絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~ 作:ゼロん
――和樹くんの記憶の一部が……ない……!?
舞園は急いで和樹の渡した手紙の続きに目を走らせる。
『オレが高校一年になった後の記憶はなんとか残っているんだが……それ以前の記憶はサッパリだ。オレが過去、何をしてきたのか。どういう才能があったのか。それすらも消えているんだ』
彼はそんな誰を信じていいかわからない状態でも、それでも舞園の心配をしてくれたというのか。自分で自分がわからない。そんな状況の中で、モノクマに殺し合いをしろと言われたというのに。
『まぁ、そんなに気にしなくてもいい。オレも過去に何があったかなんて、気にしててもしょうがない、って割り切ってるからな。これもいつも隣にいる騒がしい友人のおかげなのかもしれない』
――騒がしい友人……あぁ、信晶君のことか。
「それにしても、ぷっ……しょうがないって。全く楽観的と言うか、前向きというか……」
舞園は呆れたような納得したような複雑な笑みを浮かべ、ベッドに身体を仰向けに倒す。
『彼』にそっくりだ。前向きなところも少し優しい所も。
――本当に。
「和樹くんの方もつらいっていうのに。ほんと……自分しか見えていなかったんですね。私」
いつの間にか紙の端だ。長かったような短かったような。
彼のメッセージはこれで最後だ。
『とりあえず、さっき言った二つは胸の中にしまっておいてくれ。――最後に、「黒幕」が優位に立っているのは、奴がこの「再生学園」のことをよく知っているからだ。この施設のことについてもっとよく調べれば、生き返るための手がかりが見つかるかもしれない』
舞園は自然と首を縦に振る。
『絶対に早まってモノクマのゲームなんかに乗らないでくれ。――必ず、全員でここを出よう』
「――わかってますよ」
クスッと微笑んで読み終えた手紙を閉じた後、着信音が鳴った支給品のケータイを開く。
「あ、メールだ。差出人は……」
信晶からだった。
『おっす、舞園さん! 今日の夜にみんなで報告会を開こうと思うんだ! 特に予定がなかったら協力してくれ! byイデ』
「予定って……」
特にもう何もすることはないのだ。探索も終えたし、今までのようにダンスや歌の練習も、番組の収録も――
「する必要、ないんですね……」
そう舞園は寂しそうに一人でつぶやく。
「みんな……無事だといいんだけど」
舞園の脳裏に以前モノクマが見せた映像が頭から離れない。ステージ上に転がる舞園のアイドルグループの仲間たち。彼女たちの死を見せつけるようなあの映像を。
舞園の頭から、どうやってもその時の恐怖は消えることはなかった。
「……少し休もう」
舞園はそのまま身体を横にし、ベッドの枕に頭を乗せ、あっという間に眠りについた。
▲▲▲
そして夜。
夕食を食べ終えた信晶たちは談話室に集まっていた。
「よし! とりあえず来るって言ってたメンバーは大体そろったな」
主催者である信晶が意気込んで声を張り上げる。
談話室にいるのは信晶、和樹、大神、悠太、田上にセレス。
――メンバーは六人。
「あれ、舞園さんは?」
「え~と……もうすぐ来るって」
辺りをキョロキョロと見回す信晶に、田上がケータイを見て呟く。
「きっと、もう死体の一つでも作っているのではなくて?」
セレスがニヒルな笑みを浮かべてここにいない舞園を嘲笑う。
そんな彼女に対し、大神と信晶が突っかかる。
「セレス!」
「おい、餃子の悪魔。いくらあんたでも天使を侮辱することは許さないぞ」
「――ですが、集合時間に来ないのもかなり問題かと思われますわ。今頃、桑田君の死体でも運んでいる頃合いでしょうか」
なにせ前科があるのだから、と言いたげに前科持ちのギャンブラーが皮肉る。
「セレス……さん。いくら同級生だからって、仲間を疑うなよ」
