結局、昨日の内にイザナミは大臣と話をして組織を作ることにしたそうだ。
大臣が何故容認したのか分からねぇ。
アイツも馬鹿じゃねぇ、恐らくは冥王の名の元に集う人材を欲したのか。
アイツ、生前も強かったからな。
帝具人間となった今じゃかなりの強さだ。
加えて、冥鏡死衰の能力だ。
面倒になったな……。
だが、アイツとは敵対はしない。
昔どうこうじゃなく、アイツの組織理由が俺の目的とマッチする部分があったからだ。
この国の腐敗を正すのはイェーガーズだけじゃねぇってのは2つの組織による安定化を狙ってんのか。
片やエスデスがいて、片や冥王イザナミがいる。
ネームとしては見劣りはねぇ。
イザナミの知名度は簡単にあげられる。
実力が伴うのなら後は名を派手に上げるだけだ。
そう、例えば……
「ナイトレイドのメンバーを殺してこい、だぁ?」
「うむ、余をかのエスデス将軍と同等にまで名を上げねばならないようでな。
早い話、余がナイトレイドの一員を殺し、その首を晒す際に余を持ち上げる、だそうだ。」
「……そうかよ。」
「其方の目的とは相反する。止めるか?」
「テメェを止めたってどうせイェーガーズが何人か仕留めるかもしれねぇだろ。
それに、それで死んだんなら……そこまでだった。
そんだけだ。」
「ククッ、そうか。
ならば、余は好きに動かせてもらう。」
「それこそ、好きにしろ。」
俺は忙しい。
昨日はスタイリッシュを殺す算段だったが、イザナミに時間割いたからな。
…今日実行するか。
流石にアイツの存在が邪魔にすぎる。
「行くのか。」
「テメェもどっか行くんだろうがよ。」
「あの科学者のところか。邪魔になったか?」
「…お見通しって訳ね。ああそうだ、アイツの技術は頼もしい限りだがそれこそ帝具人間のテメェを研究された以上は邪魔になる。
容赦なく、殺させてもらう。」
「そうか。…では、余は行く。
其方も、失敗しないように。
それと、テルミ。」
「んだよ。」
「余は、あの時からずっと、其方を好いておる。
余が組織を立ち上げた際には意地でもこちらについてもらう。」
「……ま、メンバー次第だ。」
「強者揃いが良いと?」
「それもあるが、俺の言いてぇのはそうじゃねぇ。
圧倒的な力も結構なことだが、結局は頭も回らねぇといけねぇからな。
……まあそこはテメェに任せる。応援はしてやるよ。」
「……フフ、また会おう、テルミ。」
イザナミは微笑んで、俺の部屋から出ていった。
…ったく、調子いい奴だ。
俺も、さっさと動くか。
セリューとランに声をかけて……いや、ランには言わねぇでおくか。
何て誘うかなぁ?ヒ、ヒヒ……
「殺してやるよ……テメェの『
俺もまた、部屋を出て部下を呼ぶことにした。
セリューの奴は納得してくれるだろう。
ランの奴に伝えねぇのは信用してねぇからじゃねぇ。
寧ろ、それが下がるのが面倒だからだ。
…ま、問い詰められたときの回答も用意しとくか。
仲間、友達、戦友。
どれもこれも、テメェの首を絞める枷にしかならねぇ。
だからこそ、テメェらは俺様を疑えるか?
なあ?ヒヒヒ……
・
・
・
「新種の危険種ですって!?」
「ええ、セリューさんと発見したので狩りました。
……が、意外と巨大で、使える部位が分からないのでセリューさんに見張らせているんですよね。
来てくれますか?」
「行くわ!アタシの研究をよりスタイリッシュにしてくれる可能性があるならば是非!」
「あ、相変わらずおかしなポーズですね……」
シュバッ、と音が出そうな程激しくポーズを取りながら了承したスタイリッシュに俺は引く。
コイツ、研究者としては外れじゃねぇんだが、他が壊滅的な感じだな……。
セリューも少し苦しそうにしながらも了承してくれた。
『っ、はい、分かりました。それが、帝国の平和に繋がるのなら。』
『繋がるじゃねぇ、繋げんだ。
テメェはさっさと定位置につきな。
……損だよなぁセリューちゃぁん、テメェもさ。』
『貴方は損じゃないんですか。』
『……さあ、どうだかな。』
俺にだって、んなことわかんねぇよ。
事象観測が出来るわけでもねぇ。
俺に出来んのは精々場を掻き乱す程度だ。
……なら、互いに損だわな。
ランには終わり次第説明することにした。
後々だと面倒さが増すのを理解したからな。
「それで、何処に?」
「こちらです、急ぎましょう。」
「そうね、アタシの頭脳が働きたがっているわ!」
……チョロいのか、それとも目の前の目的で前が見えなくなるのか。
どちらにしろ功を焦るタイプなのは間違いねぇな。
こいつ、俺が居なくてもあっさりと死んでたんじゃねぇの?
