鬼と骨がいく!   作:IMOTO

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んー、やっぱり5千文字前後だとあまりストーリーが進まないですね。
もうちょっと一話あたりの文字数を多くした方がいいですかね?


骨、少しだけワガママになる

 村を取り囲む新たな集団に備えて隠れてた家の窓から覗き込むと、とても面白いものが見えた。

 

「モモンガくん、アレ見てアレ、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)じゃない?」

「本当ですね、ユグドラシルのモンスターもここにいるなんて」

「モモンガ殿や酒呑童子殿はあの天使たちをご存知で?」

「ええ、あれは第3位階による召喚魔法で呼び出された天使の一種です」

「しかも魔法が込められていない攻撃じゃうまくダメージも与える事もできない、物理のみじゃ面倒な相手だ。あんた達の装備じゃ……」

「相性は最悪、という事か。実に厄介な相手だな」

 

 そうは言いつつも、ガゼフの表情に悲観はなかった。

 ガゼフの装備、隊員たちの実力、相手の人数、敵との相性……それらの要素を考えると、どうひっくり返ってもガゼフたちに勝ち目はない。

 だというのに、死を目前としたガゼフに悲壮感はなかった。かといって諦めて自暴自棄になっているわけでもない。今この時点で、自身が行える最善を尽くす。そういう決意に満ちた漢の眼をしていた。

 

「モモンガ殿たちには迷惑をかけてしまったな。敵の目的はおそらく私の暗殺だ。どうも今回の任務には作為的なもの感じてはいたが、まさかスレイン法国を使ってまで私を消すつもりとは……自国の面倒ごとに付き合わせてしまって申し訳ない」

「ガゼフさんよ、あんたは王国で最強戦力の筈だろ? なんで自国の人間があんたを消そうとするんだ?」

「自国の恥ゆえあまり聞かせたくはないが、我が国は王と貴族によって半ば分裂状態になっている。私が死ねば、さぞ貴族たちにとって都合が良いのだろうさ」

 

 ガゼフのような人間たちが多ければ王国との協力関係を築こうと思っていたのだが、聞けば聞く程その内情は酷いものだった。

 権力を持つ勢力が二つもあり、しかも互いに半目しあっている。しかも八本指とかいう巨大な犯罪組織も入り込んでいて、麻薬がばら撒かれているは権力者たちは甘い汁を啜って法なんてあってないようなものだわで治安も国力も低下。更にバハルス帝国との戦争で貴重な労働力が失われているにも関わらず領主たちは贅沢を求め重税を課す。まるで教科書にでも載せたいくらいに典型的ばロクでもない国家で、少なくとも権力者には関わるべきではないと二人は結論を下した。

 同時に、そんな腐った国にあっても実直な性格であるガゼフに対して相対的に評価が上がった。

 

「モモンガ殿、最後にどうか私の願いを聞き届けてはくれないか?」

「……内容によっては」

「これから我々は敵陣のど真ん中を突き破って奴らを引きつける。それで奴らが追いかけてくれればいいのだが、万が一私の力及ばずこの村にも危険が迫ったら、もう一度だけこの村を救ってはいただけないだろうか?」

 

 深々と頭を下げるガゼフの姿に、アンデッドとなったモモンガの骨の体に、僅かに熱が灯るのを感じた。その感情は、憧憬というものだろうか? 人が持つ意思の輝きに、魂の強さにモモンガの心は惹かれていた。

 最早残りカスしか残っていなかった鈴木悟という魂が、ガゼフという人間を好いていたのだ。

 

「……わかりました。我が名と我が友にかけて、この村をお守りすると誓います」

「そうか! ならば心置き無く私は死地へと飛び込める! 少し待ってくれモモンガ殿、これより書状をしたためる。これを王国にいる私の部下に渡せば、少ないが私の遺した財産を貴殿に差し上げる事ができる。どうかこれを、感謝の印として受け取ってほしい」

「厚意に感謝します。と言いたいところですが、それを受け取る事はできません。私たちはガゼフ殿の願いを聞き届けただけで、報酬のやり取りをする間柄ではありません。……それに、私としても貴方とは金銭を交えた関係を築きたくはありません」

 

 認めよう。たしかにモモンガは、ガゼフの事を得難い人物であると認識していた。それはこの異世界に来て初めての、友と呼べる感情。そこに金銭という下劣な事柄を混ぜたくなかった。この素晴らしい出会いが、汚泥に汚されたようで。

 しかし心の中では、友と呼ぶべきはアインズ・ウール・ゴウンのメンバーだけだという感情もある。どっちつかずな感情は結局右往左往するばかりで、決め兼ねたモモンガはプイッと顔を逸らしたのであった。

 

「そうか……いやいや、無粋な事を言ってしまったようだな。ではどうだろうか、酒でも酌み交わすというのは……」

「いや、私は──」

「すまないねガゼフさん、モモンガくんは下戸ですぐ潰れちゃうんだ。代わりに俺と呑み交そうじゃないか。酒はこっちで工面してやるよ」

 

