ようこそ実力至上主義のジオフロントへ   作:Chelia

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タイトルが坂柳なのに冒頭の登場が軽井沢・・・
まさかこれって・・・タイトル詐欺!?


1-Aリーダー 坂柳有栖

Dクラスが解散となり、各自寮に戻ったり、学校外を見て回ろうと言う話になったようで、ぞろぞろと教室を出ていく生徒たち。

その流れに乗じて教室を去ろうかと考えたところで、1人の少女と目があった。

その少女とは事情があり、表向きに会話しているところを見られるわけにはいかないため、場所を指定したメールを素早く送り、現地集合を促す。

指示を忠実に守ったのか、校舎玄関から少し離れたところに視線を送ってきた少女 軽井沢 恵 が待っていた。

 

「・・・時間、いいの?」

 

堀北とは違い、短くこちらの予定を先に聞いてくる。

この対応も、以前では考えられなかったものだ。

 

「ああ、問題ない。俺に何か用か?」

 

「何かって・・・言われなくても分かってるくせに・・・」

 

軽井沢恵

綾小路と同じ、1年Dクラスに所属するギャルっぽい外見の女子で、Dクラスの女子を統括するほどのリーダーシップを持つ。

言動は比較的攻撃的で、歯向かう相手には容赦しない性格、そして今回Dクラスの円卓会議リーダーに選ばれ、男子のリーダー格とも言える平田と付き合っていることもあり、その地位を安定させている。

しかし、それは表向きであり、実際はそうではない。

彼女は昔からこの学校に入学するまで、酷いいじめにあっており、肉体的、精神的に酷いトラウマを持っていた。

それから逃げるため、高校ではイメチェンという名の性格の変更を行い、平田という強力な盾、悪く言えば寄生先を手に入れたことで自分自身の身を守っていたのだ。

しかし、入学して半年後くらいに行われた船上試験において、自らのトラウマを綾小路に知られ、再度のいじめ及び脅しを受ける。

その際、裏で糸を引いていたのが綾小路張本人だったものの、綾小路から寄生先を自分に変えれば何があっても守り抜く。

その代わり、自分(綾小路)に力を貸せと取引を持ち込まれた。

こういった経緯で行動を共にするようになったものの、一緒に過ごしていく中でその圧倒的な能力に何度も驚かされたこと、そして本当に自分自身の身を守ってくれたことから綾小路にこの学校の誰よりも強い信頼を寄せるようになったというわけだ。

また、軽井沢自身も口では真逆の言葉を発してはいるが、綾小路と一緒に裏で暗躍することに対し、楽しんでいるような様子もある。

 

「今回の件があっても、俺達の関係は以前のままでいいのか、もしいいなら、何か自分に対して指示があるのか。そんなところか?」

 

「・・・分かってんじゃん。」

 

150年の時が経ったという事実はどんな生徒にも大きなダメージを与える。

先程記述したように、今のこの学校での軽井沢の地位は綾小路がいなければ成立しない。

しかし、激変した状況で綾小路の気が変わり、もうお前は要らないと切り捨てられてしまえば終わりなのだ。

 

「心配ない、俺達の関係は今までどおり変わらない。俺がお前に指示を出すのも、お前のことを守ることも、それを含めて全てな。」

 

「・・・ありがと、ちょっと安心した。それで、清隆は早速何か動くつもりなの?」

 

「事案が事案だけに、俺自身の今後の身の振り方を含め考えているところだ。むしろ、今回の件をお前はどう思った?」

 

「教室で平田くんも言ってたけど、半信半疑かな。校舎を出て気づいたけど、『空』がなくなってる。生徒会長の話が嘘じゃないってことは分かったけど、話の内容が多いのと自分の持ってる情報が少ないから、嘘を仕込まれていても気づかないなって思ったわ。」

 

軽井沢が感じている点については概ね自分と同じものだった。

入学当初の彼女であれば、現実を受け入れられずに喚き散らしていただけだっただろう。

自分に忠実な手駒が成長していて、且つ頼りになることに改めて感心し、話を返す。

 

「俺も同じだ。それと気になっている行動についてだが、明日の円卓会議で少しぶつけてみて、反応を確認してからになる。まあ、今日は何もないってことだな。」

 

