ようこそ実力至上主義のジオフロントへ   作:Chelia

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決戦前の日常

あれから一週間の時が経った。

この地下世界で目覚めた初日はどうなることかと誰もが思ったが、結論から言えば、ここまでの経過は非常に良好である。

円卓会議の存在も、選ばれている生徒が全員優秀であり、中には多数の生徒からの信頼を得ている生徒も配属されていることから、円卓会議が中心となり、新しいルールが次々と決められていった。

憲法や法律は150年前の既存のものを使用し、その権力(司法権や行政権等)は円卓会議が持つこととなった。

環境が激変しているため、不要な法律、必要な法律、処罰規定を変えなければならない法律(起こりやすいと考えられる万引きや横領、暴行や傷害事案等については新たな罰則を定める)など細かいところをあげればキリがないが、その辺りは事案が発生するたびに3年生の円卓会議が臨機応変に事を進めるとのことだ。

さらに、3年生が行っている資料の解読については、学生全員が持っている携帯電話からホームページにアクセスすることで誰でも自由にそれを読んだり、進歩状況を確認したりすることができるようになった。

(アクセス権限によって閲覧できる資料に差があることは公には公開されていない。)

これによって、どういった経緯で自分たちが150年眠っていたかなどの謎が少しずつ判明、解明されていき、生徒たちの不安が大きく軽減された。

 

次に2年生

ジオフロント内の設備の復興は概ね良好である。

復興希望店舗のアンケートを取り、生活に必須の施設、希望の多い施設を優先的に再稼働させ、アルバイト(詳細は後述)を募集し、需要と供給の流れを復活させていった。

通貨についてはこれまで通りのプライベートポイントを採用。

ポイントは150年前のものをそのまま引き継ぎ、0ポイント近い生徒の救済のために全校生徒に10万ポイントを支給した。

それ以降はアルバイト等で自力で稼ぐように方針を定め、それ以外にもプライベートポイントを入手できる方法を作るべく、2年生の円卓会議を中心に、円卓の議題にも上がっている状況だ。

 

最後に1年生

前回の話題に上がっていた公開での会議は成功。

内容についても、綾小路が平田に根回ししたとおりの内容で全て可決された。

授業については1年生は必須、2年生、3年生については希望制となり、上級生は資料解読や経済の活性化等の業務と並行して、希望した日に授業を受けることができるようなシステムとなった。

また、例外的に円卓会議のみ、必要があれば授業を免除することができる。

1年Dクラスでは、堀北や幸村が円卓会議に指名され、教員役を務めている。

こちらについても概ね良好だが、『社会』の教科につき、この地下世界になってからの現代社会を教えられる生徒が当然いないため、課題となっている。

『英語』などの外国語についても、今後の必要性が不明瞭なため、授業は行われていない。

須藤にとっては万々歳の状況だ。

 

1年生は午前中が授業必須となったこと。

アルバイトが週3日(これは全校生徒共通で、円卓会議はバイト禁止になった)の制限がついたことについては、全て平田(実際は綾小路)の提案通りになった。

 

また、クラス間の壁の撤廃についてだが、こちらも非常に良好である。

A、B、Dクラスともに予定通り協定を結び、現在はクラスの結束を固めるため、円卓会議防御陣営を中心に議題が繰り広げられている。

Cクラスについても、龍園が一切関与しなかったことが大きく、サブリーダの椎名ひよりが繰り上がりで力をつけた。

椎名も輪に加わり、なんとわずか一週間で全クラスの同盟が公式に決まったのである。

 

このように、生徒復活から一週間、特に目立った問題や騒動は起こらず、円卓会議を中心に次々と方針がまとまっているのが現状だ。

一般生徒においても、『やらなければならないこと』と『やってもいいこと』が明確化され、150年前よりもさらに自由が増えたことで、1人1人が自分はどう行動すればいいのかを考えるようになった。

毎日いろんな事を考えたり、挑戦したりしていれば、文句を言っている暇などないというわけだ。

 

