テルミが壊す!   作:ロザミア

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どうも、ロザミアです。

さっさとこの小説を終わらせにいって、また新作作るんだよスモーキー!!

あ、手抜きはしませんよ


遥か昔、廻る今

曖昧な意識の中、それでも確信できたことはこれが夢だということだった。

何故なら、あり得ないからだ。

目の前が、どんなにあり得ないのか、それを教えてくれているからだ。

 

─────────────────────

 

 

「テルミよ、何をしている」

 

「いや、何も」

 

目の前の穴がどこに空いてんのか分からない白い鎧を来た男に特に何もないと夢の俺が伝える。

 

アーキタイプ。

その性質は魂の保管、そして、その魂の姿をトレースするもの。

始皇帝が造り上げたとんでも品の一つ。

 

目の前の鎧野郎は俺の言葉にそうか、とだけ返す。

 

「しっかし、てめぇも暇人だなぁ?ええおい──」

 

 

 

 

「──ハクメンちゃんよぉ。」

 

目の前の鎧野郎─ハクメン─に対して俺は挑発するように話し出す。

 

ハクメン。

この時代の帝国における最強。

鎧は特殊な金属で出来ているらしく、製造法は不明。

そして、その背にある大人の男一人分はある野太刀は帝具の一つ。

 

術刻斬魔 『鳴神』。

性能は対帝具に偏っている。

鳴神は帝具の能力がどれだけ強力だろうが縛ることが出来る。

勿論、制限はあるが…。

加えて、ある術があるが……説明が難しいんだよなぁ。

 

んで、そんなハクメンちゃんだが、余程暇なのか俺の部屋にまで来やがった。

 

俺様からしたら化け物が進入してきたようなもんだ。

 

何かしちまったのかと焦る。

 

…戦えねぇことはねぇが鳴神とハクメンは強すぎる。

マトモな戦いにはならねぇだろうな。

 

まあ、今は互いに向かい合って座ってる。

 

「んで、何のようだ。」

 

「…テルミ。貴様は帝の帝具について何も思わぬか?」

 

「イザナミか…やけに唐突だな。

今まで軍事には口出しをしても帝そのものには何も言わなかったテメェが…いや、何も言わなかったからこそか。」

 

コイツが御執心なのは別のはずだろうに。

だが、英雄様の疑問とは珍しい。

 

「危険物、死そのもの、メシマズに拍車がかかった。

このくらいだろ。」

 

「一つおかしい物があったが…概ね私も同じ印象を抱いた。貴様がそうなら、この印象はほぼ全員が抱いたのやもしれぬな。」

 

「あ?アイツら全員がだと?」

 

「それに、帝自身が変わり始めている。

…あれはもしや、帝具との同調が高過ぎるということか?」

 

「…帝具は生きてる。素材になった危険種の魂ってのが入ってる。それは知ってんだろ?」

 

「把握している。」

 

「その危険種の魂が強すぎるが故に一部の帝具は人を選ぶのさ。そして、イザナミの素材になった危険種は帝を選んだ。

んで、こっからが最悪なんだが…相性が良すぎると、その人間の魂が染まっていくらしい。」

 

「何…?それは帝具の危険種に近付いていくということか!」

 

「当たりだ。」

 

俺は説明を終えると用意していたゆで玉子を食べる。

 

美味い、犯罪的な美味さだ。

 

「しかし、何故帝とイザナミの相性があそこまで良いのか…。」

 

「あのお転婆の中身がドロドロかも知れねぇぞ?

アイツは妙なところで達観してやがるからな。」

 

「……。」

 

俺の一言を否定できないのかハクメンは静かになる。

帝に仕える者として心配なんだろうが…こいつがねぇ。

 

「んで?」

 

「む?」

 

「ラグナちゃんとはどうだ?」

 

「死神か。奴とは顔を合わせる度に試合になる。」

 

「要はあまりよろしくねぇのな。」

 

「何故死神の話題を出す?」

 

「一応俺様はテメェらの上司だぞ?

