蹴りを一発、目の前の巨体に見舞う。
顔面を捉えた一撃は命中し、数メートル程吹っ飛ばす。
手応えはまあまあってところか。
「た、助かった……!」
「…ハァ、忙しい。」
迫ってくる巨体は所々人の形を留めているように見える。
一々蹴りを見舞うのも怠いので、ウロボロスを横に凪ぎ、巨体の群れを囲い縛る。
第一、ウロボロスに殺傷能力を求めないでほしい。
元々精神を攻撃するのが本来の役割なんだからな。
だから、こういった殲滅は……
「ハザマさん!ナイスです!」
「ちゃっちゃと刻んじゃってくださいよ!」
「あ、すいません。ヤァッ!」
セリューに任せる。
俺様はこういったのを怯ませる役だ。
イザヨイの刃が隙だらけの巨体を切り刻む。
あー、ありゃいてぇな、一溜まりもねぇわ。
簡単に捌かれていく巨体が憐れでならない。
「…終わりました!」
「ええ、お疲れさまです。」
五体が無事な奴の魂を貰っておく。
ウロボロスも喜ぶだろうよ。
にしても、新型の危険種、ねぇ……
まさか本当に出るとはな。
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「お前たち、仕事だ。」
「おや、今日はどのような?」
「新型の危険種が帝都の周りを彷徨いている。
この危険種の討伐および数体の捕獲だ。」
「新型の……!」
あ?新型ぁ?
…スタイリッシュに言った出任せが本当になって来やがったよ。
ウケる、腹が捻れそうだ畜生が。
全員が既に戦いへ向かう人間の顔へ変わる。
流石、イェーガーズのメンバーだ。
エスデスもその反応に満足したのか、加虐的な笑みを浮かべ、軍帽を被る。
「イェーガーズ、出撃だ!」
『了解!』
……ノリで言ったが案外悪くねぇな。組織ものの定番ってのは男の心を擽る。
っと、真面目にいきますか。
面倒だが、ペアで事に当たれば問題はねぇ。
だが、危険種か……
「ハザマさん、頑張りましょうね!」
「ええ、努力はしますよ。
ですが、最終的に貴方が倒してくださいね。
ウロボロスの殺傷力は期待薄いですから。」
「任せてください。その為のこのイザヨイなんですから。」
「頼もしい限りですねぇ……貴女の真っ直ぐなところは欠点でもありますが、利点でもある。」
「それはどういう?」
「ご自分で考えなさい。」
終始、そのやり取りをランが見ていたが俺は気にしないでおいた。
会話から俺の本性を探りだそうとしてやがるな。
ま、別に構いやしねぇが、遊びとしてはやる価値はあるか。
疑心になるのも分かるがよぉ、俺様だって真剣にこの帝国救いたいとは思ってんだぜぇ?
…多分な。
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んで、今に至る訳だが……コイツら、どう見たって人間だ。
……スタイリッシュが危険種の研究をしていたのは奴の研究室で資料を見たから分かってはいたが、人間に無理矢理危険種の細胞を組み込んだってのか。
となると、コイツらに自我はねぇ。
ただ生きるための本能に従って動く獣だ。
だからこそ動きが素早く、単調なのか。
「ここら一帯は殲滅できましたね。」
「ええ、他も終わっている頃合いかと。
……しかし、妙なタイミングで出てきましたねぇ。」
「はい、まるで、ドクターが死んだ時に動くようにでもなってたかのようです。」
「もしくは、この危険種を
「もしそうなら……」
「利益があるとお思いで?」
「ないですね。イザヨイで裁くべきです。」
……正義を定めたコイツは弱くねぇ。
迷いが消えたんだ、弱いはずがねぇ。
技のキレが増したな。エスデスに鍛えられ、トレーニングを重ね、完成してきていやがる。
コイツは心強ぇ。
「ナイトレイドとも何時かは殺り合う…どうしますかね。」
「それは任せます。私は暗躍とか苦手なので。」
「そちらは私が担当、貴方に戦闘は任せます。
それがパートナーというモノでしょうしね。」
「よく言いますよね……私が使えなくなれば容赦なくウロボロスで魂を喰らうつもりでしょうに。」
呆れたような視線を向けるセリューに俺は内心バレていたのかと驚く。
言ってもいねぇのによく気付きやがったな。
「…確かに、そうしますよ。有効活用しなくては損ですから。」
「ええ、そうしてください。
私の正義が、それで帝国を直せるのなら…私は命を惜しみません。」
「……覚悟、出来てるんだな。」
「勿論です!私は、もう……間違えたくない。」
「けっ、そうかよ。
なら、望み通りにしてやる。
だが言っておくぜ、俺は、悪だ。」
「ええ、貴方はどうしようもない悪だ。
でも、私には、その行いは誰かを救う正義に見えます。
善悪は簡単には計れない。私は、それでも貴方を正義と信じます。」
「…気味の悪い女になりやがって。」
