絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~   作:ゼロん

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第二十話 悲劇の舞台裏

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「モノクマのやつ……こんな夜に呼びつけやがって、一体なんのつもりだっつーの」

 

 

 ――そういえば舞園(まいぞの)達が信晶(のぶあき)っつー手品師と集まってんだっけか。

 

 

「まぁ……オレも集まってもいいんだけどな」

 

怜恩(れおん)くん……ごめんなさい。今は、まだ……』

 

 ――流石に気まずいわなぁ……。

 

「ふぁ〜ぁ……ってもまだ10時前か」

 

 桑田(くわた)は両手を上に伸ばし、その後に欠伸をしながら腕回しをする。

 

「ぁぁ……これ終わったら、ちょっと壁に向かってボール投げでもすっか。手頃な壁あったかな……」

 

 桑田は自分の震える利き腕をじっと見る。

 

「……モノクマにでも聞いてみっか」

 

 ――まぁボールで死ぬまでボコボコにされたから、若干トラウマ気味なんだが……

 

 

「ま、やらねーことには始まらねーしな」

 

 

 ――そういや、花音(かのん)のやつ、元気してんのかな……。苗木も……。

 

 

「アイツには……辛い役目任せちまったな」

 

 ――アイツも……苗木だって本当は辛かったはずだ。舞園をオレなんかに殺されて、その挙句に……

 

「あんなことになるんなら、アイツと仲良くしたのは余計だったかもなぁ……はは」

 

 桑田の口元から自然と笑みがこぼれるが、

 

「……アイツと、舞園ちゃんには見せたかったなぁ。オレの晴れ舞台」

 

 それも一瞬だった。

 

 ――今でも体が覚えている。球場のグラウンドの味。

 ボールやバットを手に握る感触。

 逆転ホームランや、オレの放った球で勝ち取ったストライクで、(スリー)アウトを決めてやった時の爽快感。ベース近くの土の味。

 全部、忘れちゃあいない。

 

 それをあの二人、もちろん従妹(いとこ)花音(かのん)も、きっと一緒にスタジアムで見てる。

 

「けど二人がベッタベッタしてんのはゼッテーに認めねーけどな。クッソ〜! 苗木のやつも、舞園と絡む度にいつもいつも頰赤くしやがって……! 羨ましいぞこのやろー……!!」

 

 ――いかんいかん。すっかり嫉妬モードだ。

 最悪オレには花音(かのん)がいるし、フラれても『大丈夫だよ、お兄ちゃん』って慰めてくれっから。あの笑顔があればオレは生きていける。

 ご飯三杯いける。たぶん!

 

「けどもしオレと舞園ちゃんと仲直りしたら……歌とか二人で個人レッスンとか……なんつって」

 

 ――ちっと恥ずかしいや。

 

 桑田は妄想を膨らませつつ、羞恥心でついかゆくもないのに頰をかいてしまう。

 

花音(かのん)にはわりーけどな。はは。……もし本当に帰れるんなら……」

 

 ――もう一度くれぇは、アイツらに会いたいもんだ。

 

「……いつまで独り言言ってんの? 桑田クン」

 

 しかし彼の様子はずっと呆れ顔のモノクマに見られていた。

 

「どっひゃああああっ!? おおおお、脅かすんじゃねぇよ!!」

 

「……勝手にベラベラベラベラ、恥ずかしい妄想吐露しちゃって。聞いてるこっちが恥ずかしいよ」

 

「だだだだったら聞かなきゃいいだろうが! それよりなんだよモノクマ、要件って!」

 

「誤魔化したよこの人……まぁいいや。とりあえず、カムヒア!」

 

「なんでそこだけ英語なんだよ……」

 

 渋々とモノクマに連れられた先にあったのは、巨大な一つの部屋。そこへ着くまでの過程は誰も知る由がない。

 

「なんだ……ここ」

 

「ぷぷぷ……ここはね……んや。説明するより見てもらった方が早いや。ここがボクらの『個人面談』のための部屋さ」

 

「個人面談だとぉ……? だったら、帰らせてもらうぜ」

 

『お兄ちゃん!!』

 

「……!?」

 

 ――知っている。

 

『助けて……助けてよぉ……レオンお兄ちゃん……』

 

 ――嫌でも忘れるものか。この声の主を。

 

 振り向いた先に映ったのは、自分に見てもらおうと髪を金色に染めた少女で。自分に何度も懲りずに告白してきた大切な従妹で。

 

「花音!? 花音なのか!!」

 

 桑田は目の前にあったスクリーンに両手をつく。

 