「了解、せっかくだし少し見ていかない?学校と空は分かったけど、この学校は町1つ分の敷地に、ありとあらゆる店や施設があったでしょ?自分の目で見たほうが信憑性は増すしね。」

 

もともと、自分も同じことをしようと考えていたこともあり、二つ返事でうなずく。

軽井沢と一緒に町中を歩いてみて改めて分かったことだが、店も施設も全てが閉鎖されていた。

自動販売機だけは機能しているようだが、これでは食料を含め自力では何も手に入らない。

携帯に送られていた3年生からの情報では、今日の19時から体育館で、3-Aクラスが各クラスに対し、順番に食事と生活必需品の配布が行われるとのことだった。

 

度々目にする3-Aというクラス名。

突出して様々な活動を行っているあたり、目覚めたのが今日というのはありえない。

持っている情報の多さも含め、先に目覚めて何らかの準備をしていたと見て間違いないだろう。

他の生徒たちも同じことを考えているのか、外にはパラパラと学生の姿は見えるが、教員や従業員などは1人もいない。

生徒会長が話していたこともほぼ真実で間違いないってところか。

見回りが終わると、一緒には戻れないため、寮の近くで軽井沢と別れる。

 

「付き合ってくれてありがと。平気なふりしてるようにみんなには見せてるけど、私も結構動揺してるから、気が紛れて良かったわ。私は私で情報集めるつもりだから、何かあったら連絡して。」

 

タイミングをずらす必要があるため、そう言うと早々に寮へと戻る。

少し時間を空けて、綾小路も寮へと戻った。

 

その日の夜

1年Dクラスはやはり一番最後だったため、21時頃にようやく配給が来た。

体育館へと赴き、食事と生活用品を受け取ると、思った以上にクオリティが低かった。

VIPな生活に慣れてしまった生徒からは不満も出るだろうな、と感想を抱きつつも寮へと戻ろうとする。

帰るために寮の廊下を歩いていると、1人の少女から声をかけられた。

 

「こんばんは、綾小路くん。」

 

低い背丈に、杖をつきながらゆっくりと近づいてくる姿は印象的で、1年生なら知らない人は誰もいないであろう人物。

そして、綾小路にとっては、自らの過去を知る数少ない人物であり、厄介な相手でもある。

円卓会議1年Aクラスリーダー 坂柳 有栖 だ。

 

坂柳はこの学園の理事長の娘であり、非常に頭が切れる上に、普段の印象や外見とは反転して攻撃的な性格をしていると噂されている。

150年経過したということは実父である理事長も当然亡くなっている。

そんな彼女は一体どういう心境なのだろうか?

 

また、彼女は約150年前の体育祭の際に綾小路に敵対する意思を示している。

そんな彼女がこのタイミングで声をかけてくる時点で、その不自然さにどうしても警戒してしまう。

 

「俺に何か用か?」

 

「同じ円卓会議のメンバーになったのでご挨拶を・・・と言っても、おそらく信用してはいただけないと思いますので、正直にお話しましょう。ですが、ここで話せる内容でもないので、できれば貴方の部屋をお借りできませんか?」

 

「どうして俺の部屋なんだ。」

 

「あら、私の部屋に貴方が来るという方が問題あると思ったので、私なりの配慮だったんですが。ご覧の通り足も悪いので無理強いはできませんが、お時間をいただけると嬉しいですね。」

 

自らの身体の悪さもハンデとして捉えるのではなく、むしろ武器として使ってくるとは。

ここで断れば、後でどんな噂を校内に流されるか分かったものではない。

断るという選択肢は早々に切られてしまったようだ。

 

「分かった。」

 

綾小路はそう答え、坂柳を自室へと案内する。

 

「お邪魔します。」

 

坂柳は丁寧にお辞儀すると部屋の中に入るものの、須藤たちのようにドカドカとベッドにダイブするのではなく、お淑やかに立って待っている。

そのまま立たせておくわけにもいかないので、机の前の椅子を指示すると「失礼します。」と短く答えて座る。

座り方1つ取っても非常に美しく、本当に身体のハンデなどものともしないお嬢様というような印象を得た。

 

「さて、貴方に対して回りくどく話しても恐らく看破されてしまうと思いますので単刀直入に言います。綾小路くん、私を手を組みませんか?」

 