部下の関係を把握するのは当たり前だろうが。

だからこそ聞かせろ。

テメェ、どうしてラグナちゃんにあそこまで御執心なんだ?」

 

「……。」

 

俺の問いにハクメンはゆっくりと語り出す。

 

「『死神』ラグナ・ザ・ブラッドエッジは──」

 

そこから語られたのは衝撃の真実だった。

流石の俺もちょいと驚いた。

 

そして、話が終わった頃には俺様も大爆笑だ。

 

「じゃあなんだ!テメェはそれで突っかかってたのか!?やっべ笑いが止まんねぇヒャハハハハハ!」

 

「それ以上言うのなら斬るぞ。」

 

「っと…クク、英雄様を起こらせるわけにもいかねぇからなぁ。ま、これ以上俺様に何か言われたくないなら出ていけよ。

これでも忙しいんでな。」

 

俺様は用は済んだだろとハクメンを追い出すようにシッシと手を振る。

ハクメンも長居する気は無いのか立ち上がり、出ていこうとする。

 

しかし、扉の前で立ち止まる。

 

「テルミよ。」

 

「何だ。」

 

「もしも帝が帝具に染まってしまえばどうする?」

 

「テメェと同意見だ。これで分かるだろ?」

 

「…そうか。ならば、私は何も言うまい。

それと、シュウイチロウには気を付けろ。

最近の奴は、何かがおかしい。」

 

「シュウイチロウ…分かった。」

 

シュウイチロウ=アヤツキ、か。

 

気にする事と言えば…帝が帝具を手に入れたときの奴の反応か。

 

ハクメンはそれを言った後に出ていった。

 

シュウイチロウについては、語ることが少ない。

というより、何を話せばいいのやら。

接点がねぇ。

 

だが、気にしておくか。

帝具に対して並々ならぬ感情を感じ取ったしな───

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

「…そうか。」

 

俺はそこで目を覚ます。

そして、起き上がり窓を見ると外はまだ夜だった。

 

「……ああ、そうか。お前か(・・・)。」

 

怒りを抱いた。

ここまで強い怒りを抱いたのは久方ぶりだ。

 

そうか、お前か。

お前だったんだな、シュウイチロウ。

 

「あの、くそ野郎…俺様を出し抜いてでもしたのがこれだと?」

 

負の遺産。

そうとしか言えない物を理解した俺はやり場のない怒りを壁を殴ることで発散した。

 

帝具人間 イザナミを造り上げたのは、奴だ。

 

間違いない。

 

あの時代、あのメンバーでアイツだけが危うさを持っていた。

いや、違うな。

 

「元から、そのつもりだったってか…『大魔法使い』の親とは思えねぇ外道ぶりだ。」

 

外道である俺が言えることではない。

だが、そうとしか言えない。

 

人間の死をねじ曲げて造り上げたのが化け物なんざ、あっちゃならねぇ。

それも、帝国でだ。

 

「今更気付いて何になるってんだ、こんなの…だが感謝するぜ。」

 

まるで、ハクメンが過去から俺に不甲斐ないと言っているようだった。

苛立つ。

そういうのはラグナちゃんにやってくれねぇか。

 

苛立ちのせいで眠る気にもなれない俺は扉がノックされるのを聞き取る。

 

誰だ、こんな遅くに。

 

『私だ。』

 

…確か、『エンブリオ』のメンバー…名前はレリウスだったか?

そいつの声がした。

 

「……どうぞ、お入りください。」

 

ハザマとしての面に入れ換える。

 

そして、扉が開き、あの不気味な仮面野郎が入ってくる。

 

「失礼する。」

 

「何の御用です?レリウス=クローバーさん。」

 

「少し聞きたいことができたのでな。」

 

「ハァ、聞きたいこと、ですか。」

 

「ああ──

 

 

─イザナミの事についてだ。」

 

俺はその言葉を聞いたとき、エスパーかと疑った。

 

だが、それはない。

 

何となく、こいつはそれじゃねぇ。

 

「イザナミさんについてですか?いやぁ、何も語れる事は──」

 

「そう取り繕わなくていい、ユウキ=テルミ。」

 

「──。」

 

コイツ、俺の名を…?

イザナミが教えたのか。

 

だが、バレてるなら一々取り繕う必要はない。

俺は早々にテルミに切り替える。

 

「テメェ、マジで何の用だ?」

 

「二度も同じ事を言うのは無駄だと思うのだが?」

 

「…イザナミについて、だったな。」

 

「ああ。私が聞きたいことは簡単だ。」

 

レリウスは淡々と事実を確認するように聞いてきた。

胡散臭い笑みを張り付けて。

 

 

 

「シュウイチロウ=アヤツキの実験が成功したようなのでな。」

 

 

 

爆弾を放り投げてきた。

 

今と過去の因縁が更に交差する。

俺はそれを感じざるを得なかった。


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