テルミが壊す!   作:ロザミア

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最初は1つ託された。
次に5つ託された。
最後は、何を、託そうか。


終わりへ向かう

話を終えて、一息つく。

今でも鮮明に思い出せる記憶だ、語るくらいどうってことはない。

んで、その語った相手の皇帝はというと…

 

「何という悲劇か…!人の世を守る帝具が人の世を侵すなど…!」

 

こんな風に泣いてやがる訳よ。

今更泣かれてもな。

もう過ぎた過去のことだ、変えることはできねぇ。

 

それに、まだ一つあるんだからよ。

語ることでもねぇが…一応頭の中でくらいは整理しておこう。

 

シュウイチロウ…あの野郎は、俺の見てないタイミングで帝の死体を入れ換えた。

どうやったのかは知らねぇが…大方レリウス辺りだろうな。

そして、人の体をベースに帝具の魂を入れることで完璧な帝具人間を作ろうとした…人でありながら、人の領域を逸脱した力を持つ者。

それこそ、化け物って奴だろうにな。

 

そして、長く眠らせることで魂を定着させようってのも分かった。オカルト過ぎるがな…

 

出来上がったのは一人のどちらか分からねぇ化け物。

自ら死を自称するナニカの誕生って訳だ。

俺様は認めねぇ…もう認める訳にはいかねぇ。

 

元々、この話をするなら覚悟も決めちまおうと思ってたところだ。この際、冥王も始末する覚悟も決める。

形と記憶を持つだけの偽者だ。

 

アイツは死んだ。

それが真実だろう。

 

「テルミ、よくぞ話してくれた…それで、その…冥王は倒すのか?」

 

「当たり前だろ。あれはてめぇの治世にゃ邪魔になる。」

 

「そうは言うが、出来るのか?」

 

「馬鹿にしてんのか。一回殺した奴をもう一回殺すくらい訳ねえわ馬鹿が。」

 

「そうではない…余にはその時代は話でしか理解できぬ。

当時の治世も、人の顔も、流行りの遊びでさえな。

だが、貴様は違う。人は思い出を抱えている…貴様はその思い出をもう一度殺そうとしているのだ。貴様の心は、二度殺して尚も平気なのか?」

 

「…なるほどな。てめぇの言いてぇ事は理解したぜ皇帝…クク、ククク…!」

 

「な、何を笑うか!余は貴様を想ってだな…」

 

「なんてことはねぇよ。」

 

俺の心だとか、何だとかはどうだっていい。

気に食わねぇことだらけだ。

 

こうしてガキにすら心配されるのも、体にガタが来てるのも。

 

あいつが、生きていることも。

 

「他の奴に任せるだとか言うんじゃねぇぞ。あれを殺していいのは俺様だけだ。殺したからこそなんだぜ、皇帝ちゃん。

生き返っちまったんなら、もう一度殺さなきゃならねぇ。

あの馬鹿が振り回されて大事を起こす前に殺してやらなきゃならねぇんだよ。」

 

「…貴様がしなければならないのか?」

 

「理屈じゃねぇってヤツだ…合理的に考えたら、俺様じゃなくてセリュー辺りでもいいんだろう。前の俺なら任せて他の仕事でもしてた、間違いねぇ。」

 

事実だ。

合理的に動いてたのは俺だ。

合理さを捨てたのも俺だが…

 

「だが、俺にやらせろ。俺様にこそやらせろ…これは俺様の問題だ。」

 

「…言っても聞かぬことは分かっておる。だが、テルミよ…」

 

 

 

「死のうとしてるのは看過できぬな。」

 

 

 

「…別に死ぬ気はねぇよ」

 

鋭くなりやがって。

皇帝の視線は嘘を許さないとばかりに俺に刺さる。

 

「体が限界なのだろう。何となくだが、分かるのだ。」

 

「…俺様もこの時代に要らねぇだろ。」

 

「悲しいことを言ってくれるな、テルミ。ここまで来たのだ、これからも余を支えてほしい。」

 

「待てや、まだこき使う気かよ?」

 

「当然であろう!余はまだ子供だぞ?貴様とブドーしか信頼に足る人物が居ない以上、消えてもらっては困る。」

 

「おいおい…そこはテメェで人材発掘しろや…」

 

分かってて言ってやがるし、なんだってんだ。

消えたっていい存在だってのによぉ…俺様は異物だぞ?

