タツミを逃がす。
とは言ったものの……エスデスとその他メンバーからバレることなく逃がせるか、と聞かれれば不可能に近い。
だが、幸いなのはイェーガーズではタツミは補欠となっていることだ。
エスデスのあの様子なら今日もタツミを連れ出す筈だ。
後をつけて、何かあればサポートすべきか。
……というより、ほっといた方が終わるのではないだろうか。
インクルシオは透明化があった筈だ。
十分可能だ。
俺は面倒くせぇとぼやきながら
……今回のはちょいと茹ですぎたな。
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「あら、貴方が来るなんて珍しいわね。」
「ええ、部下がお世話になってますし。」
スタイリッシュの研究室にまで足を運んだ俺はその場にいたスタイリッシュと会話する。
スタイリッシュは部下?と思案顔になったが、すぐにセリューのことだと理解したようだ。
「ああ、改造のこと?一応弁明しておくけど無理矢理じゃないわ。」
「分かってますよ。ですが驚きましたよ、セリューさんが義手になっていたときは。」
「あの子なりの考えでしょ。
言ってたわよ、『今のままだとハザマさんの足手まといにしかならない』って。慕われてるのね?」
「慕われる要素が私にあります?」
「ないわね。」
「でしょう?」
自分で言うのも何だが、俺は使えなくなったら棄てる男だ。
そんな奴を慕う馬鹿は居ねぇだろ。
俺様も御免だ。
「それで、セリューさんの義手、何か仕込んでますね?」
「当たり前でしょう。イザヨイも少しスタイリッシュな性能にしておいたわ。」
「へぇ……教えてくれますか?」
「上司の貴方には教えておくべきだし、構わないわ。
まず、イザヨイの凶悪な能力の一つである正義審判……その名の通り、犯した悪行の数だけイザヨイ自体の性能が上がる。
そこで、アタシは思い付いたわ。
イザヨイの性能が上がっても本人が追い付けないと意味がない。だから義手を通じてイザヨイのパワーを少し得るという仕組みにしたのよ。」
「ほう……!しかし、それでは、体が持たないのでは?」
「そんな安い設計にはしてないわ。
体の方も少し弄ったし、パワー供給も一定だから自壊するようなことはないはずよ。
でも、ヘカトンケイルが無事ならもっとスタイリッシュだったのにねぇ……」
「そこは不慮の事故というやつですよ。
他にもあるのでしょう?」
「ええ、後は───」
それからしばらく、俺はスタイリッシュの説明を聞いた。
聞けば聞くほどこいつが稀代の天才って奴なのが分かる。オーバーテクノロジーに近いだろうこれは。
後、メンテのやり方も教わっておいた。
「……ふぅ。なるほど、ありがとうございます。
素晴らしいですよ、流石は神の御手 パーフェクターだ。」
神の御手 パーフェクター。
手先の精密動作性を数百倍に引き上げる帝具。
使うやつがコイツみたいな奴ならばヤバイ帝具と化す。
「それほどでもあるわね。でも、ここまでの成果を出せたのは間違いなくアタシの技術!なぁーんてスタイリッシュなのかしら!」
また変なポーズ…いや、スタイリッシュポーズ(本人曰く)を取ったので拍手しておく。
「……ところで、貴方はタツミさんをどう思ってますか?」
「怪しいわ。」
「あ、やっぱり?」
「ええ、あまりにも環境に慣れすぎている。
普通の市民ならこうはならないはずよ。
もしかしたら、ここに潜入するのを狙ったナイトレイドの一員かもしれないとオカマの勘が告げてるわ。」