一方、円卓会議の方は現在まで毎日、各学年ごとに円卓メンバーが会議を開き、定期的に3学年のメンバーでの情報共有を行っている。

様々な方針を決めたり、現場に赴いて問題を解決したり、クラスに戻って情報を伝えたりとやることが多忙なんてレベルではなく、メンバーのほぼ全員がまともに睡眠時間も取れていないような状況だ。

ブラック企業様々である。

授業に出れないのはもちろん、自分のクラスにどちらかは定期的に戻らないといけないため、思うように時間が取れない。

ジオフロント内が色々と落ち着くまでは致し方ないとはいえ、円卓会議の生徒に負担が集まっている現状は変えようがない。

 

以上、一週間で起こった出来事や決まったことなどを長々と記載したが、今回のお話しは綾小路が坂柳に反論したあの日から一週間後、ようやく午後にまともな空き時間ができた円卓メンバーの一部の話である。

 

一之瀬帆波はカフェにいた。

以前はあまり交際はなかったが、今回の円卓会議を経て仲良くなった円卓会議のメンバーであるCクラスサブリーダーの椎名ひよりも一緒だ。

 

椎名ひより

物静かで読書が趣味の少女。

龍園がCクラスを支配していたとき、その影響を最も受けなかった生徒。

そのため、本人にそのつもりはあまりなかったが、Cクラスの女子のリーダーのような存在となっていた。

観察力に優れており、人の動きや発言を注視したり、覚えたりすることに長けている。

150年前のとある騒動により龍園が失脚して以降は、金田という生徒とともに繰り上がりのような形でCクラスのリーダー的存在になった。

円卓会議のメンバーに選ばれたこともあり、今後はより多くの人と交流を深めていきたいと考えているようだ。

綾小路との絡みは殆どないが、読書が趣味という部分が共通しており、変なところで会話が弾む仲だったりする。

 

「うーっ、疲れたー!」

 

人目も気にせず、カフェテーブルにだらんと腕を伸ばし、頬をつける一之瀬。

気持ちは分かると苦笑いしつつ、手に持ったコーヒーカップに砂糖を加え、くるくるとかき混ぜながら椎名がテーブルに戻ってくる。

 

「お疲れ様です一之瀬さん。昨日も午前3時まで打ち合わせしましたし、大変でしたね。」

 

あれから結局一之瀬は坂柳に呼ばれることはなく、葛城、神崎、椎名、平田とともに授業やアルバイトについての討論、それが決まった後は教員役の生徒の確保やバイトについて2年生の円卓会議との打ち合わせなどを行っていた。

それのほかに、1年生全員で協力体制を結ぶという議題も並行である。

冒頭に記載したとおり、それらがようやく決まり、軌道に乗り始めたというところのようだ。

 

「ひよりちゃんもお疲れ様。結局1回も授業出れなかったね。私は円卓会議のメンバーだから教員役はできないけど、Bクラスの子の授業とか受けてみたかったんだけどなぁ。」

 

「今後は他クラスとの合同授業で、他クラスの生徒の授業も受けられるように会議するんですよね?どの生徒の授業が人気になるのか、私も楽しみです。」

 

「って、ごめんごめん!せっかく自由時間ゲットできたんだし、こんなときに仕事の話なんてするもんじゃないよね!」

 

「うふふ、大変ですけど、私は結構楽しんでいますよ?大人の方で仕事帰りにお酒を飲みに行く人たちはこんな感じなんだろうなあと思っていたりします。」

 

「確かにそうかも!社会人先取りしてるって思えば、今の仕事ももっとやりがいを感じられそうだね!私もみんなのまとめ役になるのは好きだし。」

 

そんな話をしつつ、2人でコーヒーをすする。

 

「ザ・インスタントって感じだね。食事の美味しさがなんとかなればなあ…」

 

「飢え死にせずにすんでよかった、と思うべきでしょうね。そういえば、一之瀬さんは何かやりたいことってあるんですか?」

 

「うーん、とりあえずショッピングかな?大変なことも多いけど、どんどん楽しんでいかなきゃもったいないしね!そのときは一緒に行こうね!」

 