「・・・」

 

流石の綾小路も返事を即答することはできなかった。

過去、自分に対して敵対の意思を示したあの坂柳が、大した直接対決もしないまま今度は手を組みたいと言ってきたのだ。

ただし、動揺するわけにもいかないので、相手の真意を探るべく、返答を返す。

 

「どういう風の吹き回しだ?お前はあのとき、俺を倒せると言ったはずだ。」

 

「それは貴方からの質問に対し、回答をしたまでです。確かに、いつか上のクラスに上がってきて、私の障害となるのであれば貴方を排除することも視野に入れていましたが、私は早々に貴方本人に仕掛けるつもりはありませんでしたよ?」

 

そう答えるものの、最後のごちそうなのでとあざとく付け足す坂柳。

 

「なら、この環境に早くも適応し、150年前と動きを変えるってところか?」

 

「流石は綾小路くん。そのとおりです。今の私は強力な味方が必要だと何よりも優先して考えています。今日1日、私が考えたことについて包み隠さずお話しますので、私が貴方と組むに値するかどうか判断してほしいのです。その上で断られればしつこくはしませんので。」

 

「何よりも優先、と言う割にはさっぱり諦めることも考えるんだな。それにAクラスや上級生でなく、なぜ俺なんだ?」

 

「一時的な利用であれば口先の嘘でなんとかなりますが、本命で、特に相手が貴方ならそれなりの信用がなければ組んでいただけないと思いまして。貴方を選んだ理由についても、この学校で貴方が一番能力があると私がそう判断しているからです。」

 

「過去の俺を知ってる風の話し方は気に入らないんだがな。」

 

「知ったような口を聞けば貴方は怒ると思いますが、私同様、貴方も父親が他界しているわけですし、それに拘る必要はないのでは?と個人的には思いますけどね。すみません、今のは余談です。」

 

「・・・今のは聞かなかったことにする。まあいい、とりあえず話は聞こう。」

 

「では・・・」

 

そう言って、坂柳は話し始めた。

 

まず、体育館での話が終了し、各クラスに戻った後の話、1-Aは早々に教室を後にし、クラス全員で街中を可能な限り探索したようだ。

これについては、綾小路や軽井沢を含め多くの生徒が行ったであろう行為だが、それに至るまでの動きが早い。

Dクラスのように動揺する生徒がいなかったか、いたとしても強行してすぐに行動へと移したのだろう。

葛城であればこのような指示は出さないと思われるため、これも坂柳の指示だろう。

 

「そして、私が実際に見て感じたことをお話します。まず、生徒会長の話には嘘が混じっていました。お気づきですか?」

 

「・・・何?」

 

「要約して説明されたことの7つ目。備蓄された資源を使用しており、電気、食料はすぐに底を尽きる。本当にそうでしょうか?」

 

「今さっき、配給をもらってきたが、食料についてはある程度保存のきくものが少量だけだ。物資がないわけではなく、生徒会が意図的に出し惜しみしてるってことか?」

 

「いいえ、それでは外回りの件とは繋がりません。私が着目したのは電気の方です。資源が本当に足りないなら、日中は生徒のいる校舎のみに電力を注ぐべきであるにもかかわらず、街中の全ての施設は、閉店しているもののインフラは通っていたんですよ。付け加えて言うなら、18時30分くらいまでは外は明るかったですよね?空が消えて、灰色の天井が張り詰めているこの地下世界であれば、電気がなければ真っ暗でなければおかしいと思いませんか?」

 

坂柳がいうことが本当であれば、この町全体を明るく照らすために膨大な電気エネルギーを使用して、150年前と同じ『昼』と『夜』を再現していることになる。

これほどの電力を注いでいて資源枯渇と言い張るのは無理があるとの主張だ。

確かに、話に矛盾点はないし、むしろ初日でそこまでの観察及び考察ができてる点については素直に評価せざるを得ない。

 

「次の説明をさせていただきますね。生徒会長は説明の際、何度も念押しして私達生徒同士に協力をさせようとしていました。円卓会議なんて大々的な組織を作り上げてまで、です。」

 

1つ目の物資の件に疑問を持つと、芋づる式にこちらに対しても不可解な点があると坂柳は主張する。

150年経った今、動揺する生徒が大半なのは今まで話してきたとおりだ。

なら、自分がまとめなければいけない立場に立った場合、どうやってこの混乱を突破していくべきか?