 そこに映っていたのは、彼女だけではなかった。モノクマに似た謎のロボが彼女に襲いかかろうとしているところだった。

 

『お兄ちゃん、やっと……やっとあえ』

 

「――はい、おしまい」

 

 モノクマの合図とともに、スクリーンに映された花音は消える。残るのは何も映すことのない、黒い画面のみ。

 

「モノクマ……お前、花音に……オレの従妹に何しやがった!!!」

 

「まぁまぁ、落ち着いてよ。キミの席もあるから座って座って」

 

「……っ」

 

 ――どうする? ここでこいつをぶん殴ってでも吐かせるか。いやだがそんなことをすればオレも花音も――

 

「うん、行儀がいいね。ボク、キミのそういう所には感心するよ」

 

 桑田は観念してモノクマに言われた通りに席に座った。

 

「……おまえ、一体オレに何をさせようっていうんだ」

 

「いやぁ〜……何も? ただ強いていうなら、彼女のことは忘れて、ここでの一生……って言ったら変だな。うん、転生までの待ち時間? を今ここで苦しむ彼女を見捨てて過ごすか。それとも……」

 

 モノクマはナイフを音を立てて床に落とす。

 

 

「――誰かを殺して、彼女と共に生き返るか」

 

 

「……は?」

 

「その二つがあるよって。伝えたくてさ」

 

「じょ冗談だろ……? おい」

 

「知ってたろ、桑田クン。ボクがくだらないジョークが嫌いだってことをさ。

 ……な〜んて、ね。いいよ別に。

 キミは今まで通り、ここで過ごしてくれて構わない。ボクだってキミに強制まではしたくないからさ」

 

「待て、待てよおい! おい待てよ!!」

 

「ん?どうしたの? ここで見たことは忘れた方がいいよ。おやすみ桑田クン」

 

「……もし」

 

 モノクマの動きが彼の言葉に反応するかのようにピタリと止まる。

 

「もし、オレが、誰かを殺せば……花音は助かるんだろ……?」

 

 桑田は恐る恐る、震える手でナイフを拾い上げる。

 

「ぷぷぷ……けど、キミにできるのかな? 彼女のことを忘れて、ここでの生活……もとい死活に全力投球した方が、賢明だとボクは思うけどね」

 

 モノクマは言外に『クロになったら花音は助かる』と言っている。

 ……どうすりゃいい。

 

「もう眠いや……じゃあね桑田クン。おやすみ。この話は明日には『無し』になるからさ、仲島サンのことは、忘れて……楽しくやるといいよ。うぷぷぷ……」

 

 ▲

 

 桑田はモノクマ個人面談の部屋を出て、ふらふらとした足取りで自室に向かった。

 

「……」

 

 ――どうすりゃいい。

 

「ぐぅ……!!!」

 

 ――オレは一体どうすりゃいいんだ。

 

「クソクソクソクソッ……!!」

 

 ――無しになるっつーことは、花音はあのまま……苦しみ続けるのか?

 

『お兄ちゃん……!!』

 

 ――モノクマに何かされていることは明らかだ。死んだオレたちをここに呼ぶことができるくらいだ。

 何ができたっておかしくない。

 

 モノクマならオレの絶望を見るために、平気で花音を消滅させようとするだろう。

 

 いや消滅だけならまだいい、もっとひどいことが起こるかもしれない。

 

「ぁ……」

 

 桑田の脳裏に浮かぶ自分の死に姿。野球ボールに延々と体を打たれ続け、自分の身体が軋んでいくのがわかる。

 

 死ぬよりも……いや死んでからもあの痛みは心にくすぶっている。

 

「いやだ……」

 

 だが本当にいやなのは……それではない。

 

 そして……無残な姿になった花音が、脳裏に

 

「ふざけんなっ!!」

 

 ――あんな苦痛も、恐怖も……花音にだけは絶対に遭ってほしくない。

 

「クソクソクソ……なんで、なんでオレらがこんな目に遭わなきゃならねぇんだ。なんで花音が……あんな、ひどい目に遭わなきゃならないんだ……くそっ……!!」

 

 腹いせに壁を殴るも……気休めにもなりはしなかった。

 

 ▲

 

 その後、桑田は部屋に戻り、しばらく部屋からは出なかった。

 

「大和田は……いねぇか」

 

 ドアをゆっくりと閉じ、

 

 ――どうすれば、どうすりゃいい。花音を救うには、どうすればいい。モノクマは明日にでも見せしめに彼女を殺すかもしれない。

 

