テルミが壊す!   作:ロザミア

12 / 48
失ったモノ

皇帝との謁見も終え、料理の担当を任されたので仕方無く調理場へボルスとウェイブと共に赴く。

料理なんざ適当にしか作れねぇぞ。

 

茹で玉子でも作ってやるか?

いや、文句を言うに違いねぇ、特にエスデス。

 

折角のパーティに作ったものが茹で玉子だけだとこの無能が、とか言うだろう。

 

そう思ったらムカついてきた。

あの氷結女に馬鹿にされて堪るか。

俺の料理スキルを見せてやるよ……。

 

「ハザマさん…やる気出てるな。」

 

「下手な料理を出したくはないので。」

 

「ハザマさんは料理に妥協しない人だったんだね。」

 

「ちょっと意外だぜ。(意外とイイ人なのか?)」

 

こういった雰囲気はあまり好きではない。

何となく、壊れたときが面倒だからだ。

 

まあ、それはいい。

 

さあ、調理場の覚醒だ!

この世は(今)全て料理だ、料理だらけだ!

なら俺が見せてやるよ…メシウマという名の夕飯をなぁ!

 

「す、すげぇ早さで魚を捌いてやがる!」

 

「家事スキル高いんだね。あ、ウェイブ君、ほうれん草は最後ね。」

 

「あ、はい。」

 

「ウェイブさん、動きが遅いですよ。早くなさい!」

 

「は、はい!」

 

俺がエプロンを着けて、手早く魚等を捌き、ボルスは肉を担当。ウェイブは他の食材の調理をしているが……

ボルスはともかくウェイブはおせぇ!

ふざけんな、パーティなら素早く、そして丁寧にだろうが。

 

返事と共にスピードを上げるウェイブに、まあいいかと思い、自分の持ち場に集中する。

 

……料理か。

 

 

─テルミが作ったのか?

 

─んだよ、不味いかよ

 

─不味い。

 

─あ"あ"!?……くそが、なら残しやがれ!

 

─断る。テルミの料理だ、全部食べさせてもらう。

 

─……チッ、面倒な女。

 

 

…チッ、俺様の料理が食えるなんざコイツらは幸運だぜぇ?

ま、美味くねぇとか言ったらぶっ殺す。

 

過去を振り返り、それでも前へ進む。

皇帝家が存続してる以上、契約的に仕方ねぇからこんな小芝居しながらやってんだ。

面倒だが、楽しんでやる。

 

時が来たら殺すがな……エスデス将軍。

 

その後、出した料理で誰のが美味いかという事になり、僅差でボルスだった。

 

クソ……何が足りなかった?

ボルス曰く、

 

「料理は家にいるとき毎回やってるから。

ハザマさんはどうなの?」

 

「……参りました。」

 

素直に敗けを認めざるを得ない。

強者の姿はここにあった。

 

「ハザマさんのも美味しかったですよ。」

 

「今言われても辛さが増します。」

 

「あ、はい。」

 

セリューは俺に追撃をしてきて俺の心は最早バベルの塔だ。

 

人に料理はもう出さねぇ。

そう心に誓った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティの後、どうにかナイトレイドの方へと向かいたいと思ったが、無理だった。

深夜に向かうと疑いが深まる。

仕方無く、その日は皆と付き合った。

 

そして、次の日となった今日も向かうことはできなかった。

何故なら……

 

「ちぇぇぇええ!」

 

「ハァァァァ!!」

 

「…馬鹿馬鹿しい。」

 

「そう言わないでくださいよ。都民武芸試合と銘打って帝具の適格者を今のうちに手に入れとこうって算段なんですから。」

 

……エスデス主催の都民武芸試合が開催され、俺とセリューも付き合わされているからだ。

つーか、アイツも俺とこの正義馬鹿をセットとして扱うのか。

 

チッ、面倒だな……

 

もう何度も試合を見てるがてんで駄目だ。

帝具を渡してもすぐ死ぬ輩しかいねぇ。

 

エスデスの野郎も退屈そうだ。

 

「おや、次の試合が最後の組み合わせですね。」

 

「そうですか……ん?」

 

……あの少年、間違いねぇ。

 

『東方!肉屋カルビ。

西方!鍛治屋タツミ!!』

 

タツミだ、何故こんな場所に?顔割れしてねぇからって迂闊だろうが。

 

…しかも、目付きが以前と変わったな。鋭くなってやがる。何かあったのか……

 

てことは、大事に備えて仲間もいるのか?

