テルミが壊す!   作:ロザミア

40 / 48
昔々、その者神の如き力持つ者なり。
その者、帝国を離れ何処かへ去れり。

「それでも、いつか、神様は私達を救ってくださる。」

その者の名は──


幼い皇帝の怒り/全てを断ち切る神の剣

 

「それは……真か。」

 

深夜、努めて冷静に、しかし震える声で余は臣下であるブドーに先程聞いた言葉は本当かどうかを確かめる。

 

『ワイルドハントが無差別に民を殺している』

 

それを聞き、拳に力が入る。

跪くブドーは顔を上げぬまま

 

「まごうこと無き真実であります、陛下。」

 

「どうするよ坊ちゃん。俺様は─」

 

 

 

「滅せよ。」

 

気づけばそう言っていた。

ブドーとテルミはキョトンとした表情だ。

いつも余に対してニヤケ顔のテルミのその表情は新しかった。

 

「国の…余の民を不当な理由で殺すことは許されることか?明日に希望を抱き、今を生きる民が殺されて良いと?答えよ、ブドー。」

 

ブドーは顔を引き締めこちらを確と見つめる。

 

「断じて許されるものではありません。陛下の民を汚す事は陛下を汚す事と同義……悪人であれば話は別ですが。」

 

「うむ……テルミよ。」

 

「なんだ。」

 

「力を取り戻したようだな。」

 

「ああ、まあな……これでようやく本格的に動けるぜ。」

 

「ワイルドハントを始末するのは難しいか?」

 

「欲まみれの猿共が俺様に勝てる訳があるか。」

 

「ならば、すべき事は一つ。余は命じたぞ、嵐であろうが何であろうがそれを引き裂く剣であると余に証明せよ。立ち塞がる敵は潰せ!」

 

「御意に、陛下。」

 

余の言葉にブドーは言葉で従うことを余に伝える。

 

「クク、中々面白くなってきたじゃねえか皇帝ちゃん。俺様の精神修行が効いたとみえる。」

 

「あれは堪えた……だが、乗り越えた。余はもう立ち止まる訳にはいかぬのだ。」

 

テルミの精神修行は地獄そのものだった。

余が想像していた大臣に支配された帝国、それをそのまま視せられた。

目を閉じても見える光景は心を抉るには十分だった。

 

奪われ、餓えに苦しみ朽ちていく民。

その様を見て高笑いする大臣一派。

 

吐き気のする光景だった。

 

何としてもその未来にならぬようにしなければ。

 

テルミ達は余に多くのことをしてくれた。

傀儡の状況から反抗出来る状況にまで持ち込んでくれたのだ。

感謝してもしきれない。

余一人では何も出来ぬ。

皇帝である前に一人の童であることは余に重い枷であった。

 

……だが、それでも。

童であろうと、剣を取らねばならぬ時がある。

 

その時が迫っている。

余には力はない。

だが、頭を使うことは出来る。

 

「改めて言わせてもらう。余は操られていた愚か者として……そして、一人の皇帝として、償いをしたい。

だが、余は大臣たちと戦うにはあまりにも無力だ……

故に余の仲間(・・)であるお主らに力を貸して欲しい。例え余が死ぬとしても、それは全てを終わらせてからでなければ死にきれぬ。しかし、それでも頼もう!」

 

 

 

「余と共に戦って欲しい。見返りなどないふざけた頼みだが……聞き入れてくれるか?」

 

今一度、確認を。

そして、余の決意を示そう。

 

国のためならばこの命、捨てて見せる。

 

その決意を。

 

「今更だろ、と言うには決意が違うわな。

いいぜ、国を救いてぇんなら、皇帝(・・)!俺様を利用して見せろ!全てを利用して、勝ち取れ、結果をなぁ……!」

 

「……私は陛下の盾であり、剣であります。

しかし、命じられぬからといって傍観をしていた愚者……どうか私をお使いください。

このブドー、御身の為ならば死ぬことも厭いませぬ!」

 

「……うむ。忠義、感謝する。

余の代で終わりにするぞ、大臣の悪行、そして今の在り方を。」

 

余が苦しむのは構わぬ。

いくらでも責め苦を受けよう。

だが、民が苦しむのは間違っている。

 

