テルミが壊す!   作:ロザミア

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力、そして思惑

力と力。

それがぶつかり合う。

片や氷と剣を用いた変幻自在の力。

片やあらゆる場面を粉砕する怪力乱心の力。

 

「ふっ、はははは!まさかこのような場所で貴様のような男と出会えるとは!冥王と大臣に感謝しなければならんなぁ!」

 

「ハハハハハハハ!!それはこちらの台詞だ帝国最強!貴様も所詮女と思ってはいたが、許せ!俺も昂りが抑えられん!」

 

どちらも、共通点は戦闘狂の部類。

そして、負け知らず。

 

片や負けは死に等しいと教えられ生きてきた部族の生き残り。

片や力がありすぎるがあまり自らに枷をかけ、戦いを楽しむ狂犬。

 

気が合うのは通りであった。

 

エスデスは自分の数十倍はあろう氷塊を目の前の男へとぶつける。

だが、それを危機とも思わぬ狂犬は、嬉々としてその氷塊へと突き進む。

拳に力を入れ、それを思いきり振り抜く。

 

ただそれだけ、ただそれだけの行為で──

 

 

「──ほう!」

 

「──軽いな帝国最強!もっと俺を楽しませろ!!」

 

 

─氷塊は意図も簡単に砕けちり、男はもっと本気を出せと凄惨な笑みを浮かべる。

これほどまでに強い男、そうはいないとエスデスは思った。

 

故に、殺す相手に普段は頓着もしないエスデスは聞いた。

 

「貴様、名はなんだ!」

 

「俺か?俺は、アズラエル。狂犬、戦場の殺戮機と呼ばれている」

 

拳と剣が何度もぶつかり合う。

互いに加減に加減を重ねた状態。

まだ殺すには惜しい。もっと楽しんでいたい。

その心がどちらにもあったからこそ、どちらもまだ死ぬことはない。

 

「アズラエル?狂犬……そうか、あの狂犬アズラエルか!通りで強く、私が胸躍る筈だ!だが、妙だな?」

 

エスデスは嬉しそうにするが疑問が浮かび上がる。

狂犬アズラエル。

その名は遠い国での戦場では有名であり、帝国にまでその名は知れ渡る程の名だ。

 

曰く、岩山を一撃で砕いた。

曰く、彼のいる戦場では何も残らない。

曰く、超級危険種を一晩もかからずに殺した。

 

他にも多くの噂を残す男。

 

だが、おかしい。

目の前の男が、いるのはおかしいのだ。

 

「貴様は拘束され、海の底へと沈んだと聞いたが?」

 

「ああ、あれか…あれにはがっかりした。深海ならば、俺の肉体を潰してくれるかと期待したが…そうはならなかったのでな。棺桶を砕いて陸に上がった」

 

「ならば戦場には行かなかったのか?」

 

「今の世界の戦場はつまらない。俺の欲を満たす存在は何処にも居なかった……」

 

だが、とアズラエルは続ける。

恐ろしい事を平然と成し遂げたが誇りもせずつまらなそうに語っていたアズラエルはエスデスを見捉える。

 

「ここならば退屈はするまい!ナイトレイド、イェーガーズ!帝国最強、最強の暗殺者、多くの帝具使いども!大臣の誘いに乗り、正解だったぞ!お陰で貴様のようないい女と巡り会えたのだからな!冥王もそうだが、貴様も見た目に似合わぬ力だ!」

 

「ほう、冥王ともやりあったのか」

 

「ああ、冥王は強いぞ?俺を相手に無傷で引き分けに持ち込んだのだからな。加えて、もう一人も中々だ。

本気は出されなかったが、リミッターを1つか2つは解除しても良さそうだった」

 

「ならば私はどうだ?」

 

「クク、当然、貴様は全力で潰してやる!

俺が出会った中で闘志をここまで燃やしてくれる女は初めてだ!」

 

「ふっ、それはいいことを聞いたな…流石の私も──」

 

直後、エスデスの姿が消える。

速いな、とアズラエルが自分の懐を見る。

 

 

 

「───力を出し惜しむ奴には靡かんぞ?」

 

「───分かってるようだなぁ?」

 

 

 

剣を刺しに来るエスデスが目に映り、更に嬉しそうにする。アズラエルは手刀で剣を弾く。

その瞬間、エスデスはともかく、剣は耐えきれなかったようで折れてしまう。

 

「ふん、軟弱な剣だ。更にいいものを造らせねば」

 

「そう言ってやるな。俺にとっては脆いが大抵ならばその剣は折れはしない。相手が悪かったのさ」

 

「ふむ、そういうものか」

 

折れた直後に距離を取りつつ氷を槍のように鋭くしたものを何百と発射するが、アズラエルは5発、拳を前につき出すだけで氷の槍全てが砕け散る。

拳圧だけでこれとは、恐れ入るとエスデスは心の中で称賛する。

 

