テルミが壊す!   作:ロザミア

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ヒャッハー!

久し振りですねぇ、続きの投稿だぁ!


『死を運ぶ者』

タツミ奪還の作戦は簡単だ。

そもそも、奪還するだけなら誰かがエスデスとブドーを足止めしてタツミを助ければいい。

問題はその足止めを誰がして、誰が逃げ場の活路を開くかだ。

 

ラバックのクローステールは無い。

城の中を探せばあるかも知れねぇが今の警戒状態の城に近づくのは霊体の俺も避けたい。

人目がどこにあるか分かったもんじゃねぇ。

皇帝ちゃんも殆ど付き人はいるだろうな。

 

「マインはタツミの救出とブドーとエスデスを相手取る奴の援護だ」

 

「やってやろうじゃない」

 

「パンプキンなら余裕だろ。…さて、誰がどれを相手するかだが…」

 

「エスデスは、私がやる」

 

アカメが申し出て、俺はそれに頷く。

この中でエスデスとマトモに戦えるのはアカメしかいねぇ。

パンプキンは火力はあるが小回りは効かねえからな。

 

となると…

 

「なら、ブドーは俺とシェーレか」

 

「はい」

 

「…だが、ブドーは殺すな」

 

「足止めだから当然でしょ?」

 

「そりゃそうなんだが…隠すのも面倒だな、先に明かすぜ。

俺とブドーは共犯だ」

 

「「「「!?」」」」

 

ナジェンダは全てを知ってるが、他は知らねぇから驚かれた。

というかアカメに至っては村雨の切っ先を向けてきやがるもんだから焦った。

 

「待てや。俺の共犯ってことは分かるだろ?」

 

「…裏切りは無しだぞ」

 

「当たり前だろ。裏切るつもりなら作戦参加もしねぇしそもそもラバックを見捨てるだろうが」

 

「平然と言ってるけど俺からしたら冷や汗ものだからなそれ」

 

「ラバック、お前は奪還作戦では裏方だからな」

 

「分かってる。けど、何すりゃいいんだ?」

 

「それはだな─」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトレイドのタツミの処刑及びインクルシオの破壊。

観衆の見守る中でそれを行うは私とエスデス。

処刑される本人は観衆を見て顔を顰めた後に諦めるわけでもなくただじっとしていた。

 

テルミに出会わなければただの賊として見なしていたのだろう。

だが、今の私にとってこの男は大臣を排し陛下を真の王とするための存在だ。それに…将軍としての素質もある。

全てが上手くいくとは思ってはいないがもし互いが五体無事であれば…ありかもしれぬな。

 

「…青年」

 

「!ブドー大将軍…!」

 

エスデスがまだ来ていないからこそ、話し掛けてみようと思った。

青年は私と面を向かっての会話でも物怖じはしない。

気に入った。

 

「もう一人の男は脱獄した」

 

「ラバが…?…どうして、教えてくれるんだ?」

 

「私もまた、陛下のためにすべき事をしている。ハザマがエンブリオを裏切り、脱獄した男とナイトレイドへ行った」

 

「ハザマが…そうか、アンタも大臣を倒そうとしてるんだな」

 

青年、タツミの言葉に頷く。

だが、私には将軍としての立場がある。

まだ捨てるわけにはいかぬ。

 

「タツミといったな。お前を助けるためにナイトレイドは来るだろう。その時…私は容赦はせん」

 

「…将軍、だもんな」

 

「左様。敵ではないが、そうしなければならない」

 

大臣に加減をしたと見破られれば私だけでなく他の協力者にも危険が及ぶ。それは避けなくてはならない。

そして何より、私は全力で戦わなければならないのだ。

昨日の晩、セリュー・ユビキタスからの提案は面白いものであった。賭ける価値はあるだろう。

後は裏方のレリウスがどこまでやれるか…

 

そうして、処刑は始まった。

エスデスがやって来て観客はまだかまだかと期待の視線を突きつけてくる。

タツミは仲間が遅れないと信じているからか表情に陰などない。

 

