テルミが壊す!   作:ロザミア

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糸使いの必死な逃亡

ボルスの元へ戻ろうとすると、前方でイザナミが立っていた。

見てたか…まあだろうな。

俺が本当に殺ったかどうかを確認するためだろう。

 

「これでいいかよ冥王様」

 

「戸惑いもなく殺りおったな。

昔の其方ならば……いや、昔のメンバーならば、どうであったか」

 

─テルミ、癪ではあるが貴様に託す。

 

俺の行動に納得し、託した奴が居た。

 

─テルミさん、どうして……

 

訳が分からないと、俺を非難した奴が居た。

 

全員、俺が殺した。

誰であろうと、あの時代で、俺が今後動くために、邪魔だったから。

 

─テルミ…余は……

 

そう、邪魔、だった。

 

「状況がどうあれアイツらを殺したのも俺だ」

 

どんな理由があろうと、業は業。

仮に、俺の終わりが悲惨であるなら……俺はそれほど罪深いって事だったんだろうよ。

 

そう伝えると、イザナミは寂しげに俺を見て、ふっと微笑む。

 

「…そうであったな。難儀よな、約束が其方を縛っている。それがなければ効率よく動けているだろうに」

 

「何だ、哀れみにでも来たか?ムカつくからやめろや」

 

「……ふ、余もあの時代を生きた者。

哀れまれるのは余であろうな。

…戻らなくてよいのか?」

 

「今から戻るところだったんだよクソアマ。

……いや、待てよ」

 

「……」

 

今のうちに聞くか。

 

「イザナミ、テメェ…この戦いでどこまででしゃばる?」

 

「ふむ?余は何もせんが」

 

「…なら、もう一人か?」

 

「ああ、あ奴か…あれは戦場に立てば余の指示をマトモに聞かん。だが、一人は必ず殺せとは伝えた。」

 

「…一人は必ず……」

 

レオーネは換算に入れねぇとして……

 

タツミは猿の危険種ゾンビと。

ナジェンダは元将軍と…マインはクロメと、アカメはボルス。スサノオはデスタグール。

チェルシーは隠密。

ラバックは……?

 

嫌な予感がする。

いや、ずっと感じていたのはこれか。

あの時、何かを感じたのは、これか!

 

「……チッ」

 

「何処へ行く?」

 

「この様子だと守る必要もねぇからな。

好きに動く」

 

「糸使いを助けると?」

 

やっぱラバックか。

チッ、チェルシーならまだ切り捨てる気にはなれたんだがな。

 

「切り捨てるにゃまだ早い。現状、見極めが必要な段階だ。何処まで駒を豚野郎の喉笛まで動かせるか……

そして……あのドSを不利に出来るかのな」

 

「森に向かってももう遅い」

 

「何?」

 

「余の予想では、あのままでは糸使いは死ぬ。必ずな」

 

「どういうことだ?教えろ」

 

「…ふむ、よかろう」

 

暇であるからな、と退屈そうなイザナミに舌打ちしながら早くしろと催促する。

 

そう焦るな、と油断ならぬ笑みを俺に向けながら話し出す。

 

「余の部下は、糸使いを襲撃した。そう仕向けた。

糸使いは逃げながら何か閃いたのか、さらに奥へと向かった。あの方角は…ククッ、エスデスを止めている方角か?」

 

「─!」

 

俺はそれを聞き、すぐさまイザナミが指を指した方向へと走り出す。

不味い、このままだと非常に不味い。

 

ラバック、てめぇ…自己犠牲でもするつもりか!?

 

無意味に死ぬのだけは許さねぇぞ。

俺様に利用されてから死ねや!

 

「ヒントだ、余の部下は『暴力』だ」

 

「……チッ」

 

走りながら、クスリと笑うイザナミにまた舌打ちをし、さらにスピードを上げる。

 

ボルスも心配だが、あの様子ならアカメ一人くらいなら阻止できる。

それに、あまりに手こずってる様子ならナジェンダが撤退を命じるはずだ。

その後は考える。

今は、ラバックの野郎だ。

 

暴力だぁ?

んな帝具…あれしかねぇだろうが。

 

あれの適合者だと?んなもん化物に決まってんだろうが。

 

森が見えた所でウロボロスを射出、木を噛んだウロボロスに引っ張らせ、すぐに別の前の木を噛ませ同じ行動をする。

 

まるで、猿みてぇだ。

 

どうでもいい事をすぐに頭から追い払い、ラバックの居るであろう方角へと急ぐ。

 

頼むからまだ死んでくれるなよ駒ぁ……!

 

 

 

・

 

・

 

・

 

・

 

 

 

「ハァ……ハァ……!」

 

「逃げてばかりではつまらんぞ!!何故向かってこない!?」

 

かれこれ、何十分?いや、何時間?