それを正し、地盤を整えることが出来たのならば。

余は喜んでこの首を差し出そう。

 

皇帝として、やらねばならぬ責務だ。

 

父上、母上。

遅れたかもしれませぬが……この役目、果たします。

 

「では、吉報を期待するぞ。」

 

会合の夜はそれで終わった。

牙を研ぎ澄ます日々がまた始まる。

 

少しでも、大臣に怪しまれぬ程度に指示を出し、抑えれるところを抑える日々。

……時間の問題かもしれぬが。

 

何はともあれ、武神の力……期待してもよいのだろうな、テルミ。

 

 

 

 

・

 

・

 

・

 

 

 

 

夕方程に適当に見回りを終えて部屋に戻る。

 

黄色のフード付きのコートを着る。

帽子は適当に部屋にぶん投げる。

 

「テルミ。」

 

「ああ?……んだ、テメェか。」

 

部屋の扉を開けられ、名前を呼ばれたのでそちらを見るとやかましい女(冥王)が立っていた。

何が楽しいのかニタニタと笑み作ってやがる。

 

視線をランとセリューに頼んでおいたことが記されたメモに遣る。

 

「行くのか?」

 

「止めるか?」

 

「する意味もなし、好きにするがよい。だが……さっさと終わらせた方が身のためであろうな。」

 

「テメェに言われなくても雑魚相手に長ぇ時間割く余裕はねぇよ。」

 

あんまり長く外にいるのは面倒だ。

 

とっとと終わらせて、とっとと帰る。

そんでもって、何か甘いもんでも食う。

そろそろストレスで倒れそうだ。

 

とりあえず、向かうべき場所へ向かうべく動く。

 

「豚の様子は?」

 

「息子の仲間の……ドロテアだったか?其奴に何かさせているようだったな。まあ、そこは直接聞くがよい。」

 

「そうかい、じゃあな。」

 

「…苛立ちが隠せておらぬぞ?」

 

「あ?潰すのをテメェにしてもいいんだぜ?」

 

「ほう、出来ると?」

 

「逆に聞くが、出来ないとでも思ってんのかクソアマ。」

 

「……クク、そう憤るな。無理をするでないぞ、テルミ。」

 

「うるせぇクソが。」

 

これ以上話しても無駄なので足早にその場を去る。

 

品定めするような視線を背中に受け、苛立ちが募るが我慢だ。

いちいちキレる程ガキじゃねぇんでな。

 

……だから嫌いだ、あのアマは。

 

ブドーはブドーで珍しく頭働かせて動いてやがるし、怠いが働いてやるか。

 

 

城下町へと出る。

向かうのはおいたが過ぎる餓鬼共の溜まり場だ。

 

「ハザマ……いえ、この場合はテルミさんとお呼びすればよいのですね。」

 

「……今度はテメェか、ラン。」

 

「ええ、これまでの情報提供に感謝します。」

 

今日はかったるい。

知り合いと予定もないのによく会う。

 

しかも、今回は共同作業になるかもしれねぇ奴ときた。

 

ラン。

豚の息子、シュラの仲間……ワイルドハントのメンバーであるチャンプを探していたイェーガーズのメンバーであり、俺の協力者。

 

「来るか?」

 

「ええ、お供させてください。」

 

「……意外だな。」

 

「何がですか?」

 

「まさか俺様を信用してるとは思ってなかったぜ?ランちゃんよぉ。」

 

「義理は通す人だとは思いましたので。」

 

「ケッ、子供を殺して回るシリアルキラーの情報なんざ簡単に手に入るっての。……一人でやるか?」

 

「そうさせてください。私が倒す、いえ……殺さねばならない。」

 

「ヒヒヒ!」

 

思わず笑う。

ここまで分かりやすく憎悪の目をしてるのは初めて見る。

 

だが、それで良い。

気分が良くなったので助言と忠告でもするか。

 

「あのデブの帝具は『快投乱麻 ダイリーガー』。

6つの球の帝具でな、一つ一つに属性が付与されていて投げると発動する帝具だ。

投げる必要があるがその分強力だ。」

 

「……本当によくご存じで。」

 