馬鹿ではないが、科学者故の、か。
分からねぇ訳じゃねぇ。
そういった輩は何人も見てきた。
嘲笑いはしたがその生き方を否定した訳じゃねぇ。
ソイツの生き様は化け物が否定していい物じゃねぇからな。
少し急ぎ足で、所定の場所まで向かう。
そこが、このオカマの最期で、計画の前進となる。
・
・
・
着いた。
場所は丁度人の手が行き届いてねぇ森の中。
ここが、決行場所だ。
「…ここですね……」
「待ちなさい!」
「……何か?」
オカマが吠える。
怒りの形相だ。
「何か?じゃないわ!何処に新種が居るのよ!」
「おかしいですねぇ、まさか、ナイトレイドにとか?」
「白ばっくれるのもいい加減にしなさい。
何が目的?こんな場所に連れてきて、交渉したいことでもあるというの?」
「交渉……確かに、交渉ですね。
私が、貴方に要求したいのは1つだけです。
それが叶えば、貴方の望みをいくらでも叶えましょう。
簡単な、要求ですよ。
Dr.スタイリッシュ。」
依然として怪しさを感じさせる笑みは崩さない。
いや、それどころか深まっていくのが分かる。
俺様がテメェに要求するのは1つだけだ。
「あるものがね、欲しいんですよ。」
「あるもの……?」
「私は、それが欲しくて欲しくて、貴方しか適任者が居ないからこうして意にそぐわない事までして交渉しているのです。分かってください?」
「……いいわ、何が欲しいの?
アタシの兵器?それとも……改造した使い捨ての駒かしら?」
「いえ、もっと身近で簡単なものです。
誰しもが持っている、誰しもが失いたくはないモノ。
万物に、それこそ帝具にさえ宿っている。」
一歩、近づく。
帽子を深く被りながら、本性に近しい笑みを隠そうともせず。
「答えは簡単なものですよ、Dr.スタイリッシュ。
─魂、下さいませんか?」
「なっ───ガフッ……!」
スタイリッシュの腹から刃が突き出る。
俺がやったのではない。
俺よりも先に来ていた奴がやった。
「セ、リュー…!」
「……貴方と、貴方の罪を、この剣によって断罪します。」
セリューが顔を俯かせ、感情を感じさせない声で、イザヨイでスタイリッシュを背中から刺したのだ。
断罪者、正義の執行人。
その帝具が行使する能力は、『正義』。
スタイリッシュの行ってきた罪が、今奴を傷付ける。
「何故、アタシが、こんな目に…!
もっと、もっと人体実験を、そうよ…帝具人間の模倣を……!」
「─正義執行、貴方の罪を刈り取ります。」
「セリュー・ユビキタス……!」
恨みを込めてセリューの名を呼ぶ。
それがスタイリッシュの最後の台詞となる。
イザヨイを引き抜き、首へ一閃。
あっさりと斬られた首は遠くではなく、近くでボトリと落ちた。
何処までも愚かであり、何処までも純粋な研究者は、ここで裁かれて死んだ。
研究の成果を出せず、目指すこともできずに死ぬ。
それがこの男の終わりだ。
ドサリと遅れて体が倒れる。
そこへ、ウロボロスが食らい付く。
そうだ、喰らえ。
この罪人の魂をな。
そうして俺様は強くなり、罪深くなる。
……今更だな。
「……ご苦労さん。」
「いいえ……必要な、ことです。」
「…テメェの正義は、どうだよ。」
「……私の正義、それは……」
「どうすることもできない悪と判断したものを、この刃で切り裂き、罪を償わせる事です。それが、私の正義であり、私の剣。」
しっかりと決意のこもった目で、俺を見ながらそう言うセリューに俺は及第点だな、と告げる。
「後は、その剣を何処まで研げるかだ。
……誇れよ、セリュー・ユビキタス。
テメェは確かに正真正銘の正義を成した。
俺達が国の腐敗を正したときこそが、その証明だ。」
「…はい。」
感情を押し殺したつもりか、馬鹿が。
俺はセリューの頭に手を置き、金の瞳で見やる。
「だが、テメェの正義が動く前に、最後に休め。」
「……ッ、はい…!」
辛いもんは、辛い。
それを長く生きた事で知っている俺はそれだけを言ってスタイリッシュの処理を始めた。
パーフェクターも手に入れて、後はこれをナイトレイドに渡すだけだ。
後ろには、恐らく声を押し殺して泣いてる馬鹿の姿があるのかもしれねぇが、そんな馬鹿は俺様の部下には居ねぇわな。
疲れで聞こえる幻聴だろうよ。
・
・
・
「スタイリッシュが、殺されただと?」
「ええ、森で体のない首だけの状態で……」
イェーガーズを全員呼び集め、俺は告げた。
スタイリッシュは殺された、と。
「誰がやったかは……」
「ナイトレイドでしょうね。
何らかの方法で見つけ出したスタイリッシュさんが功を焦った結果こうなった……が妥当かと。」
「…腕のいい科学者だったのだがな。
セリューとお前が発見者だったそうだが、何をしていた?」
「見回りに付き合ってました。」
「……そうか。」
エスデスと一通りの会話を終えた俺は、メンバーの様子を確認する。
「…ナイトレイド、あいつらが、ドクターを……!
