ラスト・ラン 作:高山カナデ
今回は短めです。
期待してくださっている方がいらっしゃったら申し訳ありません・・・・・・。
エタらせることだけはないように気をつけたいと思います。
では、以下本文を。
(side 晴矢)
大会は2日目を迎えた。集合時間になっても、堀内先輩は姿を見せなかった。
朝の部員の集会が始まる。
僕の学校は短距離ブロックと長距離ブロックの2つのブロックで顧問がそれぞれ分かれているため、2人の顧問の先生と副顧問の1人の先生が話す。
短距離ブロックの顧問の安西先生の話は手短に終わり、続いては桜井先生の話。
「今日は大会2日目だ。ついさっき安西先生も話していたが、決勝種目も多くなってくるから気を引き締めて頑張ってくれ。あと、知っている人も多い堀内の件だが、彼は今日の3000決勝の出場は出来ない。全中は決めてくれたから大事を取ってということだ。診断は熱中症と過労ということだ。レースに集中することはもちろんで、記録も狙って欲しいが、無理だけはさけてくれ。私からは以上だ」
僕は今日、決勝がある。そのことはよくよくわかっている。
だけど、今の僕には、今日のレースに100%の集中力を向けることは、どうも厳しそうだ。
――――
1年男子1500mの決勝は11時30分から始まる。
そろそろウォーミングアップを始めなければいけない時間だ。
決勝で勝てなければ近畿大会への道はないことはわかっている。
僕は自分に言い聞かせて、重い身体に鞭を打ってアップ場に駆け出した。
―やっぱり身体がいつもより少しだけ重い。
音楽を聴きながらゆっくりとした10分間のジョギングを終えた僕は、自分が本調子とは言えないことを知る。
レースまでは、あと、30分。
あとはストレッチとながしで刺激を入れて、スタートダッシュの確認をすればおしまい。
時間が余ってしまったら、ジョギングで調整すればいっか。
暑い時間帯のレースは嫌だけど、ちょっぴり楽しみになってきた。
そして僕はいかに体調管理が重要かを、1年生のこの大会にしてつくづく感じ取った。
「1年男子1500m 予選通過者 決勝番組編成リスト(3-4+4)
ODR. 氏名 着順 資格記録
1. 青桐 晴矢 2組-1着Q 4'15"30
2. 渡辺 進 1組-1着Q 4'20"83
3. 西島 晃 3組-1着Q 4'24"93
4. 戸塚 国人 2組-2着Q 4'26"65
5. 岡田 将星 1組-2着Q 4'29"21
6. 茂木 桃李 3組-2着Q 4'31"21
7. 江崎 隼人 3組-3着Q 4'33"09
8. 住山 賢一 2組-3着Q 4'35"45
9. 寺尾 智也 3組-4着Q 4'37"83
10. 神尾 駿 1組-3着Q 4'38"32
11. 洲崎 修平 1組-4着Q 4'40"03
12. 浅間 響 3組-5着q 4'40"39
13. 中村 賢治 2組-4着Q 4'43"83
14. 森 隆司 3組-6着q 4'46"22
15. 山田 乾人 2組-5着q 4'47"81
16. 山黒 隼平 2組-6着q 4'47"99 」
まだ僕は行けると思っていた。そしてそれが驕りになっていたのだろう。いつも通り、自分である程度、満足を得られるタイムでゴール出来ると思っていた。
「 1年男子1500m 決勝 結果
着順 氏名 ODR. 記録
1. 青桐 晴矢 1 4'24"34
2. 渡辺 進 2 4'24"44
3. 西島 晃 3 4'25"56
4. 岡田 将星 5 4'26"89
5. 山黒 隼平 16 4'27"62
6. 森 隆司 14 4'28"03
7. 茂木 桃李 6 4'29"73
8. 戸塚 国人 4 4'30"36
9. 江崎 隼人 7 4'32"28
10. 浅間 響 12 4'33"84
11. 中村 賢治 13 4'34"26
12. 洲崎 修平 11 4'36"10
13. 山田 乾人 15 4'38"24
14. 住山 賢一 8 4'40"85
15. 神尾 駿 10 4'42"27
16. 寺尾 智也 9 4'44"99 」
なんとか一位で近畿を決めたけど、渡辺と、そして晃を、ギリギリで振り切って、文字通り「なんとか」ひとつ上の大会に駒を進めるような結果になってしまった。
陸上を始めたばっかりの自分で言うのもおかしいが、「情けない」走りになってしまった。
申し訳なさと、悔しさが混じった終わり方。