「……誰かに話すか?」

 

 その瞬間、支給された携帯に着信が。

 

『あっ、さっきの面談の内容は誰にも話しちゃダメだよ? ミニカメラはあちらこちらにあるからすぐわかるよ?』

 

「……は、はは。そうかよ」

 

 ――なんでだろうな……可笑しくって笑いが止まれねぇわ。……クソ。

 

 ずっと……悩み続けた。一人で。

 

 ――何時間が経っただろう。

 

 携帯を見ると、もう夜中の三時だった。

 

 ――大和田にはなるべく自然に、すぐ寝るって言っておいたが……

 

 頭が……痛ぇ。

 

 ――ほんと心臓もバクバクするし。あれ、ていうか死人なのに心臓とか動くのか? どーでもいいけど。

 

「……なんでこんな時に変なこと考えてるんだ、オレ」

 

 考えすぎて現実逃避してたというのか?

 アホらしいにもほどがある。己のバカさ加減にヘドが出てしょうがない。

 

「ちょっと涼むか……」

 

 今思い返せば……

 

 桑田がポケットにしまったままのナイフが、悪魔が笑うかのようにギラリと光る。

 

 ――どうしてオレはこの時ナイフを置いていかなかったのだろう。

 

 ▲

 

 

 ……確かに涼しいけどな。

 

「だぁっ〜……クソ! なんでトイレなんかにいんだよオレは!」

 

 少し廊下を歩いた後、桑田は部屋の近くにあるトイレに入った。

 

「さっき向こうのトイレに入ったばかりじゃんかよ……」

 

 洗面所で顔を洗い、冷水で頭を冷やす。

 

「……花音。オレはどうすりゃいいんだ。お前に……」

 

 ――オレに何ができる。

 

「モノクマのやろう……!!」

 

 

「――桑田さん?」

 

 

「!!」

 

 トイレから出た桑田に声をかけたのは……

 

「ど、どうしたんですか? こんな夜中に……」

 

 水色髮のセーラー服の少女……田上ちさとだった。

 

「お、おぉ田上か。お前こそ何やってんだよ」

 

「わたしは信晶くんと夜の見廻りです。報告会の時に……って、あっそっか知らないんだったっけ」

 

「へぇー初耳だ。じゃあ二人で変なことする奴がいないか見回ってんのか。えれーな」

 

「え、えへへへ……ちょっと張り切りすぎちゃって、こんな遅くまで回ってたんですけどね」

 

「けど夜中に男女二人って……その、危なくね?」

 

「は、だだ大丈夫ですよぉ! 信晶くんだって、そんなケダモノみたいなこと……」

 

「いやーワカンねぇ〜ぞー? もしかしたら、ってことも……」

 

「あわわわ!! そこから先の妄想はダメです! カットですカットカット!」

 

「なははっ、ジョーダン、ダンジョーだよ。今度からは女子二人、男子一人ってしたほうがいいぞ。念の為にな」

 

「もう……。今度信晶くんと相談します……」

 

「おお、そーしろそーしろ」

 

 ――ちょっと話して、スッキリしたかな。

 けど……だからって解決しね――

 

「そういえば……桑田くん、さっきの花音って誰なんですか?」

 

 ここで会話が終わればよかったのに。

 

「それにさっきモノクマがなんとか……って」

 

 マズイ。

 マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ――!!!

 

 どうしてさっきの会話で終わってくれなかったんだ。

 

「き、聞いてたのか……!?」

 

「えーと……『どうすりゃいい』ってずっと呟いてて……桑田さん。一体何があったんですか?」

 

 モノクマはあちこちにカメラを仕掛けてるって。前回のコロシアイでもそうだった。このままでは花音が――!!

 

「わ、わたしでよければ、相談にのりますから!」

 

「……」

 

 どうする? ここでうまく切り抜けても、舞園やほかの面々にも伝わっていくことだろう。そうすればモノクマも黙っていないはずだ。

 

 ――オレは……オレはどうすれば……!!

