出てくる艦娘、絡む組み合わせは作者の鎮守府に存在している、よく組み合わせる艦娘となっております。
○○ちゃん出してください等は、容易に作者の心を抉り壊す危険があるので、控えてくださると幸いです。
とある泊地にあるとある鎮守府。
その鎮守府は少しだけ有名であった。
戦果の善し悪しでも通称ブラック鎮守府と呼ばれる汚職が原因でもない。
うまいのだ。飯が。
金曜日のカレーはもちろん、洋食に和食、中華にスイーツまでも、すべて絶品。外れと呼ばれるメニューが一つもない。鎮守府を訪問する来客は必ず食堂に寄る。皆、出された飯に感嘆し、満足そうに帰ってゆく。
帰還した後、誰もが口々に謂う。
『あそこは我々の補給艦だ』と
――――――――――
「提督、お疲れ様です。お風呂にしますか? ご飯にしますか? それとも……」
口元に手を添え、小さく微笑む。
「ふふっ、冗談です。どちらも用意できていますよ」
鳳翔の冗談にいまだに慣れることができない提督は顔を少し朱くする。他の艦娘たちに見られれば数日はいじられると、早く熱を冷まそうと手で顔を仰ぐ。こほん、と咳をひとつつき、通常の状態に戻る。
「先にご飯にします。今日の献立は何ですか?」
「私の得意な和食です。皆さんもう食べ始めていますよ」
食堂の扉を開け、提督を招く。
焼かれた魚のいい匂いが鼻を掠める。つい顔が緩むのは仕方がない。
木を基調とした食堂では、すでに多くの艦娘たちが食事を始めていた。夕食の乗ったプレートには、アジの開きにほうれん草の胡麻和え、大根と油揚げの味噌汁、漬物にご飯がよそってあった。食堂へ入ってきた提督に気づいた艦娘たちは口々に話しかける。
「提督おっそーい! 島風たち先に食べてたよ!」
「もう島風、まだご飯の途中でしょ。立ち上がらないって、司令官! 今日のご飯もとってもおいしいわよ!」
「そうみたいだね」
島風と雷のやり取りに周りの艦娘たちが笑っている。
「司令官さん、お疲れ様です。あの……ここの席空いてますよ?」
「提督も座っちゃいなさいよ!」
違う席で見ていた羽黒が隣の席を勧めてくる。同じテーブルで食事をしていた足柄も一緒に勧める。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
羽黒の隣の椅子に上着を掛け、夕食を取りに向かう。
「お疲れ様です、高木さん。自分にも1つ」
「鳥坂か。ほい、どうぞ。あ、柚子つけるか」
「いいですね。お願いします」
高木と呼ばれた男は柚子を切り大根おろしの隣に置くと、鳥坂提督に渡す。
給養員である
そんな高木から受け取ったプレートには、艦娘たちが食べていたものと同じアジの開きがぷつぷつと油を出しながら中央に鎮座している。
生唾を飲み込む。
高木に礼を言うと、羽黒たちのいるテーブルへ運ぶ。
「ほんっと、いい匂いね~。私、おかわり貰ってくるわ」
「あ、足柄姉さん。私も行きます」
足柄と羽黒が席を立つ。太るぞ、という言葉は飲み込み、見送る。
「さてと、いただきます」
手を合わせ、箸を取る。
「やっぱアジからいかないと」
ふっくらとグリルで焼かれたアジは少し冷めたのか、湧き出ていた油が納まり、香りだけでご飯が進みそうな匂いを運んでくる。アジの身をほぐすため箸を押し付けると、油がじわりと浮かんできた。
何も付けずに一口。
干物の濃縮された旨味が口全体に広がる。
「うまぁ」
つい漏れる言葉におかわりを貰ってきた足柄と羽黒が頷く。
また一口、もう一口。アジと米がどんどん減っていく。
温かい味噌汁にも手を付ける。大根と油揚げの組み合わせは定番だろう、落ち着く味にほっと息をはく。染みた大根は歯を使わずとも砕け、油揚げも同様に旨味を吸い、噛むとじわりと口に広がる。
「私、この具の組み合わせが、とても好きです」
「わかるわ。これに大根の葉を入れてもいいわね」
「高木さんか鳳翔さんにリクエストしとこうか」
温かくなった口に次はほうれん草の胡麻和えを放り込む。甘めの味付けをされているため、ほうれん草の苦みとマッチし、これもうまい。すりごまの風味と食感が単純な味付けを飽きさせない。
再びアジに手を付ける。次は大根おろしと共に食べる。さっぱりした口当たりは暑い夏にはとても合う。柚子も垂らし、米と一緒に口に運ぶ。柚子の香りが鼻を抜け、大根とは違う酸味のある爽やかさがとてもアジに合う。いつの間にかなくなっていた米を貰いに行き、食べる。ただひたすらに。
味噌汁を飲み干し、最後にたくあんを食べる。
「たくあん勝手に食べて、高木さんに怒られたんだよな」
「勇気あるわね」
先に食べ終えまったりとお茶を飲んでいた足柄がツッコみ、うんうんと羽黒が笑う。
「ご馳走さまでした。うまかった~」
手を合わせ、感謝の言葉を口に出す。
「司令官さんもお茶飲みますか?」
「貰おうかな。ありがとう」
注いでもらったお茶を飲みながら、今日の出来事をしゃべり合う。
お盆食器返却口に返した後、高木に感想を言いに行く。これはもうルーチンワーク、日課である。
「高木さん、今日もおいしかったです。アジの干物でしたけど、あんな油出て、ふっくらするんですね」
厨房には高木、それと鳳翔がおり、提督の感想を聞いていた。
「あれは、焼く前に油を少し塗るんです。そうするとあまりぱさつかないんですよ」
担当したのが鳳翔だったのだろう、ふふっと笑いながら説明する。
「あと、足柄さんが味噌汁に大根の葉を入れてもいいって、言ってたな」
「まるまるひとつの大根が届いたら、出すから期待しとけ」
高木が言う。どうやらすでに葉を切られ洗われた物が運ばれていたようだ。
「さて、提督。問題です。今日のお味噌汁の隠し味は何だったでしょう?」
「え、今日の味噌汁は隠し味入りだったの!?」
驚く提督に高木と鳳翔は顔を見合わせ、いたずらが成功した様に笑い合う。
「え~と、あの……しょ、醤油?」
「まだまだですね。答えはみりんです。口当たりがまろやかになるんですよ」
「おいおい、だめじゃねえか」
茶化す高木に何も言えず、渋々敗北を受け入れる。
「……もっと精進します」
「おう。頑張ってくれ!」
「夜戦の時間だよー! 提督! どこー!」
「ゆっくりしすぎたなぁ。……さぁて、隠れるか」
川内の声が食堂まで聞こえ、よいしょと悠長に立ち上がる。
「足柄さん、羽黒、おやすみ」
「司令官さんもおやすみなさい」
「提督おやすみなさい。……見つからなかったらね」
「不吉なこと言うんじゃない」
ニヤニヤと笑う足柄とそれを見ておろおろする羽黒に提督は得意げな顔をする。
「大丈夫だ。これでも勝率は7割を超えている」
「川内姉さん、今日も夜戦は無いですよ! こ、この声は、那珂ちゃん!? あまり夜に大声は……」
これがこの鎮守府の日常である。
最後まで閲覧ありがとうございました。
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『』のなかの言葉があまり気に入らないので、他にいい言葉があったら教えてくださるとうれしいです。