この世界から消えるべきタイミングを失い、言われるがまま動いてた亡霊。

 

正直、この件が終わり次第俺みたいな奴は消えるべきだ。

過去の存在(クロノファンタズマ)は要らねぇ。

そろそろ、でしゃばる意味もなくなるってことだ。

寧ろ、これ以上いたら歪みが広がりそうだ。

 

ワリィな皇帝。

これは決めたこと、やらなきゃならねぇことだ。

テメェや始皇帝、昔の奴等が居たから俺様はまだ国を主軸に考えられた。

だが、これ以上生きてると、俺様も歪んじまう。

 

何処かで歯車を止める時が来る。

ずっと回ってても仕方ねぇ、輪廻って奴に還るときが来るのさ。

だから、決めた。

 

俺様がやらなきゃならねぇことは─

 

 

 

─この世から、武神と俺を含めた過去の存在を消すことだ。

 

それでようやく、俺様は終われる。

それまでは、共犯者で居てやんよ。

 

「聞いておるのか、テルミ!」

 

「うるせぇ、ガキは寝る時間だ。さっさと寝やがれクソガキ!」

 

「ぐむ…分かった。また明日…明日も頼むぞ、テルミよ。」

 

「…ああ。」

 

皇帝が寝るのを確認せず、さっさと部屋から出る。

 

精神体のまま、(アーキタイプ)に戻ることなく、やらなきゃならねぇことをしに行く。

 

シコウテイザー、それが改造されてるのを俺様が黙認すると思ってんのか豚野郎。

それをどうこうしていいのはアイツの血筋だけだ。

 

身の程知らずには教えてやんねぇといけねぇよなぁ?

ク、クククク…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、シュラにも困ったものじゃ。」

 

地下に来てみれば、やっぱり居やがった。

ちっせぇ女だが、中身はかなり歳食ってやがるな。俺様には分かる。

 

シコウテイザーを改造してやがるのもこいつか。

確か、ドロテアだったな。ワイルドハントのメンバーで錬金術士…だったか?

 

まあ、どうでもいいことだ。

 

「それにしても、まさかここにあの人形師が居ようとは…」

 

ん?

レリウスのことか。

そうか、アイツも有名っちゃ有名だからな。

天才は大変なこった。

 

「やはり、一度取り入るべきかのう。そうすれば、妾の大願成就への道も…」

 

座り込んで独り言を喋るドロテアの言葉は別に意味もなかった。

じゃ、殺るか。

 

「いかん、考え事に耽っておった…」

 

「そうそう、考え事に耽るのはよくねぇな~」

 

「っ!?な、なんじゃ!?」

 

少しの明かりしかないこの空間で、ドロテアの目の前にぬるりと現れる。

さっさと殺すのもいいが…憂さ晴らしに付き合ってもらおうかねぇ。

 

「なんじゃ、お主は…?」

 

「別になんだっていいだろ幽霊だよ、ユーレイ!」

 

「幽霊じゃと?何を非科学的な事を…帝具による擬態か何かか?」

 

「非科学的なもん使っててよく言うぜドロテアちゃーん。

ま、頭が固くなってそうなのも無理はねぇか、ババアには理解が及ばない存在ってことで認識してくれや。」

 

「バッ…やかましいわ!何故…」

 

「何で知ってるかってそりゃテメェ…幽霊は何でもお見通しなんだぜぇ?」

 

「…まさか、本当に幽霊だと?」

 

「そうそう、幽霊はいいぜぇ?何でも知れる。

そんでもって不変の存在だぁ…テメェのような女にはある意味目標みたいなもんだろ?」

 

「お主、どこまで知っておる!」

 

おお、かなり焦ってやがるねぇ。

いいね~こういう反応は!

最近だと冷めた反応ばっかだったから新鮮でいいわぁ。

 

「見りゃ分かるぜぇ?こう見えて人を見る目ってのは養われててな。老いから解放されたい…そうだろぉ?」

 

「…そうじゃ。だが、それは誰もが一度は考えることであろう!妾はそれを叶え、永遠の若さを手に入れたいだけなのじゃ。」

 

「分かるぜぇ、永遠の美!女なら誰もが夢見るもんだ。

なら、俺様もテメェを手伝えるぜ?」

 

「何じゃと?」

 

「言っただろう?俺様は幽霊だ。テメェなんぞよりも長生きしちゃってるわけよ。そこで!俺様の知識をくれてやる。

永遠の美…それに近づく一歩、いや二歩を俺様は知ってる!

