用いて取り出しやすいように設定できるのだが、特に装備を変更する事のない酒呑童子は回復系のアイテムだけショートカット登録して、あとは物置のように乱雑に放り込んでいた。

 どうやら目当ての品物が見つかったようで、酒呑童子が取り出したのは首にかける事ができるお守りのような小さな布袋。

 

「あ、それってたしか人化之御石(ヒトバカシノゴイシ)ですよね? 珍しい上に懐かしい」

「最近使う事もなかったからね。これを使えば種族スキルは使えたまま人間種と誤認させる事ができるからね。昔はよく相手を油断させるために使っていたんだ」

 

 ユグドラシルでも人間状態にするアイテムやスキルは数多くあるが、そうすると内部データも一時的に人間種と変更されるので異形種由来のスキルや能力は使用できなくなる。特に酒呑童子の場合はその強さの恩恵は全て種族特性によるものなので、それらが使用不能となると一気に弱体化してしまう。

 しかしこの人化之御石(ヒトバカシノゴイシ)という装備は外見のみを人間種に変更できるので、種族スキルには一切の制約はかからない。代わり異形種かどうか判別するアイテムやスキルといったものや、感知系の魔法を使われるとすぐにバレてしまうのだが、それは仕方ないと諦めるしかない。

 酒呑童子がそれを首にかけると、鬼だと示す大きな角が消えてしまい、見た目には人間にしか見えなくなった。

 

「よぉしこれで変装はバッチリ! それじゃお客さんを出迎えるとしますか」

 

 変装という意味ではもっと対策をするべきだと思うが、それを言うならセバスだって酒呑童子とそう変わらない状態なので、モモンガも特に何か言う事はなかった。

 モモンガの読みが正しければ、この地の人間との初めての交渉となる。まるで営業先に行って契約を交わすかの如き気構えでモモンガも向かうのだった。

 

 

 

 *****

 

 

 

 戦士団を率いて先頭を疾走していた王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフは四人の存在を確認した。

 奥にある民家からも火の手は上がっていないように見えるし、今度は間に合ってくれたのだと安堵した。

 しかし同時に、村に近付くにつれ不安も募ってきた。

 一人は、身なりから察するにこの村の村長だろうか。だが他の三人は身なりも、そして纏っている雰囲気も遥かに別種のそれであった。

 一人は、奇妙な仮面をかぶっている人物。その豪奢なローブは貴族、或いは王族が来ているのよりも遥かに上等なものであろう。魔法詠唱者(マジックキャスター)は往々にして珍妙な身なりをしていると聞くが、きっと魔法詠唱者(マジックキャスター)だろうか。

 もう一人は、その珍妙な魔法詠唱者(マジックキャスター)に付き従っている老執事。これもまた、浅学な己が見ても一級品と思われる執事服を着こなしている。だが服の上からでも分かるように逞しい体躯をしており、老齢でありながらもしかしたら己以上かもしれない。全くブレる事なく一本の棒のように立っている姿は執事よりも武人という感想を抱かせ、己以上の実力者であると直感で理解した。

 

 そして最後の一人……アレは一体なんだ?

 その見慣れぬ衣服は、自身の体にも流れている南方の地にあるという着物と呼ばれる衣服であろうか。そういえば、南方の地である刀と呼ばれる武器を操る好敵手がいたなと昔を思い出す。

 目の前の男は親しみやすい、または獰猛とも思える笑みを浮かべながらの、奇妙な容器から何か透明な液体を飲んでいる。

 鍛えられてはいるが、体躯は己が上回っている……などと阿呆な事は考えない。目の前にいるアレは、限りなく『力』というものを凝縮した存在。悪意も敵意もなく、ただ透き通るほどにまで純粋な『力』の結晶は、ある種の神秘さすら感じさせる。

 まるで、この世の全てを埋め尽くす溶岩を溜め込んだ巨大な山であるかのように……己の心に畏怖という感情を塗りつけてくる。

 

