ルクリリといっしょ!   作:底抜け三角錐

3 / 4
本場のフィッシュアンドチップスはそれなりにおいしかったです。

しかしハギス、お前はダメだ。

今回も拙い文章ではありますが、お付き合い頂けると幸いです。


ランチタイムでいっしょ

4限目の授業が終わり職員室で野暮用を片付けると、私の足は自動的に学生たちの集まる食堂へ向かう。

 

目的地につくと私は雄たけびを上げる自らの胃袋をたしなめながら、本日のメニューと書かれたプレートに目を走らせる。

 

 

 

 

 

 

フィッシュアンドチップス

 

フィッシュパイ

 

うなぎのゼリー寄せ

 

ハギス

 

魚のマーマイト煮込み

 

 

 

 

 

それを読み終えると、私の口から思わずため息が漏れる。

どの日も似たようなメニューだ。

 

 

 

学園艦に乗り込んだ当初はここの料理のことはあまり気にはならなかった。

私はもとよりイギリス料理など口にしたことなかったので、その独特なテイストを楽しむことができたのである。

 

 

 

しかしそれが連日ともなれば話は別である。

 

 

 

 

 

 

日本食が恋しい。

私の脳がそう訴える。

 

 

 

 

 

だが、ないものねだりをしても仕方がない。

 

夕食は学校から与えられたマンションの一室で自炊し、好きなものが食べられる上に、

朝も洗練されたイングリッシュ・ブレックファーストを楽しめるので問題はないのだからと自分に言い聞かせて私はフィッシュアンドチップスの列に並んだ。

 

 

 

順番がまわってくるまでの間、西洋風の建築がなされた食堂を見回す。

 

西洋の建築を模したこの広い建物のある一方には優雅にナイフとフォークでランチをする上級生が、はたまたまた一方には慣れないイギリス料理の連続に、グロッキーになりながらそれでもなお先輩を見習って美しく食事をする一年生などが見て取れた。

 

 

私の教える三年生のクラスの生徒曰く、

最初の一ヶ月を乗り越えればここの食生活に慣れるらしい。

 

 

 

あんまり慣れたくないなと心のうちで呟きながら料理を受け取ると、私は食堂の隅っこの席に足を向けた。

 

 

 

 

 

郷に入っては郷に従えと私が周りの生徒がそうしているように

ナイフとフォークでぎこちなくフィッシュアンドチップスを食べながら今日の夕飯は何にしようかと思案する。

 

 

それが目の前の食事に失礼であると感じながらも私の頭の中はそのことでいっぱいだった。

 

 

「先生、ご一緒しても?」

 

私は手を止め見上げると、ルクリリがすました顔で私の前の席に座ろうとしていた。

 

 

「もちろん構わないとも」

私が声に出すや否や、彼女はさも当然のように席についていた。

 

「といっても、もうお昼は友達と食べちゃったんですけどね。」

 

といって彼女は後ろのほうをチラッと見る。

 

わたしもつられてそちらのほうを見ると、すでに食事を終えティータイムにしているグループと目が合った。

 

すると向こう方は慌てて目をそらした……と思ったがまたこちらの様子をうかがい始めた。

 

 

 

やはり教師と生徒がこうして一対一で食事をしているのは異様な光景なのであろう。

JK好き教師などとあらぬ噂話が出回らなければよいが。

 

 

 

「友達との食後のティータイムはいいの?」

私は彼女らの視線から逃げるようにルクリリの顔へ目のやり場を戻す。

 

「今日は断ってきました」

私が何故だろうという顔をすると、

 

「その……ほら先生一人だったし」

彼女は誰かに言い訳をするようにそう言った。

 

 

 

なるほど、私が一人で寂しく食事をとっている姿がなんとも無残だったのであろう。

「そうか、気を使わなくてもいいからね」

 

 

 

しかし彼女は眉をひそめキュッと体を縮めて、そういうわけではないですと呟いた。

 

 

 

 

私は正直まだ聖グロの雰囲気には慣れていない。

 

それ故、生徒と同じように紳士淑女の多いこの学校の職員に、気軽に一緒に食事がとれるような同期や先輩がいない。

 

そのため彼女のこのような心遣いは非常にありがたい。

 

しかしながら先程から周囲から視線を感じる。

私のために彼女を好奇の目にさらすのはあまり気持ちの良い事ではなかった。

 

 

 

さてどうしたものかと思慮しながら口元へ料理を運ぶ。

 

そんな私の心配をよそに彼女はニヤニヤと私の食事風景を見つめていた。

 

そんなに面白いものでもないだろうに、もしかしてなにかついているのだろうか。

 

多少の食べづらさを感じながらまた料理を口にする、心なしか先ほどよりもおいしく感じる。

 

私は思わず彼女につられて笑みを浮かべる。

なるほど、誰かと食事を共にするというのはいいものだ。

 

 

 

食べているのは私だけだが。

 

 

 

あれから少し沈黙の時間が流れるも、相変わらずルクリリは口も開かず私のことを見ているばかりだ。

 

「あーーー、勉強はどうだ?」

私は静寂の時間と視線に耐えきれなくなって、とりとめもない事を口に出してしまった。

その様子はまるで思春期の娘に何を話していいかわからない父親のようなのであろう。

 

 

 

