絶対虚構少女 ダンガンロンパ舞園 ~亡き希望達の学園死活~   作:ゼロん

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第二十六話 図書館での一時

 

 

 薄暗い部屋。人の声も全くしない空間で、ペラペラと何かをめくる音のみが響く。

 

「……案外、マシな本もあるのね」

 

 わずかに灯したライトの光のみが、赤いリボンで結ばれたツインテールの少女、図書館にいる高里レミの存在を部屋に映す。

 

「あとは扉に鍵さえあれば完璧なんだけど……。これじゃあ閉じこもることすらできないわ」

 

 桑田の裁判の後、階段のシャッターが開き二階が解放された。

 

 それに伴い、レミ達ここに閉じ込められた高校生八人の行動範囲は広がった。

 

 その一つがここ。再生学園の図書館だ。

 

「いずれも古びた物だけかと思ったら……案外最近の本もあるのね。お気に入りのが一冊ぐらい無いと、暇つぶしにすらならないわ」

 

 彼女は今一人、

 

「クルッ? ホホホ……」

 

 いや一人と一匹。

 

「──誰?」

 

「おわっ!?」

 

 隠し持ったナイフを手に構え、冷たい声色で部屋に入った者に問う。

 

「ちょ……れ、レミ、オレだよ。とりあえずナイフ、下ろしてくれよ」

 

「…………。朝日奈悠太」

 

 本に視線を戻し、ちさとの腹に刺さっていたナイフをしまい直す。

 モノクマからポイと渡されたものだ。

 

 ──血は、拭き取っていない。

 

 そして、現在彼女の警備員をしてくれている白ハトを肩に乗せ、『見張ってなさい』と指示を出す。

 

「へぇ……ここ図書館か。なんか難しそうな本ばっかりだな。漫画とかラノベとかねーのかな?」

 

「……そういう低俗な物はここには無いわ。ここにあるのは文学系の小説よ」

 

「て、低俗って……そういうレミは何読んでんだよ?」

 

 あまりうるさくされるのも叶わないので、黙って自分の読んでいた本を悠太に手渡し、机上に置いておいた別の本を代わりに読む。

 

「へぇ〜……ていうかレミって読書するんだな。読むとしても勉強の参考書とか辞書とか、そんぐらいかと思ってた」

 

「バカにしてんの庶民族。アタシの少ない楽しみにケチつけようなんて、いい度胸ね」

 

「はは……ご、ごめん」

 

「庶民のくせに生意気よ」

 

 言わなくてもいい言葉がポロポロと出てきてしまうのは自覚している。だが今は……そう言ったことを抑える心の余裕がなかった。むしろ求めてここに来たのだ。

 

「あれ、これ……夏川冬子って……まさか」

 

「……? アタシのお気に入りになんか文句でもあるの?」

 

「い、いや……そうじゃなくて……」

 

 ──なによ。変にうろたえて。逆に気になるじゃないの。

 

「その作者さんと……オレ、会ったかも──おわっ!?」

 

「──その話、詳しく聞かせなさい」

 

 悠太の肩を掴み、逃さぬと顔を近づける。

 

「わ、わかったから落ち着けって!」

 

「……。アタシとしたことが気を許すなんて……。ま、アンタだったらいいわ」

 

 顔を遠ざけ距離をとると、悠太の顔がよく見えた。彼も異性にここまで近づかれたことがないのだろう。顔がひどく真っ赤だ。

 

「いや、ちょっと気になったんだよ。オレの知り合いに腐川冬子って言うのがいるからさ。もしかしたらなぁ……って」

 

「あ、アンタなんでこの作者の本名を知ってるのよ!? こ、このことを知ってるのはごく僅かの人間のはずよ!?」

 

 ──ど、どうしてだ。ちょっとした好奇心で、この本の作者について高里グループの力を使ってまで調べた情報をこの少年はなぜ……?

 

「あ、いや……ただの推測……なんだよなぁ。このペンネームも一文字弄ったぐらいだし。まさかマジだとは……」

 

「す、推測……」

 

 ガックシと肩を落とす。似た名前の人と知り合いというだけでここまであっさりとわかってしまうものなのか。いや、たしかに彼の推測を確信に変えたのは自分なのだが。

 

「にしてもアイツ、小説書いてたんだな〜。とてもそうは見えな……いや、ああいう感じだからこそなのかな……」

 

「……話したことがあるの?」

 

「えっ、えーと……死ぬ直前にちょこっとだけ……」

 

「詳しく聞かせなさ……」

 

 ──『レミ、人に物を頼む時は丁寧にね?』

 

「……いえ、聞かせてください」

 

「どうしたんだよ。頼むとかお前らしくないなぁ」

 

「……。頼む時はこう言えって、ちさとに言われたのよ」

 

「……なるほどな」

 

 悠太はその一言で察してくれたようで。

 

「アイツは……なんていうかな。橋の上で会った間柄? 文字通り」

 

「どんなシチュエーションよ……」

 

「塔和シティを脱出しようとしたんだ。苗木こまるって子と腐川と一緒に」

 

 ──苗木こまる。たしか『超高校級の希望』の妹……だったわね。

 

「まぁ、アンタが『超高校級の希望』の妹と一緒だったのはどうでもいいとして……肝心の彼女はどうだったの? 見てみてどんな感じだった?」

 

「ズイズイくるなぁ……ファンか何かなのか?」

 

「彼女の書いた本は全部持ってるわ。それも全部初版の」

 

「マジか。逆にそこまで言われると、アイツの本がどんな内容か気になるんだけど……」

 

「仕方ないわね。あなたが教えてくれたら、後でかいつまんで教えてあげるわよ」

 

「おっ、あんがとな! レミも意外と良いとこあるじゃん」

 

「『意外と』は余計よ愚民」

 

 レミの所々に入る悪口を大して気に留めず、悠太はへへ、と得意げに腕を頭の後ろに回す。

 

「一言で言うと……友達がいない感じかな?」

 

「ズバリ言うわね……アタシと比べてどの位?」

 

「えーと……どっこいどっこい?」

 

「そんなに!? どんだけ社会性無いの、そいつ!?」

 

 ──あれ……今、自分の首締めた?