いきなり円卓会議という組織を作るのは、先の段階では良い手であっても、150年後の生活が始まった今日・・・つまり初日に打つ手ではない。

従来の方式に従い、まずは各クラス同士で地盤を固めてからでも遅くはないし、生徒同士がこの生活に慣れはじめ、今後どうやって生きていくべきか悩み始めた時期にそのまとめ役として作るのが相当だろう。

少なくとも、混乱している現環境で早急に作るべきではないし、堀北会長自身も学校のやり方を継続させたがっていた保守派の人間だ。堀北会長の方針にしてはかなり似合わないものであることは間違いない。

であれば、すぐにでも円卓会議を作らなければならなかった理由はなんなのか?

 

「分かりますか?綾小路くん。」

 

「資源の話以外で、今一番起こってほしくないことか。正直選択肢は無限にあるし、1つとは限らないんじゃないか?」

 

「ええ、これはあくまで私の予想なのですが、他のジオフロントから接触を受けたのではないですか?であれば、こちらの意思を1つに統一しておく必要があるという点には同意できます。例えて言うなら敵国と接触するにあたって、自国の人間同士が敵対している状態と1つにまとまっている状態とでは勝率は大きく変わりますからね。ジオフロントという名称も、最初は先生方が残してくれたものだと思っていましたが、もしかしたら、ほかのジオフロントに接触された際、その名称を知ったということも十分に考えられると思います。」

 

それが坂柳の言う、強引にでもクラス同士敵対しあうように作られていた学校の制度を無理やり変えてでも高度育成高等学校という学校の生徒の意思をまとめなければならない理由だ。

こちらについては憶測の域を出ていないが、仮にそのような事実があった場合は非常にまずいことになるだけでなく、今生徒会長が取っている対応ですら後手なんてレベルではない。

 

仮に、他のジオフロントが、今自分たちのいるジオフロントに接触をしていたとしよう。

現時点で判明しているだけで、こちらにはこれだけ不利な材料が存在している。

 

・全員が高校生であり、社会経験が足りないだけでなく、殆どの生徒が本日目覚めたばかりであり、状況すら受け入れることができていない。

・自分のジオフロントの環境整備が完了していない。

・元々敵対しあっていたこともあり、生徒全員で協力し合うのが非常に難しい状況にある。

・相手の規模がわからない以上、どれだけの人口がいて、どの程度の科学力や資源を持っているか、文化や言語が自分たちを同じなのか等、相手に対しての情報が一切ない。

・相手が兵器を保有していた場合、即座に負けが決定する。

 

考えていけば他にもいくらでも出てきそうではあるが、言い出したらキリがないのでこれくらいにしておく。

他のジオフロントに対抗するための円卓会議、そう考えれば早急に強力なメンバーを集めて組織を作った理由にも納得がいくのも確かだった。

 

「私の発言、狂言と捉えますか?それとも、可能性の一つとして考えていただけますでしょうか?私が危惧しているのは2つ目、他のジオフロントが本当に接触してきた場合、それから対応を考えていては後手に回ってしまいます。であれば、早々に頼りになる人を味方につけ、先行して対策を立ててしまおうという判断です。間違っても、どんな相手か分からない相手に処刑されたり、捕虜にされたり、支配を受けたり、そういうのはまっぴらごめんなので。」

 

「あり得る話だ。むしろ、お前の話に不自然な点はなかった。初日であの堀北会長の真意をそこまで深読みできる点には素直に感心もする。」

 

「ありがとうございます。」

 

「だが、俺自身今後の身の振り方をまだ決めたわけじゃない。明日の円卓会議で、お前がその意見をあいつにぶつけろ。その話が全て真実なら、お前と手を組むのも悪くない。」

 

「・・・いいでしょう。言質、取りましたので。」

 

そういうと、坂柳は部屋を後にした。

本当に自分の要件だけを伝えに来ただけとは。

軽井沢にはああ伝えたものの、こうなってしまった以上は様子見せざるを得なさそうだ。

坂柳、そして掘北会長の発言次第で柔軟に対応できるよう、平田にだけはメールを送って寝ることとしよう。

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