花鳥風月~百合ニ恋スル姫~   作:凪音

4 / 14
今回も長くなったような気がします…申し訳なです(;´・ω・)


第肆話 下調べ

 扉を開け、中に入るとなんともお洒落な応接室。年代物のテーブルには、真っ白なテーブルクロスが敷かれている。どれも高級感あふれる設備ばかりで、今まで安上がりなものばかりだったので、すごく緊張してしまう。

 

「さて、各自席について。羽澄咲音、貴方はここに」

「は、はい……」

 

 四人は、私と向かい合う側に座り、全員の顔が見える。その真ん中にあのお嬢様。やはり、この中で一番偉い人みたい…。おそらく、生徒会で言う会長みたいなものなんだろう。

 

「さてと、査問会の目まえに、この三人にも今朝の事を報告しなくてはならないわね」

「あ、あのぅ…」

「質問をするときは挙手をしてはきはきといいなさい。ちゃんと背筋を伸ばしてね?」

「はっ、はいっ!!」

 

 正直、今すぐに逃げ出したい。

 

「すみません、私はここに来てからまだ日が浅いので…右も左もわからず、正直、大変なところに来てしまった。と思っています」

「…………」

「それは私もよく理解できる。続けて?」

「それで、本当に何も知らず、分かりません。もしかしたら、失礼な事を言うかもしれません………なので先に誤っておきます…ごめんなさい」

「そんなのは当たり前だよ。初対面のうえ初体験だもん。さっきのキャンディーはたべた?」

「い、いえ…それはまた後でいただきます…ごめんなさい」

 

 こんな状況で飴なんか舐めれたら、こんな所に呼ばれてないと思う。

 

「それで、質問なのですが……あなた方は何者なんですか?生徒会と風紀委員などの類いですか?」

「あ……そうか。分からないのも当然…ね。特待生ですもの」

「ふふふっ…全く、花姫様?どうせいつもの調子で強引に連れてきたのだろう?申し訳ないね」

「菫…いや、鳥姫。確かに貴方の言うとおり…だったかも…」

 

 室内の空気が少し緩んだ気がして、ふう…と安堵のため息がもれてしまう。

 

「………」

「????」

 

 本当に聞こえない。どうしてこんなにも聞こえないのだろうか、慣れ…なのか?

 

「『私たちの事ならさっき教えたのに、嘘をつくとその舌を引っこ抜きますよ?』だってさ」

「うえっ!?」

「またそんな適当なことを…。貴方が一番羽澄さんを驚かしてるじゃない。聞こえなかったんでしょう?」

「…………………」

 

 幽霊さんががっくりとしてしまう。多分落ち込んでいるのだろうがますます近寄りがたい。けど、なぜこんなに罪悪感を覚えてしまうのだろう。

 

「しかし、私たちを知らないまま話を進めるのは、よくありませんね」

「ありがとうございます」

「簡単に説明すると…私たちはこの花宮学院の学生たちの生活や、諸事の運営管理をする組織、『花園会』の者です」

「ここは、いわゆる生徒会みたいなもの…でしょうか?」

「そうですね、権限はもっと大きいですが」

「なるほど…」

 

 でも、会長と呼ばれたりしていなかった…普通とは違うよう。

 

「花園会は私達四人の三年生で構成されており、それぞれに『花鳥風月』の名前を持つ姫と呼ばれています」

「姫…ですか…」

 

 やはり、外界とはかなり違う。他人の事など姫だの呼んだことはないけど…ここは普通に呼んでいるらしい。

 

「そして、私が花姫。形式的には四人の筆頭という形になりますね」

「生徒会長みたいなものですか?」

「その認識で結構ですよ。それでは続けて各自自己紹介をお願いします」

 

 花姫さんがそう促すと、花姫さんの横に座っていた男前がにこ、と微笑んだ。

 

「私は花鳥風月の鳥。鳥姫だ。入学式から君のように美しく可愛い子に会えるなんて、大変光栄だよ♪」

「そ、そんな…」

「査問会が終わったら、一緒にお茶でもどうかな?咲音くんをもっと知りたいんだ」

 