 

「なんて言うかな……卑屈っていうか、口開けばどっか引っかかる言い方したり……」

 

「……それ、良いところあるの?」

 

「レミも似たような──」

 

 言い終わる前に悠太の頰を力一杯引っ張る。

 

「にぃたような何ですってぇ〜?」

 

「あぃぃぃっ!? 痛い! 痛いし力強っ!? 本当は信晶殴ったのお前なんじゃ痛たたっ!?」

 

「ふざけた事言ってんじゃないわよ!」

 

 耳元で叫んでやった後、しつけも十分と思い悠太の頰から手を離す。

 

「たしかにどんな手段を使ってでもって……最初なら思ってたわよ」

 

「……? 今はどう思ってんだよ?」

 

「……わからない。自分でも、わかんないわよ」

 

 ──ちさとが居なくなってから、心臓に穴が空いたかのようなのだ。隙間風が吹いてて、ずっと心が凍えてる。

 

「レミ……」

 

 もう誰も信じたくない。どうせ裏切られるんなら……誰も信じなければいい。そうすれば傷つかなくてすむ。

 

 ──自分以外は道具と思え。

 

 それがちさとと会う前に学んだ全てだった。自分以外を、利用できる駒として扱えと。

 

 そこに愛など、信頼など入る余地は無いのだと。

 

『ドア越しでもいい。高里ぉ……信晶の野郎は、最期までみんなの事を心配して逝った。──俺はアイツの意志を継ぐ。もう誰も犠牲はださねぇ。俺がやるのも以ての外だ』

 

『オメェは、どうする』

 

 けど、大和田も朝日奈悠太も。

 

「……」

 

 どうして、みんな私をそんな悲しそうな顔で見るの。

 

 ──やめてよ。信用したくなるじゃない。

 

「悪い。今無理に答えなくてもいいよ。多分、心の中がぐちゃぐちゃなんだよな。聞き返すのも、無神経だった」

 

「……」

 

「腐川の話だけど……」

 

「いいわ。もう大体の人物像は掴めたから。多分そいつ、被害妄想が激しいやつね」

 

 呆然と口が開いたままの悠太。図星らしい。

 

「……多分当たってるかも。ていうかすごいな。よくこんだけの情報で」

 

 ──令嬢なめんじゃないわよ。

 

「想像力豊かとも言い換えられるわね。……どうりでアタシが夢中になる本を書くわけ、か」

 

「あとさ、もう一つ。レミに多分一番似てるかもって思ったんだけど」

 

「口の悪さ、とか言ったら、今度はその口を引きちぎるわよ」

 

「ち、ちげぇよ! ……なんだかんだ言って他人の心配をしてくれるってところ」

 

 ──ッ。

 

「あとさ、腐川はどうかはわかんないけど、結構仲間思いだよな。身内にはすごく優しいっていうか」

 

「……」

 

「レミ?」

 

「……読書の邪魔よ。そろそろ出て行きなさい。他の奴にも、図書館は貸し切りって伝えなさい」

 

 悠太は若干嫌そうな顔で書斎机に向かうレミを見る。

 

「えぇ〜……伝書鳩かよオレは」

 

「いいから行きなさいハト二号。邪魔よ邪魔」

 

 ──まぁ。

 

「へいへい。どうせ邪魔ですよオレは」

 

 じゃあな、と手を振って図書館から出ようとする悠太に。

 

「……朝日奈悠太」

 

「悠太でいいよ、水臭いなぁ。……今度はなんだよお嬢様」

 

「……い、一回しか言わないから、よく聞きなさい」

 

 ──呆れ半分に振り返る彼に。

 

 

 

「………………………………………………………………………………ありがと」

 

 

 

 ──礼を言う程度は、してやってもいいだろう。

 

「えっ、あっ……あっ……?」

 

「──裁判の時、庇ってくれて。……ありがと。ゆ、悠太」

 

 たどたどしく出る言葉に悠太の頰がみるみる赤くなっていって。

 

「お、お礼なら舞園さんや、さくらにも言えよな!? あと大和田先輩にも! じゃ、じゃあな!」

 

 すると超特急で図書館を出て行き、ドアを閉めていった。

 

 ──少し叱られてしまった。また言い方に悪いところがあったのだろうか。しかし、

 

 

「…………舞園にも、か」

 

 

『高里さん、あなたはシロです!!

 それを────私が証明します!!』

 

 

 ──自分はまだ彼女を信じきることはできないけど。

 

 

 

「──考慮は、しておくわ」

 

 

 とりあえず……考えておくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆様はダンガンロンパはどこまで見ていますか?

  • 初代まで。アニメも含む。
  • 2まで。3やV3は知らん。
  • 絶対絶望少女まで。
  • v3まで。全部やったお!!
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