 飲み食いができないアンデッドの体が露見しかけてヒヤッとしたが、すぐに酒呑童子が助け舟を出してくれた。

 酒呑童子もガゼフの一本筋の通った性格を気に入って、自前の酒を取り出す。

 生憎とお気に入りの枯不乃瓢(カレズノヒサゴ)は鬼の種族しか飲めず、それ以外の種族が飲むと強烈なデバフが付与されてしまうので別の酒にする。

 懐を探るような動きをしながら無限の背負い袋から取り出したのは、不思議な威圧感を放つ黒漆で塗られた瓢箪。同じく懐から赤漆で塗られた小さな盃を二杯取り出し、そこに並々と酒を注ぐ。

 

「アンタの末期の酒として、一等立派な酒を見繕ってみた。酒豪すら酩酊するかなりの一品だが、これから死地に飛び込む男が一口の酒で潰れるなんてないよな?」

「それは挑戦という事でいいのかな酒呑童子殿? ならばこの一献、受けて立とう!」

 

 明らかに挑発と取れる笑みを浮かべ、床に腰を下ろしながら盃を掲げる酒呑童子。

 ガゼフも鍛練の終わりや休日には酒を愉しみ、有り余った給金のいくつかは国の内外問わず酒を買い込む酒豪であると自負している。実際、戦士団と酒を呑み交わした際は最後まで潰れる事なく呑んでいた。

 酒への挑戦と大きな興味、そしてこれが最期であると理解しているからこそ、ガゼフも床に座り込みもう片方の盃を掲げる。

 互いに交錯する笑み……どちらが示し合わせる事もなく、二人はほぼ同時に盃の酒を一口で呑み干した。

 

「──グッ!? んっ、うぅ、なる、ほど……たしかにこれは、強烈な一品……喉が、焼けて、腹の中まで燃えているようだ……」

 

 まるで液体化した炎をそのまま飲んだかのような熱さであった。

 喉を通り過ぎると同時に脳天に稲妻のように走る酒精は酔うという状態すら超えて意識を朦朧とさせる。しかし腹へと流れついた酒が燃えているかのような熱を吹き上げている事で、辛うじてまだ意識は保っていた。

 たった一口、それだけでこれ程の衝撃を秘めている酒があるとは。もう一度呑めば確実に意識が昏倒するだろう。

 耐えようとあらん限りの力で盃を握りしめているのだが、盃は砕けるどころかヒビすら入ってない。

 

「ガッハッハ! いいねぇ、気持ちの良い呑みっぷりだぜアンタ。どうだい、もう一杯いっとくか?」

「いいや、遠慮しておこう。これ以上は盛り上がって朝まで飲み明かしてしまいそうだ」

 

 強烈な酒精にもまったく動じた様子のない酒呑童子は自分の杯に二杯目を注ぎ、ガゼフの盃にも注ごうとするが、ガゼフは盃を酒呑童子の足元に置き辞退の意を示す。

 これ以上は間違いなく意識が落ちてしまうので、そうなると戦うどころの話ではなくなってしまう。かと言って素直に言うのも負けを認めたようでガゼフのプライドが許さなかったので虚勢を張ってみるが、やはり酒呑童子にはバレていた様子。しかしそれを追求する事はなく、酒呑童子は二杯目も一口で呑み干した。

 

「そうかい、そりゃ残念だ」

「申し訳ない。もし私が無事に逃げ切る事ができたら、その時こそは朝まで飲み明かそう」

「ハッハ! そん時がきたら樽一杯の量を抱えてくるから覚悟しとくんだな」

「望むところだ!」

 

 酒呑童子と固く握手を交わしてから、モモンガとセバスにも握手を交わし、晴れたような笑顔を浮かべてガゼフは外に繋げていた馬にまたがり、部下たちを率いて敵の集団へ向けて走り出した。

 その背中が消えるまで見つめ続けていたモモンガは、絞り出すように呟いた。

 

「……俺の判断は、間違っていたのだろうか」

 

 冷静になって思い返せば、ガゼフを相手にもっと上手く立ち回れたはずだ。

 ガゼフから書状を受け取っておけばこの世界の金銭を得る事はできたし、情報を引き出したり己の立場を有利にしたりと、やり方はいくらでもあった。

 実際そのような考えは幾度も頭をよぎったのだが、モモンガはそれを無視した。あの場に於いてモモンガは、ナザリックの利益よりも己の感情を優先させてしまったのだ。

 こんな事では、ナザリックの支配者として失格ではないか。そのような疑念がモモンガの口からこぼれ落ちた。

 

「モモンガ様、私のような者がモモンガ様の行いに是非を問えるような資格も能力も有していりませんが、しかしこれだけは確信を持って申せます。我々の支配者に相応しきお方はモモンガ様を於いて他に存在しません。どうぞ、その御心のままに為したい事を為さってください」

「セバス……」

 