 目を細めて微笑む。クラッと来た……。

 

「わ、分かりました…」

 

 この四人の中で、一番の貴公子。まるで王子様のようだ。

「はいはーい!僕は風姫!よろしく!咲音くん!」

「はい、質問があります!!」

 

 このお子様に負けないように、背筋を伸ばして、挙手をする。

 

「はい、えっとこのガ…失礼。この方も三年生なのですか?」

 

 もう少しでガキ、というところだった…あぶな。

 

「ふふっ…そうですよ?」

「飛び級みたいなものではなく?」

「言ったでしょう?私たちは全員余すところなく、三年だと。みんな同い年ですよ」

「ふーーん…そう何ですか…」

「なんだよ、その馬鹿にしたような顔。感じ悪いよ?」

「あ、ごめんなさい。悪意があるわけでは…」

 

 真実を聞いてなお、三年生とは信じがたい。どう見ても、幼女にしか…。いくら説明されても冗談にしか聞こえない。

 

「…………………」

 

 幽霊さん…。残された月姫はこの人だろうな。なんというか、分かりやすい。

 

「『私は月姫。頭は花姫に任せちゃいるけど、花宮の裏番だから、満月の日には気を付けろよ?』--」

「どうせ嘘なんでしょ?二回目はさすがに気が付きます」

 

 と、強気の姿勢で物を言うが。完全に声は震えてしまっている。

 

「はみゃあ!?」

「楓、おいたが過ぎるよ?はぁ…。咲音くん、分かってるとは思うけど彼女は、正真正銘のお姫様だから大声を出すのが苦手なんだ。大目に見てあげて」

「分かりました…あなたは月姫…で裏方の担当でいいのですよね?」

「そ、そんなに間違ったことは言ってないのに…。」

 

 頭をぽかりと叩かれた風姫様は、頭を押さえながら涙目を浮かべている。まあ、自業自得だよね。

そして、月姫様は恥ずかしそうに微笑み、私に頭を下げる。

 

「私たちは以上。次はあなたの番よ」

「え?でも私はもう知れ渡っているのでは?」

「相手に名乗られたときは自分も名乗るものよ?それに、貴方がここに入った時点で、すべてを見ているのよ?」

 

 それは、これ以上にない、脅迫だった。

 

 「い、一年六組の羽澄咲音です。特待生として、本日より、花宮学院の一員となりました。今朝の制服の乱れ、無作法な態度のご指摘とご指導。花姫様のお手を煩わせてしまい、大変申し訳ございません。花園会の皆様にも失礼な態度、本当に申し訳ありませんでした」

 

 私はテーブルに頭をぶつける勢いで頭を下げる。さっさと切り抜けたい。ぼろが出てしまう前に…。

 

「あ、思い出した!咲音くんはせっさんの妹さんなんだよね?」

「せっさん?…あ、姉の雪花でございますか」

 

 雪花だからせっさんか…何ともアバウトな…。

 

「……………………」

「なるほど。あの子の妹さんなのか。こんなにもかわいらしいのもうなずける。花宮には彼女の推薦かな?」

「は、はい…同じ学舎で勉強をしたいと強く勧められて…」

 

 初日からこのざまですがね。

 

「流石、姉妹だけあるねー。おっぱいも大きいからうらやましいなー」

「あ、あの……恥ずかしいので見ないでください…」

「風姫!……んんっ、失礼。今朝方、たまたま彼女を私が見かけて、制服の着付けや態度を指導しました」

「申し訳ありません…」

「なーんだ。そんなのしょっちゅうじゃん。ちょっと面白そうだから期待してたのに」

 

 腕を組みながら、そんな事を言う。期待してたのか、このがきんちょめ。

 

「そのくらいで査問会なんて開いてたら、時間がいくらあっても足りないよ」

「………………」

「月姫は察しがいいですね。その危惧はどうやら現実のものとなったようで」

「へ?」

 