この二人、話ながら戦っている。

まるでテレビゲームをしながら今日のニュースについて話し合うように。

 

互いに底が見えないと理解した二人はもう一度やりあおうとして

 

 

やめる。

 

互いに構えを解く。

 

「流石にこの土地を永久凍土に変えるわけにはいかんからな。今日はここまでだ」

 

「同感だ。土地を壊し、国を追い出されては堪ったものではない」

 

「追い出されようと戻ってくるだろう?力付くでな」

 

「無論だ、餌があるのにそこへいかない奴はいない」

 

「ふっ、それもそうか」

 

「だが、しまったな…」

 

「どうした」

 

アズラエルのやらかしたという反応にエスデスが気になり、聞いてくる。

 

「獲物を取りのがした。ナイトレイドを一人は殺せという命令だったんだがな…」

 

「…あの一般人……」

 

ナイトレイドだったか、と案外どうでも良さそうに言うのは先程の軽い運動が心地よかったからだろう。

 

「まあ、それはいい。俺にとっての最大の収穫はあったからな」

 

「私も、お前のような男がいるとは思わなかったぞ。

世界は広いようだ……本気で戦えばどちらが勝つか気になるな?」

 

「無論だとも。だが、それをやるのは今じゃない。

俺たちにとって共通の獲物、ナイトレイドを喰らった後でもそれは出来る」

 

「ふっ、ならばこの勝負、その時まで預ける」

 

「構わん。どちらが圧倒的強者かを決めるのが楽しみだ」

 

互いに獰猛ともいえる笑みが止まらない。

二人は好敵手になり得る者を一人見つけた。

 

帝国が誇る最強の将軍と世界中に名を轟かせた狂犬。

 

この二人が一時とはいえ暗殺組織に牙を向けることとなる。

 

それを、冷ややかな目で少女が見ていたが、見飽きたのか何処かへと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撤退。

俺が戻ったときにはナイトレイドは居なかった。

レオーネの死体もだ。

あれば取り損ねた帝具を貰うかと思ったが……

まあいい、それよりも、イェーガーズの被害は如何程か?

 

俺達はエスデスが戻ってきた後、四人で戻り、ウェイブを見つけ、そこにボルスとクロメがいるのも分かり向かう。

 

「無事でしたか」

 

「ハザマさん!そっちこそ。何をしていたの?」

 

「いえ…ナイトレイドを追っていたのですが、まんまと逃げられましてね。エスデスさんたちにもそこで会ったので戻ってきたのですよ」

 

「そうか……すまねぇ!ボルスさん、クロメ!俺が油断してなけりゃボルスさんの帝具も…!」

 

「帝具?ルビカンテがどうか…おや」

 

ルビカンテを見ると、見事に折られていた。

どうやら、あの後スサノオが乱入して来たようでしばらく耐えしのいだものの折られてしまったらしい。

それでも殺されなかったのは運が良かった、か。

 

「うん…もう戦えないみたいだ」

 

「そんなこと!」

 

「でしょうね~」

 

「ハザマ!」

 

「事実です。エスデスさんもそう判断しているかと……ですよね?」

 

「貴様に考えを読まれるのは好かんが、その通りだな。

ボルスはイェーガーズとしてもう戦えん。

……だが、悔やむなボルス」

 

「エスデス隊長…?」

 

エスデスはボルスの前まで移動する。

その顔は穏やかだ。

 

「殆どの戦力を投入されたにも関わらず生き残ったのだ。死ぬよりはマシだろう。それに、お前が死ぬと困る者が何人かいるからな」

 

「──はい、ありがとうございます、隊長!」

 

若干の涙声でボルスは礼を言う。

その光景に、殆どのメンバーが微笑んでいる。

ウェイブも先程までのアツさは何処へやらだ。

 

「なんか俺、余計だった?」

 

「そんな事ないよウェイブ。八割は余計だったけど二割は……」

 

「それを余計なお世話って言うんだよ!また俺は変に話を拗れそうにぃ!」

 

「まあ、ウェイブだしね」

 

「んだとぉ!?」

 

その後、俺達は帝都へと戻った。

戻る途中、エスデスにイザナミと俺への疑いを話したら気に食わんなと顔をしかめた。

 

「それで、殺せたのだろうな」

 

「一名、確かに魂をいただきました。冥王もそれを見ていましたので、疑いは晴れたでしょう」

 

「そうか、だが、何を言われるか分からんな…」

 

「ええ…」

 

「ハザマさん…」

 

「何です?」

 

セリューが心配する顔を俺に向けるので犬かこいつはと思いながら何だと聞く。

 

「ハザマさんはどうなるんです?」

 

「処刑はないが、大臣に疑われた、というのが不味いな」

 

「隊長!それって…」

 

「イェーガーズを抜けるよう言われるか、それとも帝国を追い出されるか…無罪を証明してもあの男は用心深いからな」

 

