テルミが壊す!   作:ロザミア

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疑いは喉笛を襲う

目の前の死は何処までも深い闇を秘めた瞳でレオーネを見つめる。

レオーネは、それだけで滝のように汗を流す。

ライオネルの獣化。

身体能力、自然治癒能力、五感を強化する帝具であるが、その能力によって強化された聴覚、視覚がレオーネを恐怖へと落とす。

 

強さが違うどうこうではない。

次元が違うのでもない。

単純に生物ならば恐怖する絶対が自分に牙を向ける。

 

それに恐怖をするなと言うのは酷なものだろう。

 

「っ、はぁ…はぁ……!」

 

だが、恐怖に呑まれていたレオーネはすぐに自我を取り戻す。

あのままでは本能だけで動き、殺されていた。

 

死の気配は未だに濃厚。

だが、殺されてやる気などない。

 

「お前は危険だ…ここで倒す!」

 

「死が危険…確かに、生あるその身では危険ではあるか……だが、違うな、獅子よ。

死とは安寧だ、救済だ、理だ。」

 

死は危険ではない。

そう主張するが、レオーネはその声を聞くだけで背筋がゾッとする。

 

天敵なのだ、生ある物にとってそれは。

 

あれの主張は正に神のそれ。

死を纏い、尚も狂わずにいられるなど馬鹿げている。

 

「…まあよい、元より始末する獣に何を言おうと変わらぬこと。

来ないのか?ならば余から行くぞ……!」

 

その言葉と共に少女は文字通り消える。

速いの次元ではない。

帝具の能力かとレオーネは判断し、腹に手を添える。

 

「ほう、見切ったか。」

 

「っぐ!(何て威力だ、加えてあの移動…油断したら一瞬で死ぬ!)」

 

手で少女の掌底を受け止めるも衝撃で体が傾きそうになる。

吹き飛ばされそうになるほどの威力に内心舌打ちをしながら直ぐ様蹴りを放つ。

 

「甘い。」

 

「くっ、自由自在っぽいなそれ!」

 

「余の帝具のほんの少しに過ぎぬがな。」

 

しかし、蹴りは少女のビットに防がれ、逆に蹴りを入れられて吹き飛ばされる。

 

「っぺ……今日はちょいと厄日過ぎないか…っ!」

 

「天骸の火よ、焼き払え。」

 

体勢を整えたが、少女はレオーネに天へと向けた掌に集めた蒼い炎を放つ。

レオーネは横へと跳び、それを回避するが炎は地面へと着弾した瞬間、爆発する。

 

「何でもありかよ!魔法使いかってんだ!」

 

「何でもはできぬ、余の冥鏡死衰に出来ることだけしかな。」

 

「冥鏡死衰…それがお前の帝具か!」

 

「如何にも。……ふむ、しかし、そうさな……」

 

 

「─見逃すか。」

 

「は……?」

 

目の前の存在は今何と言ったのか。

見逃すと言ったのか。

 

何のために?

何の得があって?

 

「そも、余の目的は別にある。…首を1つ取ってもよいのだが、それは目的が終わってから決めるとしよう。」

 

「お前、ふざけてるのか!?」

 

「その通りだが?」

 

「なっ」

 

「余は貴様を、貴様らを今だけは見逃すと言っている。力の差があるからでもあるが、ふむ……戯れといったところか。」

 

見下し、微笑む少女に底知れぬ恐怖を未だ感じながらも同時に怒りを宿したレオーネは全力で殴りかかる。

 

「この……馬鹿にするな!」

 

「急くな、そう言ったであろうに。

聞き分けのない獣だ…。

ならば、相応の痛みをくれてやる。」

 

変わらない冷たい瞳でレオーネを映した少女は鍛え上げられた者でさえ見切るのが困難な早さでレオーネの鳩尾を蹴り上げる。

 

「か、はっ……!」

 

「さあ、次だ。」

 

上に吹き飛ばされたレオーネをいつの間にか追い抜いた少女が背中へと踵を落とし、地上へと落下する。

 

当然ながら、レオーネは二重の痛みと呼吸困難でマトモに動けない。

 