「オカマの勘……ですか。」
「そう、アタシの勘は意外と当たるわよ~?」
「それはそれは、頼もしい限りだ。
では、私はこれで。お代とかは?」
「今回はサービスよ。仲間だからね。」
「ありがたい。」
俺は礼を言い、退室する。
…疑ってるならそれはそれで構わねぇ。
パーフェクターと強化兵の他にもあるだろうが、それで勝算があるなら行けばいい。
タツミかウェイブ達の所にでも行くか。
居そうな場所は分かるしな。
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「すまねぇ、俺達は隊長の命令でフェクマに行くことになったんだ!」
「あらぁ……」
タイミング悪っ。
しかもフェイクマウンテンかよ。
危険種狩りか?タツミの実力を上げるとかだろうか。
「何だ、ハザマも来たいのか?」
「ああいえ、別に…私は待ってますよ。」
「そうか、では行くぞ!」
「はい!」
ウェイブの若者らしいいい返事の後にクロメとタツミ、ウェイブとエスデスは去っていった。
…てか、クロメの食ってる菓子……いや、いいか。
「……私、どうしましょう。」
仕方無いので、城の外へ出向くことにした。
暇だし、何か買って帰ろう。
根を詰めても疲れるだけだ。
アーキタイプの体も便利じゃねぇからな。
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何だか久方ぶりに帝都を歩いている気がする。
実際はそうじゃねぇが、仕事しすぎなのかもな。
何か興味の引かれる店はねぇか、と探していたら
「……本屋、ですか。」
普通な本屋を見付けた。
特に本が好きという訳ではない。
だが……
─テメェもよく読むなぁ、何だその本。
─恋愛小説、というヤツだ。
─…おもしれぇのか?
─其方との語り合いに比べたら面白くはないが、それを抜きにすればな。
─ケッ、そうかよ。
…一回、寄ってみるか。いや、やめとくか。
何時までも引き摺られんのはあのアマも好かねぇだろうしな。
思い出すに留めとく。
俺は本屋を通り過ぎていった。
何か他にないかと歩く。
思えば、俺様は過去を振り返り、
どうしたもんか。
「あれ、ハザマさんじゃないですか。」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
知り合いか、なら幸いだと思い、俺は振り向く。
「何だ、セリューさんでしたか。」
「何だ、とは何ですか。
ハザマさん、何してるんですか?
突っ立ってますけど。」
「とても暇なので、散歩ですよ。」
「えっ、散歩!?」
「……何です?その意外そうな声。」
お前が散歩なんてチャンチャラ可笑しいだろとでも言いたいのかこのアマ。
「い、いえ、日々暗躍に精を出してるハザマさんがまさか散歩なんてしてるとは思ってなかったので。」
「心外ですね。私だって暇なときはありますし、散歩もしますよ。そういう貴女は……ああ、見回りですか。」
「…まあ、分かりますよね。」
「上司ですからねぇ。」
……丁度いい、聞いておきたいこともあるし、コイツに付き合ってもらうか。
「セリューさん、お話があるのですが、時間よろしいですか?」
セリューはそれを聞き、重要な話だと判断したのかスッと顔立ちを変える。
「……分かりました。そこの喫茶店で何か飲みながらしましょう。」
「ええ、ありがとうございます。」
近場の喫茶店に寄り、そこで話すことになったが……財布は俺だよな。
言いくるめられたか?