「はい、ありがとうございます。私は、図書室に行きたいんですが立入禁止なので… 自室の本は読んでしまいましたし、やはり買うしかないのでしょうか?」

 

「趣味を満喫できないのは辛いよね… 堀北会長に相談するにも、私事は後回しになっちゃうか。分かった、私から話をしてみるよ!」

 

「えっ、でもそれだと一之瀬さんのご迷惑に…」

 

「いいのいいの!友達が悩んでいたら助けるのは当たり前だし、図書室は勉強とかにも使えるしね!」

 

「一之瀬さん…」

 

友達が親身になってくれていることに嬉しそうに微笑む椎名。

しかし、忙しいのは相変わらずなのか、少しすると2人の携帯のバイブがほぼ同時に鳴る。

 

「あはは…やっぱ丸々休みにはならないかー。って、綾小路くんからだ!」

 

「となると、いよいよそちらも動き出すようですね。私の方はCクラスの子からの相談でした。実質Cクラスの円卓は私だけなので、なかなか時間が取れないんですよね。」

 

「ひよりちゃんも大変だねえ… 私の方は坂柳さん、堀北会長と4人で打ち合わせみたい。」

 

「…健闘をお祈りしています。」

 

「ありがと!」

 

30分ほどのわずかな休憩をすると2人はすぐに別れ、行動を開始する。

 

時は再び遡り、一之瀬と椎名がカフェで会う時刻へ。

綾小路はDクラスに顔を出していた。

午後のため授業は終わっており、Dクラスの生徒はバイトに行ったり友達と遊びに行ったり、調べ物をしたり勉強したりと生徒によって様々である。

一見すると統率が取れていないように見えるが、それぞれの生徒が自分のやることを見つけ行動しているとも言え、クラスの士気に影響はない。

 

「あ、きよぽんが教室にいる!めずらしー!」

 

「時々顔は見るが、こうしてちゃんと話をするのは久しぶりな気がするな、清隆。」

 

話しかけてきたのは同じDクラスの生徒である長谷部、三宅の2人だ。

他にも幸村、佐倉も一緒である。

 

150年ほど前に綾小路が仲良くなったメンバーで『綾小路グループ』と名付けられている。

最初は特別試験の関係で付き合いが始まった仲だが、時間が経つにつれ交友も深まり、その関係は今も続いている。

 

簡単に書くと

三宅明人

150年前は弓道部所属。

龍園と同じ中学校に通っていた経歴あり。

 

佐倉愛里

人見知りで趣味は自撮り。

ネットアイドルとして活動していた。

綾小路に対して分かりやすい好意を抱いている。

 

幸村輝彦/啓誠

学力がかなり高い生徒だが、対照的に運動がダメ。

母親がつけた下の名前が嫌いで、綾小路たちには啓誠と呼んでほしいと話している。

 

長谷部波瑠加

友人と認めた相手をあだ名で呼ぶ癖がある。

1人を好む性格で、自分の好き・嫌いをはっきりと口にするタイプ。

 

これだけだと変な誤解を受けそうなので、気になる人はよう実6巻を読んでみよう!

(露骨な宣伝)

 

「悪いな、最近全然顔出せてなくて…」

 

「仕方ないさ、俺達もそうだが、堀北たちとも全然話せてないだろ?」

 

「う、うん!清隆くん忙しいし、しょうがないよ!」

 

幸村、佐倉も綾小路が忙しいのは一週間見ていたからかきちんと理解してくれているらしく、特に不満を言うことはない。

その後、せっかく綾小路がいるんだから少し雑談しようということになり、5人は教室からコンビニへ移動した。

昔のようにそれぞれアイスを購入すると、店の外で食べながらダラダラと話し始める。

今の綾小路にとってはこういう何気ない時間が非常に貴重であり、純粋に居心地が良いと思える数少ない場面だ。

 

「新しい生活には慣れたか?」

 

「そうだな。みんなそれぞれ自分で考えて自分でやることを決めてる感じだ。不思議と反発みたいなことは起こっていない。Dクラスで強いて言うなら、高円寺が行方知れずってことくらいだろうな。」

 