時間すら分からない。

恐らく、そんなに時間は経ってない。

 

先程から目的の場所まで逃げて逃げて、逃げまくる。

勝てない脅威は未だ自分を狙ってくる。

ホモかよ、と悪態をつくが後ろのくそったれは苛立ちを隠さずにスピードを落とさず、追い掛けてくる。

 

遊んでいるのだろうが、いつまでたっても向かってこない俺に苛立ちが募ってるようだ。

だが、付き合う理由はない。

存分に逃げさせてもらう。

この先で、死ぬかもしれないが、ナジェンダさんたちにこの脅威は大損害間違いなし。

なら、俺が犠牲になる方が……。

 

とは言え、さっさと死ぬ気はない。

隙を見て逃げ出す所存である!

 

誰か助けてくれねぇかなとか、諦めに近い願いをまだ捨てきれてない。

 

「しつけぇ、んだよ…!いつまで、追って、きやがる!」

 

「無論、貴様の息の根を止めるまでだ!が、貴様はいつまでたっても向かってこない!何故だ!」

 

「ハァ……ハァ……あ?死にに行く奴がいるか?

俺は無謀な戦いはしねぇ主義なんだよ!」

 

「…塵屑が!」

 

「塵屑で結構!」

 

早く着いてくれ。

あの将軍とその仲間相手に単騎で突っ込むとはやはり頭がおかしくなってるのか。

いや、俺は最善を尽くしているだけだ。

 

逃げ切れないなら、巻き込むに限る。

 

そろそろ体力も限界だ。

頼むから、ついてくれ。

ついでに言うと、死にたくない!

 

そう願い、森を走る。

 

すると、ようやくと言うべきか。

外が見えた。

 

「っし……!」

 

「む……」

 

ここで気を抜くわけにはいかないと外へと出る。

 

一先ずここまで逃げることは出来た!

後はこの肉だるまを誘導して─────────

 

 

「何者だ」

 

「───」

 

突然聞こえた氷を思わせる冷たい声が聞こえた。

後ろの肉だるまもそれを聞き止まる。

 

俺は焦る心を落ち着かせながら横を見る。

 

「…暴徒に襲われているのか?」

 

「……はっ、はは……」

 

「ほう……あれが…!」

 

肉だるまは歓喜の声をあげるが俺からしたら最悪の状況だ。

 

何せ────

 

 

 

「我々はイェーガーズだ。そこの二人、動くなよ」

 

 

 

 

──エスデス達がもうここまで来ていたのだから。

 

どうする?

ナイトレイドとバレるのは時間の問題だ。

いや、待て。

 

ああマジか、もうだめか?

俺はここで死ぬ運命なのか?

見放されたのか?

 

俺の心境など知る由もないエスデス達は馬から降りて俺達に近付く。

 

それと同時に肉だるまがエスデスに近付く。

おいおいおいおい、情報共有か?

 

「エスデスだな?」

 

「…貴様は誰だ?」

 

「そう睨むな。俺達は帝国を守る組織同士だろう?」

 

「……冥王か…!何をしている、イェーガーズが居ない間は貴様らの組織が動くべきだろう」

 

「俺達も大臣に言われたのさ、ここに行けってな」

 

イェーガーズ以外の組織……ハザマからの連絡でわかったことだな。

こいつがその一人か…

 

これは詰んだと思い、目を閉じる。

死ぬのは一瞬だろう。

だが、俺は閉じた目を再び開けることになる。

 

「ならば、そこの男は───!」

 

 

 

─あの男が、エスデス達に拳を振るったからだ。

 

エスデスは首を傾ける。

拳はエスデスの顔があったところを真っ直ぐに振るわれた。

エスデスは鋭く睨み、他の二人は構える。

 

どういうことだ?

 

「──何のつもりだ」

 

「ククク、フハハハハ!すまんな、俺はどうも抑えが効かん性格らしい!貴様を味見したくなった!」

 

エスデスはため息をはき、やれやれと言う。

 

「…どうやら、冥王は犬の躾がなってないようだな」

 

「そう言うな、俺に組織は向いていないからな。強きものと闘えると聞いて組織に入っただけだ」

 

「芸もできないゴリラか。ならば、やり返されても文句は言えないだろうな?」

 

「隊長!?」

 

「セリュー、お前はあの一般人の保護をしろ。

本来なら付き合う理由もないが…どうにもこいつは私の躾を所望している」

 

「…分かりました、ですが」

 

「分かっている」

 

話を聞く限り、俺は助かるのか?

天は俺を見捨てなかったか!

 

情報を持ち帰れるし、命も助かるなんざ二度もない!