 

「桑田く――――?」

 

「……?」

 

 気がつくと、

 

 

 

 手が……赤かった。

 

 

「どう、して……」

 

「え……あ、オレは……」

 

 どうして……オレはナイフなんか握ってんだ。

 

 ――コロセ。

 

「レ、ミ……」

 

「ぅぐっ……くそ、なんで……!?」

 

 誰かが近づいてくる。

 

「わりーなぁ、田上さん。ちょっとトイレが長くなっちゃって……って桑田……? お前何を……!?」

 

「信晶……!? ま待て。待ってくれ。誤解なんだ」

 

 ――ころして花音をタスケロ。

 

「田上! おい、しっかりしろ!! 田上!! っ……! クソッ、出血がひどい……!」

 

「ち、違う。オレはこんな……」

 

 

 

 ――――殺せ。

 

 

 

 桑田の理性は――ぶっ飛んだ。

 

「話は後だ! とりあえず田上の手当を……!!」

 

 

「――――悪いな。信晶」

 

 

 桑田はその瞬間だけ。その瞬間だけは一切迷わず、

 

 

「――――がっ!?」

 

「オレにはもう……これしかねーんだ」

 

 

 最も親しみのある『凶器』を、信晶に振り下ろした。

 

 

 ▲

 

 

 

「はぁ、はぁっはぁ……!!」

 

 

 目の前には頭部から血を流し倒れる信晶、小さく『レミ』と呻く田上。

 

 もう後戻りは……できない。

 

 携帯から着信音が鳴る。

 

 桑田は壁で手についた血を拭き、ケータイを開く。

 

『桑田クン。おめでとう。

 キミの悩み悩んだ進路決定。

 その勇気ある決断と行動に

 ボクはひどく感激しました。

 

 差し当たってキミには、ボクから特別な支援をいくつかプレゼントします。

 ささやかな物ですが、受け取ってください。

 

 再生学園学園長、モノクマより』

 

「……そうかよ」

 

 ――シャツを早く替えねぇと。

 

 桑田は静かに部屋に戻り、用意されていた新しいシャツに着替える。

 

「これがプレゼントってわけか……」

 

 袖を通し、大和田を起こさないように部屋を出る。幸い彼は深く眠っていた為、起こさずには済んだ。いびきは凄かったが。

 

 疑われる可能性を少しでも減らすため、なるべく田上たちから遠くのトイレへ行き、トイレの近くに血染めのシャツを。

 

「ちきしょう……血なんて水でとれるかよ……!!」

 

 下手をすれば発見されるリスクを高めるだけだ。以前のように焼却炉が近くにない。

 

 やむを得ず、トイレから出ると。

 

「は……?」

 

 そこには血で濡れた燕尾服を着た少年がいた。

 

「……! 桑田か。まったく……神様ってほんと気まぐれだなぁ……」

 

 死んだはずの信晶が……頭から出る血を抑えてそこに立っていた。

 

「の、信晶……お前、なんで……?」

 

「お前……なんか訳があったんだろ……?」

 

「っ……!」

 

『当たった』と信晶は苦しげに笑みを浮かべる。

 

「はは、やっぱり、な。ぅぁ――」

 

 しかし瀕死の彼に、もう立つ力は残っていなかった。

 

「信晶!!」

 

「だ、だってお前……さっき怯えてたからさ。幸い……鎌かけたら大当たりだよ」

 

「いいから喋るな! 多分騒ぎに気づいてすぐに人が来る。だからそれまで体力を……」

 

 そうしている間にも信晶の(まぶた)が閉じかけていた。

 

「俺のことはいい……どのみち、もうすぐ意識がぶっ飛んじまう。それより……た、頼みがあるんだ」

 

 信晶は必死に瞼を開けようと自分の腕をつねるが、そんなの役に立つがない。

 

「くそ……もう痛くもねぇ、か……これじゃあ目も覚めねぇなぁ……」

 

「おめー……どうしてそこまで」

 

 ――まさか何かダイイングメッセージを残しているのでは。

 

「……瀕死の俺がお前を貶めるような真似できる訳ないだろ……? 俺のバカさ加減、舐めんな」

 

「……。誰が信じるかよ」

 

「ま、そーだよなぁ……『お客さん』」

 

 信晶はすっと桑田のポケットを指す。

 

「ん……?」

 

「お調子者の手品師、出信晶(いでのぶあき)

 

 ――正真正銘、最期の手品だ……」

 

 それに気づいた桑田はそっと自分のポケットに外側から触れる。

 

「……!!」

 

 大きさからして……封筒か何かか。

 

「……へへ。最期の手品にしちゃ……つまんなかったか、な……」

 

「……おまえ」

 

 

「舞園さんや……セレスさん達を、頼んだぜ、レオン先輩――――」

 

 

 そう言って信晶は……穏やかな顔で、その口を閉じた。

 

 

 

皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?

  • 初代まで。アニメも含む。
  • 2まで。3やV3は知らん。
  • 絶対絶望少女まで。
  • v3まで。全部やったお!!
  • 1のアニメor3のアニメのみ。
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