絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~   作:ゼロん

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すまない。それしか言えません。遅れました……






第十五話 学級裁判、開幕

 全員が決まった席につき、学級裁判が開始された。その指揮を執り行うのは当然モノクマ。

 

「まず、この学級裁判のルールから確認するね。キミたちには、これから田上サンと信晶クン、二人を殺した犯人を見つけてもらいます」

 

 ――舞台も、状況も全て希望が峰学園旧校舎で行った以前のコロシアイと同じ。

 

 同じ学級裁判の光景。理不尽な仲間の死。

 その全てがこの場にいる和樹、高里、悠太を除いた五人の顔つきをより厳しいものにしていた。

 

 モノクマの言う『学級裁判』とは審議を交わし、殺人犯を見つけるいわゆる犯人当てゲーム。

 

「モノクマ、その犯人っていうのは……本当にこの中にいるのか?」

 

 しかし、この場合このゲームは学校でやるお遊びとは訳が違う。

 

 確認のためモノクマに尋ねる和樹だが、

 

「間違いありません。オマエラの内の誰かが、二人を殺したことはカメラが捉えています!」

 

 望んだ答えはこの裁判では帰ってこない。あるのは残酷な真相。それのみだ。

 

「カメラ……? そんなの廊下のどこにあるっていうのよ」

 

 高里が不審の意を見せるが、モノクマは首を傾げる。

 

「ややっ、高里サン。お気に召さなかったかい? キミらが常時モニタリングされてるって感じちゃうと、余計なストレスになっちゃうでしょ?」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

 不二崎はおずおずと指を合わせ恥ずかしがるそぶりを見せる。

 

「だから、カメラを小型化しました〜!! それを上手いこと配置したボクに感謝してよね!」

 

「……だったら、さっさとそれを見せなさいよ!!」

 

 焦ったのか高里は両手を机に思いっきり叩きつけ、席を立つ。バンと大きな音が会場に響き、周りの空気がより緊迫したものとなる。

 

 しかしモノクマは動じず、やれやれと肩を落とす。

 

「はぁ、わかってないなぁ。高里サン。答えのわかってるテストにやる気なんて出ると思う? キミ、カンニングとか平気でするタイプでしょ?」

 

 モノクマの安い挑発に乗ったのか、高里はさらに目つきを悪くし、モノクマに詰め寄ろうとする。

 

「いいからさっさと見せなさい!!」

 

「あっ、高里さん!」

 

 ――今の彼女は完全に冷静ではない。

 

 高里はズカズカとモノクマの椅子の方に重い足取りで近づいていく。

 

「わっ……ぼ、暴力反対……!」

 

 モノクマは怯えるように両手を顔の前に出すが、高里は今、重大なミスを冒している。

 

『モノクマに暴力を加える』という、致命的なミスを。

 

 確実にモノクマとの距離を詰めていく高里を、危険を察知した大和田が止めに入る。

 

「ま、待て高里!! モノクマに手を出すな!!」

 

「――うっさい!! モノクマ、アタシにその映像を見せろ!!」

 

 頭に血が上った彼女を口で止める手段はない。ならば――

 

「ったく、この分からず屋がぁっ!!」

 

 大和田が力任せの手段に出るのもまた必然。大和田は高里を羽交い締めにし、これ以上モノクマに近づかせないようにする。

 

「離せ!! 離しなさい、大和田!!」

 

「何もねぇなら、俺も止めねぇよ!! いいから黙って俺の話を聞け!!」

 

 高崎は節操無しに暴れるが、大和田はビクともしない。だがそれでも止まらない分、彼女も大分焦っている。

 

「いいか! あいつに手を出したら、今度はお前が殺されちまう! 最悪爆死だ!」

 

「そんなの関係ない!! こんな裁判、コイツごと玉砕して――――ッ!!」

 

 暴走がさらに加速する高里に、クソッと荒い声をあげる大和田。

 

「アイツは他にも何台もいる!! それに『犯人を突きとめりゃあ、そいつはどのみち処刑されるんだ!』」

 

 その瞬間、高里の動きが電池が切れたかのようにピタリと止まる。

 

「その話……本当ね?」

 

 ――ハンニンヲツキトメレバ、ソイツヲショケイデキル。

 

 安堵を通り越して、いっそ不気味なぐらいに静かに尋ねる高里に大和田は怖気を覚える。

 

「あ……あぁ、間違いねぇよ。俺だって今のと同じ手で一度は殺されかけたんだ。――今はとりあえず、大人しくするんだ」

 