セレスの発言にむっときたのか、悠太も敬語を途中で忘れセレスに食いかかるが、セレスはため息で彼に答えた。
「はぁ……あなたは前回のコロシアイの引き金になった人物を信用するのですか?」
「舞園だって、やりたくてやったわけじゃないんだ! ここは彼女を信用して、みんなで協力して脱出するとこじゃないのかよ!」
セレスは心底呆れたと目を細めて悠太を見る。
「――甘いですわ」
「はっ!?」
「このゲームではいかに人を疑うか。それが重視されますの。参加すらもしていなかったあなたが、知っているような口で言わないでほしいですわね」
「なんだよ……俺だって」
モノクマのゲームに参加させられて殺されたんだと言う前に、セレスは悠太にグイと顔を近づける。
「いいですこと? わたくしは、ここにいる
「な、なんだよ。誰にも信じられないって……あんたそれでいいのかよ!?」
「セ、セレスさん。あ、朝日奈君も落ち着いてください!」
挑発に乗り、セレスを掴みかかる勢いで迫る悠太。
頭に血が上った悠太と、なぜか挑発を続けるセレスに田上が声をかけるも、炎は鎮火する様子を見せなかった。
「いかに人を疑い、騙し、罠にはめ、貶めるか。それがこのコロシアイ――モノクマのゲームの本質。――『信頼』などと言うものは利用するか騙されるかの道具に成り果てる」
セレスは淡々と、力のある言葉で悠太に語り掛ける。悠太は必死にセレスの暴言を否定しようとする。信頼できなくなったら人はおしまいだと。
「――そんなことはないっ!!」
「いいえ、事実ですわ。現に、みんな騙されてここまで堕ちてきたんですもの。モノクマにいい様に踊らされて、だまし合って、殺し合って。わたくしも、自分の夢のためなら仲間でさえ犠牲にできますわ。今回も……ね」
にこっと普段見せるような笑みを浮かべるセレスだが、その笑顔はここにいる者たちにはひどく不気味なモノに受け取られた。
それを目の前で直視した悠太に至っては完全にすくみ上ってしまった。
「ひっ――」
頭にきた大神がその場から立ち上がり、トラをも射殺しそうな目つきでセレスをにらみつける。
「貴様!!」
「いくら脅されても、この生き方は変えるつもりはありませんわ」
しかしセレスは動揺する様子も見せず、むしろ嬉しそうに両手を顔の横で合わせる始末だ。
「わたくしは自分の『夢』を叶えるためなら、なんだってやりますもの。たとえ、ここを出るのがわたくし一人になったとしても――」
セレスが言い終える前に、焦った信晶がその間に両手を広げて割って入る。
「ハイハイハイ、ストップストップ!! カルシウム不足かお前ら!? セレスさんも悠太君も落ち着いて! もう少しで舞園さん来るから!」
額に冷や汗を浮かべてすっ飛んで来た信晶に対し、セレスは舌打ちをした後、すごすごと引き下がる。
「くそ……」
「和樹、舞園に最後に会ったのはお主だったな。なにか変わったことはなかったか?」
苛立つ悠太の肩に手を置き、ソファーの座る方とは反対側に寄っかかった和樹の方へと大神は顔を向ける。
「――特には。まぁ……ちょっと疲れてる様子だったかな」
「そうか……」
大神は少し心配そうに顔をうつむかせる。
「たぶん……舞園も疲れてるんだろう。ここにいるみんな、いつも平静を保っているように見えて、疲れ切ってる。なにせオレもちょっと疲れ気味だ」
「だよな、まぁ今回何も脱出の手がかり無しって言うのが一番つらいとこなんだし――」
「お待たせしました!!」
「遅れてごめんね!」
談話室の入り口から二つの鈴を思わせる声が聞こえ、一同全員が声の主の方へ顔を向ける。
「おぉ! さっきぶり舞園さん!! 相変わらず天使ですね!!」
「は、はぁ……天使って……大袈裟ですよ」
「不二咲さんも、さっきぶり! ……? どうかしたか。腹おさえてるけど……」
「はは……ちょっと胃の調子が悪くて……」
「不二咲、昼の時無理して食べただろ。少食ならそういえばいいのに」