「行方知れず?」

 

「啓誠の言い方だと行方不明みたいに聞こえるかもしれないが、単純に自由奔放にどこか行ってるだけだ。大人に縛り付けられていた時でさえまともに行動してなかったからな。現状で円卓が決めたことなんて全く気にせず、あちこち好き勝手に出歩いている。

当然、授業も出てないな。」

 

「なるほどな…」

 

「私はバイト始めたよー!こことは違うコンビニなんだけどね。やっぱプライベートポイントが欲しくて週3でやってる。今度愛里も同じ店来ることになってるんだ。」

 

「わ、私も、少しでも社会経験を積まなきゃって思って…友達のいるところなら、いつもより勇気出るから…」

 

「そうか、頑張れよ2人とも。啓誠は教員役をやってたよな?」

 

「ああ、俺は今後もそっちで稼ぐつもりだ。午後は寮に戻って、次の日の授業の内容をまとめたり、勉強することが多いな。教えるとなると、自分も分かっていないと話にならないからな。教員役は週3の制限に引っかからないから稼ぎも良くて助かる。」

 

「俺はまだバイトはしてない。今は元運動部で定期的に集まって、今後部活をどうするかを話し合っているところだ。上級生中心だが、まとまったら円卓にも話をつけに行くつもりでいる。須藤とかもその集まりでよく顔を見るな。」

 

本当にみんな1人1人違う。

報告では聞いていたが、実際にこうして生の声を聞いてみると安心感が違うものだ。

今のところ新・高度育成高等学校の方針はできすぎているくらい問題ない。

 

「せっかくきよぽんいるんだし、また映画でも行かない?確かそろそろ営業再開だよね?」

 

長谷部がそう提案するが、そうはさせないと言わんばかりに綾小路の携帯のバイブが鳴る。

 

「…悪い、坂柳からだ。」

 

「本当に忙しいんだね、清隆くん…」

 

「清隆の方は順調なのか?平田や一之瀬たちよりあまり見る機会はないが。」

 

「俺はどちらかというと裏方の仕事なんだ。友人同士だし、話はしたいんだが、口外禁止事項も結構あってな。すまない。」

 

「気にしないでくれ、あの坂柳にあちこち引っ張られているのをよく見るから、みんな心配してるだけだ。話せないことも多いかもしれないが、何か俺たちにできることがあればいつでも声をかけてくれ。」

 

「ああ、そのときは頼らせてもらう、明人。それじゃあ、俺は行ってくる。」

 

「…行っちゃったね。んじゃ、私達も行こうか愛里。品出しと接客のやり方教えたげる!」

 

「うん、ありがとう。啓誠くんたちもまた…」

 

「ああ。またな。」

 

一之瀬たちと同様、こちらも30分くらい雑談をして解散となった。

 

さて、坂柳から呼出しを受けた綾小路。

これから攻撃側のメンバーについても触れていく。

あれから一週間、坂柳は情報収集に励んだ。

現状3年生が持つ全ての情報を把握し、他ジオフロントとの接触の準備をこの一週間で整える。

メールの文面に、堀北会長、一之瀬を呼ぶようにと入っている辺り、いよいよこの4人で他のジオフロントに接触をするための本格的な話し合いをするのだろう。

一方で、綾小路は龍園と接触をしていた。

結論から言って、今の龍園はまるで行動を起こす気がない。

かといって、牙が折れたわけでもなく、虎視眈々と情報を集め続けているようだ。

実際に龍園と話したことによってそれをつかんだ綾小路は現状では放置、動きを見せたら必要に応じ、先回りして妨害するという選択をする。

龍園が行動を起こしてからでも確実に妨害できるという絶対的な自信があるからこそ取れる方針だ。

元々、綾小路と龍園は裏側から攻めるという似たようなスタンスを取っていることもあり、読みやすい相手でもある。

それも含めて出した結論だ。

 

明日の午前中、いよいよ掘北、坂柳、綾小路、一之瀬で、他ジオフロントに接触する前の打ち合わせを行うこととなる。

 

これについては、次の話で触れていくことにしよう…


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