許せねぇ!絶対に俺達が倒してやる!」
「……。」
「そんな……スタイリッシュさんが……。」
皆反応は違えど仲間を失った気持ちは同じか。
ウェイブは分かりやすい反応で、ボルスは絶句といった様子だ。
クロメは相変わらず菓子を食ってるが、その食の進みは遅い。
「……ハザマさん、セリューさんは?」
「自室で休んでいます。
彼女の腕を改造してくれた方ですし、慕ってましたしね……。」
「……そうですか。」
ああ、テメェなら確信してくれると思ってたぜ、ラン。
だからその目をやめな、笑いたくなるだろぉ?
「今日は解散とするが……お前らも気を付けろ。
賊が何時襲ってくるか分からんからな。」
「…はい!」
「了解。」
「了解、しました。」
「勿論です。」
……さて、と。
次は誰にしたもんか。
と、言いてぇが……しばらくは目立つ可能性のある動きはやめておくか。
引き際を見誤ったら死に繋がるからな。
それに、他の連中は甘くねぇだろうからなぁ……
・
・
・
皇帝の一室。
ここに集まるのも久方ぶりだ。
精神体として来るのもな。
「…久し振りだな、集まるのも。」
「ああ、収穫もあったしな。
ブドー、宮殿の周りはどうだ。」
「問題はない。
だが、イザナミだったか…奴が大臣と怪しげな会話をしているのは見た。」
「組織の立ち上げの件だろうよ。
気にするな。テメェは引き続き警戒を怠るな。」
「貴様に言われずとも分かっている。」
険悪なやり取りって訳じゃねぇが、まあ……このくらいがいい距離感だろうよ。
「テルミよ、そのイザナミと話をしたのだが……」
「あ?どんな話だ。」
「テルミについて、延々と聞かされた。」
「……あー……すまねぇな。」
「いや、良いのだが…恋とは、ああいうのを言うのか。重いな……ハハ。」
待て、どんな内容を聞かされた。
気になるだろうが。
ブドーが俺を睨む。
「陛下に間違った認識を植え付けるな。」
「俺は悪くねぇだろうがよ。
イザナミに直接言えや。
ま、聞く玉じゃねぇがな……。」
「それで、これからどうするのだ、テルミ。」
「しばらくは様子を見る。
きなくせぇ空気が伝わるからな。
……荒れるぜ、この帝国は。」
「…分かった。だが、もし、それが……」
「任せとけ。魂の補充次いでに殺してやる。
……だが、皇帝。テメェにも動いてもらうぜ。」
「余に?」
緊張の面持ちで俺の指示を待つ皇帝。
ブドーも何を言うのかを伺っている。
「何、ちょっとした、精神修行だ。
ウロボロスでのな。」
「貴様、何をする気だ。」
「待てブドー、テルミは無駄なことを言わぬ。
……何故だ?」
「シコウテイザーを、もし動かすことになれば、テメェの精神が一番に必要になる。
動かすには、かなりの負荷が掛かる。
それに耐えるためだ。」
「……良かろう、ここに集まる度に、余を鍛えてくれ。」
「ったりめぇだろ。」
…皇帝ってのは、覚悟を決めるのが早くて助かるねぇ。
ま、利用とかじゃねぇから安心してくれよな。
これは、一種の通過儀礼なんだからよ。
精々、ズタズタのボロボロになりやがれ、ヒヒ……。
忘れてはならない、アカメが斬るはキャラが死にやすいことを。