後頭部を手でさすり、呆れる悠太。苦笑する不二咲を見ると、少し口元が緩くなった。
「よし! これで集まる予定の八人は揃ったな! じゃあ、各自、情報報告といくか!!」
▲▲▲
――報告会を仕切る信晶の元、会議は進んでいった。
そして、情報共有の結果、八人全員の部屋には凶器が置いてあったこと。談話室での新たな発見はなかったこと。談話室の探索中、モノクマに目立った動きは特に見られなかったという風にまとまった。
「そっかぁ……全員収穫は特になし。かぁ……」
「悠太君は姉の様子から特技は想像できるとして……そういえば田上さん。あなたは何か才能を持っているのですか?」
「え、あ、あの……どうして、今それを……? 言おうとは思っていましたけど……」
「簡単な話ですわ。ここにいる人たちに共通するのは、皆『超高校級の才能』を持っている人たち。なら、あなたや和樹くんも、何かしらの特技を持っているのではなくて?」
冷静な洞察力。
セレスは田上から和樹へと視線を移す。和樹は白髪に近い自分の後ろ髪を掻き、興味がなさそうに答える。
「――悪いが、オレには何の才能もないよ」
少し疑いの目線を向けた後、セレスはその鋭い視線を田上の方に戻す。
「そう……なら田上さんは?」
「あ……わたしは、動物に好かれる体質なんです」
そう田上が言った後、彼女の水色の後ろ髪から一匹の白ハトが顔を出す。
「ポッポ!? お前、そんなとこにいたのか! いつも自分から戻ってくるのに、今回は随分と長かったな! さぁ、こっちおいで――」
信晶が手を出した瞬間、白ハトが主人であるはずの信晶の指をクチバシでついばむ。
「クルックー!!」
「あいてぇぇっ!!」
「ちょ、ちょっとポッポちゃん。え……」
ハトのただの鼻息に聞こえる不機嫌そうな音に、田上は耳を傾ける。
信晶はつつかれた指をもう片方の手で抑え、痛みを誤魔化すように何度も握る。
「いつつつ……。田上さん、そいつ、なんて言ってんの?」
「え~と……ご主人の餌は不味い。固いから餌をもっと柔らかくしろって……言ってます」
周囲からプッと吹く音が聞こえ、先ほどまで真剣だった空気が変わった。
大神に至っては珍しく笑みを浮かべている。
「これはやられてしまったな、信晶」
「の、信晶君、ペットに愚痴られてしまいましたね」
「こいつ!! 昼の餌あげてから、ずっと帰ってこないと思ったら!! ストライキかこのやろぉ……! 俺より田上さんがいいのかよぉ……」
「え、え~と……」
困り果てる田上の横で、セレスがクスクスと笑う。
「まぁ、随分と安い餌をあげていましたのね。ペットに愚痴られるなんて、飼い主としてどうなんでしょう」
「あ、プッツンきた。プッツンきたよ。ちゃ~んといいのあげてますよーだ。俺は
「あなた一体どこでそれを――!!」
「お生憎様、地獄耳ですぅ~。朝の時聞いてましたよぅ? セレスティア……タエ子さん? 栃木出身だっけ」
信晶はニヤニヤと意地悪な笑みを見せる。
お生憎様、セレスの糸もプツンと音を立てて切れた。
「――あぁ? なんつった? その口ねじ切るぞごらぁ」
無言で詰め寄ってくるセレスに圧倒され、まさに道化のように逃げ惑う信晶。
「あ、ちょっと。暴力反対。言い過ぎました! すみません! 謝ります!! だから体罰は――」
セレスは一切信晶の言葉は聞かず、無言で信晶の背中にドロップキックを喰らわし、うつぶせになって倒れた後に信晶の背中に乗っかる。
「言いましたよね。――五体をバラバラにするって」
「え、ちょっとセレスさん、マジでプロレス技止めて骨がぁぁぁぁぁだっはぁぁぁぁぁぁっーーーー!!!」
見事な技の決まり具合に逆に感嘆してしまう舞園。
不二咲や悠太は痛そうと目をつむる。唯一力ずくで止められそうな大神は技を観察し、田上はどうしたらいいかわからなくてしどろもどろになっている。
