テルミが壊す!   作:ロザミア

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蛇の牙は喉元へ

ジャラジャラと音を立てながらウロボロスが俺の周りを漂う。

 

─はヤく

 

「うるせぇ。」

 

頭に響いた声を黙らせる。

帝具の声が適合者に聞こえるのはよくあることだが、ウロボロスの声はその中でもでかい。

 

使っている素材が素材だ。

当たり前ではあるが……

 

いい加減暑苦しくなってきた。

帽子を取り、ネクタイを外して切り替える。

 

ハザマ()から、テルミ()へ。

 

わざと閉じていた目を開けて、目の前から来る奴を見捉える。

 

「お前は……ハザマか?」

 

「ハザマ…ハザマねぇ。ああ、間違っちゃいねぇよ。」

 

「っ、誰だ!?」

 

「オイオイ、キャラ戻しただけだろうがよ。

そう疑問ばっか浮かべんなよ子猫ちゃぁん!んでもって悪く思うな。

俺様もさぁ…テメェらへの情報の為に苦労してんのよ。

だからさぁ……」

 

バタフライナイフを手で遊びながら近付く。

相手も、俺が明確な殺意を持ってると理解したのか構える。

おーおー、流石に見映えがいいじゃねぇの。

 

ソイツに今まで見せてこなかった暴力的な笑みを見せて、俺は死を告げる。

 

 

「ちょいと死んじゃくれねぇかなぁ─」

 

 

 

 

 

「─レオーネ。」

 

「─!」

 

それを告げるのと俺とレオーネが同時に駆けるのは一緒のタイミング。

後はどうするかだ。

 

レオーネは獣化した拳と足での喧嘩のような殴りと蹴りを放ってくる。

俺はそれを僅かな動きで避け、隙を伺う。

片腕だけとはいえ、それを補うスピード…厄介だな。

 

「裏切ったのかハザマぁ!」

 

「裏切る、俺がぁ?オイオイ、おもしれぇこと言うんじゃねぇよ!

俺様はテメェを保身のために殺したいって言ってるだけだろぉ?テメェはナイトレイドのボスじゃねぇだろうがよ!」

 

「だとしても、ボスたちがアタシを殺したお前の言葉を信じると思ってるのか!」

 

「信じる信じないじゃねぇなぁ。」

 

何十発目かの蹴りを後ろに跳んでかわし、それを隙と見たレオーネが踏み込んで殴りかかってくる。

 

 

「─蛇双射出。」

 

「くっ、この!」

 

「テメェにはまだ見せちゃいなかったよなぁ……

無間蛇双 ウロボロスをよぉ!ヒャハハハハハァ!!」

 

「ぐぁっ!?っのぉ!」

 

「んなっ─」

 

突き出した手首に横から出現したウロボロスが噛み付き、巻き付く。

俺はウロボロスの鎖を乱暴に引っ張り、反対方向の岩壁へと叩き付けるが、レオーネは引っ込む前のウロボロスを掴み、俺を引き寄せる。

 

チッ、まだまだ精神は生きてやがるか。

当然とはいえ、ライオネルの強化と回復を見誤ってたか!

 

レオーネは引き寄せた俺の顔面を捉え、拳を握り、放ってくる。

体が引っ張られた状態じゃ、直撃は避けられねぇ!

 

「オラァッ!!」

 

「グォッ!」

 

殴られる瞬間、片腕で顔面を守り、吹き飛ばされるが……いてぇなクソガッ

何度も受けてたら腕どころか体全体がイカれる。

 

この体じゃなけりゃこの様にはならねえってのに…儘ならねぇ。

 

だが、殴られたことで思考がクリアになってきた。

 

より狡猾に動け、馬鹿みたいに仕掛けんじゃねぇ。

よりズル賢く、より残酷に……

 

殺してやるよ、レオーネぇ!

 

「子猫の癖にやんじゃねぇか……」

 

「まだやるかい?今なら気の迷いだって事に─」

 

「うるせぇぞ獣女。能書き垂れるのが暗殺組織ナイトレイドのやり方かぁ?そんなんじゃ国どころか仲間も救えねぇなぁ!!」

 

「っ、テメェ……!!」

 

「怒ってんのか?同情で国救う宣言してる奴はちげぇなぁ!」

 

「─ぶっ殺す!!」

 

「ヒヒ、ヒヒヒ…殺せよ、殺せ殺せぇ!ヒャハハハハハハ!!」

 

レオーネは怒りを爆発させて俺に接近してくる。

速い、さっきまでの比じゃねぇ。

判断力は鈍らせる事は出来たが……それでもか。

 

だが……その程度の速さなら十分対応できる。

 

加えて、もう一撃程ウロボロスをくらわせりゃ…

 

「ハザマぁぁぁぁ!!」

 

「にゃあにゃあ怒るんじゃねぇようざってぇ!」

 

振るわれる拳を避け、お留守になっている左足の裏に右足を引っ掛け、思い切り引いて体勢を崩させる。

 

そのままがら空きの胴体を全力で踏みつける。

 

「子猫ちゃんよぉ……獣くせぇんだよぉ!」

 

「グアァ、ガッ!」

 

「脳筋が、俺様に、楯突くんじゃ、ねぇよっ!オラァッ!」

 

「ガッ、ハァ!」

 

何度も踏みつけ、最後に横腹を蹴る。

オイオイ、ライオネルもこの程度かよ…?

確かにコイツは強ぇが、再生力だって無限じゃねぇ。

俺様の攻めにいつまで耐えられっかなぁ?