どうだ?悪かねぇだろ?」

 

「じょ、条件はなんじゃ!」

 

ドロテアは焦った様子で俺様に近づいてくる。

大願成就に近づきたいんだなぁ、分かる分かる。

俺様すっげぇ分かるわぁ。

 

「対価ねぇ…」

 

「大願成就の為ならば何だってする!錬金術を用いればお主の体さえ作り出せよう!どうじゃ!?」

 

「あー、器ね!俺様も、不自由だからなぁ。器なら、かなりいいねぇ…」

 

「そうであろう!」

 

 

 

「ま、もう高性能なの持ってんだけどよ。」

 

「な…妾の中に!?」

 

ババアの中に入る。

当然ながら、精神体の俺様は他人にも入り込むことは可能だ。

 

だからよぉ、こういったことも出来るわけだ。

 

─テメェの心、精神…それが対価だ。

 

「何を…ぬぁっ!?」

 

中から攻撃をすることで、直接精神にダメージを与えられる。

そう、どうしようもない程硬い相手とかにはこうしていた。

だが、この精神攻撃もウロボロス程楽じゃねぇ。

何せ、精神体である俺様が他人に入り込む訳だからな。

当然ながら精神を守るための防衛が始まるわけだ。

本人の預かり知らぬことではあるがな。

 

アーキタイプにそれはねぇ。

あれは純度100%の何もねぇ器だ。

何にだってなれる器。

 

「な、んじゃこれは…まさか…!」

 

─アホだなぁテメェは。ワイルドハントの連中はこぞって馬鹿だなぁ!ヒャハハハハハハ!信じちゃってかっわいそぉ!

 

「今すぐ妾の中から出ろ!妾を殺すことは人類の損失じゃぞ!?」

 

─あー?何言ってやがる?テメェのような猿一匹死んで人類に損失なんざあるか。そもそも人間殺してる時点でテメェも俺様も同じ穴の狢なんだよ。分かるか?分かったら哀れな自分に苦しみながら死になぁハハハハハ!

 

「がっ…嫌じゃ、死にたくない…!妾は…!」

 

─はい、しゅーりょー

 

「ぁ…───」

 

精神を殺す。

それはそいつの生きる意思も消すってことだ。

ショック死って訳じゃねぇ。

後は、枯れて死んでいくだけの肉の塊だ。

 

……

………

 

ドロテアの中から出て、シコウテイザーを確認する。

 

「…始皇帝。テメェのこれも、好き勝手される時代か。」

 

椅子に座り、自分の影を見る。

 

人の形をしたナニカが緑色の目を光らせている。

それが本当の俺様。

仮初めの躯がなけりゃ、こんなにも惨めだ。

 

クク、ククク…

 

「俺様も、さっさとそっち行ってりゃよかったかもな。

そうすりゃよ…俺様は、こうやって朽ちてかなくてよかったのかもなぁ。」

 

自嘲するかのように笑う。

 

だが、それもそろそろ終わる。

ワイルドハントもイェーガーズも、大臣も、冥王も。

 

…武神も。

 

「全部終わらせる。ぶっ壊して、潰して、砕いて…そしたらよ。

俺様も、消えていいだろ。」

 

シコウテイザーは何も言わない。

あの野郎の自慢の兵器は喋ることなく佇む。

 

「なあ、始皇帝。俺様は、正しかったのか?

外道で屑でどうしようもねぇ俺を拾ったテメェは正しかったのか?」

 

「ずっと考えてきた。

俺様は、どうすりゃ終われるんだってよ。」

 

「この罪の清算が終わったらか?…なら、俺様はいつまで清算すりゃいいんだ?アイツらを殺してまで、国を続けて、国のために、邪魔なやつ殺してきて。馬鹿みてぇにテメェの約束守ってきて…どうすりゃ、俺様は終わっていいってのを考えてきたんだよ。」

 

「ようやく、ようやく見つけた…分かったぜ。」

 

 

 

「全部、テメェのところに持っていく。

テメェらとあの世で馬鹿騒ぎしてぇ…」

 

天井を見上げる。

どこまでも、暗い。

 

俺様は、一人だ。

 

それが似合うってのは分かってる。

だがよぉ…

 

俺様は、テメェらと馬鹿やるのが一番楽しかったんだぜ。

 

そろそろ、行きてぇなぁ…終わりに。

 

夜が開けるまで、俺はずっと天井を見ていた。

その更に上に、いるんじゃねぇかと思いながら。

らしくもなく、感傷に浸り続けた。




過去の幻影は過去にしかいられない。
今を変えられる反則をしても、その心は過去のまま。
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