 

辺りを確認すると、レオーネとラバックを確認する。

……観戦か。

 

アカメやらは来てないのか。

 

…まあいい、タツミの成長を見るとするか……。

 

 

「はじめ!」

 

ウェイブの開始の宣言と共に両者が動き出す。

 

カルビの巨体を活かした踏み込みからの拳の叩き付けがタツミに迫るが、姿勢を低くし、当たる寸前で跳ぶことで回避。

その後、カルビの上をとったタツミはカルビに対し蹴りを放つ……が、カルビはこれを両腕をクロスして防ぐ。

だが、かなり後ろまで行ったな……中々に鍛えてやがる。

 

「あれ、あの少年は……」

 

「知り合いですか?」

 

「道案内をしてあげた子です。

まさか、あそこまで強いなんて。」

 

「ええ、あの年であそこまで……逸材ですよ。」

 

冷静にカルビのラッシュを片手で楽々と弾き、隙を見いだしてもう片方の拳を土手っ腹に叩き込む。

 

そして、続けざまに足払いをして揺れたカルビの顔面に回し蹴り。

 

まあ、あっさりと倒れた。

 

「そこまでっ!!勝者タツミ!!」

 

『ワァァァァアァァ!!!』

 

「……!やったぜ。」

おーおー、嬉しそうな笑顔浮かべちゃって……。

 

エスデスの反応はどうだ?

ナイトレイドだから引き込まれたら困るが、参加者だしな。

 

「……見つけたぞ。」

 

「帝具使いの候補ですね。」

 

「それもあるが…別の方でだ。」

 

「…隊長?」

 

…おい、アイツ見間違いじゃなきゃときめいてたよな。

待て、待て。あの内容全部に該当するのがタツミ!?

 

─おい皇帝、何頭抱えてんだ。

 

─テルミ、助けてくれ。余にはどうしようもできない!

 

─無理だろ、これは。

 

─…うむ。居なくても、是非もないナ……

 

あの皇帝の口調も崩れるほどの内容が?

 

1.何よりも将来の可能性を重視します。将軍級の器を自分で鍛えたい

2.肝が据わっており、現状で共に危険種の狩りが出来る者

3.自分と同じく、帝都ではなく辺境で育った者

4.私が支配するので年下をのぞみます

5.無垢な笑顔が出来る者がいいです

 

……いや待て、タツミの才能と生まれなら全部当てはまってる……

 

「…少年の未来が見えました。」

 

「えっ?」

 

エスデスは立ち上がり、階段を下りる。

タツミもこれには驚き。

 

「タツミ…といったな。いい名前だ。」

 

「ど、どうも…」

 

…今、一瞬だけ殺意の籠った目をしてたな。

やっぱ、何かあったな……

 

だが、幸いなことにエスデスは気付いてなかったようだ。

 

「今の勝負、鮮やかだった。褒美をやろう。」

 

「!ありがとうございます!」

 

さて、どうなるか…ん?アイツ、何を取り出して…首輪?

 

タツミの首に、それを着ける。

しかも、ほんのりと顔を赤らめて。

おい、してる行為と顔が一致してねぇ。

 

「今から…私のものにしてやろう。」

 

 

「…え?え?……え?」

 

タツミ、困惑。

しかしエスデス、これを華麗に無視。

エスデスは首輪に着けた鎖を引っ張り、連れていく。

 

…あ、今気絶させられて今度こそ連れてかれた。

 

「……連れてかれましたねぇ。」

 

「で、ですね……ハザマさん、楽しんでません?」

 

「嫌ですねぇそんな事はありませんよ……まあ……」

 

俺は座りながらエスデスとタツミを見て、金色の瞳を開けて見る。

 

 

「存分に利用させてもらうがなぁ……」

 

「……そうですか。」

 

「ああ、楽しくなるぜぇ?