そして、いざ剣で首をはねんとしたその時。

 

けたたましい音と共に処刑上の壁が壊れた。

否、撃ち抜かれた。

観客は混乱に陥り、逃げ惑う。

陛下も安全のために奥へと向かわれた。

堂々と入ってくるとは、本来ならば命知らずの愚者と断ずるところだが此度に関しては度胸ありと評価しよう。

 

ツインテールの桃髪の少女を筆頭にアカメ、シェーレ…そして黄色のコートを纏い、フードを被った男…テルミか。

以前のセリュー・ユビキタスからナイトレイド二人を救出した際の服装と合致している。

なるほど、ハザマはやめたということか。

 

「タツミ、帰るわよ!」

 

「っ…!俺は最高の仲間と彼女を持ったぜ…!!」

 

歓喜に震えるタツミだが、依然として拘束されたままだ。

そして、私もセリューと共に立案した作戦を遂行するためにただで帰すわけにもいかん。

何より、この程度の苦行を越えられねば帝国の革命など夢のまた夢。

アドラメレクを構え、すべき事をする。

 

いつも通りの私だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスデスがタツミの傍に居やがるな。

となるとアカメが引き付けてくれることを願うばかりだが。

 

それを気にする余裕はないか。

パンプキンの火力ならアドラメレクとも対等に渡り合えるが今回は援護を頼んでるんだ、無理はさせられねぇ。

何より、ガス欠前に救出しねぇと計画はパーだ。

 

ていうかよぉ、やる気に満ち溢れてやがるじゃねぇかよブドーちゃん?

テメェ今すぐにでも俺たち殺す気迫だぜ。

なるほど、そういうことかい…

 

「シェーレ、深追いはするんじゃねぇぞ。ウロボロスとエクスタスがありゃ引き付けは楽に出きるんだからな」

 

「分かっています。しかし、この気迫…流石は大将軍ですね」

 

「あの野郎マジで来やがるな…仕方ねぇ、俺様も少しやる気だしてやるかァ」

 

アカメは…速いな、もうエスデスとの交戦を始めてやがる。

しかも気色悪い動きしやがって…速度を落とさないままウネウネと接近していきやがる。

 

ブドーも下手な接近はしてこねぇ。

パンプキンの射程と威力を計ってるんだろうな。

なら、先手は貰うぜ。

 

「伸びろ」

 

「ムッ…」

 

ウロボロスを伸ばし、牙がブドーへと迫る。

弾くことを敢えて放棄したブドーは横へと跳んでウロボロスの牙から流れるが…

 

接近しないと話にならないんでな、強引に行くぜぇ?

シェーレを片腕で抱いてからウロボロスの頭を固定した位置まで跳ぶ。

 

「あの、ハザマさん?」

 

「あ?んだよ」

 

「やる前に一言欲しいのですが…」

 

「んなこと言ってる場合かメガネ。下らねぇこと言ってんじゃねぇ!」

 

今更過ぎる事を言われたから適当に流しつつ挟み撃ちの形から攻めるが、流石はブドーちゃんだ。

俺のウロボロスとナイフ、シェーレのエクスタスの間合いを把握したようで軽々と避けやがる。

合わせてやってるとはいえ連携自体は悪くねぇはずなんだが如何せん相手が悪い。

ついでのようにアドラメレクの杭や拳を振るってくる。

 

「ヌゥン!」

 

「手加減しろや!!」

 

「生憎と貴様の計画に付き合いはしても手を抜く気はない。

貴様の部下に文句は言え!」

 

「あんッッッのクソ犬がぁぁぁぁ…!!」

 

セリューの仕業か、クソが!!

何企んでやがる…?

離反したとは考えにくい、となると何かを察知したのか?

