件の事故から一夜明けた朝。二人は店の前で再会した。
いつも通りの光景であるはずが様子がおかしい。互いが互いに意識をしてしまい会話が続かない。話を持ち出そうとしても両方の声が被ってしまいそのまま沈黙が続いてしまう。
風華にとっては女性として意識してもらうということは願っても無い状況だったのだが、現状彼女に対しても精神的ダメージが大きい。
そんな雰囲気の中彼女は必死に言葉を探す。
「今日はどこに行く……?」
「特に考えてないけど……市内でいいかね?」
「そうじゃね……」
いつも通りの会話であるはずなのにやはりたどたどしさが目立つ。
その空気に耐えれなくなったのか二人はそそくさと歩き始めた。
二人は最寄りの駅に到着し、電車に乗り、丁度二人用の席が空いていたので隣り合って座った。
車内はそれぞれの乗客の喋り声によってそれなりにうるさかったが、それでも二人の空間には沈黙が続いていた。
「やっぱ市内に行くには市電の方がいいな」
その少し重い空気の中、沈黙を破ろうと六弥は言葉を発する。
今二人が乗ってるのはJRとは異なるローカル線である。
JRより時間はかかるが本通りなどの街の中心部により近くまで乗って行くことのできる電車である。
そのまま沈黙は続き、昨晩の緊張で寝不足だった二人は気づけば夢の世界へと落ちていっていた。
その光景は傍から見ればそれはそれは微笑ましい光景であろう。二人で肩を寄せ合い互いに体重を預けて眠っているのだ。
その光景は目的地に着く少し前まで続いた。
先に眠りから覚めたのは風華の方だった。重いまぶたを開き寝ぼけ眼をこすりながら周囲の状況を確認する。
左肩には六弥の顔が乗っていた。
風華は動作を完全に静止させ頬を紅潮させる。
(え、こんな事になっとったん?どうすりゃいいんじゃろ……)
六弥から離れようとすれば彼を起こすことになる。かといってそのまま静止したままであれば自らの心が持たない。その上彼はいつ目を覚ましてもおかしくないのだ。
(よし、動こう!)
彼女はそう決意した。しかしあまりに悠長にしていると完全に離れる前に彼が起きてしまう可能性が有る。
彼女に残された時間は短くチャンスも一度きり、為すべきことは彼が覚醒する前に体制を整えることだ。
息を整え気持ちを落ち着かせる。
すっと彼女は彼から逃げるように姿勢を正した。
六弥の体が大きく傾く。それを見てすかさず細い腕で支えた。
「えっと……起きた?」
彼はまぶたを開きとっさに彼女から離れようと大きく反対方向に傾いた。彼女から離れた彼は体制を崩し窓に頭をぶつけた。
「痛っ!」
「大丈夫?」
風華は彼を心配そうな顔を見つめた。
「だっ…大丈夫」
バツが悪そうに返事をする彼に心配しつつもあの状態を乗り切ることが出来たことに彼女は安堵した。
『次は―紙屋町西、紙屋町西です』
流れてきたアナウンスに二人は反応した。
「あれ、もう紙屋町じゃん。降りる?」
「そうじゃね」
そう言って二人は急いで席を立ち扉の前まで移動する。
プシューと扉の開く音とICカードの音が鳴る。
電車から降りた二人は横断歩道を渡り本通りへと歩いていった。
「ごめん、ちょっとトイレ行ってきていい?」
そう言うと六弥は近くにあるコンビニに入っていった。
トイレに入ると彼はそのまま便座に座る。もとより彼はトイレに用を足しに来たわけではなかった。
「はぁーー」と大きくため息を付いて頭を垂らす。
(二人で寄りかかって寝てたとかどうすればいいんじゃろう…しかも風華が先に動いたってことはそのことはあいつも知ってるってことじゃしなぁ……)
実は彼は風華が目を覚ますよりも先に起きていたのだった。しかし、昨日の今日で彼女に急接近したことによって混乱し、結局どうすることも出来ず狸寝入りすることになったのだ。
電車から降りていち早く彼女と少しの時間距離をおいて心を落ち着かせる時間が欲しかった。
(今まで家族同然の中だったから意識することなかったけぇそんなふうに考えんかったけどあいつもちゃんと女なんだよなぁ……)
そんなことを考えながらただ時間だけが過ぎていった。トイレに行ったとしてもそろそろ出てきてもおかしくない時間であった。
「ウッシ!」
そう言って気合を入れて立ち上がり取っ手に手を伸ばした。
いろいろとやりたいこととやるべきことが増えていった結果こんなに遅くなってしまいました。
前々から書いていたんですが、スマホで書くときの悪い癖でchromeでタブを切り替えるときに保存するのを忘れて切り替えてしまうんです。短時間ならいいんですけどある程度時間が空くとそのまま再読込されるので書いた部分が消えてしまうんです。
そのせいで今回の電車の中の下りを実際は5回くらい書いています。
その反省を踏まえ今度からスマホで書くときはメモで、それをパソコンでここに入力していきたいと思います。
実生活の忙しさに加えここには載せてないですが、一応チャレンジということで賞に出すためのものも並行して書いているので又、ペースは遅くなるかもしれませんがまだまだやっていきたいと思います。
今後共よろしくおねがいします。