彼の友人である和樹に至っては『ほぼ自業自得だろ』と手で目尻を抑えている。
――結果、誰もマジ切れセレスに手を出そうとはしなかった。
「た、助け、マジでだれか助けあぁぁぎゃあぁぁぁっーーー!!」
「のぶあきくーーん!!」
――ごめん信晶。キレたセレスは大神以外誰にも止められそうにないわ。
大神を除いた全員がそう思い、セレスの怒りが収まるまで待つしかなかった。
ちなみに閉め技から解放された信晶は土下座をして謝ったという。
「と、とりあえず、夜十一時と十二時の間は、念のため交代制で誰か二人が見廻ることにしよう。見廻る奴も、鍵がなければ誰かの部屋には入れないだろ」
「うん、いいと思う。早速順番を決めよう」
ボロボロになった信晶に不二咲が賛成し、見張りの順番が決まる。
『オマエラ、そろそろ夜10時になります。各自部屋に戻って就寝するように。おやすみなさい……』
「よし! みんな揃ってここを出よう!! 解散!!」
――こうして、情報報告会はモノクマの放送を最後に、終わりを迎えた。
▲▲▲
「……」
「どうしたの? 舞園さん」
部屋に戻った後、舞園が何かを考えこむ様子を見た不二咲が心配してきた。
二段ベッドの上の方から話しかけてくる形だ。
「えっと……私達、怒ったセレスさんを見るのは初めてでしたよね」
「あ、うん。あそこまで怒ったセレスさんを見たのはあれで初めて。やっぱり、舞園さんも……」
「はい。少し……違和感があるんです。初めて見るはずなのに……前にもセレスさんがああいう風にぶちぎれた姿を見たような気がして……」
頭の中でぼんやりと浮かんでくる教室の映像。『超高校級の同人作家』であり、同級生だった山田一二三にキレるセレスの姿。
見たことがないはずなのに……なんだか懐かしく感じるビジョン。
「デジャブ、というやつなんでしょうか……」
「う~ん……まぁ難しく考えても答えが出ないんだったら、一度保留してもいいと思う」
「……そうですね。もう遅いですし、寝ましょう」
そう言って舞園は布団をかぶる。
「おやすみなさい」
「うん、おやすみ。舞園さん」
▲▲▲
夜中、よく寝つけなくて目が覚めてしまった。
舞園は少し布団をどかし、ケータイを開閉し、時間を確認する。
「ん……まだ4時、ですか」
そして確認した後、舞園はもう一度布団を被ろうと――、
『――いやぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!』
「!?」
鏡をひっかいたような金切り声が廊下から響いてきた。あれは女性の声だ。
「舞園さん!?」
「不二咲くん!! 先に行ってます!!」
飛び起きた不二咲を置いて、舞園は状況を確認すべく部屋を飛び出す。
転ぶのも構わず走る舞園。声が聞こえてきたのは奥の方からだ。
「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……!! 嘘……こんなこと……嘘に決まってる」
舞園は走りながら必死に自分の頭の中に浮かんだ最悪の事態から、首を横に振って目を背けようとする。
『絶対にみんなで脱出しよう』
――そんなはずはない。そんなバカなことが……昨日あれだけ……!!
平和だったのに。なんてことないただの一日のはずだったのに。
その終わりに。明日の始まりにどうして――!!
すすり泣きの声が聞こえる曲がり角で舞園の足が止まる。
曲がる直前の壁には――血の跡がびっしりとついていた。
「う、嘘、こんなの嘘……」
――見るな。
舞園の頭の中で警鐘が鳴り響く。
そこを曲がってはいけない。引き返せ、ヒキカエセと。
――見るな見るな。
「止まってぇ……!! 止まってよぉぉっ……!!」
見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな、見る――
「起きてよぉっ……!!