「がっ、ぁぁ……!」

 

「……(漁夫の利になるけど、今なら……)」

 

「─そこの。」

 

「っ─」

 

クロメは今ならば殺して骸人形に出来ると思い、八房を抜こうとするが少女に睨まれ、動きが止まる。

しかし、横にいた骸人形…ナタラが前に出て槍を構える。

 

「ほう…嘗ての意思がそうさせるのか。

それが死者行軍の力……だが、余の邪魔をするな。

同じ死に属する帝具といえど、余と貴様の『死』では意味も、力も違う。」

 

「……行こう、ナタラ。(間違いなく将軍クラスの実力。私が八房を全解放して勝てるか……なら、撤退して別のナイトレイドを狙った方がいい。)」

 

折角の獲物ではあるが狩りを邪魔されたなら退くのが一番だ。

そう判断したクロメは他のメンバーを倒しに行く。

 

少女は呼吸困難に陥りながらも自身を睨み付けてくるレオーネを見下ろす。

 

「死が望みというわけでもあるまい。

……ふむ、手柄は狂犬が持ってくるであろう。

余は余のやるべき事を優先するとしよう。」

 

「ぁ……ま、て…ぇ…!」

 

「…。」

 

レオーネから視線を外し、そのままハザマ達の方角へと向かう。

呼び止めようとしたが、今度こそ視線すら寄越さずに消える。

 

「─はぁ、はぁ!く、そ…何て威力だよ……このままじゃ、アカメが。」

 

レオーネは何とか立ち上がり、アカメの元へと向かう。

 

惜しくも、その方角は同じであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきから、嫌な予感がしやがる。

こういうときは外れねぇ勘なんだ、くそが、どうしたもんか。

アカメは粘りやがるし、俺達も攻めきれねぇ。

村雨の即死が攻めきれない状況を作り出している。

相手は隙があればこちらを即死させれて俺達はルビカンテの炎が当たればという確殺条件。

 

ふざけんなってんだ。

だが、攻めきれないのは彼方も同じ。

それに、俺もアカメを殺すのは望んじゃいねぇ。

こいつの強さは後に要る。

 

村雨の奥の手を使えればエスデスとも対抗できる程だからな。

 

「困りましたねぇ。」

 

「でも、困っているのはあっちも同じだよ。

他のメンバーもクロメちゃんの骸人形に手間取ってるみたいだし、今のうちに仕留めたいけど……」

 

「流石はナイトレイドの切り札。

三人がかりでも手こずるとはね…。」

 

「くっ……!」

 

ウェイブもいりゃ良かったんだが、あの野郎、スサノオに吹っ飛ばされて帰ってこねぇ。

こりゃこの戦闘が相当長引かないと戻ってこないな。

 

肝心なときに戻ってこねぇ奴だ。

 

デスタグールもスサノオが倒しそうな状況だしな……

 

にしても、あれが『禍魂顕現』。

使用者の生命力を食い、超強化する奥の手。

発動回数は三回。

それ以上は無理とされ、三回目が使用者の最期だという。

 

俺のウロボロスと似てやがる。

 

武神の能力をほどんど持ってるのもあの野郎だしな。

 

ウロボロスにそれがありゃあこんな悩む必要──

 

 

 

─なんだ?殺気か!?

 

「─くっ、ぐぅ!?」

 

「──邪魔だ。」

 

それを察知したのとアカメがそいつの蹴りを防いで吹っ飛んだのは同時だった。

 

「なっ─」

 

「あれは……!?」

 

あれは……何だってアイツがここに来てやがる!

大臣の野郎は何を考えてやがる!?