僕はトラックを離れた後、すぐには報告に向かうことなく、ひとりで静かに泣いていた。
その夏の近畿大会は1年男子センゴでなんとか優勝出来た。
暑い中の大会だったが、今度はしっかり対策をして。そして十全の状態でレースに臨み、そして4分10秒台前半で優勝することが出来た。
次の大会は、初めての全国の舞台。全日本中学校陸上競技選手権大会だ。
――――
(side 竜也)
ついに全中陸上が迫ってきた。去年のリベンジの大会。全中の借りは、きっと全中でしか返せない。
ブロック大会以上の大会になると、毎年開催される都道府県が変わる。多分北海道は例外。
北海道はでっかいどう。なんちゃって。
・・・・・・冗談はさておき。
今年の全中の舞台、つまり俺の中学陸上3年間の帰着点となる舞台は、北海道。多分ここ、大阪府より涼しいはず。長距離の選手からしたら涼しいのは願ったり叶ったり。短距離の選手は涼しい中走ることに対してちょっと調整が必要らしい。
今年の全中で狙うは優勝。去年は3位。優勝者と準優勝者はもう高校生。つまり、順当に行けば俺は優勝が出来る、優勝が狙える位置にいる。
今年の全国ランキングの最新版をインターネットで調べる。といっても、それは正確なものではないけれど、この前雑誌に載っていた人を調べるので十分だ。
1位は身近な彼。一番の壁な気がする。順当に行けば決勝で必ず相見える。
2位は東京にいる彼。去年の全中の大会では、同じ舞台に立ち、8位に入賞した彼。
そして3位が俺。8分30秒を切るタイムを持つのは3人のみである。
出場資格を持つ選手の中での次は、一緒に練習してきたもう1人の彼。
だが、彼はきっと出場しない。中長距離3種目すべてで、結果的に全日中の標準を切ることになったからだ。
順当に行けば、今年の全中はかなりレベルの高い勝負になるはず。
そして開催地は冷涼な気候。何が何でもベストで優勝したい。
ベストを出せば、優勝出来るはず。問題因子は俺の隣で今日もヘラヘラ笑っている駆流であるが。でも、きっと駆流を抜ける。
全中陸上開幕まで、あと1週間。
そして、中学最後の個人競技まで、あと8日。
学校の暑いグラウンドで練習できる回数も、着々と0に近づいている。
悲しいけど、せめて笑顔でかえってこれるように。
もう一回、全中の舞台へ。
また一日、練習が終わる。
夢の、目標の舞台まで、あと少し。もう少し。
――――
(side 晴矢)
全中開幕まであと2日になった。
今年の全中は北海道で行われるから、移動を開始しなければいけない。
移動は飛行機。人生初の飛行機だ。
旅行じゃなくて、全国大会で初めての飛行機を使うことになるとはなあ、半年前の自分ならこんなことになっているなんて信じていなかったはずだ。
お兄ちゃんと堀内先輩、そして蓮川先輩と僕。長距離からは4人の選手と、付き添いの渡辺がスーツケースを引っ張って関西国際空港に集まる。
短距離の先輩方も集まり、総勢10人で全中のために北海道に乗り込むことになる。
「にしても、おっちゃん遅いな」
「なにやってんだろうな」
「絶起したんか?」
「まさか顧問に限ってそれはないだろうよ・・・・・・」
飛行機の出発時間は14時10分。現在の時刻は10時ちょうど。そして集合時間は10時30分。
学校行事の集合時間が異常に早く設定されているのはいつものことだ。
あと集合時間まで時間は30分ほどあるが・・・・・・。
「ほんとにおっちゃん来なかったら飛行機乗れないじゃんか」
「あの人が航空券持ってるんやっけ?」
「確か、な。知らんけど」
「あの、長距離の航空券は桜井先生が持ってるらしいです」
「晴矢、それ、誰情報だ?」
「安西先生が・・・・・・」
「え、安西さん来てるの?おっちゃ~ん・・・・・・」
先輩がたがスーツケースにもたれかかりながらまだ来ない桜井先生に対して愚痴をこぼしている中、先輩方のノリに僕が乗っていくのはちょっとまずい気がする。
先輩方と比べて桜井先生との関わりもまだまだ少ないから、桜井先生をいじるのもちょっと・・・・・・
「晴矢、そんなの気にする必要は全く無いぞ」
「そうやって心の中を読むのはやめてくれるかな、お兄ちゃん」
結局桜井先生が北野は、集合時間から1時間過ぎた時だった。
僕らは、大西中陸上部は、とうとう全国大会の舞台に乗り込むことになる。
とうとう先輩方の、個人競技としては最後の大会、全日中が始まります。
1年生の晴矢は何を学ぶのでしょうか。
誤字脱字等ありましたらよろしくお願いします。