エスデスの冷静な声に俺は若干ながら焦る。

追い出しはないとは思うが、今イェーガーズを抜けるのはまずい。

ランとセリューの二人との接触がしにくくなるし、ブドーとも……

 

自由に城の中を歩けねぇかもしれねぇのは……非常にまずいな。

 

「まあ、戻ってから分かることだ。今は心の準備だけをしておけ。少なくとも貴様は私の部下だ。悪いようにはならん…恐らくな」

 

「最後がなければ安心したのに台無しですよ!」

 

「蛇ならばもっと上手くやるべきだろう?」

 

「ぐぬ…そんなに怪しいですか?」

 

「この上なくな。もしかしたら、大臣以上かもしれんぞ」

 

「穴に入って埋まりたいですねぇ……」

 

「やってみるか?私も試してみたいとは思っていた」

 

「やっぱり何でもないです」

 

「なんだ、つまらん」

 

つまらんじゃねぇ。

こっちはんな下らねぇことされたくもないわ。

 

そんな悪態をつきながら、俺達は帝都へと無事戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくぞ戻った!」

 

「はっ、陛下。イェーガーズ全員、帰還しました」

 

うむ、という声を聞き、何も変わってねぇようで安心した。

したのだが

 

それは全てを報告し、大臣に呼び出された時だ。

俺だけが呼び出されるということは……そういうことだろう。

エスデスにも

 

『さらばだ、ハザマ。…ナイトレイド一人の討伐、見事だった』

 

とか言われたしな。

珍しく、お疲れさまですなんざ言ってしまった。

気に入ってはいたんだがな……

 

「何でしょう?」

 

「ナイトレイドメンバー一人の殺害。見事やってくれましたね」

 

「疑われるのは癪ですし、本気を出しただけですよ、ええ」

 

「ええ、ですが……」

 

 

 

「これ以上イェーガーズに居られては困りますねぇ」

 

 

「……ほう、それはどういう事です?」

 

大臣は肉を頬張りながら話す。

 

「簡単な話ですよ。エスデス将軍の組織、イェーガーズに裏切り者の可能性アリなどというのがもしほんの少しでも外部にバレたら……」

 

「危険分子が増えるかもしれない、と」

 

「そういうことです。ですから、貴方の勤め先を代えさせてもらいました───

 

 

 

──冥王の組織に、ねぇ」

 

冥王、イザナミの組織だと?

 

……

………

…………

 

 

そういうことか。合点がいった。

 

アイツが彼処で出張ってきたのはそれの目的もあったからか!

俺様を、嵌めやがっただと……?

あのアマぁ……!

 

……だが待て、これは逆にチャンスだ。

 

大臣が何故か信頼している冥王の組織だ。

そこへ入ればまた少しこの豚の喉元に近付ける。

なら……

 

「……なるほど、分かりました」

 

「おや、案外あっさりですね?」

 

「まあ、私はこういうの慣れてますしね…情報屋って信用されませんから」

 

「そうですか。では、これからもどうぞよろしくお願いいたしますよぉ?」

 

「はいはい。私でよければ使ってくださいよ」

 

俺はそう言って退室する。

無性に何かを蹴りたくなるが抑えておく。

 

「話は終わったか?」

 

「……冥王」

 

「ククク、そう怖い目を向けてくれるな。余とて悪いとは思っている。思っているだけだがな」

 

冥王イザナミは、退室してすぐに俺の前へとやってきた。

心なしかウキウキってかぁ?

 

「テメェが何のつもりかは知らねぇが、馬鹿馬鹿しい真似しやがって」

 

「そうだな……だが、安心しろテルミ。余は其方を縛らぬ」

 

「ああ?」

 

「そのままの意味だ。では、行くぞ」

 

「何処にだよ」

 

「決まっておろう。我が組織のメンバーを紹介せねばなるまい?」

 

「……へいへい」

 

ドSが。

俺様を苦しめるのが楽しいってかぁ?

 

この恋愛脳少女が、なめた真似しやがって。

 

冥王に連れられるままある部屋まで来た。

その扉を開けると、既にメンバーは揃っているらしい

 

「来たか…ソイツが冥王の欲しがっていた男か!」

 

「…ほう、面白いな」

 

「新しいメンバーを紹介しよう。ハザマだ。

余がとても欲しかった人材だが…こちらに来てくれた」

 

「ご紹介に預かりました、ハザマです。

ええ、まあ、よろしくお願いしますよ」

 

一人は大男。恐らくはエスデスの言ってたアズラエル。

だが、もう一人は……

 

仮面を着け、俺を見て面白そうに笑いやがった。

気味が悪い。

 

冥王は俺の前まで来て、腕を広げる。

 

「歓迎しよう、ハザマ。世界に終焉をもたらす組織────

 

 

 

 

──『エンブリオ』へ」




内心ガッツポーズで今すぐ抱き付きたいが部下の手前、格好つけておく帝様

そして、内心そうなんだろうよと予想しながら難儀な奴と呆れて組織名を聞くテルミ
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