 花姫様はいつの間に用意していた、書類の様な物をぺらぺらとめくりながらそういう。

 

「あなたは、三日前に入居。入学手続きもその日のうちに済ませて、後見人や保証人はすべて、天蕗雪花さんの名義になっていますね」

「現役の学生でも肉親であれば可、と聞いていたのですが……何か不都合がございましたか?」

「書類の不備はありません。天蕗さんは屈指の優等生ですし、何より縁深き名門・天蕗家ですもの。問題ありません」

 

 要は、お金をいっぱい入れてくれるお得意様という事か……。あんまり嬉しくない。

 

「ですが、貴方の身辺を調査したところ、とても見過ごせない情報が出てきた」

「ええっ!?」

 

 ま、まずい…何かやらかしていたよう。

 

「あなたが特待生寮に入居した夜、庭であなたが木刀のようなものを振り回していたと目撃されてるわ」

「っ!!」

「今の反応…心当たり、大ありといったところでしょう?」

「な、なんの話でしょうか…私にはさっぱり…」

「ちゃんと私の目を見て話しなさい」

 

 冷汗をかきながら、ぷるぷる震える。実の所、私は幼い頃母に剣術を習っていて、一日に何度か木刀で鍛錬をしている。ま、まさかそれすらもダメなのだろうか…。

 

「ほう…君も剣術を習っているのかい?」

「え?」

「実は私も、剣術とは違うがフェンシングをしていてね」

 

 思わぬ所からの援護射撃!鳥姫様!ありがとうございます!!

 

「あなた、そのことはちゃんと書類には書いたのかしら?」

「え?必要ないと思って書いていませんが…」

「もしも、その事に関して何か問題を起こしていたらどうするつもりですか?」

「え…いや…その…」

 

 口ごもってしまい私は黙ってしまう。しまった、そんな詳細まで…。本当にまずい。このままでは姉さんにも迷惑が…

 

「杏子、その辺でやめなさい。世間ではそれを言いがかりというよ?」

「う……。仕方ないわ…。まぁ、他人の趣味にとやかくいう謂れはありませんからね」

 

 鳥姫様がそう言うと。あっさり花姫様は引っ込んでしまった。なんとかこの問題は解決しそうだ。

 

「ですが、彼女は特待生です。特待生問題は、三人共よく承知しているでしょう?」

 

 特待生問題?また新たなキーワードがあらわれた。

 

「それはわかってるけど。ほまた咲音くんを置いてきぼりにしてるよ?鳩が豆鉄砲を食ったような顔しているし」

「そうですね。では説明しましょう」

 

 はあ、とため息をつきながら花姫様は苦そうな顔をする。

 

「特待生制度が導入してから今年で三年目。本来、縁のない方々にも花宮の門戸を開こう、そんな目的で始まったのですが……この制度で入学した特待生は、一人の例外なく全員、途中退学しているのです」

「え…そうなのですか?」

「ええ。ほとんどが校則違反や暴力沙汰、非行行為の結果。そのほかは心身を患い、自主退学……」

 

 考えてみると、それもそうだ。周りはお嬢様ばかりで水の合わない人間もいるだろう。一度落ちるところまで落ちたら人間はなかなか這い上がれない。

 

「すべて彼女たちが悪いとは言えませんが、でもこのままだと間違いなく貴方は同じ道を踏む」

「…………………」

 

 けど、姉さんはそんな事一言も言っていなかった。

 

「とにかく、そういう事なのです。ですから、査問会は予定通り本日の16時から執り行います」

「咲音くんには申し訳ないが、特待生の扱いには揉めに揉めたことなんだ。もう少し、付き合ってくれ」

「……………………」

「そういうわけですから、きちんと昼食を取って、遅れないように。あ、もちろん制服ですからね?」

「は、はい…………私は今すぐでも構いませんが……」

「それまでの間私達にも準備がありますから」

「僕らもお昼ご飯だよー」

 

この事は、姉さんに言うべきかな……。なんというか、底なしの泥沼にはまった気分。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。