「ふふっ、いきなりですね」彼女はクスクスと笑う。

 

 

「これでも紅茶の名前を授かっていますので、学業もきちんとこなしています。」

これ以上ないくらいのドヤ顔でそう返事が返ってきた。

 

「それが聞けて安心したよ、ルクリリは少しアホっぽいから」

そのドヤ顔にムッとした私はから、かいついでにそう呟く。

 

それを耳に入れたルクリリはジト目でこちらを睨みつけてきた。

「先生って時々失礼なことを口走りますよね、ヒップと一緒にダージリン様に躾てもらったほうがいいんじゃないですか?」

 

 

 

ヒップ、というのは戦車道履修生のローズヒップという子のことである。

かの交通事故の後、私の担当しているクラスで再会したのだが非常に落ち着きがない。

 

廊下は走る、紅茶はこぼす、カップは割る。

そのためおしとやかな子が多いこの学校では少し有名でだ。

 

先程ルクリリが言ったようにこの学校で紅茶の名を授かるには、戦車道の腕だけではなく

淑女らしさや学業成績の良さも必要なのである。

 

 

そのため落ち着きのないローズヒップが紅茶の名を授かっているということは、よほど後ろ2つが輝いているのであろう。

そう考えながら彼女の春休み明け学力テストを採点していたのだが、結果は散々なものだった。

 

授業中も落ち着きがないので対策は現在考え中だ。

 

 

さてどうしたものか...

 

 

「先生?」

ルクリリがこちらの顔を覗き込んでくるのが目に映る。

 

「おっと、すまん」

私はその声で思慮の世界から現実の世界へと引き戻された。

 

私はフィッシュアンドチップスの最後の一口を頬張る。

 

 

そういえば、生徒たちは夕飯はどうしているのであろうか?

 

 

 

そう疑問に思った私はすぐさまルクリリに問う。

 

「ああ、夜もこの学食が開いていますよ。メニューは殆ど変わりませんが」

 

そう答えると、彼女はさらに

 

「稀にコンビニや外食で済ます生徒もいますが、聖グロではそういう行為はタブー視されています。」と続ける。

 

なるほど、ではここの生徒は毎日三食イギリス料理を嗜んでいるのか。

 

 

それがこの学校の淑女のありかたなのであろうが、私だったら裸足で逃げ出すであろう。

 

 

 

 

そうだ

 

 

 

私の頭の中でひらめきが生まれる。

「ルクリリは恋しい食べ物ってある?」

 

その言葉を聞いたルクリリは突拍子のない質問に驚いた顔をしたが、

すぐにその口をへの字に曲げうーんと唸りながら解答を考える。

 

 

しばしの沈黙の後、ルクリリの顔がぱっと晴れたものになる。

相応しい食べ物が見つかったのであろう、私がその答えを求めると

 

 

 

 

 

「もつ煮込みです」

 

 

 

 

 

と満足げに答えた。私は思わず口に出して笑ってしまう。

「なっ、なんで笑うんですか!!」と不満そうに彼女は声を荒げた。

 

年頃の女の子の答えとしては地味すぎる。

 

 

「いや、聖グロの生徒として、一人の女子高生としてアウトでしょ」

そういうところがまた、彼女の親しみやすさを生んでいるのだが。

 

 

「悪かったですね!おっさんくさい食べ物が好みで!」彼女はぷくーっと頬を膨らませて腕を組む。

いや、そこまで言ってない。しかし本当に表情がコロコロ変わってみていて面白い。

 

 

 

彼女は納得いかなそうにズイッとこちらにせまると、

「それで、それがどうかしたんですか?」と聞き返した。

 

「今日の夕飯を決めかねてたから、ルクリリの言った食べ物にしようと思ってさ」私は素直に自白する。

 

「今日の夕飯はもつ煮に決定しました。」

 

そう言うと、彼女はいいなぁと呟きうらまやしそうな顔をすると私に向き直ってこう言った。

 

「では、今晩お邪魔してごちそうになります」彼女は続けたぺこりとお辞儀をする。

 

「だめです」私が即座に断りを入れると、彼女は「ケチ」とでも言いたげに頬を膨らませる。

 

 

彼女を部屋へ招き入れ夕食を共にするのは非常に魅力的な話である。

それがかなえばどんなに楽しい時間を過ごすことができるであろうか。

 

 

しかしやはり教師と高校生という関係上、一応踏み込んではいけないラインは線引きしている。

それに人の目がある、下手な人物に目撃されでもしたら私の社会的立場は崩落するであろう。

 

 

 

わたしがそれをどう言葉にするかと考えていると、

すかさずキーンコーンカーンコンというビッグ・ベンの鐘を模した予鈴が私に助け舟を出す。

 

それを聞いたまわりの生徒たちはいそいそと片づけを開始する。

 

 

 

 

「あ、私いかなきゃ、この話考えといてくださいね」

彼女はそう言いながら席を立つとこちらに手を振りながら去っていった。

 

 

 

 

 

私はその後姿を見送ると、次の授業のため

周りの生徒と同じようにいそいそと食器を片すのだった。

 

 

 

 

それも、今日帰りに買って帰るもつ煮込みの材料を考えながら。




おじさんっぽい食べ物が好きだとギャップでなお可愛い…可愛くない?



カワ(・∀・)イイ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。