 

二人は俺に近付いてくる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ……助かったよ…!」

 

「ここは危険ですので、我々と避難を……」

 

「こっちです!」

 

ランさん早く、とセリューと呼ばれた女が俺の手を握って走り出す。

うわあ俺ってラッキー。

 

ランと呼ばれた男も俺の後ろを走る。

 

(ナイトレイドですね?)

 

「!」

 

バレていたのか!

くそ、すぐに逃げようにももう手を握られてる!

このままだと……

 

焦る俺を宥めるようにセリューは小声で続きを話す。

 

(待ってください、私とランさんは味方です)

 

(み、味方?ハザマの関係者か?)

 

(ええ、私とセリューさん、ハザマさんでイェーガーズの情報を横流ししています。もっとも、やっているのはハザマさんですがね)

 

ハザマ、あいつ……中々やるじゃねぇか。

何にしてもアイツのお陰で助かったぜ……

 

セリューとランと俺は馬に乗る。

エスデス徒歩になるけど……ああ、大丈夫そう。

 

走る馬の後ろで地面が砕けるような音と何かが凍るような音がしたが…振り向けるような状況じゃねえ。

二人から話を聞かねぇと

 

「すまねぇ、助かった。俺だけじゃ死んでたろうしな」

 

「いえ、たまたま貴方の顔がバレてなければ私達も助けられませんでしたから…」

 

「ええ、幸運でしたね。セリューさん、ここでいいでしょう。」

 

「そうですね…」

 

二人と共に馬から降り、俺は壁に座り込む。

肉体的疲労は勿論だが、精神的疲労もある。

全くもって今日はついてるのかついてないのか。

 

「にしても、新組織にあんな化物がいるとは……」

 

「テ…ハザマさんから聞いた通りかもしれませんね……一人一人が隊長並の強さ…」

 

「だとするなら、我々には不利ですかね」

 

「いえ、でもハザマさんはまだ大丈夫だとか」

 

「マジかよ……一人一人があのエスデスとだと?」

 

「本当なら、ですが」

 

「ハザマさんが嘘の情報を持ってると言うんですか!」

 

「間違いかもしれない、というだけです。そう怒らないでください」

 

セリューはどうやら、ハザマに依存気味…なのか?

俺には分からないが、どうにも先程のランの発言に噛みつく勢いだった。

 

「それにしても、さっきからすげえ音だな……」

 

もう、ドゴォとかピキーンとかやばい音ばかり聞こえる。

あれが人間のやることか?

もう怪獣だろ。

 

「何にしても、貴方はすぐに何処かへ逃げた方がいいでしょう」

 

「…だな」

 

「では、お気をつけて。我々もハザマさんと違いあまり手助けはできませんから」

 

「ああ、もう一度言うが、助かったぜ、ありがとな!」

 

俺はそう言って走り出す。ここら辺なら糸を使った方が早いからな。

 

改めて、助かってよかった。

これはもう、幸運に身を任せてナジェンダさんに告白を……?

 

考えながら、森へとまた入り、全員にそろそろヤバイと伝えに行く。

 

 

 

・

 

・

 

・

 

・

 

 

 

森を抜け出し、辺りを見回す。

 

ラバックは無事か……?

何にしたって早く見付けねぇと…!

 

「ハザマさん!」

 

「ん?あれは──」

 

セリューとランか。手を振って近付いてくる。

何だ、入れ違いか?

いやまて、エスデスはどうしたんだ?

 

「お二人とも、ご無事で何よりです。

ところで、エスデスさんは…」

 

「隊長なら、もう1つの組織のメンバーと交戦中です」

 

「は?」

 

「気持ちはわかりますが、まずは貴方の危惧している事の説明をします」

 

ランが言うには、ラバックは何とかセリュー達に保護されてそのまま逃げていったらしい。

ついでに、自分達の存在も教えた。

そりゃありがたい。いずれしようとは思っていたが手間が省けた。

 

んで、エスデスだが……どうやら喧嘩を売られたから買ってるらしい。

 

恐らくすぐに帰ってくるとの事。

 

「……どうなってるんです?」

 

「セリューさんと私にも何が何やら……」

 

「それよりハザマさん!たまには部下を褒めたらどうですか!」

 

今回ばかりは助かったでしょうとドヤ顔をするセリューにイラッとしつつも事実なので何も言えない。

 

仕方ねぇな。

 

「はいはい、感謝しますよ、セリューさん」

 

適当に感謝しつつ頭を撫でておく。

こんなんでいいだろ、面倒くせぇし。

 

「ぁぅ、ありがとうございます…」

 

「……」

 

ランに微妙な顔を向けられた。

何でだよ、俺様はおかしなことしてねぇだろ……

疲れた。




ラバックは無事生き残りました。

そして、次回はエスデス隊長と新組織の一人との戦い。
筋肉隆々の男……一体何ラエルなんだ……?
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