「私の名は王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフである。この周辺を襲っている戝を討伐するために派遣されたのだが、そのような輩を見てはいないだろうか?」

「王国戦士長!? このような辺鄙な村まで来ていただけるとは……」

「村長、王国戦士長とはどのような人で?」

 

 村長と話をしている仮面の男の話を聞いて、ガゼフはこの人物たちがますます怪しく思えてきた。

 王国戦士長という肩書きは、自慢のように聞こえるがこの周辺では知らぬ者などいないと思える程に有名だと思っている。自国である王国はもちろん、スレイン法国や戦争しているバハルス帝国の二カ国にも名が轟いている程に。

 しかし村長と話している人物は、その事に全く心当たりがない様子。いったいどこの国から来たのか問い質さねばならない。

 

「失礼だが、そこのお三方は? 随分とその……ちぐはぐな身なりをしていると思うのだが」

「これは申し遅れました。私の名はモモンガ、そして友である酒呑童子と従者のセバス・チャンと申します。遠方の地より旅をしていたのですが、この村が襲われそうになっているのを見つけたので、お節介ながら助けた次第です」

「なんと!? それは本当か! 恩人に対して馬上からとは大変失礼した。この村を助けていただき、無辜の命を救っていただき、感謝の念が絶えません! ありがとう、本当にありがとう!」

 

 馬から降りて、モモンガの手を両手で握りしめて深く頭を下げるガゼフ。そしてセバスと酒呑童子にも同じく感謝を述べる姿に、三人は内心で感心していた。

 話を聞く限りではそれなりの地位にいるのだと察しがつくが、そういう人間はプライドだけは高く頭を下げる事などしない。

 しかしガゼフの行動は本心からによるもので、媚びるつもりやおべっかという気持ちは一切なかった。

 現実(リアル)の世界でも滅多に見ない実直な人柄にモモンガはガゼフの評価を高め、善の属性を持っているセバスはガゼフの心に共感を覚え、その心意気に酒呑童子は気に入った。

 

「頭を上げてくれガゼフさん、こっちとしては恩義のある村を守っただけの、ただの普通の事だ。そう大袈裟にされるとこっちが恐縮しちゃうよ」

「はは、なるほど、普通の事か。酒呑童子殿の気持ちの良い心意気には感服するばかり。久しく見る事のない御仁たちであるな!」

 

 あっさりと意気投合し、互いに親しみの感情を得ていた四名。晴れて無事に戝も退治できた事だし、これで一件落着かと思いきや偵察に走らせていたガゼフの部下が息を切らして走ってきた。

 

「ガゼフ戦士長! 謎の集団が村を囲むように包囲してます!」

「なんだと!?」

 

 酒呑童子の知覚も反応した。まだ微かにだが、怪しげな衣服を着た集団が村の外に陣取り、ジワジワと包囲を狭めている。

 その手際の良さに思わず感心する。時間をかければかめるほど包囲の隙は狭まっていく。

 立て続けに起こる面倒なイベントにモモンガは辟易としていた。

 

「……やれやれ、一難去ってまた一難か。次から次へと厄介ごとが」

「はいはい愚痴は後でねモモンガくん。イタズラに時間を浪費すると包囲の密度が高まるからすぐに作戦会議といこうか。ひとまず家の中へ退避」

 

 パンパンと手を叩き、気怠そうなモモンガの背中を押しながら村人たちが退避していた家へと避難する。

 手口や動きから見るに、少なくとも鈍を振り回して粋がっていた先ほどの連中とは比べものにならないだろう。

 王国最強と謳われているガゼフの強さから察するにユグドラシルでは当たり前であったカンストプレイヤー並みの力を持つ者はいないらしいが、しかし万が一という事もあって一応警戒だけはしておく。

 警戒と、少しの興味を持ち、酒呑童子は外にいる集団を見つめるのだった。




こっちのモモンガは、酒呑童子がいると少し油断というか、慢心しちゃってます。誰よりも酒呑童子の強さを知っているから、信頼してるんでしょうね。おかげで原作よりかは幾分心に余裕があります。
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