「わかった……」

 

 大和田は羽交い締めを解き、高里を席につかせる。

 

「大和田くん、でもこれは……」

 

「……わかってんよ、舞園。――こんな説得の仕方、最悪だ」

 

『俺だってこんな手使いたくなかった』と大和田は右の拳を握り締め、悔しげに言う。

 

「けど……これ以外に方法がねぇんだ。今のアイツを支えてんのは……ダチの仇を取るっつう『殺意』だけだ」

 

 大和田もわかっていたのだ。他人の復讐心を利用して生きる希望を持たせ、立ち上がらせようなどと。

 

「舞園さん……厳しいけど、大和田くんの言ってること、間違ってないと思う」

 

「不二崎くん……」

 

「不二崎、おめえ……」

 

「だって……あそこで止めないと、レミさんが江ノ島さんみたいに……」

 

 ――そうだ。前回のコロシアイで最初に死亡した『超高校級のギャル』江ノ島盾子はモノクマに暴力を振るったせいで全身を槍で貫かれたのだ。

 

 大和田が止めなければ、そうなっていた可能性も否定できない。

 

「ぷぷぷ……大和田クンが言った通り、ボクへの攻撃は違反行為。キミたちが見事真犯人、クロを突き止めればその人物にはオシオキを受けてもらうよ。でも……間違った人を犯人にした場合は……」

 

 モノクマは中央端の席から、ずいっと身を乗り出した。

 

「――クロ以外には、みんな死んでもらいます」

 

 その言葉を聞いた瞬間、場にいる全員の表情が凍りつく。

 

 和樹に至っては完全に自分の耳を疑っているようだ。

 

「今……なんて言った……?」

 

「アレ? 和樹クン、耳悪くなっちゃった? 死んでもらうって言ったの。――こんな風にね」

 

 モノクマが手元にあるスイッチを押すと、

 

「あぐぁぁぁっっ!! ――っ!! ――――ッ!!」

 

 突然、高里のいた席から槍が飛び出し、彼女の二の腕を軽くえぐった。

 

 彼女の白い腕から出た鮮血が座っていた席と床に散り、想像を絶する痛みに高里は声にならない悲鳴をあげ、手で傷口を抑えてその場に崩れ落ちる。

 

 全員が不意の出来事にとっさに反応できない中、舞園と和樹はいち早く声をかける。

 

「高里さん!!!」

 

「高里!!」

 

「ボクは本気だよ? 高里サン、これはボクに手を出そうとした罰だよ。少しは反省なさい」

 

「テメェ……!! まだコイツは何もしてねぇだろぉっ!!」

 

「問答無用です!」

 

 高里は苦痛のあまり、悶絶しながら涙を流し、

 

「ぁ、ぁぁっっ、ぃ痛い、痛い痛い痛いぃッ……助けて、助けてぇちさと……」

 

 今はもう亡き友人の名前を、うわ言として呟く。

 

「おい!! さすがにこれはやりすぎだろ!!」

 

「お前、レミになんてことするんだ!!」

 

 見ていられず、桑田と悠太が同時に抗議の声を上げる。しかし、

 

「だまらっしゃい!! 口で言っても分かりそうにない子にはオシオキだべぇ〜! キミも……ボクがこの時のために研いで研ぎまくった槍の味を知りたいのかい?」

 

 モノクマの脅迫の一言で場に静寂が戻る。可愛らしいマスコットのような顔の裏にはやると言ったらやるといった凄みがあった。

 

 その中、悠太が静かに手を挙げた。

 

「……せめて彼女の手当だけでも」

 

「いいよ。救急箱だったらあるからね」

 

 そう言ってモノクマはどこからか救急箱を取り出し、悠太に手渡す。

 

「……大丈夫。見た目より傷は浅い。包帯さえ巻けば平気なはずだ」

 

 悠太は手慣れた手つきで彼女の二の腕に包帯を螺旋状に巻いていく。

 

「俺も陸上部でよく怪我とかするから、包帯の巻き方とか覚えておいて正解だったよ……」

 

「あっ、ぐぅ……っ!」

 

 傷口に包帯が当たり、苦痛で可愛い顔を歪ませる高里。

 

「痛いかもだけど、ちょっと我慢してくれ、レミ」

 

「ヨシ。じゃあ、二人が手当してる間、被害者の状況から説明しよっか」

 

 全員の携帯電話から同時に着信音が鳴る。

 

「モノクマファイルが……」

 

「更新されたな」

 

