フェイクマウンテンにて、タツミが消えたとの連絡が入った。
捜索の際にウェイブがインクルシオを身に纏った
現在のウェイブ?
「冷てぇ……重ぇ……」
水責めと岩の板を膝に乗せられて上半身裸で涙目だ。
面白くて笑い転げそうだがセリューに睨まれてそれも出来ない。こいつは俺の何になってんだ。
「あらら、ウェイブさん、お辛そうですねぇ……」
「何だ、お前もやりたいかハザマ。」
「とんでもない!私も暇ではないのでこれから行きますよ。」
「何処にだ?」
「喫茶店に。」
「そうか。ところで、スタイリッシュは見なかったか。」
エスデスにそう聞かれ、俺はそういえばと思う。
まさか、本当に追ったのか?
それだけの勝算があるのか?
何処に……。
─まさか!
『私は最高にスタイリッシュな兵器を開発したいの。これが私の夢よ。』
確信に近い予感がする。
だが、下手に動けば共倒れの可能性がある。
それに、客との話もある……。
ここは……
「いえ、見てませんね。散歩では?」
「……息抜きにと考えればあり得るか。
分かった、招集が掛かり次第すぐに戻れ。」
「ええ…。」
「
「!…しっかりとその時はお呼びしますって。」
「ふっ、そうか。」
エスデスの奴、警戒してやがったのか。
抜け目ねぇ……だが、一手遅い。
そこが年季の違いってヤツだ。
俺は歩いてその場を後にする。
ウェイブの『薄情者ォォォォ!!』という叫びに俺は薄情だからな、とくつくつと笑って歩みを止めずに喫茶店へと向かった。
セリューにはイザヨイの特訓をエスデスに積んでもらえと頼んであり、エスデスも承諾している。
一撃貰えば相当だというのに、やはり戦闘狂の心は分からねぇな。
「……ん?もう一人居ないが……まあいいか……」
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昨日、セリューと話をした喫茶店に入り、目的の人物が待つ席まで向かう。
あまり客が居ないんだな、と昨日と同じ事を考えながら歩き、あるテーブルの前で立ち止まる。
椅子に座り、紅茶を飲むその男に俺は話しかける。
「お待たせしました、ランさん。」
「いえ、隊長に捕まっていたのでしょう。
仕方無いことです。」
……まさか、こいつが俺に個人的な依頼をしてくるとは思わなかったな。
情報屋を頼るってことは、裏事情か?
俺は対面するように座り、話を続ける。
「それで、欲しい情報があるとのことですが……
先に言っておきますよ?貴方が欲する情報があるとは限りませんからね。」
「承知しています。」
いつもの微笑みも消して、ランは俺に構わないと告げる。
つまり、事情が察せられてでも欲しい。それほどまでの情報……
こいつの腹の内が見えるのはありがてぇこった。
ランは一拍置いてからこう言った。
「チャンプ……という男の情報を持ってますか?」
「チャンプ…というと、連続殺人鬼ですね……」
何だってコイツがチャンプの……いや?
なるほどなぁ。
理解したぜ、その眼!
復讐に燃えるって眼だ。
見付けたら隙突いてあらゆる痛みをくれてやるって眼だ!
いいね、面白い。
「ええ、何か知ってませんか?」
「……残念ながら、チャンプに関する情報は無いですね。」
「そう、ですか……「ただ。」…?」
「貴方のその眼。それが無性に気になりましてね?
情報屋としての性でしょうか。
そこまで復讐に燃える眼は久し振りに見ました。
どうでしょう、教えてはもらえませんか?」
「……。他言は無用で頼みますよ?」
「勿論、口は堅いと自負しております。」
嘘ではない。
ただ、その情報が有利になるのなら余すことなく利用するってだけだ。
じゃなきゃこんな肩書き持つか。
情報屋の利点はそこだ。
ランはふぅ、と一息つくと重苦しい雰囲気が更に漂う。
「私は、教師をしていたんです。」
「ああ……ランさんらしいかもしれません。」
「そうでしょうか?まあ、それはいいです。
教え子たちも優秀で、このまま大人になればいい役職に就けるのは間違いない。
それほどまでに優秀でした。だから、私もより一層力を入れました。
……それが、あの日に全て壊された。」
今にもテーブルを砕くのではないかと言うほどに拳に力を入れて話すランに大体を察した。
だが、違っていれば困る。
話してもらおうじゃねぇの。
「私が出張していた日の事です。
用事が終わり次第、すぐに生徒達の元へと急ぎました。
良い知らせをすぐに知らせたい一心で。
……ですが、戻ってきて私の目に映ったのは……
子供たちの死体の数々でした。目撃情報はピエロのような太った男……」
「間違いなく、チャンプですね。
それに、被害者も殆どが子供ですから。」
運が悪い。
そう言う他ない話だった。
結局は、狙われたのがランの教え子たちで、ランはそれに復讐をしたいと願っている。
ランと同じような男は何人もいる。
その中で運悪くチャンプの被害者になったのがランというだけだった。
ま、それで割り切れる奴なんざそう居ないわな。
「今の帝国はチャンプのような悪を見て見ぬ振りをしている。そんなのは許されることではない。
だから私は、内側からこの腐敗を正したい。
そう思ってイェーガーズに入ったのです。」
「へぇ……悲劇を繰り返さないため、と。」
「ええ……」
「……変えるという思想を持つだけ、貴方はマトモだ。」
「マトモではありませんよ、私は。」
「貴方がそう言うのなら構いませんよ?
ただまあ、面白いお話を聞かせてもらいましたし……
協力、しましょうか?」
「……どういった算段で?」
訝しげに俺を見つめるランに、当然かと思う。
過去を話したからと協力するなんて玉ではないと分かっているからだ。
そんなの俺様だって分かってんだよ。
「勿論、同情ではありませんよ?
