テルミが壊す!   作:ロザミア

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胸騒ぎの朝

今日は、何をするのだったか。

そう考え、思い出す。

また呼ばれてたんだったか。

 

あの女に。

内心、悪くはないと思ってしまっている自分が居るのに苛立つ。

俺様はもう人間じゃねぇってのに何を無駄なことを。

 

……チッ。

 

目の前の女に悪態をつく。

 

「テメェ、俺様も忙しいんだよ。」

 

「ほう、どのようにして忙しいのだ?」

 

「答えてもつまんねぇだろ?」

 

「余に答えろと申すか。」

 

暇なのかからかいにも乗ってくる女に俺は苛立つ。

毎度そうだ。

周りからすれば俺は、ユウキ=テルミは恐怖の対象に近い。

 

曰く、皇帝家に取り憑いた亡霊。

曰く、いつの間にか帝国に居る疫病神。

曰く、破壊をもたらす神の使い。

 

どれもこれもふざけた内容だ。

勿論、良い噂もあるっちゃあるが、こっちはあまり浸透しねぇ。

 

見た目が問題なんだろうよ。

だってのにコイツは俺を見ても何とも思わずに、寧ろ好意的に接してくる。

 

うざってぇ。

 

「余の護衛で外を気にしなければならないから忙しい。

どうだ?正解であろう。」

 

「死ねこのアマ。」

 

「正解のようだな。」

 

「何も言ってねぇだろうが。」

 

「其方のその態度が証明だ。」

 

「……チッ、気に食わねぇ女だ。

何でそう俺に構う?俺はテメェの婚約者か何かか?

護衛だろうがよ。」

 

女は俺のその言葉が気にくわないのか目を細める。

 

「余が暇だから其方を呼び、其方はそれに応じて来た。お主こそ、この時間が悪くはないと思っていよう?」

 

「ああ?寝惚けてんじゃねぇよ。」

 

「…まあよい。だが、たまには素直になれテルミ。

そのままではつまらん男で終わりだぞ?」

 

「……ケッ。」

 

「……ところでだな。」

 

「んだよ。」

 

女は、からかうように笑みを浮かべ、顔を近付けてくる。

多少驚くが平静を保つ。

 

 

「─何時まで泡沫の夢に溺れている愛しい男よ。起きよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─……夢か。」

 

ベッドで目を醒まし、上体を起こしてから状況を整理する。

昨日は確か……ああ、そうだ。大臣と交渉して城での寝泊まりをナイトレイドの情報と引き換えに出来るようにしたんだったな。

後はアイツのくだらねぇ企みへの参加。

 

ま、本気でやる気はねぇがな。

 

アーキタイプは便利だが、人間としての機能全てを持っているせいか夢を見てしまう。

お陰で、良いのか悪いのか分からねぇ夢見ちまった。

 

「……ウロボロスの完成は遠いか。

後何人だ……帝具使いの魂を喰らわせるにしてもそう楽じゃねぇ。裏からこっそり始末できる奴にも限りがある。それに……完成しても真の力を引き出すには鎧がねぇ。」

 

何にしても最後にまで整えなきゃならねぇのはウロボロスの覚醒だ。

魂を得てもウロボロス単体としての上限を元に戻すだけで、真の力を引き出すには程遠い。

何処かに散ったはずだ……探すのは手間だが予感がある。

 

この混沌としていく帝都に、あらゆる可能性が集まるという予感が。

ならその予感に従ってみようじゃねぇか。

 

もし予感的中なら、その時こそ俺様は全盛期、始皇帝の時代の俺様に戻れる。

 

無間蛇双なんて名はテメェも嫌だろう?

なあ、ウロボロス。

 

テメェの帝具としての大半の力を失ってんのはそのどっかへ散った力のせいなんだからよぉ……。

 

「……ま、何にしても今やるべきなのはアイツらとの情報共有だな。折角内部での邪魔が出来るんだ、存分にやらせてもらうぜ。」

 

俺は首の骨を鳴らしつつ、着替えなり何なりを始める。

 

……チッ、めんどくせぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ってことは朝食は出る。

出ないところはあるがここだと必ず出る。

何故ならば城だからな。

 

当然ながら俺も朝飯を食ってんだが……ジロジロと視線がうざい。

 

「……ハザマ?」

 

「…はい?なんです陛下?」

 

何でか皇帝と大臣の朝食の席に同席させてられている。

そんな中、不可解な物を見る目で俺を皇帝が見やがる。

大臣もだが。

 

「い、いや……お主の朝食の皿に……余の見間違えでなければなのだがな。

 

茹で玉子しか……見えんのだが?」

 

「見間違えでは、ないですねぇ。」

 

「私がいうのも何ですが、偏りすぎでは?