 

そうこう考えてる暇もなく、アドラメレクから稲妻が走る。

 

「まずは一撃、倒れてくれるなよテルミ」

 

「テメェマジで乗ったのかよ…」

 

「集中くらいはしてほしいのですが?」

 

「しとるわ。今にもぶっ倒れそうだぜ俺様はよぉ?」

 

迸る放電が俺達に襲い掛かるが、アドラメレクの雷の欠点は直線的な所だ。

所謂、見てからの回避が出来はする。

相当な集中力と反射神経が要求されるがな。

昔よく回避訓練と称してぶちこまれた記憶が甦る…

 

エクスタスでガードしたシェーレは事前に対策された手袋を渡してある。

何であるか?変態仮面に作らせたんだよ。

あの変態、喜んで作りやがった。

 

「これがなければ軽く死ねてますね」

 

「俺様に感謝しろ、死んでもな」

 

「考えておきます」

 

そこは頷けや、テメェもセリューみたいに反応がつまらねぇな。

それはそれとしてアドラメレクの残量はまだまだといったところか。長期戦になるか…そう思った矢先、放電して隙を晒した─接近自体は儘ならないが─ブドーに一筋の光線が一直線に向かう。

 

「パンプキンか!ヌゥ!!?」

 

「マイン!」

 

あぶねぇ、俺の真横掠めたぜ?俺じゃなきゃチビってるところだ。

ブドーは咄嗟に受け止める構えをしたが威力を計り損ねていたこともあってか吹っ飛ばされて壁を突き抜けていった。

 

続けて放たれた二射目がアカメと交戦しているエスデス目掛けて向かっていくがエスデスはこれを体を後ろへ反らす事で回避する。

上半身狙ったのが仇にはなったが…これで逃げられるぜ。

 

「うぉっ…と、流石マインだ、狙いバッチリだな!」

 

「誰に物言ってんの?当然でしょ!」

 

まあお熱いことで、そういうのは二人だけの時にしちゃくんねぇかな。ぶち壊したくなるからよ。

パンプキンによって拘束が解かれたタツミは直ぐ様インクルシオを取り返すが…一瞬だけ手を離したな、何か仕掛けられていたか?

遠くにいるせいか上手く見えねえな。

 

いや、もしかするとそういうことか?

だが…そうなると都合が良い。

ブドーはまだこちらに復帰してねぇ。

なら、今のうちにかける言葉をかけとくか。

 

「おいタツミィ!!」

 

「ハザマ?」

 

「テメェならやれる。インクルシオの限界…先をテメェならぶち抜ける筈だぜ。テメェの意思を、インクルシオに伝えな!」

 

「俺の意思…ああ、分かった!!」

 

これでいい。

これで俺様の計画はより磐石になる。

タツミにゃ悪いが少し侵食を受けて貰う。

インクルシオはプロトタイプ…最初の鎧型帝具だがそのスペックは上位に位置するだろう。

そして…プロトタイプ故に危険種の魂が反応しやすい部類だ。

だから俺は三代目の時は使わせなかったんだが…今考えりゃ適合者を探しておけばあの悲劇は回避出来たのかもしれねぇな。

…いや、今それを考えてもそれこそ今更か。

 

「インクルシオォォォォォォ!!」

 

その叫びが限界を超える鍵だったのか。

はたまた既に条件は整っていたのか。

インクルシオは一つの限界を超えた。

鎧姿ではあるが、その兜は異質そのもの。

まるでインクルシオの元になったタイラントそのものだ。

ああ、それでこそだ。

 

やはりテメェは局面を変えうる駒になった!

 

「ヒヒヒ…そうだ、不条理を、理不尽を壊せ!ふざけるなという怒りだ!それこそがテメェの力になる!!」

 

タツミが脚に力を込め、地を蹴る。

瞬間、エスデスの背後へと蹴りを放たんとするタツミの姿が目に映る。

速い、タイラントの力をほぼ引き出していると言ってもいい!

恐らく、そこから繰り出されるパワーも桁違いな筈だが

 

「ふっ!」

 

「チッ…!」

 

蹴りの力を剣で反らしたか…

エスデスから振り切るにはある程度の痛手が必要だ。

となると、ブドー復帰がまだな今が絶好のチャンスか…

 

いや、俺とタツミ、アカメの三人がかりならリスクは高いが有利に戦えるか…?