悪の中の正義とでも言いてぇのか。
ムカつくぜ、テメェ……。
その信頼した目を俺様に向けるのはお門違いだって分かってやがってそうしてやがるのもな。
「そこはほら、ハザマさんの責任ですよ!」
「は?何言ってやがる。」
「ハザマさんが私を戻しちゃったんですから。
恩返しって奴です!」
「…恩返しで…いや、何でもねぇ。
あ~……チッ、戻るぞ正義馬鹿。」
「また馬鹿って……ハザマさんの方が馬鹿でしょ!」
「うるせぇ、黙ってついてくりゃいいんだよテメェは。」
マジで面倒になりやがって。
扱いにくくなるだろうが。
命を捨ててもいいって思考はな、俺様でも好きじゃねぇ思考なのさ。
回路でもショートしたかって疑うレベルだ。
テメェは正常じゃねぇよ。
正常な異常を身に付けちまった。
…責任は俺様って事か、クソが。
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「それで、終わったからさっさと戻ってきたと?」
「ああそうだよ、つか何でテメェが居やがるイザナミ。」
任務も終わり、一通り会話を済ませてから部屋に戻る。
戻ってきたら、俺のベッドでイザナミが暇そうに寝そべっていやがった。
俺に休息を寄越せ、このままだと死ぬだろうが。
帽子を取り、ネクタイを乱暴に外す。
元々こういったのには慣れちゃいるが寝れるときは寝たい。
だってのにこの女がベッドを占領してやがる。
「おい、どけ。」
「断る、余は今不愉快なのだ。」
「ハァ?訳分からない事言ってないで退けって──」
「あの女が其方の部下か。」
……おいおいまさかよぉ……
「ヒ、ヒヒ……何だって不機嫌なのかと思ったらぁよぉ……嫉妬ですかぁ冥王様よぉ!?
ヒャハハハハ!おいおい女の嫉妬は見苦しいぜぇ?
確かに俺様の部下はあの正義馬鹿だ。
任務以外でも飯も食ってるし世間話もしてるぜぇ。」
「テルミ。」
「……ハァ、んだよ。」
「余は、苦しかった。」
「だからなんだよ。俺様には関係ねぇだろ。
テメェが勝手に発情して、勝手に苦しんでるだけだろうが、それに俺様の何が関係してるんだよ。」
「其方の全てだ。
余を、ここまで苦しいと思わせたのは何度目か。
ただの
「そうかよ。」
つまらなそうに俺は吐き捨てる。
要は、構ってほしい。
それだけだ。
昔からコイツはそうだ。
やれ昔話、やれ視察、やれ共に寝ろ。
俺様は人形じゃねぇ。
「じゃあ今度は何をしてほしいってんだ、我儘娘。」
「そうさな、余に"膝枕"をさせろ。」
「……あ"ぁ"!?ガキじゃねぇんだぞ!
恋愛ごっこなら外でやりやがれ!俺様は寝てぇんだよ、分かる?疲れ果てて、寝てぇの!」
「理解している。余の膝で寝ればよかろう。」
「ふっざけんな、俺様に恨みでもあんのか!」
「まあ、殺された恨みならばあるな。」
「……だぁッ、くそが!今回だけだ、クソアマァ!」
「ククッ、愛い奴よ。それでよい。」
妖しく微笑み、座り直してから膝をポンポンと叩き、来るがよいと言うイザナミに何つぅミスマッチと俺は思った。
口には出さない。出せばうるさいからだ。
つーか、結局良いようにやられてやがる。
ムカツク……見下してねぇから更にムカツク。
殺してやれるなら殺してやりてぇ位になぁ。
仕方無いので、膝を枕に寝そべる。
「どうだ?余の膝は。至福の心地であろう。」
「悪くはねぇ。」
「……そうか。」
「……おい、イザナミ。
テメェは大臣につくのかよ。」
「答えは否だ。」
「じゃあ、俺様につくのか。」
「それも否だ。」
「……ならテメェは何がしてぇ。」
「…『破滅』。」
「あ?」
先程までの微笑みが嘘のように消え去る。
表情を無にして、破滅と答えたイザナミに俺は訝しむ。
「余は、破滅を望む。」
「そりゃ、国のか。」
「国?斯様な小さなモノではない。
余は、世界の破滅を望む。」
「んなもん果たして、何になる。」
「死が、余に囁くのだ。
余に、滅日を与えよと。ありとあらゆる生を喰らい尽くせと。
……尤も、本来の余の答えならばもっと……」
「もっと……何だよ?」
「気にするな。其方は寝ておればよいのだ。
余は、この時間が一番……。」
「……チッ。」
会話はそこで途切れた。
もどかしい。
コイツはそこまで侵食されている。
イザナミという帝具の特性に、魂まで影響を受けている。
生前ならばここまでではなかった。
だが、帝具人間という帝具を命とする器になったからこそ、コイツはこうなったんだろう。
テメェのわざと途切れさせた言葉の続きなんざ、俺様にはお見通しなんだよ。
なら、昔に頼めばよかったじゃねぇかよ。
一番好きな時間を、過ごすことをよ。
ああクソ、ドイツもコイツも……。
面倒で、ウザったくて、馬鹿で、嫌いだ。
重要な話はあまりありませんでしたね……()
そろそろ過去話でもするかな……