 深々と頭を下げるセバスの表情は、笑みに満ちていた。

 アインズ・ウール・ゴウンは悪を標榜とするギルドであり、メンバーや創造されたNPC達の多くは悪を好み、悪を率先していた。

 その中で数少ない善を良しとするセバスは守護者たちの悪性に首を傾げる事はあっても、しかしそれが至高の御方のご命令とあらば悪であろうとも即座に実行する忠義を持っている。しかし、叶う事ならば自身の創造主であるたっち・みーと同じ善を行いたいという気持ちも心の奥底に確かにあった。

 ガゼフの善性を良しとし、喜びを見出していた先ほどのモモンガは、セバスが心の奥に秘めていた願望に近いものであった。意識しても、ついつい顔が綻んでしまう。

 

「おやぁセバス、一応俺もアインズ・ウール・ゴウンの副リーダーだったんだが、お前の中じゃ俺は相応しくないのかなぁ?」

「はっ! い、いえ酒呑童子様、決してそのような事は……もちろん酒呑童子様も支配者として相応しきお方でありますので──」

「はは! ただの冗談さ、間に受けなくていい。だけどセバスの言う通り、モモンガくんほどギルマスに相応しい人物なんていないよ。俺も含めてあんなに癖の強い連中をまとめて、自分より皆を第一に想っていたからこそ皆もモモンガくんに酬いようと団結したいたんだから、ただ、もう少しワガママを言うべきとは他のメンバーにも言われていたけどね。セバスの言う通り、君がやりたいと思った事を言ったっていいんだよ?」

「酒呑童子さん……」

「さてモモンガくん、君は何をしたい? ガゼフ・ストロノーフをどうしたいんだい?」

 

 見定めるように、酒呑童子の眼がモモンガを見つめる。

 それが例え悪であろうと、善であろうと中道であろうと構わない。酒呑童子が計るのはただ一つ、それがモモンガが望んでの行動なのか否か。

 ナザリックのためでも守護者たちのためでも、況してやアインズ・ウール・ゴウンのためでもない。一人の人間として、己の心が何を為すのかを見定める。

 

「…………俺は、ガゼフのような人間はこんな所で死ぬべきではないと思ってます。ガゼフはきっと、これから先も多くの事を為す男です。俺はガゼフがどのような事を為すのか、ガゼフという一人の人間が歩む道を見てみたいです」

 

 モモンガは、ガゼフという男に対して強い憧れを抱いていた。

 決してガゼフが強いからというわけではない。自身と比べたら脆弱極まりなく、戦いとなったら一方的に勝てると確信している。

 モモンガが憧れたのはガゼフという男の人間性、すなわち心である。

 彼のような男は、これからも多くの事を成し遂げるだろう。そんな人間を、こんな中途半端な所で終わらせるのは嫌だ。もっともっと、彼の行く末を見ていたかった。

 その感情は、果たして溺れまいと必死に足掻く小動物を見てるような気持ちか、または面白い映画を最後まで見ていたいとい観客としての気持ちか、或いは友を無駄死にさせまいという友情なのか、まだモモンガはこの感情に判断をくだせない。

 

「……うん、そうか。それがモモンガくんの気持ちなら、俺も喜んでそれに応えよう。滅多にないギルマスのワガママだからね。俺も張り切って頑張るとするよ」

「ありがとうございます酒呑童子さん。それと、振り回してしまってすみません」

「そういうのはナシ! 遠慮なんてする必要ないんだから。それに俺もガゼフという男が気に入ってね、少しばかりお節介をしておいたんだ」

「もしかして、さっき飲み交わしていた酒ですか? 酒呑童子さんの事だから普通の酒ではないだろうなと思ってましたけど」

 

 あまり武器や防具といった装備に拘らない酒呑童子だが、ただ一つだけ酒という種類のアイテムには並々ならぬ執着を抱いていた。

 周囲が引く程の酒好きである彼は、ユグドラシルであっても様々な酒を蒐集していた。時には最高難度のダンジョンに単身で挑み、時には明らかに釣り合っていない装備とトレードをしたり、アイテムコレクターであるモモンガも、酒のアイテムに関しては酒呑童子に負ける。

 そして酒は、酔いというバッドステータスが発生する可能性がある代わりに色々なバフを付与する事ができる補助アイテムである。

 種族特性で酔いを無効化できる酒呑童子とは相性抜群のアイテムであり、ガゼフが飲んだ酒も何かしらのバフを付与するものだろうと推測した。

 

「ふっふ、それは見てからのお楽しみって事で。それじゃあモモンガくん、不可視化魔法をかけてガゼフの所に行ってみようか。この世界じゃトップに位置するガゼフの実力、お手並み拝見させてもらおう」

 

 どうやらモモンガにも秘密にするみたいで。含みのある笑顔を浮かべながら軽い足取りでガゼフの所へ走っていく酒呑童子。それを慌てながら追いかけて、酒呑童子とセバスと自分に完全不可視化の魔法をかける。

 三人は姿を消して、ガゼフが向かった死地へと飛び込むのだった。




アルベドではなく善に偏ったセバスを連れて行った。
ガゼフと原作以上に仲良くなった。
酒呑童子が一緒にいる。
少しだけ自分の本心を優先させた。

モモンガの魔王ゲージがダウン。
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