いや、無いか。コイツだしなぁ…。
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「それで、話って何ですか?」
「そう堅くならないでください。
あくまで世間話の一貫です。」
「そうなんですか?」
「……まあ、確認ですけどね。」
「確認……」
「貴女の正義、見付かりましたか?」
俺が金の瞳でセリューをジッと見て、問う。
まだ迷ってるのなら、聞いておきたいからな。
セリューは苦笑して、いいえ、と答える。
「まだ、私の正義は見つかりません。
人を助けるのは当然です。悪党を倒すのもそう。
でも、それは力ある者としての責務だと私は思ってます。だから、私の正義の形にはならない。
私は以前、悪は皆殺しにすべきだと信じて疑わなかった。ハザマさんがあの資料を見せてくれた日の夜、ずっと悩んでました。今までの私の正義は何だったのか。」
俺は何も言わない。
ただセリューを見て、聞いているだけだ。
「それでも、貴方についていって、その仮定で私にとってこれこそが正義だと思えるものがあるかもしれない。そう思って貴方についていってます。まさか、人じゃなかったとは思いませんでしたけど……。
まだ見つかってないのかとか、思ってますよね。」
「いいえ、全く。」
「全くって……正義のない人間なんですよ!今の私は!正義は悪に屈してはならない…パパの言葉の正義にすらなれていない!それを、全くって……!」
「おい。」
「……!」
俺はため息を吐く。
ずっと思っていたこと、それはコイツが他人の言葉をよく聞いているということだ。悪いとは言わねぇよ。
だが、それがコイツの考えを阻害してるってのが駄目だ。
「言葉に惑わされるんじゃねぇ。確かにテメェの親父の言葉は一種の正論だ。悪に屈する正義に価値なんざねぇからな。
だがよ、それはあくまでテメェの親父の意見だ。
テメェの意見じゃねぇ。テメェはただ、その意見に対して『そうですね』って肯定してるだけだ。
それを履き違えんじゃねぇぞ馬鹿が。
テメェは一度だって他人に左右されないでテメェの考えで動けたのか?悪どい奴を倒してんのも人助けしてんのも結局は誰かの教えなんだろ?」
「それはっ……!そう、です…パパの考えに憧れて……真似てました。」
「な?テメェの考えは何処にもねぇ。誰かの意志継いだ気になってるだけだ。
一度、自分以外を抜きにして考えてみろ。」
「自分以外を、抜きに……。」
オウムみてぇに俺の言葉を言う。
面倒な女だ、だが、迷わねぇ人間なんざ居ねぇ。
あのエスデスだって悩みはあるんだからな。
「テメェがついてきてくれてんのは正直言ってありがてぇよ。だから俺様もこうして悩み相談をしてやってる。だが、結局のところ解決しなきゃならねぇのはテメェだ。だろ?」
「……はい。」
「……んでよ、聞きてぇことが他にもあるんだわ。
ヘカトンケイル…コロだったな。あの犬の破壊に加担したのは俺なのはもう分かってるだろ?
不思議なのがよ、何でその使い手のテメェが俺についてくるってことだ。」
「……えっ?」
セリューはそれを聞き、不思議そうに首をかしげる。
コイツ、ヘカトンケイルの事忘れてたんじゃねぇよな?
「…そうですね、確かにコロちゃんを壊したのは許せないと思いました。」
「なら何でだ。」
「それでも、得れるものがあると思ったからです。
イザヨイだけじゃない。正常に考えられる私が今あるのはあの一件があったから。
だから、こう言うのは悪いけど、感謝、してます。」
えへへとか照れながら言うコイツに俺は呆れた。
馬鹿はこれだから馬鹿だ。
普通なら分かったときに一発殴るくらいはすんだろ。
「…ケッ、そうか。
馬鹿は考えんのが楽でいいよなぁ。」
「むっ、何ですかその言い方「だが。」?」
「その馬鹿さがあの時あったから、俺もこうしてんのかもな。」
肘をテーブルに乗せ、また過去を振り返る。
─テルミ!お主の鎧はまっこと素晴らしいな!
─うっせぇ、殺すぞ。
─むむ、感に障ったか。すまぬ。だが、この気持ちは本当だ。これからも、余達を支えてくれ。
─…気分が乗ればな。
─ハッハッハ、それでいい。ところで、これの開発案はどうだ?
─頭わりぃ内容だな。作る意味は?
─浪漫!!
─一辺死ね。
─断る!
……へっ。
俺は立ち上がり、帽子を被って会計へ向かう。
「……帰る。時間とって悪かったな。払っといてやるから気にすんな。」
「え?あの……」
「ああ、後よ。
その腕にしたの、テメェにしちゃいい決断だと思うぜ?だが、その片腕は人間でいろよ。」
「……はい!」
後ろのセリューがどんな顔してんのかは分からねぇが、まあ、どうでもいい。
死ななければな。利用価値があるんだ、まだ生きてもらわねぇと困る。
帰ったら、何すっか。皇帝ちゃんと話すか?
ちなみに、お分かりかと思いますがこの小説は基本的にテルミ視点で進みます。
なんか知らないところで誰か死ぬかもですが、まあ、そこはアカメが斬るですから是非もないね