入学式が終わり、一番最初の友達を作る時間。目立たずに過ごしていくつもりではあるけど、さすがに友達もいないまま三年間を過ごすのは気が引けた、そこまで心は強くない…。
「ご機嫌麗しゅう」
「ご機嫌麗しゅう」
「先日はとても楽しいお茶会にお招きいただき、ありがとうございました」
「まだまだ、未熟者ですのでお恥ずかしゅうございました」
今気が付いたけど、周辺で話をしているクラスメイト達はほとんど顔見知りであった。会話をそれとなく聞いてみたが、どうやら幼い頃から親同士の社交場で顔を何度もあわせてきた人たちのようだ。
しかも口調が一昔前の貴族。こんな会話に入れるわけがない。
「やあ……満開の桜の木の下で咲く儚い百合の花という感じだね」
「はぁ?」
声の聞こえた方向を向くと、白い制服に身を包んだ男…ではなく何故か男子生徒の制服を着た女子が微笑みながら私を見下ろしている。
「どうかしたかい?まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
「私、鳩じゃないです」
「見たところ…友達がほしいんじゃないかい?」
「へ?」
「兎は独りぼっちだと寂しくて死んでしまうそうだからね」
「いや、それより…どうして男子生徒の制服を着ているんですか?」
「何か問題でも?」
「人の趣味に口は出したくないのですが…男装って認められていましたっけ?」
花宮はどこの学校にもない特殊な空間にある学園。何を良しとし、何を悪いとさせているのか…そこの基準がまだわからない。もしかして学園側が意図的に男装をさせている可能性だってある。なぜなら桜の時点でおかしなところだからだ。
「君はもう少し…空気を読んだらどうだい?」
「空気?」
「よくあるじゃないか、恋愛シュミレーションゲームには僕みたいなキャラは最後に乙女に変身していくのが狙いじゃないかい?」
「そんなよくあるとか言われてもわかるわけないでしょ…」
どうやら悪い人間ではなさそう、わりと話を分かってくれそうな印象。
「僕は初音雲雀。君とおんなじ特待生さ」
「え?ほんとですか?」
「ああ、外の者同士仲良くしようじゃないか」
差し出された手は、陶器のように白く綺麗な手で美しかった。その手を握ると雲雀はニヤッと微笑を浮かべる。
「あの…」
「そんなに身構えなくて構わないよ。そんな姿は二人きりの時に見せてくれればいいから…」
「………」
これからは、付き合う人をちゃんと考えよう。そう心に刻み込んだ。
「人はそれぞれに固有の世界があるからね。君のすべてを桜色に染めることはないさ。僕のように君は君らしく振舞えばいいさ」
「いえ、そういうわけじゃ…」
「それに君は美しい。この楽園にはもったいないほど、綺麗な色彩を帯びた可憐な少女…」
雲雀は唇がくっつきそうなほど顔を寄せてくる。え?ちょっと!?この体制、周りから見ると--
「心配することはないさ。僕にすべてを--」
その瞬間、唇に軽くキスをされた。
「あ、あ、あ……」
「友情の証♪」
「そ、そんな……」
キスをされたこともショックではあるけど、どうして女の子に胸がときめいてしまったのか?
「それでは、アデュー」
「………」
きゃあぁぁぁっ!?と叫びたかったが、そんなことをすれば騒ぎが起こってしまうと考え黙り込んだ。
「忘れましょう、それが一番いい……」