きっと、これからどんどんと動く……」

 

「…地が出てます。」

 

「…楽しみですね?」

 

「もう遅いかと。」

 

「…この正義馬鹿のウスラトンカチが。」

 

「この茹で玉子中毒者。」

 

……やっぱ、この女は気に食わねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、イェーガーズの補欠となったタツミだ。」

 

「人浚いですよ。」

 

「民間人をそのまま連れてきちゃったんですか?」

 

「細かいことは気にするな。」

 

哀れなタツミは首輪に続いて鎖で体を縛られて椅子に座らされている。

これはあまりにも可哀想…いや、笑えるなこれ。

 

「それに…タツミは私の恋の相手になる。」

 

「…正式な恋人にしたいのなら束縛するのは駄目かと。それではペットですよ。」

 

「ランさんの言うとおりですよエスデスさん?」

 

「……それもそうか。」

 

鎖を取り、身動きが出来るようにはなったが…まあ、この状況じゃ動けないか。

 

タツミは俺を見て目を見開くが、察したのか顔を俯かせる。

 

「……それで、この中で恋愛の経験、もしくは結婚している者などはいるか?」

 

…俺は手を挙げない。

だが、この中で一人だけ手をあげた者がいた。

 

「ボルスさん、そうなんですか!?」

 

ウェイブの発言には同意する。

まさかのボルスがそうだったのだ。

セリューも「え!?」と驚いている。

 

ボルスは両手を顔に当てて照れながら説明する。

 

「うん、結婚してもう六年!私にはもったいないくらいのお嫁さんだよ。」

 

「…ほぇー……」

 

……嫁さんねぇ。

もう良く分からねぇな。

恋人とか、結婚だとか……そんなものを思っていたことがほんの少しだけあったのかもしれねぇ。

だが、それはもうあり得ないことだ。

 

……って、何考えてんだか。

無駄なことに思考を割く暇なんざねぇ。

 

「エスデス様!!」

 

突然、扉が勢い良く開かれる。

ありゃあ…まあ、エスデスの部下か。

 

「ご命令にあったギョガン湖周辺の調査が終わりました…」

 

「…このタイミング、丁度いいな。

 

お前達、初の大きな仕事だぞ。」

 

…仕事か。

タツミをどうやって逃がすか……いや、今日は無理だ。

明日か明後日でどうにかするか。

 

ま、タツミが何とかするかもしれねぇがなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…つまらねぇ仕事だったし、写す価値もないので省略だ、省略。

 

もうちょっと骨があるかと思ったが、まあ帝具使いを相手に普通の奴等が粘れってのは辛いか。

あっさりと終わっちまった。

 

俺はランと共に逃げた奴等を始末するだけだったしな。

 

こんな大人数で良かったんかねぇ。

 

んでもって、イェーガーズの帝具は粗方分かったな。

ウェイブのは分からねぇ。

海の男とか言ってるが、錨型の帝具は無かったと思うし、無難に鎧型と予想しておくか。

鎧型ならインクルシオよりも後期か。

 

仕事の後、エスデスにそこまで時間は取らないので少しタツミと話させてほしいと頼んだ。

 

「何故だ?」

 

「いえ、こういった人から得れる情報も時に鬼札となるものです。なので、取材をと思いまして。タツミさんはどうですか?」

 

「え、ああ!取材なんて憧れてたんだ、是非受けたい。」

 

「む……タツミが言うなら、仕方あるまい。

本当に時間は取らないんだろうな?」

 

「ええ、少しだけですよ。

私、時間には誠実ですので。」

 

「そうか。」

 

エスデスはそれだけを言って先に自室へと去っていった。

恋ってのはすげぇな。あのエスデスがあそこまでアッサリとは。

 

「…さて、お久しぶりですか?タツミさん。」

 

「……ああ。一応聞いておくが、ハザマは俺達を裏切った訳じゃないんだよな?」

 

「ええ、私は貴殿方の味方です。

……それにしても、顔付きが変わった。

誰か、死にましたか?」

 

「っ!……兄貴が、三獣士との戦いで…インクルシオは俺が受け継いだんだ。」

 

悔しそうに拳を握り締めるタツミに、俺はブラートとの約束を思い出す。

 

ブラート……あの野郎、簡単に死にやがって。

頼もしいと、思ってはいたんだがな…。

 