 ケータイの画面には、遺体の状態、現場で見つかった物、犯行時刻などが明確に記されていた。

 

「田上の死因は刺殺……刃物による腹部からの失血死……」

 

 大神が考え込みながらそう呟く。

 

 画面には、セーラー服を着た水色の髪の少女と、燕尾服を着た茶髪の少年が血の海に倒れている様子が映し出されている。

 

 田上の手には持ち手と当たった部分が大きくヘコんだバット、信晶の手元には血のついたナイフが置かれていた。

 

「信晶の野郎は頭部をバットによる強打で撲殺。……死因が二人が持ってる凶器と一致しているな」

 

 桑田は顎に手を置いて冷静に状況を見る。

 

 死体は長い廊下にて発見され、二つある曲がり角にはトイレが一つずつある。男子トイレは東、女子トイレは西の方だ。

 

 セレスはなにかに気がついたのか、モノクマの方を向く。

 

「モノクマさん、この場合……答えとして自殺や同士討ちというのもアリですよね?」

 

「うん。さっき言ったオマエラの中には、亡くなった二人も含まれてるから」

 

『そうですか』とセレスは満足気に頷き、全員の方を体を向ける。

 

「――では、見廻り係であった二人は互いに殺しあった……ということではないでしょうか」

 

 ――相打ち……?

 

 セレスの一言によって、一同に動揺の波が広がる。

 

「た、高里さん。ちさとさんが凶器を、バットを持っていったって……本当なんですか?」

 

「……」

 

 舞園が尋ねても、高里は目をそらし、口を開こうとはしなかった。

 

「沈黙は肯定と受け取りますわよ?」

 

 セレスから冷徹と言える言葉に観念したのか、高里は重い口を開き正直に白状する。

 

「……ちさとはバットを持ってたわ。護身用って言って」

 

 だが高里は『けど』と言葉を続ける。

 

「そんなことあるはずがないじゃない!! ちさとが……あの子がまさかそんなこと」

 

「――なかった。とは言い切れませんわよ」

 

 セレスは目を細め、高里を威圧する。目は目でも、それは獲物の喉笛に噛みつく肉食獣の目だった。

 

「……どういうことよ。アンタ、内容次第ではタダでは済まないわよ!?」

 

「裁判を乗り切れば生き返れるこの状況の中、誰も起きていないであろう時間帯、相手は他人を信じきっているバカ。――これだけ整った条件で行動しないほうが不思議ですわ」

 

「お前……」

 

 信晶を文字通り馬鹿にされ、和樹は堪忍袋の尾が切れたのか、目を伏せ珍しく怒りを露わにする。

 セレスは高里に指を指して、さらにダメ押しをする。

 

「……それに彼女にはあなた、高里レミという絶対的な味方もいました。ここまで言えば、もう先は言う必要はありませんよね?」

 

「なっ――!! ふざけないで!! ちさとが……あの子はそんな人じゃない!!」

 

「どうしてそう言い切れますの? わたくしはただ、状況からの推測を申しているのですわ。そして、この裁判で証拠もない感情的な推論は役に立ちません」

 

『そ、それは……け、けど……!!』と大きく狼狽える高里も頭の中ではわかっているのだろう。

 

 今の自分では真っ当な反論は出でこない。感情論や個人の経験に基づいて訴えるしかないと言うことに。

 

 ――しかし、高里さんが間違っているとは思えない。

 

 舞園は知っている。彼女の優しさは本物だった。彼女が本当に高里を大切にしていたことも。決して彼女は自分のために親友を利用できるような人間ではない。

 

『レミ……大好き』

 

 でなければ、死ぬ間際に絶対にあんな事は言い残さないはずだ。

 

「不二崎くん、私は……高里さんと同意見です」

 

 この事件には……裏がある。

 

「うん、僕も……高里さんが言ってることに間違いは無いと思う」

 

 二人の会話を聞いていたのか、大神が二人の方を振り向く。

 

「だが二人共。……証拠がないことには、セレスの推理を完全に否定することができぬ」

 

 この間にも、セレスの推理は続いている。

 

「――つまり、彼らは()()()という名目で、『()()()()()()()()()()()()()()()()』、殺し合ったのですわ」

 

 ダメだ。

 

 今の状態では彼女の推理に、

 

 矛盾は見つからな――

 

 

「――いや、それは違う」

 

「か、和樹くん……!」

 

 

 和樹は『任せろ』と舞園達に向かって片手でグーサインを作り、顔をセレスの方へ向けている。

 

「わたくしの推理に何か矛盾でも?」

 