 

レオーネは体を痛みで震わせながらも立ち上がろうとするがそれは俺様が許さねぇ。

投げナイフを手に投げ、刺さった所を踏む。

 

「がぁぁ!!」

 

「ライオネルでも痛みはある。俺様の攻めはじわじわと苦しませるもんだ、再生力がある分、苦しむのはなげぇだろうなぁ?」

 

「グッ、この、野郎!」

 

レオーネは新たな痛みに悶えるがそれも束の間、俺の右足に噛み付き、そのまま砕こうと図る。

 

「チッ、糞猫が!?死ねやぁ!」

 

「っ─!!」

 

噛まれてる足に激痛が走るが、それを無視して顔面を蹴り抜く。

歯の拘束は解かれたが……チッ、拘束を解くために力を入れすぎて吹っ飛ばしちまった。

 

ライオネルの回復力ならまた向かってくる筈。

 

クソが、やり直しか。

 

口から血を吐き、マトモに握れない手から血を流しながら立ち上がり、俺を殺意の目で睨む。

 

「ハァ……ハァ…ゲホッ、くそ…!

さっきの女に何か言われたのか!」

 

「はぁ?女だぁ?……ああ、イザナミか。」

 

「イザナミ……そいつの名前か。」

 

あのアマ、俺に会う前にレオーネと接触してやがったのか。

何も知らずに居りゃよかったってのに妙なところで俺様の思い通りにならねぇ。

それがとてつもなくムカつく。

 

「別に何も言われちゃいねぇ。

だが、俺様に不都合な事情が出来たもんでなぁ…

言ったろ、保身だ保身。

その為に死んでくれ、獣女。」

 

「そんな事言われてはいそうですかって言えるわけないだろう!」

 

「なら惨たらしく死ねや。」

 

別に、テメェが悪いわけじゃねぇ。

俺様の不注意が悪い。

だが、それでも俺様にはやらなきゃならねぇことがある。

それが偶然、仲間を殺さないといけなくなっただけだ。

 

だからこそ、殺す。

今はまだバレる時ではない。

 

俺様には、まだあそこで終わらせるべき事項がある。

 

俺はレオーネにウロボロスを飛ばす。

ウロボロスは耐久が限界値を越えるか俺の命令が来るまでは絶対に獲物を追い掛け続ける。

蛇のように相手を追い詰め、その精神に食らいつく。

 

「また同じ手か!そう何度も食らうか……!」

 

「悪いが食らってもらう。テメェにはさっさと退場してもらわねぇと俺様が困る。」

 

ウロボロスをかわした瞬間を狙い、低姿勢でレオーネの足をナイフで切り裂きにかかる。

が、これもレオーネは狙われている方の足を強引に上げることで回避。

その隙を狙うようにウロボロスがまた噛み付きに来る。

 

レオーネはウロボロスに危機感を覚えているのか俺を攻撃するよりもウロボロスの回避に専念している。

 

だがよぉ……

 

「っ!この!」

 

「その回避の仕方で、避けきれると思ったか?」

 

その牙で腕に噛み付いたウロボロスは精神を攻撃する。

そして、ウロボロスの黒い目の穴が緑に光る。

 

噛む力が強いのか振りほどけない様だ。

もう片方の腕があれば……ってとこかぁ?ヒヒヒ!

「獣女、テメェの終わりだ。」

 

「何だと……!」

ウロボロスの特徴その2……

 

「無間蛇双はよぉ、攻撃するのは確かだが肉体的ダメージはそうデカくはねぇ。寧ろ、攻撃型帝具の中では最弱と言ってもいいくらいだ。

だが、そうじゃねぇ。

ウロボロスが攻撃するのは精神だ。」

 

「精神……?(そういえば、最初に噛まれたときから鬱々としたっていうか……感情に呑まれやすくなってた……?)─まさか!」

 

「そのまさかさぁ!ヒャーハハハハハハハァ!

テメェは、もうウロボロスの術中だぁ!」

 

「ハザマァァァァァァァァ!!」

 

それを理解したレオーネはすぐに俺へとその脚力で迫ってくる。

ウロボロスを腕に噛まれたまま。

 

俺は、ウロボロスに命令をただ下す。

1つの終わりを。

 

 

「─精神掌握(マインドコントロール)。」

 

「っ!────」

 

 

鬼気迫る顔のレオーネは、俺の一言でその動きを止め、そのまま倒れこむ。

その時の瞳は虚ろだった。

 

精神掌握(マインドコントロール)

ウロボロスの脅威性そのもの。

蛇の牙から毒を流し込むように、じわじわと獲物を追い詰め、その果てには精神を掌握し、思いのままにする。

 

「あー…やだやだ…遂には駒も捨てなきゃならねぇときになるとはなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

「─んじゃ、お別れだなぁ、レオーネ。」

 

その魂、頂くぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハザマさん!」

 

「シェーレさん、申し訳ありません…!」

 

「え……──。」

 

「……すみません、間に合いませんでした。」

 

 

 

「─レオーネ…?」

 

「…私が来たときには既に……恐らく、イェーガーズが。」

 

「……そう、ですか……」

 

「…申し訳ありません、私は戻らねばなりません。」

 

「っ……はいっ。」

 

仲間の死を悔やむ女に後を任せ、男はやるべき事をやるためにその場を去る。

 

 

 

 

 

 

 

「─あーあ、馬鹿馬鹿しい。」

 

帽子を深く被った男は、ただひっそりと一言。

その顔に、笑みを張り付けて誰かを嘲笑うのだった。




殺っちゃったぜ。
という訳で分かってた方もいるかもですがレオーネさん死亡です。

うんまあ、運が悪かったってことで。
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