「悔しいですか?」

 

「悔しいに決まってるだろ!それに、エスデスが居なければ兄貴は…!」

 

必死に押し殺していた感情が爆発しかけている。

やっぱ若いな、だが、押し殺せていたのには及第点ってとこか。

 

「貴方が強ければ、ブラートさんはまだ生きていたと思ってたりします?」

 

「当たり前だ!俺がまだ弱かったから──」

 

「タツミさん。」

 

…俺は熱血じゃねぇんだがな。

仕方無いから、約束の一発といくか。

 

俺は続きを言おうとしたタツミの名前を呼び、顔面を殴る。ちょいと強めにだ。

タツミは少しだけふっ飛び、上体を起こす。

 

「な、何すんだよ……!」

 

「ナイトレイドの皆さんならもう言ったかも知れませんがね……。

自惚れるんじゃねぇぞ、クソガキ。」

 

「……!」

 

「自分が強かったら、アイツが居なかったら。

んな『たられば』は要らねぇんだよ。

ブラートは、三獣士と戦って死んだ。

そんで、テメェはあの熱血漢の遺志を受け継いだんだろうが。」

 

「っ……!!」

 

「テメェが悔しがるのは勝手だ、落ち込むのもな。

だが、ブラートはテメェに1つでも過去のもしを思い浮かべろなんざ言ったのか?」

 

「それは……」

 

「あの馬鹿がそんな女々しいこと言うわけねぇわな。

なら、受け入れろ。ブラートの勇姿を、アイツの死をな。受け入れて、もうそうならないために強くなるんだろうが!

……そんだけだ。テメェの気持ちが分からない訳でもねぇが、テメェの居るナイトレイドはそういう場所だ。」

 

……ま、こいつなら強くなる。

もう既になってんだ、すぐだろうよ。

だが、乗り越えるのは必要なことだろう。

 

「勿論、テメェを帰す努力もする。安心しろや。

……ええ、それだけです。」

 

「…ハザマにも、あったのか?

誰かを失って、悔しかったときが。」

 

「はい?」

 

面倒な質問をしやがる。

無い、といえばすぐに終わるのだが……何となく、答えてみようかと思った。

気紛れがここに来て作用するとは。

 

「ええ、ありましたよ。何度もね。

ナイトレイドの誰よりも、この帝国の誰よりも。

何かを失いましたとも。」

 

「……それは流石に…」

 

「…ええ、無いですよ。ちょっと誇張しすぎましたね。

私も、貴方のような時期があったんですよ。」

 

「…そうか、悪い、こんなことを聞いて。」

 

「構いませんよ。…さて、エスデス将軍の部屋まで案内します。」

 

「あ、ああ……」

 

少し困った顔をするタツミに俺は表面上だけ苦笑する。

 

内心?面倒だと思ってるに決まってんだろ。

さっさと案内してさっさと部屋に戻る。

 

タツミは助けを請うような顔をしていたが、笑って見送った。

ま、今日は何もされねぇだろ。

 

自室で、ソファに座る。

帽子を取り、ネクタイを外す。

 

「……。」

 

思い返すのは、先程のタツミの問い。

 

『ハザマにも、あったのか?

誰かを失って、悔しかったときが。』

 

「…。」

 

誰かを失った、ねぇ。

んなもん、言葉通りに返してやった。

 

何年、何十年、何百年。

始皇帝との契約で皇帝家を見てきた。

当然、その代の皇帝と過ごしても来た。

 

最悪な皇帝も居れば、普通の皇帝もいた。

それぞれ、違った個性を持った奴等。

それに付き従う奴等も。

 

俺が契約の終わりまでの間に何人も死んだ。

 

 

─テルミ、余の身が尽きても、どうか。

─どうか、この帝国を。

─その代の皇帝と共に……

 

「分かってんだよ、クソが。」

 

テーブルをぶん殴って、苛立ちを消す。

 

…契約の終わりまでだ。

 

それまで、仕方ねぇからテメェの力になってやる。

ダチと…あの女の頼みだ。

 

全部終わらせるには……

 

鎧が、必要だなぁ…。

 

 

俺様が、全盛期に近い力を振るうには鎧……そして、魂が必要だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。