茹で玉子ばかりでなく、何か他のものも……」

 

「貴方は私に死ねと?」

 

「そこまで言ってませんが……」

 

こいつらは何も分かっちゃいねぇ……

熱弁したいところだが、ここでやるのは礼儀に欠ける。

仕方無いから少しだけ言うに留めるか。

 

「私は昔から茹で玉子が大好きでして。

これだけで生活してきたことなんて数えきれないほどありますよ。いわば茹で玉子は相棒…いや、世界とすら言っても良い。神とも言えるのでは?」

 

「そ、そこまでか。」

 

「そこまでどころか越えますね。」

 

「「ええ……」」

 

二人して引くのはやめてくれねぇかな。

俺様はどっぷり茹で玉子に染まってんだよわりぃか。

 

「私のことはもういいでしょう?早く食べますよ。」

 

「そうだな。」

 

「……陛下、食事が進んでいないようですが…」

 

「む?あ、ああ……すまぬ。」

 

そうして、また静かな食事の時間になり、過ぎていく。

……少し計画を早めるか。

そのためにもナイトレイドに寄るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナジェンダの元へ向かうべく、歩いているが、1つ困ったことになった。

 

「貴方、本当に盗んでないんですか!?」

 

「だから、私は何も取ってませんってば!」

 

何でか知らねぇが警備隊と思わしき女に捕まって、窃盗犯でないかを疑われているようだ。

先程ここらで謎の窃盗が起こったと言う目の前の女に俺は内心苛立つ。

ふざけんなっての。

 

「ウゥ"ゥ"……」

 

「ほら、コロも疑ってます!犬は嘘つきませんよ!」

 

「…犬?パンダとかでなく?」

 

「コロは誰が見ても犬ですよ!ね?コロ。」

 

コロと呼ばれた犬は頷く。

てかこいつ……ヘカトンケイルか?

 

ってことはこの女は帝具使い…何だって警備隊の一員に過ぎねぇ奴がんな代物を持ってやがる。

 

なるほど、異様に警戒してる理由が分かったぜコロちゃん?俺様のこと、覚えてるんだなぁ?

 

「……コロと言うんですね、可愛らしいですねぇ。

どうしても私が盗んだというのなら盗まれたものの詳細を教えてくださいよ。」

 

「風船ですよ。」

 

「はい?」

 

「女の子の風船が盗まれたと聞いたんですよ!

黒服の人に盗まれたと聞きましたよ!

貴方は証言の黒服の人と一致します!」

 

「待って、本当に待ってください!

それはおかしい!私が仮に風船を盗んだとします。

持ってないのはおかしくないですか!?」

 

「……コロ?」

 

「バウッ!バウッ!」

 

「コロは盗んだといってますよ!」

 

こんの糞犬ゥ……!意地でも俺様を犯人にする気か。

ぶっ壊してやりてぇが、落ち着け、ここでバレたら全部パーだ。

 

「いや、なら風船を持ってるという証拠!証拠は?

私が持ってないと何処かに行ってしまうような風船を持ってないのはおかしい!隠すにしても益もない!」

 

「……むぅ、本当に違うんですか?」

 

「いや何度も違うと行ってますよ!仕事もあるのにこう止められると困ります。

今日は大事な会議の時間が……私がクビになったらどうしてくれるんですか?」

 

「私が悪いのはおかしくないですか?」

 

「じゃあ、悪くなくて良いですから一刻も早く行かせてください!これで茹で玉子が食べられなくなったら死にますよ!」

 

「死ぬ!?茹で玉子で!?」

 

「茹で玉子が食べられなくなる生に生きる価値なんてありませんよ!……あー!?時間が迫ってる!もう、私は行きますからね!誰がなんと言おうと!」

 

俺はもうヤケになって走り出す。

ふざけんな、これ以上付き合ってられるか!

 

クソ、無駄足すぎんだろぉ!

 

「あ、待ちなさい!……行っちゃった。」

 

「クゥーン……」

 

「でも、怪しかったけどなぁ……うーん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……帝具ヘカトンケイル…敵に回すと間違いなく厄介だ…。」

 

逃げ切ったと安堵してから考えをまとめつつナジェンダの元へ急ぐ。

この情報、持っていると良いが……ただでやるか?

いや、それこそ疑いを深める。

ここはあくまでビジネスによるラインを保つべきだ。

 

そうしねぇと困る。

 

朝の帝都じゃあの姿かも知れねぇが、あの糞犬、夜の活動はどうしてやがる?

間違いなく、喰ったんだろうよ。

あの大顎で、人間を。

 

始皇帝の野郎、変な機能も付けやがって。

 

「……っと、着きましたかね。」

 

急いだお陰かすぐに着いたのでさっさと入る。

 

誰かいないかを確認するが…

 

「げ……ハザマがいる……」

 

……お転婆な女が居たな、くそが。

何で会って早々嫌な顔されなきゃならねぇ。

俺様は清廉潔白、誠実な人間なのになぁ。

 

「げっ、とは失礼な。色々と情報を持ってきたというのに……それも命懸けの日々を過ごしてね。」

 

「あっそう。ボス呼べば良いのね。」

 

「あの~その扱いの仕方は泣きますよぉ…私の何処が嫌なのかを教えてくれてもいいじゃないですかぁ。」

 

「胡散臭い、以上。」

 

……んの野郎……。

マインはさっさとナジェンダを呼びに行ってしまい、再び暇になってしまった俺はそこらに腰掛けることにした。

 