ただ、チャンプの情報を手当たり次第に漁ります。
それを提供する。そして、貴方は私に協力する。
理想的な関係とは思いませんか?互いが得をし、成し遂げられる。」
「……貴方への協力が何かをお聞かせ願いたい。」
「革命ですよ。」
「なっ……!…ナイトレイドと繋がってると考えられますが?」
「そうですよ。」
踏み切った答えを提示する。
ラン自体、ナイトレイドを悪く思ってるとは思えない。
ランもまた、内部からの革命を願っている。
外側と内側の違いだ。
俺はそれの橋になってるのが現状だが……だが、俺一人じゃ足りねぇ。
「ナイトレイドと繋がり、大臣と繋がり、皇帝と繋がり、イェーガーズと繋がっている。
私、多忙ですよねぇ~……」
「ふざけないでください。」
「ふざけて提示する答えを私がすると?」
「それならばナイトレイドかイェーガーズのどちらかに属せばいい話ではないですか……!」
「ああ、その事ね……それでは、いけないのですよ。」
「いけない……?貴方はどちらの味方なのですか!」
「どちらでもない。」
「別の組織でもあると?」
「いいえ、ありませんよ。私はある人達との……」
「約束を、律儀に守り通そうと思ってましてね?」
─テルミ、どうか、帝国を。余の分まで。
分かってるっての。
テメェらとの契約は終わってねぇ。
この国が滅ぶまで、継続だろうが。
縛りやがってよぉ……
ランは俺の言葉が意外だったのか数秒ほど間を空ける。
しかし、すぐに我に返り、真剣な顔付きへ戻る。
「貴方が約束事を守るのは情報屋としてだけだと思ってましたよ。」
「基本的にはそうですがね。
その人達に関しては、お世話になったものでして。
それで、現在の味方でしたね。」
「まあ、言ってしまうと、皇帝陛下です。」
「……皇帝?」
「ええ、皇帝。あの幼くて、無垢な陛下ですよ。
私の秘密、結構バラしてますが……どうしましょうね?
協力、してくださいませんか?」
暗に、逃げたら殺すという意味を込めての協力の申し出。まあ、断るなら構わねぇよ?
だが、テメェの
「……なぜ、私を?」
「死なせるには惜しいに値する人だと思いましたから。後は…ええ、先程述べた通りです。」
「皇帝陛下の為、ですか。
貴方は、望みは無いんですか?」
「望み、望みね……私の望みですか。
私、性格悪いですからねぇ……
他人の破滅とか、見たいです。」
「……!」
「ああ、お待ちを。契約上、あまり外道にはなれませんので。それにする気もありませんからねぇ。
私のことはどうでもいいじゃないですかぁ。
それで、どうです?」
危険な賭け……ではない。
最早これは、脅しであり、強制だ。
それほどまでに、俺はこいつの能力とマスティマを買っている。
「……本当に私の復讐に協力してくれるのですね?」
「ええ、それはもう!…ついでに、貴方のその後もね。」
「……。」
ランは瞑目する。
協力しなくてはならない状況と考えるか、共にやれる関係を築けると考えるか。
確かに、俺の先程の脅しは前者を迫りつつあるが、冷静に考えて欲しい。
同じく提示した条件はこいつにとって願ってもないことだ。何せ、成功率が増える。
「……分かりました。」
「…貴方のその返事が聞きたかった。
これから、よろしく頼みます。」
「よろしく……とは喜んで言えませんが。」
「いやぁ…私も、何がなんでも協力してほしいもので。」
「…それで、私は貴方の革命の何を手伝えば?」
「それは後程。まだ調べるべき点は残っていますから。」
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とある一室。
テルミですら知らない一室だ。
そこに、二人の男が居た。
「ヌフフ、すみませんねぇ、ドクター。
貴方の力を急遽お借りすることになって。」
「別に構わないわ。
でも……1つ聞かせて欲しいのよ。
……
そこには、イェーガーズの集まりの時に居なかったDr.スタイリッシュとオネスト大臣がいた。
そして、二人の目の前には、巨大なカプセルが存在し、その中には…。
オネストは、邪悪な笑みを隠そうともせずに晒す。
「人間、ですよ。」
カプセルの中には、一人の女が、浮いて眠っていた。
培養液か何かでも入っているのだろうか。
「…これが、人間?」
「ええ、紛れもなく、人間です。
ほら、見てくれは美しい少女でしょう?」
「それはそうだけど…コレは何者なの?
手伝ったのだから教えてくれてもいいわよね?」
スタイリッシュは戸惑う。
確かに、見てくれは人間そのものだ。
だが、この少女には、何かがある。
危険種のような、恐ろしい何かが。
「そうですねぇ……私も、よく分かってはいないのですがね?
たまたま、この一室を見付けた時、既にこの状態だったのです。
恐らく、過去の帝国の研究者の研究跡でしょうね。」
「それで、この少女は?」
「…とあるレポートを発見し、それを全て読みましたが、これは至高の帝具と同じ、いやそれ以上の代物でしょう。私も最初は焦りました。
ですが、コレを利用できればナイトレイドを含む反逆者共を駆逐するなど容易い!
これの名前、それは……!」
大臣は、確かに汗を額から流していた。
その肥えた肉体ゆえの汗ではない。
大臣すらも、恐れる程の作品。
過去の遺物、過去の闇。
とある男がテルミや他の皆も臣下たちの目を盗み、それを確保し、造り上げた正真正銘の化け物。
カプセルの中の少女は、ピクリと、その指が動いた。
目覚めの時は、近い。