その時、舞園が見た、いや
「ぁ……」
――血の池に転がる、田上と信晶の死体。そしてその田上の太ももに乗りかかる高里の姿だった。
「――ぁ、あ、あ……」
叫び声も出ない。
出たらどれだけ楽だったことか。この感情は……一体どうすればいい。
「起きて……ねぇおきて、おねがい。返事して……わたし、なんでもするからぁ……」
高里は着ている純白の寝間着が汚れることもためらわず、田上だったモノにすがりつく。もう聞こえていないって、わかっているはずなのに。
「――今までイジワル言ってごめんなさい、わがまま言ってごめんなさい、おせっかいなんて言ってごめんなさい。もうちさとをうっとおしいなんて絶対に言わない。だから、だからだからぁっ……!」
田上の血が流れていた腹の部分から高里の寝間着が紅く染まる。赤く、どこまでも赤く。
まるで今の高里の心の有様を示すように。
「ねぇ……ちさと! ちさとったらぁ……!!」
「たかざと……さん。もう、ちさとさんは……」
しかしもう高里は――
「お願い……目を……あけ、てよぉ……!!」
田上以外の何も見えていなかった。
「――――レ、……ぃ」
「え――?」
すると一瞬、
「だい……すき」
「――あっ」
田上は確かに……笑った。
――この状態でそれができたのは、奇跡としか言いようがない。
そして田上は最期の力を振り絞ったのか、目を閉じたままその手をゆっくりと持ち上げ、高里の頬にわずかに、優しく触れて
「ごめん、ね……?」
「ちさと……あな――」
――力なく、その手を血だまりの中に落とした。
「あ、あぁ……あああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」
――慟哭。
高里は人目もはばからず、ただ、ただ泣き叫び、その美しい金色の髪を掻きむしり……最後には『絶望』した。
「ぁ……あ、あはっ、はは……はははっ。ははっ……」
その場に崩れ、だらりと腕を床に垂らす。目は虚ろとなり、乾いた笑みが絶えず口から零れていた。
「――っ」
まるで、壊れてしまった玩具のように。ただただ、嗤った。
そんな彼女の姿を見てもいられず、信晶の死体に目を――
「どうした!! 一体なに、が――」
別の方向から誰かが走ってきた。あの白銀の髪に細身の体。
――和樹だ。
「和樹くん!! 見ちゃダメ!!!!」
舞園が呼び止めるも――もう遅かった。
和樹は……一瞬でも見てしまった。見えてしまった。
信晶の変わり果てた姿を。
「――どいてくれ」
「ダメです!! 退きません!!」
「頼む……」
和樹はその場で頭を下げる。
「……ぅ」
もう絶望する人なんて……見たく、ない。
ひたすらに舞園はそう思い続けた。
しかし、悲痛な顔を浮かべる彼の姿も……もう見たくはなかった。
舞園は頭を下げた和樹に道を譲り、信晶の遺体の元へ。
「イデ……。お前は……」
和樹は、最初は狼狽はしたものの、信晶の遺体に直接触れぬよう、細心の注意で彼の顔についた血をハンカチでふき取る。
「……」
すぐに近くにあったシルクハットを手に取り、信晶の頭に被せる。燕尾服にシルクハット。彼の正装であり、普段着であり、勝負服でもあった。
「……行かせるんじゃ、なかった」
だが殺されたはずの信晶の顔は……どこか、安らかだった。
和樹は両手をグッと血が出るほどに握りしめ、その場を後にする。
「舞園、オレは……部屋に戻る」
「か、和樹くん……!?」
「――一人にしてくれ」
早歩きで去って行く和樹の横顔は――見えなかった。
歩き去って行く彼の背中は……手を伸ばせるぐらい近くて、
「あっ……」
どこか――遠かった。
『ピンポンパン、ポーン!! 死体が発見されました! 繰り返します! 死体が発見されました!』
場違いに明るいモノクマの声が全ての部屋に響く。
――学級裁判が、再び幕を開ける。
……。
今回、書いててなんだか悲しくなってきちゃいました。
正直、胸が張裂けそうです。
詳しくは次回の前書きに書くとします。
皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?
-
初代まで。アニメも含む。
-
2まで。3やV3は知らん。
-
絶対絶望少女まで。
-
v3まで。全部やったお!!
-
1のアニメor3のアニメのみ。