そして、考えを本格的に纏め始める。

 

「敵に回すと厄介な奴は他にもいるが……」

 

前にウロボロスで魂を喰った時と八房と言った時のアカメの反応を思い出す。

舌打ちをする。仕方無いくらいに面倒な帝具だからだ。

 

「死者行軍 八房…あれが敵なら下手に人員を当てると手痛い反撃を貰うだろうなぁ……他にもあるが…持ってるだろうな。」

 

やはり、此方も帝具使いを増やすべきか。

シコウテイザーの中にあった帝具ならば利用可能だ。

後は適応する人物を見付けりゃいい。

だが、その時間を割く暇があるか?ねぇな。

大臣との前の会話で嫌な情報を聞いちまったからな…。

 

「ハザマ、来てくれたのか。」

 

「…ん、ええ、まあ。少し厄介な情報を得たので。」

 

ナジェンダがマインと共に戻ってきたので立ち上がって一礼をする。

俺が一挙一動する度にあのピンクアマの胡散臭い者を見る目がより顕著になるのは何でだ。

 

「厄介なだと?」

 

「ええ。

エスデス将軍……でしたっけ。

彼女、戻ってきますよ。」

 

「…チッ、予想より少し早いな。

少しどころではないな。しかし、何処でそれを知った?」

 

「大臣に聞きました。」

 

「…は?」

 

「アンタ、まさか!」

 

「いやいやいや、構えないでください!

ちゃんと貴女方に利益ありますよ。あっちにはあまりありませんが。」

 

ピンクアマが構えやがるから必死に弁明する。

売り込みをしてより内部の情報を得れるようにしただけだと。

 

「本当でしょうね?」

 

「撃たれたくありませんからね。

何なら、他にも先程見た帝具使いの情報もあげますよ。」

 

「……マイン、武器を下ろせ。

どうやったかは知りたいが、それは置いておく。

聞かせてくれるか、ハザマ。」

 

「…変なことしたらぶっぱなすからね。」

 

「やだなぁ、信用してくださいよっ。

……ええ、まあ、ヘカトンケイルの帝具使いを見ましてね。警備隊の者と思われます。」

「ヘカトンケイル…」

 

「ボス、ヘカトンケイルって?」

 

「あまり知らん。名前だけは知っているが……」

 

「ヘカトンケイル。

生物型の帝具であり、核を破壊しない限りは活動可能。犬の姿をしていましたが、さて、戦闘になるとどんな化け物になることやら。」

 

「……詳しいな?」

 

訝しげに俺を見るナジェンダに俺はまあね、と答える。

そりゃ完成に立ち会った奴等の一人だしな。

詳しくねぇ方がおかしい。

 

まあ、言ったら絶対にホラ吹きと思われるから言わねぇが。

 

「ところで、夜にまた?」

 

「ああ。女としても、一般的にも外道に当たる奴だ。」

 

「……それならば、お気をつけて。

ヘカトンケイルは厄介ですからね。

それで、メンバーは?」

 

「シェーレとマインに任せる予定だ。」

 

「何よ、文句あるの?」

 

「いえ、ありませんが……」

 

何だ、何か胸騒ぎがしやがる……。

こういう時のコレはあまり無視できねぇ。

ここは変装して見張るか?

 

もしかすればコイツらとあの警備隊の女がやり合うかもしれねぇからな。

 

ウロボロスの事がバレても困るが…その時はその時だ。

 

「…お気をつけて、とシェーレさんにも伝えておいてください。

ナイトレイドの帝具使いが減るのはこちらにとっても痛手ですので。」

 

「前々から思ってたけど、アンタの目的はなんなの?」

 

「帝都の平和~なんて言葉信じます?」

 

「無理。」

 

「ならいいですよ。ですが、忘れないでいただきたい。」

 

俺は笑みを深め、マインに近付く。

マインは警戒するが、お構い無しに優しさを込めて警告する。

 

「な、何よ?」

 

「情報というのは貴方達、大臣達にとって帝具以上の武器となる。それをお忘れなく。」

 

「……そんなの分かってるわよ。」

 

「ならいいんですよ~、じゃ私はこれで。」

 

俺はまた一礼をしてから出ていく。

さて、夜までどうするか……仕方ねぇ。

皇帝ちゃんに聞きてぇこともあるし聞くか。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

皇帝として、忌々しいオネストを側に置きながら務めている余は、しかしあまり仕事に打ち込めないでいた。

話は聞いているし、大臣の発言を聞き漏らすことはしない。

 

だが、どうしてか、昨日見た夢が頭を離れない。

 

朝食の時も、呆けておった。

あの夢、あの姿は一体何なのか。

 

詳しくは覚えていないし、声も覚えていない。

だが、あの姿だけは鮮明に脳に刻まれている。

 

「……。」

 

 

─……、……?

 

 

「…思い出せぬ。」

 

「どうかなさいましたかな?」

 

「…いや。」

 

何かを聞かれた。

夢に干渉する帝具?

いや……あれは……

あの荒ぶる力を持つ者は。

 

正しく、()と畏れる程の力を、感じたのだ。

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