 

そう考えた俺は一歩を踏み出そうとし──

 

 

 

 

 

 

─突き刺すような殺気を感じて振り向き様にバタフライナイフを振るった。

金属のぶつかる音が響く。

腕に伝わる振動が視認するよりも早く誰が振るったものかを鮮明に伝える。

 

ああ、なるほど…混線状態にして、更なる戦禍を起こすか。

 

「よう、駄犬」

 

「お久し振りと言えばいいんですか、テルミさん」

 

見下すように顔を見れば、何処と無く焦点が合っていない目を見て奥歯を噛み締める。

セリュー…てめぇ。

 

「何度目のイザヨイ使用だ」

 

「あなたの方が詳しいのでは?…私が望んだ道ですよ、師匠」

 

こいつに剣を即興とはいえ実戦レベルまで叩き込んだのは俺だ。

イザヨイを使いこなせないと意味がないからな。

こいつのセンスは凄まじいの一言に尽きる。

曇りを消した瞬間に頭角を表したといってもいい。

 

「俺に殺される覚悟があるって事だよなぁ、前に立つってことはよぉ」

 

「しない癖に良く言いますよ。…最後の御指導お願いします」

 

「…まさか、辿り着いたのか」

 

イザヨイの真価、その境地に。

こいつならと期待したが…まさか本当に辿り着いてくれたのか?

そうとなりゃ、勝率が上がる…エンブリオの奴等を叩きのめすのだって訳はねぇ。

 

「なるほど、だが…私を忘れて貰っては困る」

 

ブドーの威圧感ある声が聞こえる。

チッ、だが今やることか?

今やらないといけねぇ事なのか、これが。

今やっても戦いが激化するだけで………?

 

 

 

いや、待て。

 

 

 

「テメェ、セリュー。まさかとは思うが」

 

「はい、このタイミングしかありませんでした。

このタイミングでしか、盤上の駒を減らすことは出来ない

あなた達が後は逃げるというタイミング、強者の集まる広い舞台、大臣が皇帝様と避難して無駄な視線がない今。

嬉々として来てくれますよ─」

 

 

 

 

 

 

「やはり俺の思った通り最高の餌場だ!帝国は!!」

 

地面が一瞬揺れたかと思う程の衝撃が処刑場の中心に起こる。

違うな、降ってきやがった。

セリュー、そうか。

そのつもりだったのか。

テメェが俺様すら利用する作戦…それはこいつをこの時に始末しねぇと計画が終わると判断したからか。

だからこの無理矢理な作戦を思い付いた。

そして、そいつの性格上来ない訳がねぇ。

 

見事落とし込んだ訳だ。

 

巨体が立ち上がる。

純粋な力を感じる程の圧。

厳格さを感じさせるのがブドー、冷徹さを感じさせるのがエスデスならこいつは暴力だ。

秩序も摂理も鎖にもならない純粋な暴力。

 

計り損ねていたが…なるほど、こいつは確かに今仕留めるべきだな。

こいつ、強くなってやがる。

 

「我慢できん!ナイトレイド、イェーガーズ、大将軍まで…選り取り見取りではないか!?感謝するぞ…今生に!!

始めようではないか、そして堪能しろ─」

 

獣がごとき笑みを浮かべ、俺達を選別するかのように視線をやる。

暴力が来た。

秩序なき恐怖、暴虐の化身が来た。

 

 

 

 

 

「純粋な力を!!」

 

【エンブリオ・狂犬】アズラエル

 

敵味方全てを喰らう、故に狂犬。

そいつが弱肉強食をもたらしにやって来た。




【エンブリオ】
アズラエル
組織の実質的No.2に位置しているが、命令を聞くことはない。
力こそがこの世の全てであり、弱い者は死ぬのみ…弱肉強食を信条とするが故に敵だろうが味方だろうが容赦はない。
テルミを除くエンブリオメンバーは一度アズラエルとやりあっているが冥王すら無傷とはいえ引き分け、レリウスに関しては負けとなっているが策に散々はめられたとのこと。
秩序なき暴力の体現者。
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