 セレスは興味深げに和樹の反論に耳を傾ける。

 

「……セレスの言うことが本当なら『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』って事だよな?」

 

 悠太は先ほどのセレスの発言を簡単にまとめる。たださえこんがらがっている頭の中を整理しようとしているのだろう。

 

 この『再生学園』の居住区にある部屋は全て二人部屋。信晶と和樹は同じ部屋で寝泊りをしていた。

 

「その通りだ、悠太。だがそこに一つ問題があるんだ」

 

 報告会でみんなの部屋に武器が置いてあったことは確認済みだ。

 

「武器をオレの部屋から持ち出すのは――()()()()ってことだ」

 

「――何ですって?」

 

「なぜなら、オレとイデの部屋に武器なんて……()()()()()()()()()からだよ」

 

「……どういうことですか?」

 

 

『悪い、斧はデカすぎてポケットに入らなかった』

 

 

「あっ!!」

 

 ――思い出した。あの時だ。だから、信晶と和樹の部屋に一個も武器はないのだ。

 

「舞園さん、何か心当たりが?」

 

「私が怯えて部屋に籠っている際に、和樹くんが来て……彼は部屋にあった武器を全部持ってきて、置いていったんです。抵抗するつもりも、これから誰も襲うつもりもないという意思表明のために」

 

 馬鹿な、とセレスはモノクマに確認を取るべく、顔を向ける。

 

「……モノクマ、一つぐらい彼の部屋に武器はあるのではないですか?」

 

「いいや。何度も確認したけど、事件当時に和樹くんの部屋に武器は一個もなかったよ。――余計な事をしてくれたね」

 

「それはどうも」

 

 なぜか少しイラっとしているモノクマに、和樹は嘲るような笑みを向ける。

 

「では舞園。疑うわけではないが、お主はあの時間は……」

 

「寝ていました。それに起きたのは四時。高里さんの叫び声が聞こえる直前です」

 

「ボ、ボクも一緒にいたから、間違いないはずだよ。ボク、結構繊細で物音が少しでもするとすぐ起きちゃうから」

 

 二人にアリバイがあり安堵する大神。

 

「では……舞園に和樹、不二崎は犯人ではないと言うことか」

 

「あぁ、オレもその時間帯は寝てたし、信晶が出かける時は起きてたが、あいつが武器を持っていくそぶりなんて見せなかったからな」

 

「……チッ」

 

 これでセレスの推理は論破された。信晶と田上は殺し合ってなどいなかった。

 互いにそのつもりは毛頭なかったのだ。

 

 少なくとも信晶が部屋からナイフを持ち出した可能性は完全になくなった。

 

「そ、そうよ! 二人が……ちさとが殺しあうことなんて考えてるはずがないわ!」

 

「だ、だよなぁ! そうに決まってるよ!」

 

 少し落ち着きを取り戻した高里に乗っかる悠太。しかし――

 

「え……じゃ、じゃあ……ここにいる誰かが二人を殺したってことか?」

 

 桑田の言う通り、犯人に繋がる証拠は、まだ見つかっていない。

 

「協力者の可能性は……ありませんね。生徒手帳によると、殺人を犯して出られるのは実行犯のクロ一人のみですし」

 

「どうかな……? 何処かの誰かはそのルールの裏をかいた策を練ったようだが……?」

 

「はて、誰のことでしょうね?」

 

「クソッ、じゃあ一体誰が犯人なんだよ……」

 

 大和田が当然の疑問を口にした瞬間、しばらくの沈黙の後、和樹の目が驚いたように目を見開く。

 

「――不味い」

 

「え……? どうしたんですか和樹くん」

 

「舞園、みんなの視線を見ろ」

 

 全員、ある一点の方向を見つめている。

 

「誰が犯人かわからない状態で、真っ先に疑われるのは――」

 

 死体第一発見者である、高里レミだ。

 

「――え? な、なんで……? 何でみんな、こっちをみて……」

 

 周りの視線に怯え、憔悴する高里に、

 

「そうですね、遠回しなのは嫌いなので、単刀直入に言いますわ」

 

 セレスは遠慮なく宣告する。

 

「高里レミさん。――あなたが、二人を殺したクロですね?」

 

 

 ここにいる一同が、一瞬でも思ったことを。

 

皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?

  • 初代まで。アニメも含む。
  • 2まで。3やV3は知らん。
  • 絶対絶望少女まで。
  • v3まで。全部やったお!!
  • 1のアニメor3のアニメのみ。
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