あいつと我が家と   作:チナシーマン

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いつもの日常

「いらっしゃいませー」と高校生と思わしき少年が元気な声で客を出迎えていた。

その青年桝本六弥《りくや》は鉄板を向かい合わせに客を迎えオーダーを取っていく。

「そば肉玉二つ片方にトッピングでイカ天とチーズねー」

「こちらがお冷でございます。ピッチャーはこちらに御座いますのでご自由にお使いください」

六弥がオーダーを伝えていると少女がグラスを運んで行った。彼女は六弥と同じく高校二年生である。

「風華《ふうか》ー、ちょっと生地少なくなって来とるけえ作っといてくれん?」

「はいはーい、今行くけえちょっと待っといて」

そう言って御倉風華は彼女の母親の元へ向かって行った。

この広島にある小さなお好み焼き屋『ますみや』は御倉家の家を改装し経営されている店である。しかし土地こそ御倉家の土地ではあるがその隣に住む桝本家も一緒に経営している。この店は六弥と風華とそれぞれの両親の6人で切り盛りされている状況だ。小さな店ではあるが地元住民からの評判は良く生計を立てるのに苦労しない日々であった

また、 二人の通う高校はアルバイト禁止であったが、自身の家族の店の手伝いをする代わりにバイト代がわりの小遣いを貰うという抜け道ながらも校則に触れることなくお金を稼いでいた。

風華の父親が休憩から帰ってくると鉄板に向かい合い麺をほぐし生地を焼き始めた。

「お前ら二人共今日はもう上がっていいぞ」

時刻はすでに夕暮れ近く。その一言で六弥と風華は後ろの御倉家の居住スペースへと戻って行った。

「ねー、今から数学教えてもらってもいい?」

後ろへ下がるや否や風華は指で部屋のある二階を指差しながらそう伝えた。

「まぁ別にいいけどそんな困っとるん?」

「明後日提出のやつが残っとるんよ」

そういいながら二人は階段を登っていき部屋へと入って行った。

「まぁよくもこんな部屋で我慢できるよな」

その部屋は整頓こそされているものの生活用品が部屋の大半を占有していた。

「まぁしょうがないんよね。うちが狭くなったとしてもあの店が大好きだし」

本来この家は店を開くために建てられた訳ではない。それ故に店を開くにあたり無理に改装した結果御倉家の居住スペースがとても狭くなってしまうという問題が発生してしまっていた。

桝本家に荷物を置く提案もされていたが、流石にそれは不便であると取り下げられた。

「でもなんかよう分からんけど解決しそうよ、父さんがそんなこと言っとった」

以前そのような話を父とした時にそのようなことを聞いていた。しかし彼女には不安要素があった。それはなぜが父がニヤついていたことだ。父はたまに驚くようなことを考える。あの顔をするときは特に。

「なにするつもりか知らんけどまぁいいか。それよりどこが分からんのん?」

風華は問題を指差しながら苦笑いを浮かべる。

「あーここかぁ。これは無理矢理にでも平方完成してやればいいよ。元々汚い答えじゃけえそれしかないわ」

「あ!それで良かったんじゃ!間違えとんのかと思った」

風華は笑いながら頭を掻いた。

「ありがとー!後ここだけだったんよ!」

彼女は立ち上がるとそのまま思い切りベッドに飛び込みながら声をあげた。

「これで心置きなく明日を楽しめるわ!」

「明日…明日なんかあるん?」

六弥はそう問いかけた。明日は日曜日であり店も完全に親達に任せるため二人にとっては珍しい何も無い日である。その日に何か予定があれば彼女はいつも嬉しそうに彼に話しかけていた。しかし、明日は何かあるということを全く聞かされていないため少し気になってしまった。

「いや、何にも無いよ。だからさぁ…一緒にどっか遊びに行かん?」

「あーそういうことか。じゃあ一緒にどっか行くか」

そういうとうつ伏せだった彼女は嬉しそうに転がり仰向けになった。

「じゃあ決定ねー」

「りょーかい。じゃあ俺も疲れたけぇもう帰って寝るわ」

「じゃあねー」と手を振りながら彼女は眠りに落ちそうだったが風呂に入っていないことを思い出し重い腰を上げて風呂場へ向かって行った。

家に着いた六弥は明日のこともあるので早く寝ようと思い風呂へ向かって行った。

「あー、タオルあっちに忘れた。しゃーない取ってくるか」

そう言って御倉家へ再び入り洗面所に置いたはずのタオルを取りに向かった。洗面所前まで辿り着きドアを開けると先客がいた。

風華が入浴のために衣服を脱いでいたのだ。

彼女は突然ドアが開いた驚きとあられもない姿を見られてしまったこととで固まってしまった。しかしそんな彼女を差し置いて六弥は何事もなかったかのように目標のタオルを取り「すまん」と一言だけ残して出ていった。

一人取り残された彼女は恥ずかしさでその場に座り込んでしまった。

同時に彼の態度への怒りも湧いてきた。

彼女の方からすると、裸を見ておいてあの反応だけで流すのは幾ら何でも無いだろう。

それは彼女にとって自信をなくす出来事だった。

自分は女として見られていない。もう、悪い意味で家族としか見られていないのだろうと。

しかし、その一方で桝本家の風呂場に戻った六弥は浴槽に浸かり頭を抱え込んでいた。

「あそこで平然を装えたけどあの光景が目に焼き付いて離れん…明日どんな顔で…どうやってあいつと過ごせば良いんじゃろ…」

あの光景を見てノーダメージという事はなく確かに引きずっていた。

風華にしてみれば望んでいた事ではあるが、それを本人が知る由はない。

互いが互いに意識し合いながら夜は更けていった……

 




色々数ヶ月前から構想は練っていましたがようやく初投稿です。
そして、処女作でございます。
まだまだ至らない点が多いですが温かい目で見守っていただけるとありがたいです。
因みに広島が舞台である理由は自分が広島の人間で標準語に直すのが面倒だっただけです。どれも自分の周りで日常的に使っている言葉なので少し正式な広島弁とはズレていると思われます。
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