 

「冥王…イザナミ…!」

 

「…ふむ、ハザマ、ここにいたか。

ナイトレイドのメンバーと交戦していたようだから蹴り飛ばしたが……不都合だったか?」

 

…不都合だね。

テメェの存在がここにいること事態、計算外……待て。

じゃあまさか、こいつ

 

「まさかとは思いますが新メンバーもこちらに…」

 

「一人だけ連れてきた。もう一人は荒事向きではない。」

 

チッ、やっぱりか。

だが、そうなると誰かと交戦してるな。

……ラバックかチェルシーが狙われてたら本末転倒だ。

 

「ハザマさん、この人が例の…。」

 

「ええ…新組織のリーダー。イザナミさんです。」

 

「貴様は…確かボルスだったか。」

 

「あ、はい!よろしくお願いします…」

 

「よい、そう畏まるな。余と貴様は現在は仲間だ。

もう少し軽く接しろ。」

 

「え、と……うん、分かったよ。」

 

「うむ。」

 

……何呑気に会話してやがる。

コイツが居るってことは帝都はがら空きも同然だろうが。

 

くそが、にしたって何でここにいやがる?

 

「ハザマ。」

 

そうこう考えていたらイザナミから話しかけてきた。

 

「何です?」

 

「大臣が其方を疑っておる。」

 

「……へぇ。」

 

「大臣さんが?何で……!」

 

「ハザマが帝都に来た時から、ナイトレイドの動きが良くなった。とのことだ。」

 

動きすぎたって事か……

 

確かに、ランの引き込みといいドクターの暗殺といい……動きすぎたな。

チッ、焦りすぎたのは俺様の方か。

 

「それで、どうすればその疑いが晴れます?」

 

 

「─ナイトレイドのメンバーの首を1つ。

それで信用する。」

 

「─。」

 

……ケッ、そう来たか。

 

なるほどなぁ、まあそうなるか。

 

「…ふむ」

 

「出来ぬわけではあるまい?其方はイェーガーズ。

相手はナイトレイドだ。

ならば首1つ取るのは当たり前であろう?」

 

「ですねぇ。」

 

「ま、待ってよ!ハザマさんが裏切ってるなんてあり得ないよ!それに決まった訳じゃないんでしょ?なら」

 

「ボルスよ。そうではない。大臣は、疑っておるのだ。」

 

「疑いが続けば、私は間違いなく、処刑されるでしょうねぇ……」

 

「そ、そんな……」

 

「いやぁ、困りましたねぇ。疑われるような性格してないんですけどね。」

 

飄々とした態度で話ながら考える。

殺すのは構わねぇ。

だが、やるとすれば?

 

スサノオか?

……いや、まだ働いてもらう。

 

ならチェルシー?

馬鹿か、暗殺のプロを失うのは痛手だ。

 

だったらタツミ……それもアウト。

 

ナジェンダもマインもアカメもレオーネもラバックもシェーレも………いや?

 

ああ、なるほど。

 

だったらお前が要らないな。

 

一番切り捨てて問題なく、尚且つ俺の潔白を証明するならコイツだ。

 

ヒ、ヒヒヒ……ああ、そうだな。

ここいらで、考えを変える必要があるな。

 

仲間云々じゃねぇ。

俺様が壊すのは違うだろ。

 

俺様が壊すのは……国だ。

今ある嘘だらけのくそみてぇな自由のない国だ。

それを壊し、皇帝のガキの望みを叶えるのが目的だろうが、誰彼とかじゃねぇ。

 

目的がすり変わってた。

そも、切り捨てるのは誰でも同じだろうが。

国と一人。

 

俺はやる相手を決め、笑みをより深くしイザナミを金色の瞳で見つめる。

 

「ええ、分かりました。

ナイトレイドの首1つ、ですね?」

 

「そうか。」

 

「ええ……ボルスさん。」

 

「う、うん、何?」

 

何怯えた顔してんだよ肉だるま。

俺様がテメェを切り捨てると思ってんのか?

安心しろよ、まだ(・・)使わせてもらうからよ。

 

「少し、離れますね。」

 

「え、あ、うん!ここは任せてよ!」

 

「ええ……イザナミさん。」

 

「何だ?」

 

 

 

「─。」

 

「…ふむ、そうか。」

 

「では。」

 

あーやだやだ、面倒な動きが増えてく。

 

くそが、仕方ねぇ。

だが、俺様のためでもある。

消えてもらうぜぇ?

 

俺は今から殺す相手の場所にまで歩いていった。

 

まあ、位置は分かる。

何となくな。

 

……殺す相手に一々仮面見せんのも馬鹿げてるよなぁ…




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