「色々と情報があるんでな。それと、ラン。

確実に殺せ、息の根を止めるまで手を緩めるんじゃねぇ。」

 

「!そのつもりですよ。……ついでといっては何ですが、頼んでも良いですか?」

 

「一応は聞いてやるよ。」

 

ランはありがとうございますと言うとその内容を話し出す。

 

少し考え、面倒だと思う。

だが……まあ、少し位は叶えてやるか。

 

「仕方ねぇな、その分殺ることは殺れ。」

 

「はい。では、頼みますね。」

 

「おーおー、せいぜい気張れや。」

 

そうして、俺達は日が沈む城下町を歩く。

急ぐ必要もない。

どうせ、そこにそいつらは居る。

 

 

 

 

・

 

・

 

・

 

 

 

 

辿り着いた場所に、俺は一人(・・)立っていた。

 

ワイルドハント詰所……詰所ねぇ。

ま、肥溜めの巣窟ってことで一つ……

 

中からぶっ壊すか。

目の前の無駄にでかい扉(ハリボテ)を蹴破る。

 

「何だぁ?」

 

「うぉ……!な、なんだ!」

 

「うわぁ、すごい唐突!」

 

 

「……一人、二人、三人。んだよ、三人かよ…遊びに来たってのに残り三人が居ねぇんじゃな。

しかも、ゴミ三人……ついてねぇなぁ。」

 

試運転にもならねぇだろ、これじゃよぉ。

 

コスミナ、エンシン……後チャンプ。

『月光麗舞 シャムシール』

『大地鳴動 ヘヴィプレッシャー』

ま、普通より上って位か。

 

「テメェ、ここが何処か分かってんのかフード野郎。」

 

「でもでも、ここまで来るってことは私のファンな可能性が!過激なファンですよ!」

 

「あり得ねぇだろこんな物騒なファン!」

 

「……漫才は良いかよぉ雑魚ども?」

 

「…さっきからゴミだの雑魚だの、かなり強気じゃねぇか、ええ?そこまで言うなら俺達の遊び相手になってくれんだろうなぁ!」

 

「なに思い上がりしてやがる?」

 

勘違いをなさってらっしゃるエンシン君に心の底から嘲笑ってやる。

エンシン君は沸点が低いのかとてもキレ顔、チョロくて笑うわぁ。

 

「遊びじゃなくて、蹂躙だ。俺様が、テメェらを蹂躙するなぁ。」

 

本当はこんな奴等相手に使うのは勿体ねぇが、そういった慢心でいくのも癪だ。

ここは普通に出し惜しみ無く殺る。

 

そしたら面倒が三人片付く。

最高じゃねぇか。

 

「何分持つかなぁ……何 秒か!ヒヒヒヒ……!」

 

ウロボロスを出す。

 

─壱式 弐式 参式 肆式

 

「さあ、楽しめよ、ゴミども!」

 

ウロボロスが俺の中へと入り込んでいく、ズブリ、ズブリと。

痛みはなく、されど苛立ちはより強く。

 

抑えていたものを、解放していく。

 

鎖が入って鎖が砕けていくなんざ、どんな謎々だ。

 

─伍式 陸式 漆式

 

力が溢れる。

ドクン、と心臓が脈打つ。

 

そうだ、この力だ。

これが、『力』だ。

 

─捌式

 

これを馴染ませる。

俺様の体に、再度!

 

 

 

 

「─武神、憑鎧」

 

 

 

 

体全体を覆うように鎧が形成されていく。

この感覚だ、この閉じ込められたかのような感覚。

この力という力が脈動していく感覚!

 

大気が震える。

歓喜だ、これは紛れもなく、俺様自身の歓喜!

 

そうだ、俺様は、俺は──我は。

 

 

「我は剛、我は力、我は全!

 

 

我が身は全てを断ち切る神の剣──

 

 

─我は建速須佐之男、推して参る。」

 

 

我は、武神である。

者共、消え失せるがよい。




次回、『MUST DIE』

その者の名、建速須佐之男。








正直、早いかと思ったけど、でもこれで誰でも『これ間違いなくBLAZBLUEのラスボスじゃん』と思う筈です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。